ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

魔女の刻 (44) 告白

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 「うちの会社が」草場さんは真っ直ぐに私を見ながら言った。「くぬぎ市の前回の開発にも参加してた、って話は前にしたね」
 「うん、憶えてる。カフェくぬぎね」
 草場さんと最初に二人きりで時間を過ごした場所だ。
 「そのとき、うちがちょっとミスをやらかしたことがあってね」
 Q-LIC 運営の図書館がオープンして、半年後。くぬぎ市民の来館が一段落し、同時に独自の分類法がネットで批判を高めていたため、来館者数の伸びが当初の計画をかなり下回っていた。市長からも集客率についての非難が告げられ、Q-LIC はくぬぎ市以外の市町村からの集客率を高めるためキャンペーンを開始した。9 月から10 月の間に、新しくQLIC カードの図書館利用カードを作ってくれた人には、Q クレジットを5000 クレジットプレゼントするという内容だった。Q-LIC の動画配信サービスで、30 日間の映画の見放題もセットになっていた。
 ただ、Q-LIC が求めているのは、長期間に渡る利用者だ。クレジットだけゲットして、一度も来館しない一見さんが多発する可能性がある。そのため、クレジット付与対象は、キャンペーン期間中に最低2 回は図書館に来てもらった人という制限が付き、なおかつ付与処理はキャンペーン期間終了後にまとめて処理されることになっていた。その対象者抽出処理を担当したのがTSD だった。
 当時、草場さんはくぬぎ市の案件から離れて別の業務に集中していたため、抽出処理は手が空いていた若い社員がアサインされた。指示された条件で抽出するだけなので、大きな経験値が求められる作業ではなく、むしろ経験を積ませるのにちょうどいい、と考えられたからだ。それが裏目に出た。
 「キャンペーン中に抽出用のプログラムは作ってあって、それは僕も確認してあった。だけど、僕が他の業務で手が一杯になってたとき、Q-LIC の方から次々に仕様追加が出てきてね。窓口になってた営業の奴が考えなしに受けてたのがいけないんだけど」
 当初の仕様では来館回数だけを考慮すればよかったのが、貸出件数によってクレジット付与数に差をつけることになったのが始まりだった。次に併設のクリック書店での購入履歴を抽出条件に追加することになり、年齢と性別による条件分岐の追加が続いた。その後も、あまり意味があるとは思えない条件追加が次々に上積みされていき、キャンペーン期間が終了したときには、17 個の条件が重なる複雑な抽出条件が完成していた。
 自信があったのか、自分のスキルが足りないと思われるのを避けたのか、いずれにせよTSD の若手社員は、進捗を確認した上長に対して「順調です」「問題ありません」「楽勝です」と言い続けた。
 「営業がプレッシャーをかけたのもいけなかったんだろうけど」草場さんは悔しそうに言った。「僕も忙しくて、チェックを怠っていたのがまずかった。正確には、そいつの上長がチェックしたことを確認していなかったわけだけど」
 抽出ロジックのミスが発覚したのは、キャンペーン対象者を抽出し、Q クレジットが付与された後だった。489 人に2000 から3000 クレジットが過剰付与され、逆に108 人にクレジットが全く付与されなかったり、少なく付与されてしまったのだ。これは利用者からの問い合わせが相次いだことから明るみに出た。問い合わせセンターに苦情が殺到し、オペレーターの対応がお粗末だったことが事態の悪化に拍車をかけた。何人かがSNS で事情を拡散したため、隠蔽することは不可能になった。
