新米武装派フリーランスプログラマ男子(0x1d歳)

戦車道の軍神「西住殿」に学ぶ、人心掌握術と士気マネジメント(下)

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(前編はこちら

■エンジニアと士気

 まず、「士気」という単語の定義について、確認していきましょう。

士気(しき、英: morale)は、一般に部隊の任務を遂行する上で有用な兵員の心理的な積極性や耐久性を指す。 その他、軍事関係以外にも集団組織行動全般での関係者の行動意欲に関わる心理的高揚のバロメーターを表す。   ――引用: 士気 - Wikipedia

 この文章をITエンジニアのお仕事に置き換えてみると、プロジェクトの仕事を遂行する上で有効な、人員の心理的な積極性」となります。これは感覚的にも、非常に理解しやすい解釈といえるのではないでしょうか。

 では、具体例を挙げていきましょう。「士気の高い」プロジェクトでは、以下のような特徴が見られます。

・生産性が高い(労働時間に対し、成果物の質および量が優れている)
・積極的にリスク要因を除去するように行動する
・自分の担当範囲から多少それている仕事でも拾いにいく
・チームメンバーのフォローに対し積極的
・新しい技術を導入するなどの変化に対し、柔軟かつ積極的に対応できる
・建設的な意見交換、話し合いが多い(改善策が伴う)

 逆に、「士気の低い」プロジェクトの典型は、以下になります。こっちはよく見かけますね。

・生産性が低い(成果物の質および量に対し、労働時間が無駄に長い)
・リスク要因は見なかったことにする(仕事を増やしたくないので)
・自分の担当範囲以外は動かない(仕事を増やしたくないので)
・チームメンバーのフォローに対し消極的(仕事を増やしたくないので)
・新しい技術を導入するなどの変化に対し消極的(仕事を増やしたくないので)
・愚痴が多い(改善策が伴わない)

 「士気の高い」プロジェクトの方が、うまく仕事が回りそうなのは、一目瞭然ですね。

 ではなぜ、このような「士気の低い」プロジェクトが発生してしまうのでしょう? そして「士気の高い」プロジェクトに変化させるためには、指揮官は何をすればよいのでしょうか?

■死んでから休めばいい 君は自分のPCを取ってこい

 この「士気」の重要性を理解していた指揮官である「西住殿」の場合、「指揮官自らによる、大胆な士気回復作戦」により、チームメンバーの士気を高揚させることに成功し、状況を一転させました。

 ですが、同様にIT系のプロジェクトにおいても、指揮官が乾坤一擲(けんこんいってき)の逆転策によって「プロジェクトの士気」を高揚させることは、可能なのでしょうか? 実際に現場で「士気高揚策」として行われているものは、代表的には以下のようなものでしょう。

・飲みニケーション
・朝会、スタンドアップミーティングなどの毎日のプチ会議
・ランチミーティング
・社内勉強会
・進ちょく会議(これは微妙?)

 僕はこれらの手法は、部分的に効果があるとは思いますが、全面的に有効だとは思いません。

 個別に見ていくと、そもそも飲み会とか苦手な人もいますし、毎日のプチ会議は集中が切られるからという理由で嫌いな人もいます。昼飯くらい「俺は孤独に、幸福に空腹を満たしたいんだ!」という価値観の人もいるでしょうし、社内勉強会とかは結局「意識の高い」人の集まりになりがち。

 中でも最悪なのが進ちょく会議で、これ正直懲罰委員会とほぼ同義語ですよね。士気を上げるというよりは督戦(敗走を防ぐため味方を撃つこと)に近い。「進ちょくは遅れています」が「私は敗北主義者です」みたいな扱いになる光景とか見せられると、モチベーション上がる人とかいないと思うんですけどね。まあ、いろいろ政治的な事情とかもあって、仕方ないんでしょうけど。

 で、結論としては、「万能的な士気高揚策とか、正直ない」ってことだと思うんですよ。というかそもそも「やる気出せ」「モチベーション上げろ」って言われて、やる気とかモチベーションとか、バーッと湧いて出たりするもんですかね? 少なくとも僕は出ないです。

■士気をマネジメントする

 では一体、この「士気の高い」チームを作りあげるには、どうしたらいいのでしょう?

