「人と組織」という切り口で、経営と現場の課題解決についてカレンコンサルティングが分かりやすくお伝えしていきます。

問題発見と問題解決のプロセス (3):「それって問題ですか?」

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数回に分けて皆さんにお伝えしている『問題発見と問題解決のプロセス』の第3回です。
「第2回:やめようモグラ叩き、目指せ深海魚!」では、浅はかな考えではなく(モグラ叩き=対処療法)、深く原因を考えよう(深海魚を目指す=根本的解決)ということを述べた。今回は「問題の定義」をきちんと行わないと、どうでもいいことの問題解決を考える無駄・無意味さと、定義を誤ると原因として考えるべきポイントがまったく異なるということを知ろう。

筆者がダメ出しをしたアホコン(アホなコンサルタント)

「第1回:思考力ゼロ人材の生産」において、「新入社員が数時間で100個の問題発見と問題解決を行った」と得意気に語るカイゼンコンサルタント A氏の話をした。出てきた解決策が「頭を使わなくても解決できるような代物ばかりだったこと」と、それを"ヨシ"とするA氏のやり方が、考えることができない人材を育てていると感じたからだ。また、「指導」や「教える(おおよそたいした内容ではない)」ということは、常に「答えを教えている」ことに他ならず、自ら「学ぶ」という大切なことの障壁となるので、これを筆者は「思考力ゼロ人材の生産」と述べた。

このようなコンサルタントのことを、筆者は「アホコン(アホなコンサルタント)」と呼んでいる。
特に、5SやTPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)に代表される現場系業務改善に取組む製造業コンサルティングにおいては、総じてアホコン比率が高い。

何年か前に、先のカイゼンコンサルタント:アホコンA氏とは別人だが、同様のコンサルティングをしているB氏に思いっきりダメ出しをしたことがある。そのアホコンB氏は筆者に対して、「この会社は僕が10年"指導"をしていて、今期も"指導"することになった」と、誇らしげに語ったのだ。"指導"という筆者の大嫌いな言葉を使ったことも気に障ったが、筆者はこう言い返した。「10年も11年もコンサルをしているなんてずいぶんと長いですね。でも、言っちゃなんですけど、こんなに長期間にわたりコンサルティングを必要とすることがおかしいですね? その理由は2つ。1つはクライアントが思いっきり出来が悪いこと。もう1つは、あなたの指導方法が間違っているから人が育たないからだ。後者が真の理由だ」と。

どんなに出来が悪くとも、10年以上指導されていれば人や組織も成長するはずだ。いつまでもコンサルティングを必要とするとは考えにくい。したがって、筆者は2つ目の「指導方法が間違っている」ということが結論だ。誇らしげに言うべきものではなく、「指導のやり方がヘタクソだから、いつまで経ってもクライアントが独り立ちできない」と自らのアホさを暴露しているようなものだ。アホコンB氏も、さすがに筆者のダメ出しには腹が立ったようだが、ダメなものはダメだ。ちなみに、B氏は筆者よりかなり年上だ。アホコンのA氏もB氏も、なぜ、クライアントが独り立ちできるようにしないのだろうか? 「もうコンサルティングは必要ないです」とクライアントから早く言われるようにしなければならないと筆者は考えている。

「仕事が忙しいんです!」って問題?

さて、前述したアホコンB氏。そこで実際に現場から出てきた問題を見て、「え??」となったことを図1に示す。

図1 問題でないことを問題としてしまう誤り

161020-1.png問題の部分に「仕事が忙しい」「ロッカーが遠い」と書かれていた。これを現場の社員は「問題だ!」と言う。それも社歴の長い社員が、問題だと決めつけて疑わないところが正直、気持ち悪い。第2回の"モグラ叩き"と同様、図1のケースにおいては、解決策として「仕事が忙しい ⇒ 社員を増やす or 納期を遅らせる」「ロッカーが遠い ⇒ ロッカーを移動する」などという、「真面目に考えたのか?」というような解決策が羅列される。

既にこの状態で「おかしなこと」になっているので、ここでコンサルタントは「ストップ」をかけなければならない。

そもそも、「仕事が忙しい」って、業績が上向きになっているということなので、「会社にとってはありがたい話」。つまり、これは問題ではない。もう1つ、「ロッカーが遠い」って、「...だから何? 仕事と直接関係ないでしょ!」ということ。したがって、これも問題ではないということ。問題でないことに対して、解決策を考えている時間がもったいないと考えたい。当たり前なのだが、これを真剣に勧めるアホコンや真に受けるクライアントの社員...どっちもどっちだ。 
ただし、「仕事が忙しく、残業続きとなり体を壊した」「忙しさのあまり、社員が手抜きをし始め品質が低下した」などは別問題だ。ここで言いたいことは、問題ではないことに関して、原因をあれこれ考え、解決策を導き出すことは意味がないということである。

「それって問題ですか?」...と素朴な疑問を常に持っていたいものだ。

似たようなことを「問題だ!」と言っているけど、解決は大違い!

図2を見ていただきたい。これは、当社(株式会社カレンコンサルティング)が業務改善の支援を行った大手企業で、実際に出てきた"社員が考えた問題とその原因"だ。

図2 問題の表記のブレから解決策を誤る

161020-2.png「時間がかかる」「手間がかかる」「めんどくさい」など、一見するとどれも似たようなことを言っている...かのように見える。

ここで、これまで(第1回第2回)で示される図において、「問題発見と問題解決の間を実線ではなく破線でつないでいる」意味を考えていただきたい。この破線部分に「何か入らないとおかしい」と気づいた皆さんもいるだろうが、その通り...「原因発見」など、分析や考えるプロセスが欠かせないからだ。原因の部分については次回以降、順に述べていこう。
ここでは、似たようなことを言っていても、これらを引き起こしている原因はバラバラで、この原因に対して解決策があるもの・ないものが出てくるということだ。例えば、「めんどくさい」などは、本人の問題なので、困ったもんだが解決策を考えることは無意味だ。

このように、似たようなことを言っていても、表現や言葉の標記にブレがある場合は、内容・真意をきちんと見極めないと解決に至らなくなるので要注意だ。

問題の定義をきちんとしよう

誤った問題解決に時間が奪われてしまう、浅い問題解決を導き出してしまう――「問題の定義をきちんとする」ということがスタートラインである。定義を誤ると原因として考えるべきポイントがまったく異なるということを知ろう。続きは次回お話しよう。

記:株式会社カレンコンサルティング / 世古雅人

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