新米武装派フリーランスプログラマ男子(0x1d歳)

ジャヴァスクリプター #1「クロム・ルートマン・フォア・サファリィ・オペラ」

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【JAVASCRIPTER】

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 世界のすべてを焼き尽くした戦争から100年。世界統一という夢想を掲げた独裁者たちが1人、また1人とその野望を打ち砕かれていく中、皮肉にも世界は、電子的ネットワークという見えない鎖によって統一されようとしていた。

 形骸化した国家よりも権力を持ち、利益のみを追求し続ける企業によって暗黙のうちに行われる統制支配。そんなことを知ってか知らずか、ほとんどの人々は電子空間でのソーシャル・コミュニケーションに没頭することにより、現実から目を背けるようになっていた。

 ネオ・フカガワ。サイバー日本を影で操る真の支配者、コーシャと呼ばれる多目的複合通信事業者の本拠地だ。首都・アリアケから、リニア・モーター・エクスプレスであるリリィ・シーガル・トレインで1分。怒髪天を衝くようにそびえ立つのがここ、トヨス・スゴイタカイビルだ。

 時はウシミツ・アワー。200階建てのビル、その最上階の一室では、エスアイ・ヤーと呼ばれる超上流ウォータフォール企業に属するエリート、いわゆるカチグミ・エンジニアたちによるウタゲが行われている最中であった。

 「オットット! ミシマ=サンも一献いかがですか?」「オットット!! 仕事後のアカギュウ・カクテルは、実際たまりませんな! オットットット!!」

 ズバリ成分が大量混入された違法バリキ・ドリンクとバンザイ・ショウチュウのカクテルを、オイランOLにオシャクさせるという接待めいた光景を、ヨセギ・モンヨウが刻まれたヘッドアップ・ディスプレイの片隅に入れ、苦々しい面持ちでせわしなく、レーザー・ビジョン・キーボードを叩いているのはマゴウケ・プログラマたちだ。

 「アバーッ!!」奇声をあげ、プログラマのひとりが倒れた。無理もない。彼は50時間以上もの長い間、休みなくシーエスブイ・ビッグデータのモクシ・ツキアワセ・チェックを行なっていたのだ。大量にインプットされる情報データに、バイオマティック脳のニューロンCPUが耐え切れなかったのだろう。ナムサン!!

 だが、彼らマケグミ・エンジニアにサブロク・リーガルが適用されることはない。それは長きに渡って日本を構成し続けている、ブシドーと呼ばれるカクサ・ストラクチャーによるものだ。彼らモーレツ・サラリマンの屍の山によって、日本は敗戦から数々に渡る経済危機を乗り越え、常にミギカタアッパーの成長を続けてきたのだ。

 「ドーモ、ナツメ=サン。フジモトです」気味の悪い笑顔とオジギとともに、プロバー・シャインが話しかけてくる。ナツメはコーディングの集中ステート・フローを妨げられ内心スッゾコラー!!だったが、もちろんそんな態度はオクビィにも出さぬ。

 そんなことをしたら間違いなくムラハチ――陰湿な社会的リンチ行為――である。サラリマンのハシクレたるもの、ムラハチだけは避けなければならない。仕方なく、ナツメも起立して正々堂々たるオジギを返した。

 「ドーモ、フジモト=サン。ナツメです」「ドーモ、ドーモ。実はご相談したいシヨウ・チェンジがありまして……」そう言いながらフジモトは、ナツメの手に棒状の物体を握らせてきた。シルクプラスティックのエレガントなフロシキ・パッケージに包まれたこれは……合法ウマイ・バー!

 合法ウマイ・バーは1本で一般庶民の月収にも相当する、超高級品だ。特にタコヤキ・テイストは人気が高く、ヤタイ・ショップに出回っているのは専らウエキバチなどで違法栽培されたものである。思わぬアンダ・ソデにナツメはゴクリ、とキツバを飲み込む。

 そしてフジモトはささやきめいたウィスパー・ボイスでナツメに耳打ちした。ナツメの目が大きく見開かれた。「フジモト=サン! それはコンプラ・イリーガルですよ!!」

 「なあにナツメ=サン。あなたが他言しなければ、問題になりません」「しかし……」「あなたもイチヒメ・ニタロウを抱える身……実際お困りなのではありませんか?」「…………」

 正にスゴイ・ズボシだった。もしこの仕事を断れば、ナツメはケイヤク・カイジョされてしまうだろう。さすれば、彼とその家族はダンチ・アパルトメントからも追い出され、実際路頭に迷うだろう。しかし……彼のプログラマとしての良心は、それを拒んでいた。

 「なあに、このようなことはチャメシ・インシデント。社内マッポ部門にも手は回してある。問題ありませんよ」――ああ、すでにナツメの手に選択のノリシロはないのだ。魂と信念がトーフめいて潰されていき、崩れ落ちるようにオジギをするナツメ。ニヤリ……と笑みを浮かべるフジモト。

 もちろん、用が済めばナツメはヤクザ天狗にシマツさせる手はずである。それが彼らプロバー・シャインの陰湿めいたヤリクチなのだ。ナムアミダブツ! しかし、カーボン・バンブーで覆われたフリーアクセスタタミに、投擲された数十枚ものシヨーソが、突如として突き刺さった!!

 「クセモノ!?」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」ボンボリLCDライトが7色に点滅する開発室の中を、ファイアバグズ・コードインスペクタ・デバッガが一閃する。「サヨナラ!!」と叫びフジモトは爆発四散した。

 前方伸身宙返りでメイシ・ロックの扉を蹴破り飛び込んできたのは、「邪破」「巣食」と彫られた鋼鉄シッコロに#000よりも黒く、#F00よりも紅いシノビー装束を身に纏った人影。彼は、背筋をピンと伸ばした姿勢でコタツシステムデスクの上に着地し、不動明王じみた姿勢を取ると、殺気に満ちた吐息を漏らした。

 「ドーモ、ミシマ=サン。ジャヴァスクリプターです」

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→ネクスト・トゥ・ザ・スクリプト……

参考文献: ニンジャスレイヤー

Comment(4)

コメント

nanasi

ぶっとんでるぜ。

dekosuke

ブッダシット!

ヨタモノ

アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!

tom

そういや、本家に
>死せるマグロ目のエスイー(原注:サラリマンの一種でタイピング肉体労働を担当する)
が出てきて、ITドカタヘッズが爆発四散してたな

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