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私はAIに何を話し、どこまで任せているのだろう - 人とAIの関係を考える②

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関係を捉える六つの側面

朝、AIにメールの文章を整えてもらう。

昼には、企画について意見を聞く。「ほかの見方はない?」と問い返しながら、自分の考えを整理する。

夜には、今日あった出来事を話す。誰かに言われた言葉が気になっている。自分でも、なぜ気になるのか、うまく説明できない。

これは、たとえばの一日です。

使っているAIは、同じかもしれません。でも、朝と昼と夜では、求めているものも、話していることも、任せていることも違います。

この一日を「AIをよく使った」とまとめるだけでは、見えなくなるものがあります。

前回は、私たちがAIに何を求めて話しかけているのかを考えました。

今回は、その関わり方を、もう少し丁寧に見てみたいと思います。

私はAIに何を話し、何を期待し、どこまで任せているのだろう。

そのために、役割・広さ・深さ・信頼・委任・過程という六つの側面を置いてみます。

これは、確立された一つの理論や尺度ではありません。このシリーズで、人とAIの関係を振り返るための整理です。

1.役割-何をしてもらう存在なのか

朝、メールを整えてもらうとき、AIには編集を手伝ってもらっています。

昼、企画について問い返すときには、考えを広げる壁打ち相手になっているかもしれません。

夜、気になる出来事を話すときには、何を求めているのでしょうか。

状況を整理してほしい。相手の立場からも考えてほしい。それとも、まず自分の気持ちを受け止めてほしい。

「どう思う?」という短い問いの中にも、異なる期待が含まれています。

自分でも、その期待をはっきりさせないまま話し始めることがあります。そして、応答を読みながら、求めるものが変わることもあるでしょう。

文章の相談から、対応方針の相談へ。出来事の説明から、自分の気持ちの話へ。

役割を見ることは、そのとき自分がAIに何を求めていたのかを確かめることでもあります。

2.広さ-どんな領域で関わっているのか

朝も昼も仕事に使い、夜には個人的なことを話す。

この一日では、AIとの関わりが、仕事と私生活にまたがっています。

ここでいう「広さ」は、どれだけ多くの領域でAIと関わっているかです。

毎日翻訳に使っていても、用途は限られているかもしれません。短い時間でも、仕事、学習、家庭、キャリアと、いくつもの領域で頼ることもあります。

最初は仕事だけだった。次に旅行の計画を頼み、いつの間にか、人との関係も相談するようになった。

一つひとつは自然な使い方でも、振り返ると、自分の生活の中でAIが関わる範囲は変わっているかもしれません。

よく使うようになった、という変化の中身を見てみる。時間や回数に加えて、何を話すようになったのかにも目を向けたいと思います。

3.深さ-どこまで自分の内側を話しているのか

夜の相談に戻ってみます。

「今日、こんなことを言われた」と出来事を伝える。さらに、「腹が立った」と気持ちを話す。

話しているうちに、「本当は、認めてもらいたかったのかもしれない」と気づくこともあるでしょう。

同じ出来事について話していても、どこまで自分を開示しているかは違います。

ここでは、自分の感情、価値観、迷いなど、内側にどれほど踏み込んで話しているかを「深さ」として考えます。

チャットボットとの関係を追った研究でも、自己開示は関係形成に関わり、その始まり方や進み方には大きな違いが見られています。[1]

なお、この深さと、情報の機密性や判断の重大さは、別に見る必要があります。感情を交えずに入力した数字でも、組織にとって重要な情報であることはあります。

たくさん話したかどうかだけではわからない。短い一言でも、自分にとっては、初めて誰かに伝えることかもしれません。

4.信頼-何を頼れると思っているのか

朝、メールを直してもらったら、読みやすくなった。

昼には、思いつかなかった企画の視点が出てきた。

夜、気持ちを話すと、丁寧な言葉が返ってきた。

それぞれの場面で、頼れると感じる理由は違いそうです。

言葉を整える力。別の見方を示す力。話しやすい応答。これまで役に立ったという経験。

「このAIを信頼している」という一言の中に、何が含まれているのでしょうか。

実際に確かめて、頼れると思った部分もあるでしょう。まだ確かめていないけれど、大丈夫そうだと期待している部分もあるかもしれません。

信頼を具体的に言葉にしようとすると、何を根拠に頼っているのか、まだわからないことは何かが少し見えてきます。

5.委任-どこまで任せているのか

朝のメールでも、任せ方はいくつかあります。

誤字だけを直してもらう。言い回しを考えてもらう。相手にどう対応するかまで提案してもらう。

さらに、できあがった文章を読み直して送るのか、ほとんどそのまま送るのかでも、自分の関わり方は変わります。

情報を集める。案を作る。比較する。決める。実行する。

そのどこをAIに任せているのかが、委任の側面です。

文章を作ってもらっているつもりでも、読み返してみると、対応方針までAIの提案を採用していた。そんな場面も考えられます。

自分は、どの部分を担ったのか。

最後に送信ボタンを押したかどうかに加えて、その前の判断にどう関わったかを振り返りたいと思います。

6.過程-その関係は、どう変わってきたのか

今の一日も、最初からこの形だったとは限りません。

以前はメールの修正にしか使っていなかった。企画の相談をして役に立ったので、別の仕事にも使うようになった。個人的な話は、最近になって始めた。

反対に、間違いに気づいたことをきっかけに、任せる範囲を狭めた人もいるでしょう。

チャットボットとの関係を追った研究でも、関係の育ち方は一様ではなく、技術的な問題や予期しない出来事が、関係を弱めたり、終わらせたりする場合が報告されています。[1]

「今、どう使っているか」の後ろには、そこに至る経験があります。

助かったこと。困ったこと。問い返せるようになったこと。確認しなくなったこと。

何が変わったのかだけでなく、何をきっかけに変わったのか。 そこまで見て、初めてわかることもありそうです。

一つの対話を、振り返ってみる

六つの側面を置いたのは、関係に点数をつけるためではありません。

「AIを使っている」という言葉の中にある、自分の具体的な関わり方を見るためです。

最近の対話を、一つだけ思い出してみます。

何をしてもらいたくて話し始め、どこまで事情を伝えたのか。応答の何を頼れると思い、どこを任せたのか。その使い方は、以前から同じだったのか。

振り返ると、最初に求めていたことと、最後に受け取ったものが違うこともあるかもしれません。

答えを求めていたのに、問いが残った。

文章を直してもらうつもりが、自分の気持ちに気づいた。

意見を聞くつもりが、そのまま判断を任せていた。

話し始めたときには見えていなかったことが、対話の終わりには起きている。その変化に気づくことも、自分とAIの関係を知る一歩だと思います。

私はAIに何を話し、何を期待し、どこまで任せているのだろう。

まずは、一つの対話から、見つめてみたいと思います。

次回は、「親しく感じること」「信頼すること」「任せること」の違いと、そのつながりについて考えます。

参考文献

[1]Skjuve, M., Følstad, A., Fostervold, K. I., & Brandtzaeg, P. B.(2022). A longitudinal study of human-chatbot relationships. International Journal of Human-Computer Studies, 168, 102903.

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