ネットワークエンジニアを目指した元オペのこぼれ話

iPhone 4の話で昔を叫ぶ

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 こんにちは。はじめての方は、はじめまして。

 いろいろな人から聞いてきたいろいろことを、少しでも伝えられたらいいなと思いながら、コラムをお送りしています。

 昨今、iPhone 4の電波の感度とその対応について賛否両論ありますが、わたしが思うことは「作り手や売り手、買い手などの『当事者』はつらいだろうなぁ」です。

 もし自分が当事者だったらと思うと、ちょっといたたまれないです。

 だって、買うときも売るときも、そんなこと分かってなかったんですもん。そんなはずはなかったんですよね。作る方だって、うまくいくと思っていた。でも、現象は出た。

■すべてのサービスの先にお客さまがいる

 普段、仕事で電話やネットワークを扱っているため、「つながらない」とか「つながりにくい」とかは、たとえ他人ごとであっても耳が痛い話です。

 製品の仕様だけではどうしようもないところもあるんです。けれど、通信を扱っている者としては、たとえどんな理由であっても「つながらない=いけないこと、なんとかしなければならないこと」という思いがあったりします。

 とりわけ、サポートセンターとか障害対応窓口は、かかってくる電話の内容の大半が「製品関連が使えない、つながらない」という話ばかりです。そのための窓口ですからしかたないんですけれども、会社の対応が決まっていない場合はさらに胃が痛くなります。

 お客さまとはマンツーマンで応対しているので、逃げ場がない。対応は未定でも、問い合わせは入ってくる。「そのままでは思うようにお客さまがつなげられないかもしれない」と説明するときの気まずさといったらないです。でも、その分、つながって喜ぶ声がうれしかったりもします。

 電話やネットワークはつながるのが当たり前。だから、思いどおりに通信できなかったときの失望や怒りはとても大きいです。

 電話が鳴るたび、走って逃げたい。解決方法が分からなければ、プレッシャーは何倍にも膨れ上がります。いまでもこの気持ちは変わりませんが、現実に立ち向かうしかありません。

 いやだなぁ、という思いに駆られるたびに思い出す言葉があります。

■お客さまは電話がつながるまでに労力を費やしている

 わたしがテレオペを始めたばかりのころは、通信販売の受付業務に就いていました。その研修で、一番はじめにいわれた言葉があります。

 「お客さまはわざわざ電話をかけてくださっているんです。実は、電話がつながるまでにすごい労力を費やしてくださっています。わざわざ、カタログを手に入れて、電話番号を確認して、営業時間内に時間を作って、受話器を手にとって電話をかけてくださっているのです。その間、迷うことがあったり、ほかの用事がある人もいたでしょう。それでも、かけようと思ってくださった。そして、実際に受話器をとってくださった。まして、電話が混み合っていれば、その間、呼び出し音を聞いて待ってくださっている。だから、どんな電話でも、かけてくれるだけでありがたいし、お客さまにお手数をおかけしているということ。それを忘れないで対応してください」

 注文をしたいものがあるのだから、お客さまが出向くのは普通のことだと思っていたわたし。目からうろこが落ちるとはこのことでした。電話をかけてくる人がどんな思いでかけてくるか、ましてや相手の都合や事情なんて、まったく考えたこともありませんでした……。

 そのうえ、当時はまだ携帯電話の普及率が高くなく、携帯電話の通話エリアも満足な状態ではありませんでした。フリーダイヤルにかけたい場合は、自宅や会社の固定電話や駅などの公衆電話からかけることがほとんどの時代でしたから、その間、移動することもままならなかったんです。その労力たるや、いかばかりでしょうか。

■思うとやっぱりいたたまれない

 いまは携帯電話も普及して、電話線の届く範囲を気にすることが少なくなりました。

 だけど、やっぱりそれでも、問い合わせに関する労力ってそんなに変わらないような気がするんです。まして、その携帯電話が不調であればなおのことです。

■契約を結んで新しい端末を買う

 わざわざ、店頭に出向いて、場合によっては2年にもわたる契約を結び、もしかしたら、そのためにクレジットカードの用意をしたかもしれない。並んで、予約をしてやっと手に入れた端末だったかもしれない。

 うまく使えないのは自分のせいだと思った人も、高いお金を出して、実は不良品や故障品に当たったかもしれないと思った人もいたかもしれない。新しいものを使って、うまく使えなくて試行錯誤を繰り返して、……それでも思うようにいかない。

 その期待や、試行錯誤に費やした時間が怒りと苛立ちに変わっていく。それをダイレクトに受ける店員さんやオペレーターさんは、もう謝るしかないです。その人たちだって、何とかしてあげたい。でも、頭を下げる以外にできることがない。いたたまれないですね。

 作った人も、売った人も買った人も、問い合わせを受けている人も……どこを思ってもいたたまれない。もちろん、原因や対処方法が分かれば、そんなに混迷した状態にはならないと思いますが、せっかくの魅力的な端末、サービスです。当事者の皆さんや、手に入れたお客さまのためにも、会社として明解な対応をしてもらえれば……と願うばかりです。 

 あなたの仕事の先にいる人の気持ちをほんの少しだけ思ってみませんか? 

Comment(3)

コメント

ブルさん

通信には切れてはいけないものと切れても仕方がない仕組みのものがあります。
(必ずつながるものと必ずしもつながらないもの、と言うこともできますが…)

その二つを一緒にして語るのはどうかと思う。

ケータイは明らかに後者なので、アップルもアップルのサポートも責任を感じすぎることはないと思います。

ききみみずきん

コメントありがとうございます。

すみません、いろいろと語弊があったかもしれません。
私、アップルもiphoneもそんなに悪いとは思っていないんです。

もちろん、プライオリティもありますし、
切れても仕方がないものもあります。技術的にも
サービス的にも・・・・・。
(だからコンシューマ向けに多く広まっているサービスの
ほとんどのサービスはベストエフォートなんですよね。)
でも、やっぱりできるだけ切れないようにしたいんです。

実は、記事を書きあげた時点がちょっと古くて、
まだ、日本での対応方針が決まっていなかった時点で書いたものでした。
(推敲終わった直後に報道発表がありました。)
かさねがさね、誤解を生んでしまって申し訳ないです。

いろいろな事情があるので致し方のないこともあると思います。
ただ、アップル自身のためにもユーザーのためにもアップルが会社として、
対応方針を決めてくれればいいなぁと思いつつ、
対応してる人は大変だろうなと。そして、利用者も不安だろうなと
思ってしまいました。(対応方針が決まったのでほっとしています。)

お互い、自分が大変じゃなく思いやれればいいなぁ
という思いを書き残したかったんです。

ことばってやっぱり難しいですね。
ありがとうございます。

ブルさん

丁寧な返答ありがとうございます。
ききみみずきんさんの伝えたいことは、痛い程わかります。
その事に関しては私も同感です。

ただ、アップルは、今回のアンテナ問題を不具合だとは少しも思っていないだろう(作った時点で当然わかっていたはず)と思う訳です。(恐らくエンジニアは皆そう思っているのではないでしょうか?)
要するに筐体との設計上のトレードオフです。

最近、設計上の許容範囲と思えることに対してまで、あまりにもネットで騒ぎ立てる風潮に、かなりの違和感があるのです。

消費者の意見だけを聞きさえすれば、いい商品が出来る訳ではないことは、アップル自身が証明していると思います。

難しい問題ですが。。。

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