Superb AIがお届けする機械学習プロジェクトチーム向けの価値ある四方山話

農業・アグリテックにおけるコンピュータビジョンとAI(2022年ユースケース概要)

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こんにちは。お初に投稿させていただきます。Superb AI中の人です。

これからコンピュータビジョンを利用したAIシステムの構築、AIへの画像(静止画、および動画)データによる機械学習などに関連するお話を投稿させていただきます。
今回は、第一次産業の農林水産業にコンピュータビジョンとAIが大きな貢献をするユースケースのお話です。ただし、ご存知のとおり、そのようなAIシステムを構築するには実は大変な事前準備とAIへの教育が必要となってきます。


はじめに

文明の誕生以来、農業は食料生産の要でした。歴史的に見れば、私たちの社会の多くは作物生産を中心に動いており、夏時間の短縮や、子供たちが収穫を手伝えるように夏休みを設けるなどの習慣が根付いています。食は社会の重要な要素として、人々を結びつけ、また争いの火種にもなってきました。しかし、農業が長年の経験と過酷な労働の上に成り立っており、今後ますます需要の拡大が見込まれます。先祖代々の小さな町の農家では、大勢の人々を養うほどの生産量を確保するのは難しいのが現実です。そのため、私たちはテクノロジーを中心としたより速いペースで進む社会へと移行し、食糧生産の方法もまた変化してきました。需要の増加、生産の効率化に対応するため、コンピュータビジョンのアプリケーションが農業に導入され、収穫から植物認識、作物診断まであらゆることを効率化することが出来るようになってきております。

コンピュータビジョンとは何か?

ロボットが棚から商品を取ってきたり、こぼしたものを拭いたりといった単純な作業を行うには、コンピュータビジョンをロボットに組み込む必要があります。コンピュータビジョンは、視覚データを解釈して特定のタスクを自動化する人工知能の一種とお考えください。コンピュータビジョンのモデルは、ディープラーニングと呼ばれるプロセスを通じて、さまざまなパターンを予測し、物体の位置、速度、動きを理解するよう学習する必要があります。コンピュータビジョンモデルのセットアップには、モデルが学習するための数百、時には数千の画像が必要ですが、一度構築すれば、ビジネスイニシアチブのスピード、精度、アウトプットを飛躍的に向上させることが可能です。

コンピュータビジョンは、多様な産業でますます普及しています。セルフレジ、宅配ロボット、自律走行車など、様々な分野で活用されています。コンピュータビジョンは、実用上のスループットと効率を向上させますが、そこに至るまでには、学習用に慎重にかつ正確にラベル付けされた何千枚もの画像が必要です。効果的なモデルを作成するには、データサービスチーム、データラベリングソフトウェア、そしてそれを構築するための時間が必要です。画像の周りに単純なバウンディングボックスがあればよいモデルもありますが、より複雑なモデルもあります。

農業におけるコンピュータビジョン

農業にコンピュータビジョンを導入し、作業の自動化、効率化を成功させるためには、モデルが"農業を理解"する必要があります。これには、作物の鮮度、病気の解読、土壌の健康状態など、重要な事象を理解することです。つまりは、農業分野で成功するコンピュータビジョンモデルは、人間が何千年にもわたって完成させてきた手法を理解しなければならないのです。では、機械にどのようにして農業の複雑さを理解させることができるのでしょうか?それは、データのラベリングに尽きます。

データラベリングの重要性

単調な農作業をこなすコンピュータビジョンモデルを作るには、モデルに見慣れた画像を与えて、それらのオブジェクトを認識するように仕向ける必要があります。各データの中で、モデルにとって最も重要なオブジェクトを呼び出す、つまりアノテーションを付ける必要があります。例えば、オレンジの収穫を学習するモデルであれば、オレンジを認識できなければなりません。オレンジが新鮮かどうか、腐っていないか、どこにあるか(地面か木の上か)など、さまざまな要素を理解しなければならないのです。"理解"するということは何を見て理解するか?ということになりますが、私たちの日常生活でも、無意識に目から入ってきた情報(データ)を脳(知能)が判断し、行動に移していくという流れがごく当たり前に行われているわけですが、おなじような事を機械にやらせるためには機械に対して教育する事(何が写っているかをラベルされ、アノテーション化されたデータから学ぶ)が必要で、大変重要な部分でもあります。

ロボットによる農作業

農業の分野では、コンピュータビジョンを活用することで、農作物を上手に収穫するロボットを作ることができます。この機械には物体認識機能が備わっており、作物を落とさずに1つ1つキャッチすることができるのです。これまで手間がかかっていたことが、自律的に行われるようになったのです。

メリット

農業にコンピュータビジョンを活用することで、収穫作業全般が改善されます。自律型の機械を加えることで、手作業の必要性を最小限に抑え、同時にワークフローを高速化することができます。さらに、スピードが速くなることで、腐敗する果実を残すことが少なくなり、廃棄物も減ります。このような利点は全体的なコストダウンにもつながるため、コンピュータビジョンは農業関係者にとって賢い選択と言えるでしょう。