 付与が少なかった利用者に対しては、直ちに追加付与処理が実行されたので、お詫び状を発送するぐらいで済んだが、過剰に付与されてしまった利用者に対する対処が問題となった。Q クレジットのシステム上、付与されてしまったクレジットを取り消すことが、簡単にはできなかったからだ。Q クレジットの預かり金を管理しているのは、Q-LIC の連結子会社であるQ クレジット&マーケティングサービス株式会社だが、担当者は予定外の処理を挿入することを嫌い、取り消し処理の実行に抵抗した。加えて、すでに付与されたクレジットを使用してしまった利用者が何人かいて、その人たちに返金を求めることは、事実上不可能だった。
 過剰付与された150 万円あまりのクレジット分について、一時は下請け業者、つまりTSD とその元請けに弁償を求める、という話も出たのだが、TSD の社長や営業部門が交渉した結果、最終的にQ-LIC が費用として負担することで落ち着いた。
 「後からわかったことだけど、Q-LIC はよくこうやって貸しを作っておいて、借りた方が忘れた頃に、その取り立てをするらしいんだね。うちの社長なんかは、そんなことも知らずに喜んでたよ」
 「取り立てが来たの?」私は答えを予想しながら訊いた。
 「来た。うちが、この仕事を受注した直後に。ただ、僕はそのことを知らなかったんだけどね。知ってたのは、うちの社長と役員の一人だけだ」
 去年の4 月、自社に呼ばれた草場さんは、経営陣がQ-LIC による浸透を受けていたことを知る。実際には複数の仲介業者を経由してだったが、くぬぎ市再生プロジェクトでTSD が果たすべき役割を指示してきていたのだ。
 「つまり妨害工作?」
 「そう。ただね、Q-LIC もプロジェクトを頓挫させようとまでは考えていなかったんだよ。まあ、弓削なんかは失敗すればいいと思ってたんだろうけどね。うちが求められたのは、できればインテグレーションテストあたりで、致命的なバグや仕様洩れが、ボロボロ出てくるぐらいの妨害工作だったんだよ」
 「それはエースのデメリットにはなっても、Q-LIC のメリットにはならない気がするんだけど」
 「Q-LIC の要求には、妨害工作の内容を詳細に報告することも含まれていたんだよ。市政アドバイザリとしての立場から、インテグレーションテストに関わることもできるから、問題が発生した途端に、エースシステムを非難して、魔法のように解決策を提示してみせる。やっぱり、くぬぎ市には市政をよく知ってるQ-LIC の力が必要なんだ、とアピールするために」
 「で」私は少々、信じられない思いで、草場さんの顔を見つめた。「それをやってたの? つまり、妨害工作を」
 「やってた」草場さんは認めた。「弁解じみたことを言うと、いい気分じゃなかったよ。正しいことをやってるとも思ってなかった。ただ、僕はこのプロジェクトにあまり乗り気じゃなかったし、正直なところ、くぬぎ市がどうなろうと気にしてなかった。ユーザ企業とシステム会社の意思疎通に齟齬があって、望んでいたものと違うシステムが納品されるなんて、イヤになるぐらいよく聞く話だからね。それに、これでQ-LIC と永遠に手が切れるんだとしたら、妨害工作で手を汚すぐらい些細なトレードオフだ、とも思ってた」
 「いくつぐらいやったの?」私は訊いた。「その妨害工作」
 「コンテナ数としては30 個ぐらいかな。もちろん設計だけじゃなくて、実装でも手を入れたものはあるよ。ただし、バレそうになって戻したのもあったけど......」
 「ちょっと待ってよ」私はあることを思い出して、草場さんを制した。「去年の4 月というと、マギ情報システム開発とかFCC みなと開発の人たちが、意図的なバグを仕込んでるのが見つかったときよね。まさか、あれって......」
 「いや」草場さんは首を横に振った。「それには僕は関わってない。でも、Q-LIC がうちにだけ工作の指示を出してたとは思えなかったからなあ。あの2 社がやってたことが発覚したときは、ああ、こいつらも仲間だったんだな、とは思ったけどね」
 「マギとFCC が白川さんに追い出されたのは、5 月末だったよね。そのときに、もう危ないとか思わなかったの?」
