とある未踏の超絶案件'13

2013/04/25 15:38:51

 毎々お世話になっております。エンジニアライフにおける社会のゴミクズ担当、コラムニストterukizmでございます。

 右の方にあるプロフィールでは「新米武装派(略)お仕事募集中です☆」などとふざけたことを書いてございますが、まことにありがたいことにお仕事の方では良きパートナーに素晴らしいご縁をご紹介していただき、毎日刺激的で何もかもが勉強となり、稼働も安定、毎日毎晩定時で帰宅し、ワークとライフのバランスも充実、濁った目で寿司詰めの通勤電車に揺られるという、もったいないほど素晴らしいお仕事をさせていただいております。

 先月に至りましては個人事業主として2回目の確定申告を無事終えることができ、なんとか「新米武装派」などという意味不明な肩書きも外すことができそうにございます。年齢も正しくバッチ処理が走りインクリメントされ、兵装についても若干時代遅れ感の否めないACU迷彩からビンラディン討伐やアフガニスタン遠征など米軍でいま最もホットなSEALsチーム6、もしくはDEVGRUを意識したAOR系の迷彩パターンへと更新される予定で、日々どのプレキャリにチェストリグしようかカタログとにらめっこする毎日を送っております。

 そのように昨今大変充実した毎日を過ごさせていただいている次第なのですが、やはりフリーランスたるもの、常に案件情報に目を通すのは日の常となっておりまして、これは今のお仕事に不満があるですとか決してそのようなことではなく、ただ毎日毎日サバンナのハイエナのごとき眼で食い扶持を探していた時代の名残に相違なく、PC立ち上げと同時に走るメールチェックのような一種の習慣でしかないのですが、いろいろとドス黒い案件情報が並ぶ中に、漆黒の闇の中に浮かび上がるようなさらなる黒、漆黒のダークマター、ライズオブナイトメアの貫禄ででそびえ立つようなドス黒い案件がございました。今回はその「とある案件」について、ご紹介させていただきたく存じます。

■家畜の安寧 虚偽の繁栄

 その案件とは、まあこの業界で知らないという方はまずいらっしゃらない、とても有名な業界団体が企画している案件でございまして、名前を聞けば大抵の方は「ああ、あれ!!」と頭に電球マークが浮かぶような超有名案件でございます。大人の事情で直リンさせていただくのはなんともはばかられる次第ですが、題記から察していただければまあ、すぐにお分かりいただけるかと。

 で、その案件の人員募集要項を案件情報サイト風にまとめると、以下になります。

★【元請直】独立行政法人系 先進開発プロジェクト
 ・契約形態:委託契約(作業実績(時間)に応じて対価を支払う)
 ・期間:2013年10月~2014年6月(9カ月間)
 ・スキル:不問(ある程度の「ソフトウェア開発能力」は必須)
 ・フェイズ:提案~開発~試験
 ・単価:作業時間×単価で変動、合計上限年間1440時間
     18歳以上: 1,600円/時間、18歳以下: 1,200円/時間
     (例: Aさん(19歳)、Bさん(17歳)の場合
      →Aさん(1,000時間×1,600円/時間)+Bさん(440時間×1,200円/時間)
      →212.8万円)
 ・上限:230.4万円(18歳以上) 172.8万円(18歳未満)
 ・超過・控除条件:超過清算なし(委託契約額を上限とする)、控除条件あり(作業実績により)
 ・備考:「次世代のIT市場を担う人材を発掘する」という事業趣旨を踏まえ、25歳までの日本在住者のみを対象。
     費用は人件費のみを対象とする。開発機材やPCなどは自己負担。
     学生可。未成年の場合、父母もしくは同等の親族、保護者等からの承諾書要。
     旅費交通費の一部提供あり(元請の主催する片道100km以上のミーティングや報告会に限る)
 ・支払いサイト: 3カ月(ただし確定検査に合格しない場合、または途中で契約が打ち切られた場合は、全額返還)
 

 とまあ、営業人売りエージェントが「どうですか!? この案件! 業界内で知らない人はいないプロジェクト! 今までにない新規性や独創性が求められていて、この案件を通して成長できること間違いなし! フェイズも提案ベースからの参画になるので、貴方のスキルが十分に生かせますよ! 技術的にも好きなものが使い放題ですし、顧客やPMともフェイストゥフェイスで密なコミュニケーションが取れます! しかも、今までにこの案件で数々の有名な優秀エンジニアが生まれているんです! だから、僕と契約してよ! 契約って素晴らしいね! 契約!(◕‿‿◕)」などと声をかけて来た日には、「いいぜ、この条件で人が集まると思ってるなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」といった感じで面談後に3時間くらい駅前の喫茶店で説教しながらイマジンをブレイクする右手でひたすら殴って倒す次第ですよ。物理で。

■SAN値 ピンチ

 何がおかしいかって、まず「独新性」「革新性」「将来社会的インパクト」「イノベーションを創出する可能性を秘めた」「若い逸材」に対して、「時給1600円(もしくは1200円)」で仕事させようってのがまずおかしいですよ、カテジナさん! というかなんですか時給1600円って。ネットで検索したらドリームなクラブの女の子とかの方がもっと稼ぎいいよ。いえ、そっちの仕事はそっちの仕事でいろいろ大変だとは思うのですが。職に貴賎はありませんし。にしたって貴方、これからのITを担う人材に、時給1600円ってのはないでしょうよ、このご時世とはいえ。おじさん涙が出ちゃうよ。