課題

世界で最も重要な産業の一つを自動化することには利点がありますが、それを実践するのは言うは易く行うは難しです。コンピュータビジョンの世界では、作物認識はモデルを訓練する上で最も困難な作業の一つです。モデルを屋外で動作させるということは、天候や照明の変化が、作物とその周囲の環境の認識方法に影響を与えるということです。さらに、作物の見た目は個々に異なるため、あらゆる形や大きさを読み取ることができるように、モデルを高度に訓練する必要があります。

植物の識別

農業におけるAIとコンピュータビジョンのもう一つの基本的な使い方は、植物の識別です。植物識別は、スマートフォンのアプリを通じて日常の園芸家の間でよく使われており、日常の趣味に楽しく貢献しています。しかし、これにはもっと重要な目的があります。それは、有害な外来種を探し出すことです。

良い点

植物識別AIが登場する以前は、外来種の発見や駆除はその道の専門家である研究者が担っていました。しかし、スマートフォンを使えば、専門家の目に留まらないような場所にある危険な植物を報告することができるようになります。そうすることで、科学者や研究者はより多くのデータを入手することができ、特定の生態系をより明確に把握することができます。その結果、特定の生物種に関する知識が深まり、その地域からその生物種を駆除することができるのです。

欠点

植物識別におけるコンピュータビジョンは、プロフェッショナルな環境で使用されるロバストモデルで最も効果的に機能します。スマートフォンのアプリケーションは、日常的に使用されるものであるため、その精度は高くありません。しかし、開発者は、より正確な結果を出すために、認識ソフトウェアの改良を続けています。しかし、現場では、植物の識別に特化して学習させた機械学習モデルの方が、はるかに良い結果を得ることができます。

作物診断

歴史的に見ると、不作は地域や国家に壊滅的な影響を与えることがあります。例えば、アイルランドのジャガイモ飢饉は、約100万人の死者を出し、さらに100万人が国外に脱出することになりました。アイルランドは国家としてジャガイモに大きく依存していましたが、致命的な菌にジャガイモが感染し、それを根絶するのに何年もかかりました。1845年から1852年まで、アイルランドの主要な食料源は基本的に存在しませんでした。

現在では、グローバル経済により世界中から食料を調達することができますが、そうでない場合でも、先端技術により感染症を認識し、その拡大を防ぐための診断ツールが提供されています。コンピュータビジョンを使えば、植物の病気の最初の兆候を認識し、その結果、収穫に大きな影響を与えるのを防ぐことができるモデルを作成することが可能です。その方法をご紹介します。

植物診断技術は、ディープラーニングを活用してコンピュータビジョンモデルを作成し、訓練次第で植物の異常を認識できるようにします。そのためには、数千枚の画像を与えて、植物の識別、熟度の把握、大きさの測定、茎や葉などの構成要素の認識などを行わなければなりません。また、トレーニングの過程で、異常の有無を判断し、その結果を関係者に報告することも必要です。

良い点

作物診断にコンピュータビジョンを導入することは、不作を防ぐという明らかな利点があります。植物の病原菌が増殖する前にその病気を発見できれば、1 年間の災害と利益の損失から農業ビジネスを救うことができます。さらに、食糧不足のリスクが高い発展途上国では、作物診断ツールが"ある"のと"無い"のとでは、結果として"ある=豊作(飢饉の回避)"と"無い=不作による飢饉"という現実の差となって現れます。そのような場合、コンピュータビジョンや植物検出技術を搭載したスマートフォンが低開発国に送られ、収穫を、ひいては命を救っているのです。

課題

モデルを作成するには、機械学習の専門家とデータラベラーのチームが、モデルに供給する前に、数百から数千の画像に正確で精度の高いアノテーションを付ける必要があります。特に農業の分野では、画像は非常に複雑です。個々の画像には、葉や枝などの余計な情報が含まれており、モデルはそれらをふるいにかけなくてはなりません。そのため、農業用コンピュータビジョンモデルで結果を出すためには、セグメンテーションによって画像に注意深くアノテーションを施し、ピクセルレベルでその形状を概説する必要があります。そのため、スマートフォンのアプリケーションは必ずしも正確ではありませんが、小規模な企業や発展途上国においては、非常に重要なツールとなっています。

農業のその先:水産養殖

養殖や魚の養殖は、深海漁業に代わる簡単な方法です。最近では、コンピュータビジョンが魚の健康状態の監視、摂食パターンの研究、シラミなどの危険種の駆除に役立っています。多くの場合、漁業は何千匹もの魚で構成されており、その一匹一匹を監視するには大規模なチームが必要です。水槽内の病気を特定するのは難しく、さらにどの魚が最も苦しんでいるのかを特定するのも難しいです。そのため、治療には一匹一匹に過度な手を加える必要があり、全体として負担の大きい作業となっています。

水産物養殖の課題に対処するため、コンピュータビジョン技術に水棲野生動物を識別する訓練を施すことができます。つまり、水棲野生動物の画像を自動的に処理し、そのデータに基づいた評価を学習することができるのです。