 この問いに対する僕なりの答えは、「士気を上げるのではなく、下げない」ということだと思います。点数を稼ぐのではなく、ミスをしないこと。加点法ではなく、減点法。最近読んだ小説の例えを借りるなら、まさに「パーゴルフのようなもの」ですね。

 まあ僕も実はゴルフやったことないんでよく分からないんですけど、要は「モチベーションを上げさせるのではなく、モチベーションを下げさせない」。この発想の転換が大事だと思います。

 結論としては、Wikipediaの「士気」の項目にあるように、

◯快適な労働環境を提供する
 ・過度な時間外労働をさせず、心身の健康が保てるよう配慮する
 ・可能な範囲において、食事や休息、睡眠、衣服などを自由裁量とする
 ・プロジェクトの成果になる前提で、個人の意思や判断、価値観、発言を尊重する
 ・プロジェクトに必要十分な機材や環境を、迅速に配備する

 そして、指揮官は指揮官らしく、

◯適切なリーダーシップを示す
 ・プロジェクトの目標を明確にする
 ・十分に実現可能なマイルストーンを示す
 ・不要もしくは必要性の低い、作業や会議、無駄な仕事をなくす
 ・機会を見つけた場合、適切な教育や訓練を施す
 ・「信賞必罰」を適切に運用する

 組織としては、

◯集団態度を強化する
 ・強要にならない範囲で、チームへの帰属意識を高める
 ・仲間が助けてくれる、また仲間を助けられる、という信頼関係を醸成する
 ・自らのチームは優秀であり、所属していることが誇りであるという認識を広める
 
 この辺りのポイントをきちんと踏まえてプロジェクトを運用することで、士気が下がるのを防ぎ、マイルストーンを達成していくうちに徐々に、士気が高まっていくのではないかと思います。

 まあ最後の「組織」の項目については、プロパー外注入り乱れる実際の現場では正直難しいと思いますし、1つ間違えるとなんかヤバいブラック企業みたくなっちゃうので、現実的にはかなり難しいかなーと思いますが、フルメタル・ジャケットのハートマン軍曹のところとか見ながら参考にしていただければと。

 ああいう感じで所属組織に対する忠誠を作り出す手法も、高い士気を保つための1つの方法ではあるんでしょうね、多分。特殊部隊とかもそんな感じなんだと思います。まあ、ご参考まで。

■おわりに
 
 ……というわけで、いま僕は士気を回復するために、聖地・大洗にいます。

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 あんこう鍋、すごく美味しいです。というかこのご馳走の量!「帰ったら仕事探さなきゃ……」とか、正直忘れたくなります。

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 海の前にある大洗磯前神社もとても綺麗で、とても神々しい雰囲気。

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 荘厳だなー。

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 皆さんも「最近ちょっと士気下がってるなあ」と思ったら、聖地巡礼してみてはいかがでしょうか。気分がリフレッシュされると思いますよ。オススメなのです。

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 あああん あああん あんあんあんー♪

 

参考資料:
 ガールズ&パンツァー
 割烹旅館 肴屋本店 聖地巡礼◆名物あんこう鍋にパンツァーフォー★一人旅(お世話になりました)
 黒騎士物語ほか、小林源文一等自営業閣下の各種作品

Comment(2)

コメント

レモンT

一度でいいから『お前達はもう十分に義務を果たした。破綻したプロジェクトのために死ぬべきではない。新しいプロジェクトの為に生きろ!!』とか言ってくれるPMに出会ってみたいものです……。

terukizm

多分それ、最後に年老いた取締役の父親に墓の前でCD-R納品して終わりますよね…

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