 さらに悲しくなるのが「委託契約」って書いてあるところ。確認できる範囲で文章中に明確に「委任契約」とは書かれていませんが、日々日報をつけ、定期的に進捗報告する必要があるという記述内容から、おそらく法律的には「委任契約」なんだと思います。これ、いわゆる時間売りですよ。働いた分だけもらえる労働体系。コンビニやファミレスのバイトと同じ。業界トップ団体からして成果主義のいわゆる知的労働をもはや否定してしまってるわけですよ。もうわれわれIT技術者は立派な肉体労働者だってことですか。はーそうですか。さようでございますか。

 まあ請負契約と違い、完成義務や品質補償義務が求めづらい(コンサルや技術開発系に近い)という業務性質を考えればある程度納得できなくもないのですが、これはその辺の法律的知識まで理解しているとは到底思えない学生さん相手に大人がやってよいことなんですかね? 「旅費交通費や開発機材などは自己負担ください」的な記述に至ってはもう勘弁してくださいと土下座外交するしかありません。ロボット分野とかはまったく門外漢なのですがあれモーター1個で数万円とか平気でするんでしょ? そういうの学生に払わせんの? 面の皮厚すぎて昼飯の角度取ればアハトアハトの水平射撃でも弾けるんじゃないですか。

 しかも「支払いサイト3カ月で、最終検査に合格しないと支払った分は返せ云々」の記述に至っては、恥ずかしながら基本的な労働法も把握しきれていない私ごときにはもはや理解できない領域に至っているのですが、これ一体、法律的にはどういう契約になってるんですかね? もちろん大丈夫なんですよね? まさかアニメ業界みたいに個人事業主契約とかさせて、個人事業主だから云々のメソッドでいろんな問題回避したりしていませんよね? まさかまさか、業界団体トップ様自らそのようなブラック企業じみたことはしておられませんよね?

 それでいて「扶養の範囲を超える可能性があります」とかの文章があるあたりで、もはや理解する努力を放棄しました。もういいや別に。私みたいにおっさんには最初からエントリーする資格とかないし。この条件で仕事したいとか思えないし。

■死せる餓狼の 自由を

 だって、「時給1600円で1440時間、9カ月の仕事」って、「一日8時間・月20日」で人月計算すると、単価「256k円」ですよ。情報系として数字だけ見れば股間の75mm Kw.K.40 L/43がキュンキュンしてしまう値ですけど、「人月単価26万弱」って言われたら、そりゃ愚息もしょんぼり、というかいくら若くてもそれはないわー、いくらクラウドでソーシャルでノマドでデフレ経済な昨今でもそれは受けらんないわー、生活できないわー、ってのが一般的なフリーランスの考え方じゃないでしょうか。
 
 会社員の方は「新卒くらいで月手取り26万とかだったら、あんまり悪くないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、これ雇用契約を結んだ企業側が本来負担すべき社会保険とか厚生年金とか給与所得控除とかそういうの、おそらく一切含まれてないですからね。あくまで私個人の想像にすぎないんですが、たぶん「個人事業主扱いで人件費だけ渡すので、他いろいろかかったのは別途経費として必要なら税務署とあれこれやれやコラ、そっから先は税務署との問題だからうちは知らん」っていう投げっぱなし打ちっぱなしファイヤ&フォーゲット契約なんじゃないですかね。黒い。黒すぎる。
 
 オーケイ。まあ、金銭的や契約的なことは200歩くらい譲りましょう。報酬がクッソ安いのも、学業や研究と両立しつつアレコレできる、われわれ凡人では預かり知らないウィンウィンでイノベーティブ、あわよくば起業できてウハウハみたいなメリットがあるんだとしましょう。見た瞬間思わず「これはダサい」と、うなるような非凡なセンスの称号を授与されることにも無上の喜びがあると信じましょう。法律的な怪しさも契約という鎖が運用でカバーしてくれているのだと信じましょう。

 ですが、「こんな真っ黒な案件、まともな個人事業主なら絶対受けない」レベルの仕事を、「25歳以下の世間がよく分かってない学生」に「9カ月の労働と激安の賃金」でやらせようという神経が、はっきり言って理解できないというか、社会的に見てリソースの無駄遣いというか、ブラックもここに極まれりというか、そんなことできる人材なら最初からそこらのベンチャーに企画書持ってカチコミ入れた方がよっぽどマシだと思うわけですよ。
 
 社会的に見ても業界的に見てもこんな仕事害悪でしかないですし、こんなんで貴重な人材をすり潰すくらいなら正直やってもらわなくて結構。セキュリティ勧告とオープンライセンスのフォント提供と形態素解析用の辞書提供だけしてくれればいいです。資格試験はいいや。とりあえず全角入力必須のフォームなんとかしてから出直して来てください。

■どうしてこうなった

 で、「なんであの有名プロジェクトがこんなブラックの代名詞になってしまったのか?」という経緯を追ってみますと、そもそも最初からこんなブラックな案件ではなかったのですよね。本体が上下に分かれてて、ユースとかわけわかんねえ謎の枠もあった頃は、普通に採択予算800万円とかで、年齢制限もなかったですし、学生以外にも腕に覚えのあるフリーランスとか、企業勤めのエンジニアだとか、食い詰めたポスドクとか、そんなのが参加してたんですよ。純粋に「腕に自信のある個人とか少数チームに金を渡して、事業性のある新しい何か作らせようぜ!」っていう、至極分かりやすい企画でございました。

 それが、過去の採択実績を見ると、
 
 ・2008年 400万~700万円
 ・2009年 400万~700万円
 ---(超えられない壁)---
 ・2010年 280万円前後 ※25歳以下制限がつく
 ・2011年 180万円前後
 
