ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

魔女の刻 (34) プロセス

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 「考えてみれば奇妙だ」東海林さんは言った。「production 環境が壊れたこと、バックアップが消えたこと、白川さんと連絡が取れないこと。どれか1 つなら、いや2 つ同時でも、100 歩譲って偶然と言えないことはない。でも、3 つが同じ日に重なったら偶然で片付けるのは無理だ。しかも、その日がよりによってセレモニーの前日となると、これはもう天文学的な確率だろう」
 私は反論できず、視線を床に落とした。長い間システム開発をしていると、確率の法則を無視してトラブルが重なる状況に遭遇することはたまにある。担当者が有給休暇を取った日に限って、潜在していたバグが発覚するとか。だが、ここまで重なると、偶然ではなく誰かの意図が反映されていると考えざるを得ない。
 周囲のプログラマたちは作業の手を止めて、高杉さんと東海林さんに注目している。どこからも反駁の声は上がらない。唯一、岡沢さんが呟いただけだ。
 「Q-LIC の仕業だったらよかったのに......」
 その言葉に私は顔を上げて東海林さんを見た。
 「もしかしたら、Q-LIC に脅迫されていたとか」
 「どうかな」東海林さんは同意しなかった。「Q-LIC が白川さんを脅迫していたなら、弓削さんは全ての罪を白川さんのせいにしたと思うがな。そもそも白川さんが、脅迫されて黙って従うような人には見えん」
 「じゃあ」私は言葉を探した。「じゃあ、一体、何のために、こんな......」
 「それはこの際、重要じゃない」東海林さんが遮り、高杉さんを見た。「明日......じゃなくて、今日のセレモニーですが、内容を変えるわけにはいかんでしょうね?」
 「内容を変える」高杉さんは左の眉を上げた。「たとえばどのようにですか」
 「まだ全ての機能が完成していないことにして、一部分だけ見せるとか」
 もう少しマシな提案ができないのか、と言わんばかりの剣呑な視線が、東海林さんに突き刺さった。
 「論外です。セレモニーにはマスコミも多く呼ばれています。彼らが見に来るのはただの新しいKNGSSS ではありません。"完成した"KNGSSS です。すでにKNGSSS が完成したことは内外に発表済みです。それなのに、新学期の一週間前にまだ完成していないとわかったら、全ての責任が弊社にのしかかってくるでしょう」
 「紙芝居でごまかすのはどうですか」八木橋さんが言った。「画面のスクリーンショットをつなげて、それらしく見せるんです」
 高杉さんは、話にならない、と片手を振って、八木橋さんの提案を退けた。
 「会場のタブレットで実際に操作してもらうことができなければ、完成とは見なしてもらえません。特にVR ゴーグルを使ったイマージョン教材の体験は、今回のセレモニーでも重要なトピックスとして、市長自身にアピールしていただくことになっています。今から変更などできるはずがありません」
 「それなら、もう延期を決定した方がいいんじゃないでしょうか」
 東海林さんが言ったが、高杉さんは首を横に振った。
 「先ほど市長から連絡がありました。この状況にかなりお怒りで、セレモニーの延期は論外、とのことです。そんな事態になったら、弊社を契約不履行で訴えるとまで言われました。2 つ目の悪い知らせが、それです。中止という選択肢はないと考えてください」
 その言葉を聞いたプログラマたちは、一斉に呻き声を上げた。今のペースでVilocony の再構築作業を進めたとしても、10 時のセレモニー開始に間に合う可能性は低い。それが明らかになれば、8 時を待たずにセレモニー延期が決定されると思っていたからだ。
 「じゃあ、今の作業を続けて、間に合うことを祈るしかないですね」
 私はそう言って、自分の席に戻ろうとしたが、不意に誰かが「ちょっといいですか」と声を上げたのを耳にして立ち止まった。足を止めたのは、その声に聞き覚えがなかったからだ。振り向いた私は、TSD の鳩貝さんが手を挙げているのを見て驚いた。
 「あー、ちょっと面白いものを見つけました」
 鳩貝さんはモニタに視線を釘付けにしたまま言った。この人がまともに話すのを聞いたのは、これが初めてだったかもしれない。東海林さんも、隣に座っていた草場さんも、驚いた表情を浮かべている。
 「な、何でしょう」
 「何か見たことのないプロセスが動いていますね」鳩貝さんは低い声で言った。「かなり高負荷で」
 「何のプロセスですか」
 答える代わりに、鳩貝さんは手元のノートPC を掴んで立ち上がると、足早にフリースペースに向かった。私たちもその後を追った。鳩貝さんは液晶TV の一台に近付くと、リモコンで電源を入れ、HDMI ケーブルでノートPC を接続した。数秒後、液晶TV にノートPC の画面が映し出される。開いているのはProduction 環境に接続しているらしいTeraTerm だった。top コマンドが実行されている。