 「思わなかった。それどころか......」
 「何?」
 「怒るかもしれないけど」草場さんは、どこか懐かしむような顔になった。「実はちょっとワクワクしてた」
 理解不能な言葉に、私はまじまじと草場さんの目を凝視した。
 「あのとき、君も含めてサードアイの3 人で、犯人探しをしてただろ? マギとFCC が実装と単体テストを担当したコンテナが対象だったと思うけど、その中には僕が手を加えたコンテナもあったんだ」
 「そうだったの?」
 「うん。ちょっとした挑戦だと思わないか?」
 「いや、意味がよく......」
 「わからないかな? 一プログラマとして、どこまでバレずにバグを仕込めるか、って挑戦だったんだよ。調べるのは名高い東海林さん率いるサードアイの面々だ。相手にとって不足はないじゃないか。僕がやってる、この下らない政争の材料作りに、ちょっとでもメリットを見出そうとしてたんだな」
 「......まあ、気持ちはわからなくはないけど」私は草場さんを睨んだ。「あたしたちは、クソつまらない作業にうんざりしてたんだからね」
 「申しわけなく思ってた。本当だよ」
 私は気持ちを落ち着かせるために、持って来たウーロン茶を一口飲んだ。これがアルコールだったら良かったのに。
 「それで」私は訊いた。「あたしと付き合い出してからも、まだその挑戦をしてたなんて言わないわよね」
 「そうだったら、川嶋さんとこういう関係になってないよ」
 「いつ止めたの?」
 「9 月になってからだよ。でも、そのキッカケになったのは川嶋さんなんだ」
 「あたし?」
 「そう。8 月23 日の夜、何があったか憶えてる?」
 「忘れるわけないでしょ」
 私と草場さんの唇が初めて触れ合った夜だ。
 「それまではっきりしていなかったんだけど」草場さんは真剣な顔を向けた。「あのとき、僕はこれ以上ないぐらい明確に自覚した。いつの間にか、川嶋さんのことを好きになってたんだということを。同時に確信したんだ。もう、これ以上Q-LIC の言いなりになるのはイヤだ、自分がやっていることをプログラマとしての挑戦だと正当化することを止めたい、とね。川嶋さんを真っ直ぐ見られるようにしようと思ったんだ」
 何と答えていいのか困った。ますますアルコールがあれば、と思った。きっと赤くなっているだろう頬の色を、アルコールのせいにすることができたのに。
 「とはいえ」草場さんは続けた。「僕が決めたからといって、Q-LIC が、はいそうですか、と解放してくれるはずがないことはわかっていた。うちの社長にQ-LIC の意向を無視するだけの力も理由もないこともね。正直、どうしたらいいのか途方に暮れたよ」
 「どうやって解決したの?」
 「鳩貝の力を借りた」
 「鳩貝さん?」
 鳩貝さんも、TSD の社長から指示を受けてはいたものの、プログラマではないため、具体的な妨害工作には手を染めずにいた。Q-LIC としては、いずれ、何らかの形で鳩貝さんも工作に参加させるつもりだったのかもしれないが、強制すれば鳩貝さんは、あっさり会社を去ってしまうだろうことがわかっていたので、TSD の社長は何も言っていなかった。草場さんは、ある日のランチの席で、鳩貝さんに現状を相談してみた。すると鳩貝さんは即座に答えた。
 「何て?」
 「わかった、もう止めていいよ、と言ってくれた」
 呆気にとられた草場さんが「そう簡単に止めるわけにも......」と言うと、鳩貝さんは不思議そうな顔を作った。
 「大切な人ができたんですよね。何を優先すべきなのか明白じゃないですか」
 そう言った鳩貝さんは、ランチを終えて開発センターに戻った後、すぐに早退していった。数日後、出勤した草場さんに、鳩貝さんは「手を加えた部分を修復しておいてください」とだけ言い、何事もなかったかのように自分の仕事に戻った。草場さんは言われた通り、バグや脆弱性を作った部分を元に戻した。Q-LIC への報告用のメモがあったため、それは困難な作業ではなかった。