 となっている訳ですよ。09年から10年、いったい何があったんだって話。
 
 もちろん、簡単にご想像つくでしょう。そう、あの史上最強にクソまみれだったクソ政権が、あの史上最強にバリバリにスーツのえりを立てていた大臣が、ありもしない埋蔵金を探してザックザックとやっちゃってくれたアレですよ。そう考えると、「25歳制限」が10年度から新しくついた理由も腑に落ちます。今までの「年齢問わず、優れた開発者にドカっとまとめた金を渡して新規事業を創成する」という方針が「参加者はほとんど暇な学生なんだから、25歳以下限定にして安い金の固定労働体系でやらせなさい」などという短絡的な御上からの鳩ポッポ、いえ鶴の一声があったことは想像に難くないですね。
 
 もちろん、金を渡せばイノベーションが生まれるわけではありません。ですがそれ以上に、イノベーションを生み出せる優秀な人材について「若い世代からしか生まれない」→「若い世代は安い賃金で買い叩ける」→「イノベーションは若い世代にはした金を渡しておけば生み出せる」という誤ったクソ理論を作り上げた奴らの脳味噌に、今すぐ手術を施し、その身を呈してイノベーションの礎となっていただきたい所存でございますよ。
 
 というかですね、才能があって技術もあるけど金に困ってる人材なんて、年齢問わずどこにもいるんです。例えばいわゆるポスドクの奴らなんか、足の裏の米粒とか揶揄される博士号という資格を苦労して取った優秀な人材のはずなのに、手取り20万、年収300万とかで働かされてたりするんですよ。もしくはフリーランスのプログラマで腕は立つんだけど営業が下手で仕事が取れなくて食いっぱぐれてるような奴とか、そういう腕はいいけどくすぶってる奴らに仕事をやるのが、正しい公共事業のやり方じゃないんですかね。
 
 おそらく政権が変わっても予算だかを計上する都合上、今年度も残念ながらこのような超絶ブラック案件となってしまったのでしょうが、新政権様もクールジャパンだなんだといってアイドル稼業のプロデューサーに1億PONとやるくらいに金を余らせてるなら、今すぐこの哀れな業界団体へと1億くれてやり、10人くらいの頭のイカれたプログラマを1000万でまとめて雇って何か作らせた方がよっぽどクールなイノベーションが起こるんじゃないかと、私のような凡人プログラマなどは思うのですけれどね。

■結論

 というわけで新政権でも今後のIT業界的には期待はできそうにないので、私としては国内ネットサービス界隈トップをひた走り、金をジャブジャブさせまくっているミク◯ィさんに、グローバルなIT社会において時代のリーダーシップを取れるような優れた人材を育成し、日本の情報技術者の未来を切り開くための新たなプラットフォームを、ゴミ溜めの中から早急に立ち上げてくださることを切に願う次第であります。
 

 参考資料:
  とある科学の超電磁砲S
  やまもといちろうBLOG(ブログ)


  

 ※今回のコラムは内容的に速報性を重視したため、リスペクト元文章の独特な「良さ」を充分に読解し、文体を模倣することが充分にできなかったと認識しております。著者様や著者のファンの方、ご覧いただいた方におきましても、不満を覚えることはご多分にあるかと思いますが、その面におきましては何卒、ご容赦いただければ幸いです。※

これから新しいエンジニアライフを送るあなたに贈りたい「能美クドリャフカ」の言葉

2013/04/09 16:17:03

 SPOFが辛いから ふたつの系をつないだ
 ふたつじゃ危いから HAになってクラスタ組んだ
 きっとそれが幾千の TPSにもなり
 どんなバッチも 終える気がするんだ

■ごあいさつ

 ドーモ、わりと簡単に海の色とかに染まっちゃう方、terukizmです。なんだかひどくご無沙汰していたような、いないような……。

 まあそんなどうでもいいことより、アニメ「リトルバスターズ!」ですよねー! 本当に、いい最終回でしたねー(棒) 良かったーねーとー!(白目)
 
 特に感動したのが、題名の女の子……。そう、「能美クドリャフカ」さんのエピソード!

 北欧の小国フィンランド出身で、常にカヤンデル・モデルの冬季迷彩ポンチョを身にまとい、血に飢えた二匹の猟犬(ベルカ&ストレルカ)を引き連れた、小柄ながらも生粋の狙撃手である彼女らしい、とても印象的なおはなしでしたねー。でしたよねー。

 ……

 はい。いつものようにご存じない方向けに、ごく簡単に説明いたしますと……

 ――舞台は、有人宇宙飛行ロケットの打ち上げ失敗を機に激化した民族対立により、事実上の内戦状態と化した南半球の元共産主義国家・テヴア共和国。

 国家戒厳令が敷かれ、海の孤島と化したその島へ、宇宙飛行士であり生死不明となった母の安否を確かめるため、単身潜入を決意するヒロイン、能美クドリャフカ。だが、決死の抵抗も虚しく、彼女は反政府組織の魔の手に囚われてしまう。

 しかし、処刑される寸前の彼女を助けるために現れたのは、ともに厳しい日々の訓練に明け暮れた、かつての仲間たち。そう、9名の少年少女たちで構成された特殊部隊「Little Busters」だった――!!(以下、「ぼくのかんがえた、さいきょうのりとばす」)

……

 はい。おくすり、ですよね。

 わかります。はい。

 はい。すみません。のみます。はい。

■Two ~新しい季節へ~

 そんな感じで、うららかな日差しと暖かな陽気に春らんまんな今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 4月から新たな環境で、新たな生活……。そう、新しい「エンジニアライフ」が始まった、なんていう方も多いのではないでしょうか。世間的には、新入社員とか人事異動とか転職とか、そういう時期ですもんね。たしか。

 今回はそんな、新しい環境へおもむく方々へと贈りたい言葉。「能美クドリャフカ」さんが、お母様から贈られたこの言葉を、ぜひ紹介させていただきたいとおもいます。それは……