top.png

 「この19621 のプロセス」鳩貝さんは細い指で液晶画面を叩いた。「OS 標準で、zz0ker というコマンドやシェルスクリプトはありません。プロセスツリーを追ってみると、7 つから8 つの子プロセスを連続的にコールして、すぐ殺して、またコールして、という処理を繰り返しています。全てroot 権限でVilocony 環境にアクセスして、何かをやっていますね」
 「何かって?」草場さんが訊いた。「何です?」
 「わからないね。root 権限はもらってないから」鳩貝さんはそう言った後、高杉さんの顔を見て付け加えた。「つまり特権ユーザ権限がないので」
 「ゾンビプロセスか何かじゃないんですか」
 東海林さんが訊いたが、鳩貝さんは首を横に振った。
 「ゾンビプロセスなら、プロセス名で元のがわかります。私はここで過ごした時間の大部分を、OS のプロセスを把握することに費やしてきました。主な目的は不正侵入を防ぐことにあったんですが。おかげで、Vilocony 環境に変更が加えられるとき、どんなプロセスが上がるかは、ほぼ読み取れます。このプロセスが、今日、初めて目にしたものであることは間違いありません」
 「つまり、そのzz プロセスが、Vilocony 環境をひっくり返してしまったと?」
 「そこまではわかりません。でも知る方法はあります。このプロセスを殺してみればいいんです」
 「root 権限なしでも、kill はできるんですか」
 「ええ。侵入を検知したとき、即座に殺せるように」鳩貝さんは東海林さんを見た。「やりますか?」
 東海林さんは許可を求めるように高杉さんの顔を見たが、エースの上級SE は理解しているのかいないのか、小さく頷いただけだった。了承、と解釈した東海林さんは、鳩貝さんの隣に座った。
 「殺してください」東海林さんは言った。「別に事態を悪くすることにはならんでしょう」
 鳩貝さんはプロセスID を引数にkill コマンドを入力し、Enter キーを叩いた。通常なら即座に完了するはずだが、プロンプトが点滅状態のまま数秒間が過ぎていった。
 「やけに時間が......」
 草場さんがそう言いかけたとき、エース席で一戸さんが大声を上げた。
 「なんだ、こりゃあ!」
 「一戸」高杉さんが咎めるように部下を見た。「なんですか」
 「す、すいません」一戸さんは立ち上がり、使っていたノートPC を指した。「管理コンソールに、いきなりおかしなメッセージが出たもんで」
 私たちは顔を見合わせた。kill コマンドが実行された直後だ。偶然とは思えない。
 東海林さんは難しい顔で一戸さんの席に向かった。私もその後に続き、東海林さんの肩越しにノートPC の画面を覗き込んだ。表示されていたのは、画面一杯に広がる巨大なダイアログだ。

warning.png

  「鳩貝さん」一目見た東海林さんはフリースペースに向かって声を張り上げた。「殺すの中断してください」
  頷いた鳩貝さんが中断のショートカットキーを押すと、警告のダイアログが消え、代わって小さなメッセージボックスが表示された。