 「それから?」
 「それで終わりだった」草場さんは肩をすくめた。「それっきり、社長からも営業からも、もちろんQ-LIC の誰かからも、何も言われることがなかったんだ。僕は、本来の仕事、つまりプロジェクトのメンバーとして、設計や実装をする仕事に戻った。そして今に至るわけ」
 私は鳩貝さんの顔を思い浮かべようとしたが、とても困難な作業だったので諦めた。代わりに、鳩貝さんがどんな手を打ってくれたのかを訊いたが、草場さんも首を傾げるだけだった。
 「訊いても教えてくれないんだよ。うちの社長もね。僕としては犯罪絡みの手段を使ったんじゃないことを祈るばかりだよ」
 沈黙が降りた。私はその間を埋めるために、ウーロン茶を嘗めた。壁の向こうの開発センターからは、かすかな騒乱が伝わってくる。鳩貝さんも参加していたはずだが、誰かと何かを話しているのだろうか。
 「話してくれてありがとう」しばらくして私は言った。「本音を言うなら、もっと早く知りたかったかな。ま、聞いたから何ができたわけでもないけどさ」
 「カットオーバーまで待ったのは」草場さんは天井を見上げた。「僕がもう妨害工作をやってないってことを、わかってもらいたかったからだよ。ちゃんとカットオーバーしたことが、その証明になるからね」
 「なるほどね。でも、よく、白川さんに気付かれずに済んだものよね」
 草場さんは頷いたが、ふと真剣な顔で私を見た。
 「それなんだけどね。もしかすると白川さんは、僕がやってることに気付いてたんじゃないかな」
 「え、どうして?」
 「僕たちがもう知ってる理由で、白川さんは、どうしてもこのプロジェクトを完遂したかったわけだ。当然、Q-LIC の妨害なんかは、充分に想定していたはずだろ。僕も、26 日の夜、少しばかりVilocony の設定を触ったからわかるんだけど、コーディネータの設計で整合性のトラップをかけることができるんだ。白川さんは、それこそ膨大な数の整合性チェックを組み込んでた。ヒューマンエラー防止のためだと思うけど、僕がやったようなバグがあるコンテナが、引っかかりそうなトラップもある。白川さんが、気付いてたとしても不思議じゃないね」
 「気付いてたとしたら、どうして黙ってたのかしら」
 「あの人の考えてることはわからないよ。エースの白い魔女だから。何か意図があったんだろうけどね」
 以前、日吉駅のハンバーガーショップで話をしたとき、白川さんは「鳩貝さんはプロジェクトが終わるまで、ずっと裏の存在でいてもらわなければならない」と言っていた。そこから考えると、仮に白川さんが、草場さんの裏任務に気付いていたとしても、それを公にすることはしなかったに違いない。草場さんを排除すれば、会社単位で契約を解除している都合上、鳩貝さんも外さなければならないから。
 それに、多少うぬぼれていいのなら、私の存在も一因だったかもしれない。草場さんが工作員だったと知らされたら、私は少なからずショックを受けたことだろう。すでに多くのプログラマを外していた白川さんは、これ以上、リソースを減らすことを避けたかった。だから、草場さんとQ-LIC のつながりを秘匿したばかりか、私と草場さんの仲を取り持つようなお節介を焼いた。そう考えるのは、穿った見方だろうか。
 「ま、僕としては」草場さんは悪戯っぽく笑った。「自分のプログラミングスキルが優秀で、白川さんが最後まで気付かなかった方に賭けたいけどね」
 私はテーブルの上に置かれた草場さんの手に、自分の手を重ねた。これまで、誰が入ってくるかわからないブレイクルームで、身体的接触をしたことはなかったが、今日ぐらいはいいだろう。
 「そうね」私は優しく言った。「そういうことにしておこうかな」
 「ありがとう。東海林さんと勝負するのは、また別の機会にしておくよ」
 「とにかく話してくれて嬉しかった。誰かが覗きにこないうちに戻ろうか」
 私は立ち上がろうとしたが、草場さんは私の手を握って椅子に戻した。