 

『良き世界の歯車になりなさい』


■娘に動物実験で殺された犬の名をつける母

 最初にこの発言を聞いたとき僕は、

「Урааааа!! さすが旧共産圏の女! 献身的愛国主義! 社会的人民英雄! 模範的母性勇士! ソビエトロシアではプログラムがあなたを書く!! かしこい! かわいい! クドリャフカ!!」

 という感じにテンション上がってしまい、インターナショナルを歌いながらコサックダンスを踊り、廃業の危機を救うためにコラムテロリストとしてCCCPデビューしてソウカツおじさんになってしまいそうになったのですが、9人集めて薬用石鹸になっても正直野球とかよくわからないのでやめました。

 ……

 あ、大丈夫です。僕こういうの、ほんと、いつもなんで。はい。あんまり気にしないでいただきたいのですが、やりすぎるとヘンシュウ=サンにナルコレプられ、僕の世界が唐突に切り離されて気がつくとベッドの上だったりしてスゴイ・コワイ! ので、話を戻しますね。はい。
 
 というか、そもそも『良き歯車』って、なんですかね?
 
 この業界「車輪の再発明」なんてメタファーがあったり、「コーディング」が「製造工程」なんて言われるくらい、まあいろんなところでインダストリアルでファクトライズドなわけですが(特にメーカー系SI屋さんで顕著)、それ以前になんだかんだ言いつつ、大部分のエンジニアはいわゆる「社会の歯車」なわけですよ。僕とかも含めて。
 
 そう、資本主義の犬であり、悲しき賃金労働者なわけですよ。エンジニアとはすなわち、現代の蟹工船である開発室に押し込められ、虐げられ搾取される哀れなプロレタリアートなわけですよ! これはもはや革命しかない!! 立ち上がるのだ同志諸君よ!! 腐りきった資本主義体制を打倒し!! 人民の人民による、人民のための真に平等かつ純粋な……!!
 
  →プシュー(注射音)
 
 ……というわけで、僕のスペシャリストな社会の歯車経験を踏まえつつ、『良き歯車としてのエンジニアライフ』について、お話ししたいと思います。

 
■to be Good Gear
 
 僕も経歴上、わりといろんなところをコロコロ転がった系社会の歯車なんで、その経験に基づいて『良き歯車』としての条件を挙げてみましょう。


 ○性能を発揮すること

 要は『結果』が出せることですよね。まあ一応お仕事としてお金もらって働く以上、それなりに結果を出さないことには仕方ないです。ただ要求される性能は環境によって結構違うので、その辺は「いろんな場所がある」ということは、あらかじめ知っておくとよいかもしれません。

 ○適合していること

 『歯車』は大抵ひとつでは動きません。他のチェーンやら歯車やらと連携し、ひとつの機能を実現するものです。エンジニアもそういうものではないでしょうか。「周りと連携してうまくやっていく」というのは、この業界苦手とする方も多いですが、現実的には必要不可欠な能力です。要は「世渡りはうまいほうがいい」ってことですかね。世知辛いね。
 
 ○安定していること

 いくら良い仕事をする『歯車』でも、すぐ摩耗して擦り切れてしまうようでは、長期間の安定稼働は見込めません。常にフルスロットルでぶん回すだけじゃなく、メリハリをつけてうまく手を抜いたりできるかどうかや、うまく肉体的、精神的なメンテナンスができるかどうかは、結構重要だと思います。


 ……とまあ、こんな感じですかね。 
 
 ただ、気をつけていただきたいのは、上記の判断基準はすべて「求められる場所によって異なる」ということです。極端な例えをすれば、「故障が多いパンター戦車の減速ギアを、性能や信頼性に定評のあるスーパーカブのギアと交換した」として、そんなのどう考えても、動くわけないじゃないですか。温厚な秋山殿でもムカ着火ファイヤー、カム着火インフェルノですよ。

 そう、『歯車』だって『良い』性能を出すためには、『歯車』それぞれに、適した場所や、適した使い道があるわけです。『歯車』だって歯数やらピッチ円やらいろんな『個性』があるんですから、人間だってそりゃそうでしょう。

 ちょっと前に「置かれた場所で咲け」的な本がベストセラーになったのも記憶に新しいですが、もちろん『歯車』の側にも、場所に合わせる努力は大事だと思います。ですが、根本的に「合わない」なあと思ったら、諦めるのもひとつの手段なんじゃないかと、個人的には思うのです。

■まとめ

 そんなわけであなたも、もしかしたら「能美クドリャフカ」さんのように、新しい職場では「とんちんかんなおもしろ新人」扱いされたりするかもしれません。

 ですが、あまり気にしないでほしいのです。――悪気は、ないのです。みなさん誰だって、珍しくてとんちんかんなものを見つけたら、話のネタにしたくなるものです。そういう、ものです。
 
 それでもいいじゃないですか。劇中でも主人公でありながら、鯛焼きを食い逃げしそうなヒロイン声をした少年が言います。「クドはクドらしい歯車になればいいんだ!」と。

 そう、あなたは、あなたらしくていいのです。あなたは、あなたらしい、組織の歯車になればいいんですよ。そんな感じで、きっと、ずっと、がんばるのです! Wahoo!!
 
 そして最後に願わくば、これからあなたが身を投じる環境が、あなたにとっての新しい「わたしの居場所」とならんことを。

 これからはじまる希望という名の未来とか、やがて来る過酷も乗り越えられると信じさせてくれるような、あなたの新しい環境が、あなたにとっての「チーム・リトルバスターズ!」になることを祈りつつ、結びの言葉へと代えさせていただきたく存じます。御読了ありがとうございました。
 

■結論

 ですが、僕は二木佳奈多さんが好きです。

 

参考文献:
 リトルバスターズ!

