「深く考える力」を高め、生産性の向上を目指す
■自己紹介
初めまして。嶋と申します。本コラムのタイトル『世界に対する認知を変えれば、世界が100倍楽しくなる』には、「物事の見方をより深くすることで、深く考える力を身につけよう]という意味を込めています。
■コラムの目的
このコラムの目的は、「より深く考える力」を身に付ける術を紹介することです。
「より深く考える力」は、訓練で身に付けられるスキルです。しかし、日本の教育では、主に「知識を覚える」ことに主眼を置いています 。大学院レベルまで進学して初めて、「より深く考える力」を身に付ける教育を受けられるというのが実情です。ですから、 多くの人たちは「より深く考える力」を十分に身に付けず、社会に出ているのです。
2009年度の統計 によれば、日本の年間平均労働時間は1714時間。世界的にも労働時間が多い部類に入ります。しかし、国民総生産となるGDPは世界ランク3位(1位 米国:年間平均労働時間 1768時間、2位 中国:データなし、4位 ドイツ:年間平均労働時間 1390時間)です。
ドイツの労働時間が、日本より約500時間も少ないことに注目してください。
「ヨーロッパの人たちの労働時間が短く見えるのは、仕事を家に持ち帰ってやっているからだ」
かつて、先輩に言われた一言ですが、私は納得がいきませんでした。なぜなら、いくら仕事を家に持ち帰ったとしても、500時間もの仕事を家でしているなんて非現実的な話だと感じたからです。
そこで私は仮説を立てました。米国やドイツの人たちは「何らかの方法」で効率が良い仕事のやり方をしている。その根底には「深く考える」という習慣があるのではないかと。
そこで、今回は「深く考えること」と「生産性」の関係を探ります。
■「深く考えること」とは?
そもそも「深く考えること」とは何でしょうか。ここでは「既存の知識の上に独自のアイデア、思想を具現化すること」と定義します。
つまり、「本や論文などで既出であるアイデアは古い」という考え方です。この考え方を知ったとき、私は驚きました。普通に生活していてそんなに斬新な考え方など浮かんでこないからです。
何も考えずにただルーチンワークだけをしていても、会社自体の売上は伸び悩んでしまうでしょう。なぜか。会社が「今販売しているソリューションはすでに古く、近い将来には必要とされなくなる」からです。
そのため、「考えるプロフェッショナル」であるコンサルタントは、常に時局を読んだ新しいアイデアを顧客に"提案"し続ける必要があります。よって、会社は自然と「考えること」を要求してきます。
■「深く考えること」と「生産性」は関係するのか?
次に「生産性」の定義ですが、ここでは「経済活動を生み出す行為全般」とします。先ほど「提案」が大事と書きましたが、一般的にITコンサルティングでは、単にシステムだけの話をしていてもほぼ100%案件は取れません(私自信がそれを実体験しています)。
なぜなら、顧客にとってはシステムの技術より、事業を推進し、売上を上げることに最も関心があるからです。そのため、コンサルタントが行う新しい提案とは「顧客の産業構造、政府方針、競合他社状況、顧客状況などを踏まえたロードマップの策定からブレイクダウンした現時点で必要な施策」ということになります。
顧客が必要と思うものを提案・開発・導入できてこそ、つまり「深く考えること」ができてこそ、仕事が受注できるのです。
■コンサルタントだけじゃなく、SEにだってコンサル能力は必要
このようなコンサルティング能力は、SEに限らず社会のあらゆる仕事に必要とされています。
SEの仕事の大半は、設計書に記述されているプログラムを作成すること、あるいは設計図そのものを作成することかと思います。要約すると「人に言われたとおりに作業をする」ことが大半な人が多い。
もちろん、こうした仕事も重要です。しかし、生産性を上げようと思うのであればそれだけでは足りません。人に言われた作業はサクッと終わらせて、チーム全体が処理する作業の"量"を増やし、かつ処理できる作業の"質"を上げる必要があります。
そのためには、チームの一員であるSEが常に工夫をし続けることが必要です。まず目先の作業を効率よく処理するツールの作成、それが積み重なり、全体フローの改定などへも視野を広げることが、現在、日本のITを下支えする人材に求められています。