 「実は、もう一つ、打ち明けなければいけないことがあるんだ」
 「まだあるの?」私はうんざりしてみせた。「一日分の告白は聞いたと思うんだけど。次は何? 実はCIA の特殊工作員だったとか?」
 「いや、今後の話」
 「今後の......」私は座り直した。「いいわ、話して」
 「うちの会社のことなんだけど」
 「TSD? 何、倒産するの?」
 「そうじゃないよ」草場さんは笑ったが、すぐに真顔になった。「いや、ある意味では似たようなものか。実は、吸収合併されることになった」
 「吸収合併って」私は少し驚いて草場さんを見た。「どこに?」
 「エースシステムだよ」
 絶句した私は、息をするのも忘れて草場さんを見つめた。言葉を絞り出せたのは、たっぷり1 分ほど経過した後だった。
 「......冗談でしょ」
 「鳩貝がやってるデジタルフォレンジックサービス業務、知ってるよね」
 「うん。白川さんから聞いた」
 「エースシステムは、フォレンジックサービスを大規模に全国展開したいんだよ。そういうとき、一から人材を育てるより、すでに育ってる人材を引っこ抜くのが、エースシステムのやり方だ。だから、本当はTSD が欲しいというより、鳩貝が欲しいんだけどね。うちの社長がごねたんで、じゃあ会社ごと、って話になったらしい。新しく設立されるフォレンジックサービス部門に、鳩貝が部長待遇で入る。他に何人か。社長や役員も、それなりの部署で。中途採用自体がほとんどないエースシステムとしては、破格の待遇だよ」
 「草場さんは?」
 「地方自治体関連事業部門のサブリーダーとして内示をもらってる。今回の案件での実績を評価してくれたらしいよ。Vilocony の販路拡大を見込んでのことだね」
 「そう......なの」私は混乱した思考を何とかまとめようとした。「えーと、その、お給料、上がるの?」
 「上がるよ。かなりね」
 「あ、そう。おめでとう、って言っていいのかな」
 めでたい話のはずなのに、なぜか私の心は晴れなかった。その理由は次の草場さんの言葉で判明した。
 「たぶん、全国のエース事業所を飛び回ることになると思う」草場さんは少し寂しそうな声で言った。「少なくとも、神奈川県内でずっと仕事をする、ということにはならないんじゃないかな」
 サードアイは引き続き、この案件のメンテナンスや二次開発に関わっていく予定だ。だが、草場さんはそうではない。どのような形でも、私と草場さんが同じ仕事をすることはないわけだ。
 「そうよね」私は無理に笑顔を作った。「やりがいのある仕事じゃない」
 「今後の話、って言ったのは......」草場さんは少し躊躇った。「そのことなんだ」
 「もう会えないってこと?」
 「一緒についてきてくれないか」
 心臓が胸郭の中で跳ね回った。
 「あたし?」
 「もちろん」
 「いつから?」
 「合併が発表されるのは、GW 明けの予定。もう概ね合意はできてるから、早ければ第二四半期には、TSD という会社はなくなる」
 「7 月ってことね」
 「急な話だってことはわかってる」草場さんは、私と指を絡めた。「もちろん返事はすぐじゃなくていい。家族のこととか、ゆっくり考えてからで。どんな返事でも、僕はそれを受け入れるから」
 「わかった」私は頷いた。「少し考えさせて。とにかく、その申し出自体はとても嬉しいのよ。ありがとう」
 草場さんは、私の手をもう一度ぎゅっと握ってから立ち上がった。
 「先に戻ってるから」
 ブレイクルームで一人になった後、私はしばらくの間、空になったグラスを握りしめて座っていた。頭の中には無数の思いが飛び交っている。どんな答えを出せばいいのか、どうするのがベストなのか、とりとめのない考えが浮かんでは消えていった。誰かに相談したかったが、誰に相談すればいいのかがわからない。それに、結局のところ、最終的な結論を出さなければならないのは自分だ。
 この夜がずっと明けなければいいのに。