戦車道の軍神「西住殿」に学ぶ、人心掌握術と士気マネジメント(下)

2013/01/16 12:11:34

(前編はこちら

■エンジニアと士気

 まず、「士気」という単語の定義について、確認していきましょう。

士気(しき、英: morale)は、一般に部隊の任務を遂行する上で有用な兵員の心理的な積極性や耐久性を指す。 その他、軍事関係以外にも集団組織行動全般での関係者の行動意欲に関わる心理的高揚のバロメーターを表す。   ――引用: 士気 - Wikipedia

 この文章をITエンジニアのお仕事に置き換えてみると、プロジェクトの仕事を遂行する上で有効な、人員の心理的な積極性」となります。これは感覚的にも、非常に理解しやすい解釈といえるのではないでしょうか。

 では、具体例を挙げていきましょう。「士気の高い」プロジェクトでは、以下のような特徴が見られます。

・生産性が高い(労働時間に対し、成果物の質および量が優れている)
・積極的にリスク要因を除去するように行動する
・自分の担当範囲から多少それている仕事でも拾いにいく
・チームメンバーのフォローに対し積極的
・新しい技術を導入するなどの変化に対し、柔軟かつ積極的に対応できる
・建設的な意見交換、話し合いが多い(改善策が伴う)

 逆に、「士気の低い」プロジェクトの典型は、以下になります。こっちはよく見かけますね。

・生産性が低い(成果物の質および量に対し、労働時間が無駄に長い)
・リスク要因は見なかったことにする(仕事を増やしたくないので)
・自分の担当範囲以外は動かない(仕事を増やしたくないので)
・チームメンバーのフォローに対し消極的(仕事を増やしたくないので)
・新しい技術を導入するなどの変化に対し消極的(仕事を増やしたくないので)
・愚痴が多い(改善策が伴わない)

 「士気の高い」プロジェクトの方が、うまく仕事が回りそうなのは、一目瞭然ですね。

 ではなぜ、このような「士気の低い」プロジェクトが発生してしまうのでしょう? そして「士気の高い」プロジェクトに変化させるためには、指揮官は何をすればよいのでしょうか?

■死んでから休めばいい 君は自分のPCを取ってこい

 この「士気」の重要性を理解していた指揮官である「西住殿」の場合、「指揮官自らによる、大胆な士気回復作戦」により、チームメンバーの士気を高揚させることに成功し、状況を一転させました。

 ですが、同様にIT系のプロジェクトにおいても、指揮官が乾坤一擲(けんこんいってき)の逆転策によって「プロジェクトの士気」を高揚させることは、可能なのでしょうか? 実際に現場で「士気高揚策」として行われているものは、代表的には以下のようなものでしょう。

・飲みニケーション
・朝会、スタンドアップミーティングなどの毎日のプチ会議
・ランチミーティング
・社内勉強会
・進ちょく会議(これは微妙?)

 僕はこれらの手法は、部分的に効果があるとは思いますが、全面的に有効だとは思いません。

 個別に見ていくと、そもそも飲み会とか苦手な人もいますし、毎日のプチ会議は集中が切られるからという理由で嫌いな人もいます。昼飯くらい「俺は孤独に、幸福に空腹を満たしたいんだ!」という価値観の人もいるでしょうし、社内勉強会とかは結局「意識の高い」人の集まりになりがち。

 中でも最悪なのが進ちょく会議で、これ正直懲罰委員会とほぼ同義語ですよね。士気を上げるというよりは督戦(敗走を防ぐため味方を撃つこと)に近い。「進ちょくは遅れています」が「私は敗北主義者です」みたいな扱いになる光景とか見せられると、モチベーション上がる人とかいないと思うんですけどね。まあ、いろいろ政治的な事情とかもあって、仕方ないんでしょうけど。

 で、結論としては、「万能的な士気高揚策とか、正直ない」ってことだと思うんですよ。というかそもそも「やる気出せ」「モチベーション上げろ」って言われて、やる気とかモチベーションとか、バーッと湧いて出たりするもんですかね? 少なくとも僕は出ないです。

■士気をマネジメントする

 では一体、この「士気の高い」チームを作りあげるには、どうしたらいいのでしょう?

 この問いに対する僕なりの答えは、「士気を上げるのではなく、下げない」ということだと思います。点数を稼ぐのではなく、ミスをしないこと。加点法ではなく、減点法。最近読んだ小説の例えを借りるなら、まさに「パーゴルフのようなもの」ですね。

 まあ僕も実はゴルフやったことないんでよく分からないんですけど、要は「モチベーションを上げさせるのではなく、モチベーションを下げさせない」。この発想の転換が大事だと思います。

 結論としては、Wikipediaの「士気」の項目にあるように、

◯快適な労働環境を提供する
 ・過度な時間外労働をさせず、心身の健康が保てるよう配慮する
 ・可能な範囲において、食事や休息、睡眠、衣服などを自由裁量とする
 ・プロジェクトの成果になる前提で、個人の意思や判断、価値観、発言を尊重する
 ・プロジェクトに必要十分な機材や環境を、迅速に配備する

 そして、指揮官は指揮官らしく、

◯適切なリーダーシップを示す
 ・プロジェクトの目標を明確にする
 ・十分に実現可能なマイルストーンを示す
 ・不要もしくは必要性の低い、作業や会議、無駄な仕事をなくす
 ・機会を見つけた場合、適切な教育や訓練を施す
 ・「信賞必罰」を適切に運用する