メリット

養殖にコンピュータビジョンを導入することで、科学者は魚が見せる様々なパターンを理解することができます。例えば、データから養殖場全体に病気の兆候が見られた場合、専門家は問題のある魚を治療することができ、より的を絞ったアプローチをとることができます。

コンピュータビジョンは、動物の健康状態を監視するだけでなく、より持続可能で環境に優しい食品調達のアプローチにも役立ちます。ニューラルネットは、魚の行動パターンや変化を学習し、餌の与えすぎを防ぎ、餌の無駄を省くように設計されています。魚の世話に必要な適切な行動をよりよく理解することは、養殖業者が打ち出す決断と業務遂行に影響を与えます。また、養殖技術によって24時間体制の監視が不要になり、養殖場の従業員のワークライフバランスが向上し、魚を育てるという行為によって、海洋生態系を破壊する深海漁業が削減されるのです。

欠点

海洋養殖のためのコンピュータビジョンは、非常に複雑です。魚は常に動いているため、信頼性の高いコンピュータービジョンモデルの構築は難しく、膨大なデータを必要とし、コストも高くつきます。さらに、水中の画質は濁っているため、明るく制御された環境に比べて魚の識別が難しくなります。コンピュータビジョンと機械学習を使って生物種を識別するもう一つの課題は、生物が成長し変化することです。生まれたときから同じ大きさの動物はいないので、それぞれの魚の識別はより難しくなります。

アニマルヘルスモニタリング

水産業だけでなく、家畜の健康モニタリングにおいても、コンピュータビジョンや機械学習はますます欠かせない存在になっています。人工知能とビデオ映像を用いることで、人間によるモニタリングだけよりも早く、効果的に健康問題を発見することができます。病気の蔓延を理解することで、家畜の間での蔓延を食い止め、より健康で幸せな家畜とより良い農業技術につなげることができるのです。

アップサイド

感染症は、農業界にとって深刻な脅威であり、地域全体の食料源を減少させる可能性があります。病気の発生によってもたらされる経済的な影響は、動物自身が苦しむ一方で、ビジネスにも悪影響を及ぼしかねません。機械学習は、行動、摂食パターン、その他問題を示す可能性のある動きを理解するために教えることができます。例えば、ある豚の動きがいつもより遅い場合、怪我をしている可能性があります。給餌時間中にペンの豚があまりにも近くにある場合、彼らはストレスを感じている可能性があり、農家はそれらのいくつかを分離する必要があります。動きが鈍いのは病気かもしれないので、それを認識することで早期治療につなげることができます。機械学習を活用することで、農家は経済的に、家畜はより良い生活環境を手に入れることができるのです。

課題

行動パターンを検出し、病気を予知するためのAIソリューションを農業界に提供することは、コストとデータ要件のため、小規模な農家にはあまり適していません。大手の農場や食肉処理場でAIを使用すると、健康状態を全体的に把握できます。1つの農場内で病気が発生した場合、動物の福祉や肉・乳製品の品質に関して偏りが生じてしまう可能性があります。また、AIは獣医学部では一般的に教えられていないため、コンピュータビジョンや機械学習を扱うデータサイエンティストと、動物の世話をする獣医師との間にギャップがあるのです。

キーポイント

農業におけるAIの利用は、リスクよりもメリットの方が大きいという傾向が強まっています。動物の行動をよりよく監視し、病気の診断を助け、摂食習慣を理解するために開発された技術は、環境面だけでなく経済面でも利点があります。作物の収穫や植物の研究においても、AIには同様の利点があります。スマートフォン用に作られたシンプルなツールで、コンピュータビジョンは農業コミュニティに有害な植物の病気を特定する能力を与え、食糧供給への壊滅的な影響を防ぐことができるようになったのです。また、技術の進歩に伴い、生物学者、農家、植物学者などが遠隔地から作物や家畜の世話をすることができるようになりました。このオプションがあれば、過剰な労働を制限することができ、行動や環境の変化の特定を支援することができます。機械学習の助けを借りて家畜や収穫物の世話をすることは、専門家がすでに持っているスキルを高め、グローバル経済の需要の高まりに対応するのに役立ちます

最後にSuperb AIについて

Superb AIは、データサイエンティスト、研究者、マシンラーニングエンジニアによって2018年に設立されました。AIのトレーニングに必要なデータの準備作業を自動化し、データセットの構築と反復を迅速、体系的、かつ反復可能にするエンドツーエンドのトレーニングデータプラットフォームを提供しております。Superb AIは、あらゆる規模のチームがトレーニングデータをラベル付け、管理、キュレート、提供する方法を改革しています。25以上の出版物、7,300以上の引用、100以上の特許など、コンピュータビジョンとディープラーニングにおける数十年の経験と学術的研究により、Superb AIはあらゆる段階の企業がコンピュータビジョンアプリケーションをこれまで以上に迅速に構築、展開できるよう支援しております。詳細情報、無料での利用開始については、superb-ai.comにアクセスしてください。

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