(続)

 この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。本文中に登場する技術や製品は実在しないことがあります。

Comment(52)

コメント

VBA使い

もし川嶋さんがいなくなったら、サードアイの物語は終わってしまうのか?

いや、今度こそ東海林さんが一人称で語るナラティブを!

とーま

子供とお母さんのことがあるからうまくいかないんだろうけど、
この二人の恋愛事情は割とどうでもいいww

匿名

場合によっては虫になってたのか草場さん
魔女というか釈迦の掌だったのかな

それはそうと、憎しみで人が◯せたら…!というやつだねこの展開は

匿名

くっそめんどくさい展開になってきたなw

のり&はる

鳩貝さんカッコエエヽ(^o^)丿

匿名

子供の描写が殆ど無いのが気になってたけどここで効いてくるのか
狙ってやってるならすごいと思う

MM

>この夜がずっと明けなければいいのに。

そうだよねえ。いろいろめんどくさいけど、嬉しいしねえ。
時間よ止まれ、だよねえ(涙)

noon

・新しい事業を興す時、一から人材を育てるのではなく、既に育った人材を引き抜くのがエースシステムのやり方
・中途採用自体が殆どないエースシステム
どっちだ(笑)

SQL

何をしたんだ鳩貝さん・・・w

もし良ければ、鳩貝さんのスピンオフなど書いていただけると嬉しいです。

MUUR

鳩貝さん、ナイスガイじゃん?

3cheeky

次週、最終話でしょうかね。wkwkしながら待っています。

名も無き誰か

>noonさん
「ピンポイントで誰か(今回なら鳩貝さん)を引き抜く」ことはたまにあっても
「まるごと引き抜く」みたいなのが殆ど無い、という様な意味合いで私は捉えてました。

「他に何人か。社長や役員も、それなりの部署で。」の部分です。
エースはTSD社長や役員がほしいわけではないでしょうし(笑)

M

エース側からヘッドハント/M&Aはするけど、中途の「応募」は受け付けてないよ、ってことですね。

匿名 

なんか川嶋さん自宅を遠く離れた最前線で政争に巻き込まれているうちに多感な年頃の息子のことすっかり忘れてメスになっているような……

匿名

ヒント1:人間は生命の危機が迫ると、子孫を残そうとして性欲が高まる
ヒント2:吊り橋効果

……ってことなんじゃないかと。
このプロジェクトもかなり緊張度が高かったし、最後の最後では川嶋も物理的な威力を振るわれる自体にもなったし。

匿名D

まるで、作中の時間が登場人物にとってのすべての時間と錯覚しているのがいるな。
実在の人物と仮定して、作中に書かれた時間がどの程度のものか見積もってみたら?
この程度のこと、指摘されないとできないの?
これだから小説を読まない輩は(ry

noon

>名も無き誰かさん
>Mさん
なるほど。
会社自体を買収して子会社化するなどの手段はあっても、エース本体社員として迎える事は殆ど無いと解釈します。
ご意見ありがとうございます。

きゅういち

「弓削なんかは失敗すればいいと思ってだろうけどね」
   ↓
「~いいと思ってただろうけどね」
のほうが、読みやすい感じがします。

宇宙大帝

川嶋さんはついていかないだろうなぁ

リーベルG

きゅういちさん、ありがとうございます。
読みやすいというより、元の文はtypo でしたね。

ランド

川嶋さんは別に恋にうつつをぬかしているわけじゃないと思います。
無事カットオーバーもしたことだし、どうせ皆には付き合ってることバレてるし、手を繋ぐぐらいはね。本当に夢中になってたら何も考えずに付いてくと思うし。

巷で良くある、シングルマザーがろくでもない男にうつつを抜かして子供を放置してるってわけじゃないと思うなあ。

あくまで個人の感想ですけどね。

匿名さん

またKYがKYなコメントしてるね。

匿名D

飲食店に例えていたやつがいたが、
ここでは
「Gがいる!」
と指摘したら、Gそのものじゃなくて、指摘した人間が批判されるんだよな。
そんな空気なんか読みたくもないわ。
好きなだけGまみれのブツを飲食しておればよい。

匿名

Gなんていない
頼んでもいないのに店に居座って「箸の持ち方が悪い、育ちわりーな」と他の客に絡む迷惑客がいる
終いには料理に虫が入ってるとまで言い出した

匿名

自称海原雄山な味音痴が酔っぱらって客相手に蘊蓄垂れてウザがられてるだけのような…

BEL

>自称海原雄山な味音痴が酔っぱらって客相手に蘊蓄垂れてウザがられてるだけのような…
あー、確かにほんとの食通の人は色んな味わい方があるってのを受け入れてるし、作り手の意図を決めつけたりしないですね。