 組織としては、

◯集団態度を強化する
 ・強要にならない範囲で、チームへの帰属意識を高める
 ・仲間が助けてくれる、また仲間を助けられる、という信頼関係を醸成する
 ・自らのチームは優秀であり、所属していることが誇りであるという認識を広める
 
 この辺りのポイントをきちんと踏まえてプロジェクトを運用することで、士気が下がるのを防ぎ、マイルストーンを達成していくうちに徐々に、士気が高まっていくのではないかと思います。

 まあ最後の「組織」の項目については、プロパー外注入り乱れる実際の現場では正直難しいと思いますし、1つ間違えるとなんかヤバいブラック企業みたくなっちゃうので、現実的にはかなり難しいかなーと思いますが、フルメタル・ジャケットのハートマン軍曹のところとか見ながら参考にしていただければと。

 ああいう感じで所属組織に対する忠誠を作り出す手法も、高い士気を保つための1つの方法ではあるんでしょうね、多分。特殊部隊とかもそんな感じなんだと思います。まあ、ご参考まで。

■おわりに
 
 ……というわけで、いま僕は士気を回復するために、聖地・大洗にいます。

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 あんこう鍋、すごく美味しいです。というかこのご馳走の量!「帰ったら仕事探さなきゃ……」とか、正直忘れたくなります。

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 海の前にある大洗磯前神社もとても綺麗で、とても神々しい雰囲気。

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 荘厳だなー。

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 皆さんも「最近ちょっと士気下がってるなあ」と思ったら、聖地巡礼してみてはいかがでしょうか。気分がリフレッシュされると思いますよ。オススメなのです。

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 あああん あああん あんあんあんー♪

 

参考資料:
 ガールズ&パンツァー
 割烹旅館 肴屋本店 聖地巡礼◆名物あんこう鍋にパンツァーフォー★一人旅(お世話になりました)
 黒騎士物語ほか、小林源文一等自営業閣下の各種作品

戦車道の軍神「西住殿」に学ぶ、人心掌握術と士気マネジメント(上)

2013/01/15 15:25:17

■新年のご挨拶

 あけましておめでとうございます。terukizm(身長 - 175cm / 誕生日 - 2月12日 / 血液型 - B / クラス - Web系サーバサイド寄りエンジニア / 好きな戦車 - Strv.103(Объект 279も気になる存在) / 好きな花 - アヤメ / 出身 - 神奈川県藤沢市)です。本年も何とぞ、よろしくお願い申し上げます。

 さて、日々「ITエンジニア道」を精進されている皆々さま方におかれましては、年末年始、良いお年を迎えられたり、迎えられなかったりされたことと思います。後者の方は、まっことご愁傷さまです。

 僕の年末年始ですが、某WW2戦車ゲーにどっぷりハマっておりまして、乙女の嗜みとして「えんたーえんたーみっそーん ヒヤッホォォォウ! 最高だぜぇぇぇぇ!!」と叫びつつ戦車道を精進していたのですが、37mmではチャーチルの背面装甲すら抜けないのに絶望して、3日でやめたりしました。

■よし! 教育してやるか

 まあそんなことは正直どうでもいいので、本題に入りたいと思います。先日、とても素晴らしい総集編で地上波放映終了となりましたアニメ「ガールズ&パンツァー」は、皆さまごらんになりましたでしょうか?

 僕の翼下ハードポイントに装備されたフェーズドアレイ多目的レーダーによると「エンジニアの5割はアニヲタ、あと3割はミリヲタ」であり、あわせて8割のエンジニアがWVR(目視内射程)に収められているという、素晴らしくエンジニア向けのアニメでございます。(超ゆで理論)

 また茨城県にも多大な貢献を果たしたということで、大洗町が旧ツァリーツィンよろしく「ガルパン町」に改名される日も近いという話もあるとかないとかで、あえて説明する必要もないかと思うのですが、簡単にご説明いたしますと、

 「女子高生が『戦車道』という、戦車を使った、武道をする話」です。

 めんどくさいので詳細は省きますが、そういう話です。よしなにご理解ください。

■情け無用、ファイヤー

 「で、それエンジニアとなんか関係あんの???」と思われるのはまことにごもっともです。しかし、僕はエンジニアとして、主人公であり部隊を率いるチームリーダー、軍神こと「西住殿」のセリフに、非常に感銘を受けました。そのような次第で、今回それをご紹介させていただきたいと思ったわけであります。
 
 まずは状況説明から入りましょう。「圧倒的に質および量で優越した敵部隊を相手に、当初定めていた慎重策を捨て、チームメンバーが支持している、危険度の高い積極攻勢策を採用した」という場面です。指揮官が当初定めた方針(なお軍事用語ではこれを『決心』といいます)を転換するのは通常、好ましいことではありません。

 劇中でもこの方針転換によって、敵のわなにまんまとハマってしまいます。ですが、指揮官である「西住殿」はこの方針転換の理由について問われた時、こう答えたのです。

「人間は機械じゃないから、簡単にスイッチを入れたり、切ったりはできないの。  みんなの士気を下げたくなかった……」  ――引用: 「ガールズ&パンツァー」第10.5話「紹介します 2!」

 正直、16歳の女子高生とは思えない発言ですよね。『風が語りかけます。深い、深すぎる! 鉄十字くんしょう――』という埼玉ローカル風のナレーションが流れ、思わず脳内の秋山殿と、

 「さすが西住殿であります! 至言ですよね! 至言!」『川西 N1K1-J?』「それは、紫電であります!」『SAAB 37?』「それは、ビゲンであります!!」『ftp.riken.jp?』「それは、理研であります! NetInstallでは毎々お世話になっております!!」『ふふふ……まったく秋山殿はモフモフ可愛いなあ……』

 という感じでキャッキャウフフしながら僕が投げた対戦車地雷を尻尾を振りながら拾ってくる秋山殿にほーらほらいい子だねぇーペデグリィチャムあげようねえーかわいいねえーモフモフだねえーお散歩帰ったらブラッシングしてフカフカ毛並みをキレイキレイしようねえーモフモフしようねえー

 ――御薬服用中――
 
 ……はい。すみません。だいじょぶです。……はい。だいじょぶです。はい。

■畜生、魔女のバアさんの呪いだ

 話がそれましたが、この「西住殿」の発言の要旨をまとめると、以下二点になります。

・人間は機械じゃない
・士気を下げたくない

 これをエンジニア的な観点から見ていくと、どうなるでしょうか?

 まず、「人間は機械じゃない」という言葉。これについてはまったく否定しようのない、事実といえるでしょう。

 エンジニアという職業では、機械相手にお仕事してる時間が長くなるせいか、この「人間は機械じゃない」という認識が薄くなってしまっている人、なんかしばしばいらっしゃいますが、これは地味に大事なことなんじゃないかと思います。

 エンジニアは職業病といえるほど、客観的かつ論理的な評価を重視します。そして何事にも根拠が必要だと信じており、数値や論理的に正しい裏付けのない判断や、合理的でない行動を極度に嫌います。それはあたかも、機械であるかのように。

 だからといってエンジニアを機械のように扱って、はたして良いものでしょうか?

 「生産性」「マンアワー」といった単位で管理されるエンジニアは、時にコンピュータのように、タスクを処理して、成果物を生成することだけを求められがちです。個人的な好き嫌いだけで仕事を選べる立場の方は、なかなかいませんよね。

 ですが「人間は機械ではない」、つまり、「エンジニアは機械ではない」のです。

 エンジニアだって人間ですから、ささいなことで虫の居所が悪くてイライラしていたり、なんだか体調が悪かったり。あとプライベートなことで気持ちが落ち込んでたり、特に理由はないけど気分が乗らなかったり、ときにはミスをしたりと、まあいろんなことがあるわけですよ。――だって、人間だもの。みとぅを。

 特にエンジニアを束ねる立場にある人は、この「エンジニアも人間である」という事実を、是が非でも、忘れてほしくないなあと思います。「人をまとめる」のと「機械をまとめる」のは、根本的に違うんですよね。僕もときどき機械的思考に陥っちゃうことがよくあるので、これは自戒したいと思います。

 エンジニアは「成果物を作る機械」ではなく「ひとりの人間である」。これを念頭において接していくと、エンジニア側の反応も、多少は人間味あるものヘと変わってくるかもしれません。

■アドバンスド編

 あと、このように「人間だもの」と考えるようにすると、他人にも自分にも、ちょっとだけやさしくなれるんじゃないかと思います。

 仕事上で不条理なこととか、不愉快なことがあったりすると、いら立つ気持ちとか、ムカついてる自分への嫌悪感が出てきたりして、なんかグチャグチャっとした気持ちになることも、まあ、ありますよね。

 ですが、そういうときはひとつ深呼吸でもして、新しくコーヒーでも入れながら、イカの娘の写真とか眺めたりしましょう。そして、全部ひっくるめて、「人間だもの、仕方ないね」と思えば、ちょっとだけ、気持ちが楽になるんじゃないでしょうか。

 ここまでお読みくださりありがとうございます。後編では『エンジニアと士気』という観点から、引き続き、考察していきたいと思います。

後編へ続く

頭文字J ~コーディング最速理論編~ 神奈川エリア第3ラウンド保守運用 3rd Stage

2012/09/25 16:58:52

run wan way to now

bridge now and bridge here

give it me that power of the ride

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ギ ャ ア ア ア(アアア)
ギ ャ ア ア ア ア ッ(ワッ)

 「きついきつい‥ いっぱいいっぱいだ‥」

 「たいしたもんだぜ アキバのボウヤも‥ 運用保守とはいえ‥ ムラマサでオレのMBPにぴったりついてくるんだからな‥」

 「本当に楽しい‥ 久しぶりだ‥ こんな気分は‥ いくつになっても プログラマで‥ よかったと思う瞬間だぜ‥!!」

 「くっ‥!!」

 (何本目だっけ‥‥このコミット‥!? 何が何でも‥ くらいついていく‥!!)

----

 「保守運用で速いということは 躊躇なく既存コードへ手を加えられるということでもある‥」

 「どれだけコードを知っているかということが 重要な要素なんだ‥ コーディング最速理論も コードへの練達が基本だしな‥」

 「プロジェクトJの遠征でも事前に外部仕様書を読んだり 少しでも多くの情報をプログラマに提供し‥ 練習実装(プラクティス)を重視しているのはそのためだ‥」

 「それでも長い間作りこんでいる 古参のプログラマにはかなわない‥ 技術的に高いレベルのプログラマ同士の戦いになれば 最終的にはコードをよく知っていることが武器になる‥」

 「相手が相手だけに‥ 梶原にとっては とてつもない試練だ‥」

 「だけど アニキ‥ 梶原には特別なしぶとさがあるだろ‥?」

 「今までだって 明らかに格上の古参プログラマを相手に きびしいバトルをくぐり抜けてるんだ‥」

 「新規製造はともかく 保守運用についたときの梶原は 誰にも負けてない‥」

 「そう 保守運用で一番おそろしいプログラマは‥ 梶原なんだ!!」

 「オレもそう思いたいがな‥ しかし戦いの主導権は‥ どこまでいっても相手に握られている‥ 梶原にできるのは とにかく耐えることだけだ‥」

 「今は‥‥な!!」 

 「‥‥!?」

----


ゴ ア ア ア ッ(シャアアアッ)
ド ン (ズシャァァァッ)

 (いくらコンパイルやビルドで突き放しても コミット履歴でベッタリとくっついてくる‥ 敵ながらあっぱれと言うしかない 見事なコーディング技術だ‥!!)