匿名D

なるほど、俺が間違っていたようだ。
川島さんをそういう目で見ている輩ばっかりだったんだな。
Gがいる、んじゃなくて、Gばっかりのところに迷い込んでいたということか。

匿名

今度はストローマン始めたぞ

じぇいく

匿名Dさん
あなたの物語の読取り方にはほぼ賛同するけど、コメントの書き方には賛同できませんよ。
行間を読めていないように思われるコメントを見つけると、喜んで煽りの入ったコメントを書き込んでいるように見えます。
物語を読む力を持ったあなたなら、どんな言葉を選べば人の心がどう揺れるかは分かるはず。
みんなが幸せな気持ちでいられるようにその能力を使おうよ。

匿名

自分だけはGでないと思っている輩が、唯一のGだったりして。
人の群れに一匹だけのGは、自分だけは他と違うと思うんだろうね。Gなのに。

匿名

(作者がリーベルGさんなのに、Gのたとえ話が始まってみんなでG連呼してるのが、少しツボに入ってる)

匿名

匿名D氏の人気に嫉妬。

匿名

匿名D
>なるほど、俺が間違っていたようだ。
>川島さんをそういう目で見ている輩ばっかりだったんだな。
>Gがいる、んじゃなくて、Gばっかりのところに迷い込んでいたということか。

 お前がゴキブリってことだよ、読解力に自身があるならそれくらい気づけ。

匿名D

俺が表明している意向が、オレ個人のみのものでないことは、
客観的に確認できるとおりだ。
このことだけでも、書き込んだかいがあったというもの。


>Gなんていない


つまり、あの書き込みの主と同類ということだな。
そんな下品な連中と馴れ合うつもりはない。


それにしても「匿名Dが指摘している内容」は端からスルーして、
「匿名Dが書き込んだ」ことに反射的に反応してるだけなのが丸わかりなのが笑える。
Gどころか三三ズ並みだな。
字は読めるが、文章の内容を把握できないのが増えているというが、やれやれ。

匿名

レスバする場じゃないと思うので、これで最後。

昔から何人もの人が

本文の感想を書くでもなく会話と罵倒の区別もつけられず粗探ししては品性下劣な暴言を繰り返しあまつさえ自分以外誰も求めていないにもかかわらず通り一遍の別段新しい発想も何もない無味乾燥な己の発言には価値があると本気で思いこんで勝利宣言することで日頃のストレスの留飲を下げてる低俗で愚昧で幼稚なレス釣り師が目障りだ

と言い続けてるのに、いまだに読み取ない人の文章力になんて誰も何も期待してないよ
twitterででも好きなだけ罵倒してなよ

匿名

Gって、見るだけで不快だもんね。
良く分かってらっしゃいますね。

匿名D'

馴れ合いたくないなら、レスして馴れ合うな。
この程度のこと、指摘されないと分からないの?やれやれ。これだから自分の文章すらわからない輩は。

匿名

…ミミズは益虫…(ぼそっ

匿名

匿名Dさんは、じぇいくさんのコメントを無視することに決めました。

匿名

みえないGが見えたり幻視しているのであれば、レビー小体型認知症かも。
最近は、症状を遅らせる薬もあるので一度病院に行く事を勧めるよ。

周りの忠告を聞かずに「俺は違う」と認めず悪化して手遅れになるのは、依存症の悪化パターンと同じ。

酔っぱらいの「酔ってませ〜ん」とより質が悪い。

匿名D

大漁♪大漁♪

匿名

やっぱりカマッテチャンか。

匿名

異常肥大したプライド
揺るぎなき自己無謬主義
意味不明な伏せ字、置き換え
朝から晩までレスしまくる粘着性
止めどなく繰り出す論理のすり替え
他人を虫や汚物に例えて疑問にも思わない謎の倫理観
人を見下さずにはいられない高慢さ
都合の悪い話はスルー
劣勢になると釣り宣言