 「だが ゴールまではあと チケット1つ!! 最後まできっちりと 仕事をさせてもらう!!」

 (あ‥ 最終チケット‥!?)

 (そうだ‥ 諒介さんの指示‥ 最後に‥)

 ハッ

 (そうか‥!!)

 「ここしか‥ ない!!」

----

could me be a say

true geek try way

follow me over around way

in ready for the fight

----

 (ムラマサのディスプレイが‥消えた‥!?)

 (まさか‥!?)

ギ ャ ア ア ア ア ッ

 「げえっ‥!!」

----

 どんなときでも慌てない冷静沈着な男が この時ばかりは 激しく動揺する

 無理もない 薄暗い開発室でのコーディング中 自らのソースを映している唯一の光源 ディスプレイを消すなど 常識ではありえない

 再び冷静さを取り戻すまでのわずかな隙間を‥ ディスプレイを消したままの ブラインドタイピングで達海が突いていく

 ここまで読んでしまっている諸君には いまさら説明の必要もないことと思うが 達海が用いたのは2つの得意技のダブル攻撃である

 起死回生のブラインドアタックと 一発逆転のプロセス落とし この2つを同時に繰り出したのだった

 さしもの国分拓哉もこれには意表を突かれてしまう

 しかし達海は あくまで並びかけたにすぎない

 テストを通し コミットを完了するまで‥ バトルの行方は 神のみぞ知る!!

----

 「すぐそこまで来ている‥!! 最終コミット 突っ込んでくるぞォ!!」


ギ ャ ア ア ア ア(グォン)
ガ ァ オ(グワッ)

 ブワアッッ

 「翼が授かっている‥‥ 後ろの白いノート‥‥」

 「えっ‥‥ ムラマサに? エナジードリンクは飲んでなかったわよ‥‥」

 「エナジードリンク‥‥? いや‥そういうのじゃなくて‥‥」

 (ボクには見えたんだ‥ Apacheみたいな‥ 赤い羽根だよ‥!!)

----

 「宗介 このソース どう思った?」

 「どうって‥ RDBMSにポスグレを使ってる以外は‥ 普通の3層Webアプリだったぜ‥ 業務システムの割には 妙にブッサク(物理削除)が多かったけど‥」

 ハッ

 「‥‥まさか‥‥!?」

 「そう‥」

 「MBP Retina唯一の弱点‥‥ それは専用SSDを直付けしていることに起因する ストレージの柔軟性の低さだ‥」

 「そして専用のサムスン製SSDは ランダムアクセスにウェイトが置かれている‥!!」

 「つまり!!」

 「ディスクシーケンシャルなら 勝ち目があるってことさ!!」

----

 2台のソースコードはもつれたまま タフでテクニカルな 最終テストシナリオへと突入していく!!

 ディスプレイを消灯したまま 精確なビルド・アンド・デプロイで warファイルを /webapps直下へ叩き込む達海!!

 MBPからワンテンポ遅れて テストコードをリリース!! 待っているのはこのコード唯一の 大量ログデータ削除バッチだ!!

 2台のオンラインバッチ処理はヨコ並びで 最終コミットへと飛び込んでいく!!

----

nothing is the beast

nuke and I love you

murder for you all forever

----

 「いっ‥‥けぇぇ――っ!!」

 「くっ‥‥そぉっ‥!!」


ズ ド ォ ォ (ヌルポッ)
ギ ャ オ ッ (ガッ)

 (まいったな‥ ごていねいに‥ この土壇場で AutoVacuumかよ‥)

 (ついてないときゃ‥ こんなもんか‥)

----

 勝敗は決し プロジェクトJの不敗神話に 新たな1ページが加わった

 PostgreSQLというRDBMSの特徴である Vacuumと呼ばれる不要領域の回収作業には 高負荷のディスクアクセスが伴う

 DELETE文やUPDATE文によりマークされた不要領域は通常 ディスク上にバラバラに配置されるが 今回改修のバッチプログラムの対象はログデータであったため 領域は非常に 連続性の高いものになった

 ゆえにディスクアクセスは ランダムではなく必然的に シーケンシャルアクセスに近いものとなる
 
 諒介はこれを見越して ムラマサの内部ストレージを 通常の高速化セオリーからは逸した HDD MK4007GALへと換装したのだ

 磁気ディスクの弱点であるシークタイムを最小化し さらにあえて小容量ドライブを選択することで プラッタ枚数を抑え シーケンシャルアクセスに特化した高速化を図る‥

 そう プロジェクトJで本当に恐ろしいのは 卓越した技量を誇る 2人のエースプログラマではない

 この男 小鳥遊諒介の頭脳なのだ!!

----

 ムラマサのWindows終了音が ひときわカン高く抜ける

 それは悲しげな木霊となって

 光の丘に反響し 夜の闇へ吸い込まれていった

 Jenkinsのおっさんは達海に微笑み

 二度と成立することのない 奇跡ともいえる保守運用バトルは

 記録に残る生産ステップ数とともに 幕を閉じた

 あとはただ 真夏の星空だけが 実装屋たちを見つめていた‥

参考資料:  頭文字D  どくそせん

BGM:  Don't Break Me Down(TOHO EUROBEAT VOL.1)

歌詞ヒアリング: by terukizm(TOEIC 400点)

※本コラムの内容は、実際の技術的検証に基づいたものではなく、また劇中マシンを利用した際の生産性を一切保証するものではありません。※

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