古代2ちゃんねらーの化石だな
40代後半くらいか

匿名

匿名Dのコメントについて(女性目線)

当人がミスリード認定した書き込みを嫌うくせに、自分の意見(妄想)を押し通す。それはミスリードじゃないんか。そして面白いくらいに外す。特にキーポイントであるほど外す。それ外すんだー・・と引くくらいに大事なところを外す。

書き込んだ本人が感想や疑惑について書き込んだと思われるもので、かつ思いつかなかったもの、気に食わなかったものについて「ミスリード」認定する。または取り繕う。

川島さん、白川さん、つまり女性に対しての腹黒そうな疑惑?を必死に否定し続ける。かたくなに否定し続ける。どんだけモテないんだろうね、書き込みが逐一気持ち悪いうえに、内容が誰よりも女性軽視だよね。だけど気付かなくて気持ち悪く話してくる人間だよね、フィクションと割り切っているといいながら女性への理想像を押し付ける存在だよね、○○みたいな奴、いや○○さんじゃない? という周囲の共通見解を引き出せてしまうほどの存在。

面白い題材だったので10人以上(女性のみのカウント)と共有してみたけれど、打率10割ってなかなか凄い。

シングルマザーが泊まり込みまである職業をやっていることについて批判するならまだ理解できるけれど、子供について24時間忘れちゃいけないという暴言について、このサイトに匿名Dという人物について抗議をすべきでしょうかという被せるような暴言まで引き出せる存在。(匿名Dという名前じゃない書き込みでも、当人の異常性から同一人物ってことが透けて見えるのも気持ち悪い)

それがー匿名Dなんですー(光TVの再放送大好き)、ええ、11人でした。

aoi

ごめんやけど、Press Enterに恋愛的な話は求めてないんよ

もうやだ

リーベルGさん、コメント欄って閉鎖できないんでしょうか?
せっかくの良い作品が台無しです・・・

匿名

俺もこの流れは嫌だけど閉鎖とか言うくらいならコメント欄見なければ良いと思いますよ。
別に本文の途中にコメント欄があるわけじゃ無いんだし、作者もコメント欄見てくれとか言ってるわけじゃ無いんだから。

通りすがりの元PG

コメント欄でDという文字を見たら、ダニがいると思って飛ばせばいいんですよ
無視が一番♪

匿名

毒に毒を充てたってだけでしょ。本編の衝撃に比べたら大したことないって

恋愛を廃する業界は廃れちゃうよ

匿名

匿名Dをモデルにした新作を希望。

嘘予告

IT 探偵、三村スズタカの別名を持つ高村ミスズの元には、 IT 業界の摩訶不思議な事件が次から次へと訪れる。

今回彼女の元にやってきた依頼は、インターネット上の交流サイトに残された、いわゆる荒らし行為の書き込みを削除してほしいというもの。それならばプロバイダの出番ではないかと、最初は依頼を一蹴しようと考えていたミスズだったが、しかしその荒らしの手口が尋常ではない巧妙さと執拗さを合わせ持つものと知り、自らの出番を悟る。

ユカリ「プロバイダが何度荒らし目的の書き込みを削除しても、翌日に元通りとは、まるでゴキブリじみたしつこさですね、ボス」
ミスズ/スズタカ「ああ。『奴』はインターネットを経由してシステムをクラックしているようだが、サーバーのアクセス履歴を追いかけても、アクセス元を特定できない。プロキシサーバーを噛ませた上で、更に別の偽装手段も併用しているようだ」

悪意に満ちた荒らしの繰り出すトラップの数々に、ミスズは仲間たちと共に苦しめられる。
果たしてミスズはサイト荒らしの尻尾をつかみ、彼または彼女の所業を、白日の下にさらすことが出来るのか――?

次回、「高村ミスズ女史の事件簿 サイト荒らし篇」... coming soon!
君も高村ミスズの活躍を、今すぐサブスクライブ!

匿名D

それにしても、条件付けってスゴいもんだな。
なるほど「パブロフの犬」が偉大な発見だと言うことがよくわかる。

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