 ok.png

 私たちは揃って安堵のため息をついた。
 「一種のランサムウェアだな、これは」東海林さんがメッセージボックスを指した。「この場合、要求しているのはビットコインなんかではなく、何だか知らんが、白川さんが計画したことを邪魔しない、ということだが」
 そう言うと、東海林さんは反応を窺うように私の顔を見た。だが、もはや私はこのトラブルの元凶が白川さんである、という説に異を唱えようとは思わなかった。白川さんが以前、ランサムウェア関係の業務に携わっていたと話してくれたことを思い出したからだ。
 フリースペースに戻った東海林さんは、今見たことを報告した後、付け加えた。
 「秘かにこんな仕掛けを組み込めるとしたら白川さんしかいません。自分で作ったのか、誰かに作らせてから、メッセージ部分のリソースファイルだけ差し替えたのかはわかりませんが」
 高杉さんは、草場さんと鳩貝さん、そして私の表情を順番に確認した後、何かを決意したように頷いた。
 「わかりました。ここからは、白川が現在の事態を仕組んだ、という前提で行きましょう。そのことで、現在の作業方針に変化がありますか?」
 東海林さんは首を横に振った。
 「いえ、残念ながら」
 「そうですか。現在の状況を教えてください」
 「さきほどproduction 環境とスタンバイ環境のレプリケーションを解除して、それぞれ独立した環境にしました。再構築の目処がついたら、スタンバイの方にKNGSSS を構築していきます。動く状態まで持って行けたら、スタンバイ環境の方を正としてセレモニーを乗り切ろうと思います。ただ、セレモニー会場に搬入済みのタブレットは、全てproduction 環境に接続しているので、スタンバイの方に切り替える必要があります」
 「切り替えはどのように?」
 「各タブレットの設定画面で切り替えるんだと思いますが」
 「ということは、そっちの準備にも人員が必要ですね」
 高杉さんは一戸さんの席に歩いていき、小声で何かを指示し始めた。
 「よし」東海林さんは小さく手を叩いた。「作業に戻ろう」
 重い足取りで自席に戻りながら、私は小声で訊いた。
 「目処がついたらって言いましたけど、つきそうなんですか?」
 「厳しいな」東海林さんは眉間にしわを寄せた。「何しろVilocony の設定は、ほぼ白川さんが独占してたからな。たった一晩で、同じレベルまで到達できると思うほど、俺はうぬぼれちゃいないよ。考えてみれば、他の人間が復旧できないように、意図的に情報を共有しなかったんだろうなあ」
 「白川さん」私はため息をついた。「一体、何の目的でこんなこと」
 「俺も知りたくてたまらないが、今、考えても意味がない。まずセレモニーに間に合わせることにリソースを使おう」
 「そうとも言い切れませんよ」
 不意に誰もいなかったはずの右後方から声が聞こえて、私は飛び上がりそうになった。声の主はノートPC を抱えた鳩貝さんだった。目立たない行動を取るのが習慣になっているのかもしれないが、気配まで消すことはないのに。
 「どういうことです?」東海林さんが足を止めて訊いた。
 「私の本職についてはお聞き及びだと思いますが」鳩貝さんは小声で言った。「デジタルフォレンジックでは、たとえば動機のように、一見、無関係な事柄が問題解決の重要なファクターになることが少なくありません。時々、警察関係者とも情報交換するのですが、やはり同じようなことが言えるそうです」
 「なるほど、一理ありますが」東海林さんは首を傾げた。「今回もやはり動機が重要だとお考えですか?」
 「いえ」鳩貝さんは小さく首を横に振った。「重要度や緊急度が低いと思われたことが、意外なキーだったりすることがある、と言いたいだけです。東海林さんはセレモニーに間に合わせるというゴールにフォーカスを絞っておられる。現時点での最優先課題であることは間違いないでしょうし、私が見たことろ、東海林さん以上にその作業をこなせる人は、ここにはいないでしょう。ですが、少しだけ、ほんの少しだけ時間を割いて、別の角度から眺めてみてはいかがでしょう」
 「よくわかりませんね」そう言いながら、東海林さんの顔には興味を感じた表情が浮かんでいた。「別の角度とは?」
 鳩貝さんは急に私の顔を見た。
 「川嶋さん」
 「は?」
 「先ほど、白川さんが何の目的でこんなことをしたのか、と問いかけましたね。その疑問をもう少し発展させてみましょう。白川さんのゴールは何でしょう」
 「私に訊いてます?」
 「川嶋さんに訊いています」
 戸惑った私は東海林さんを見た。東海林さんは面白そうな顔で頷いた。その隣で草場さんも微笑んでいる。
 「ゴールと言っても......」私は疲れた頭を回転させた。「白川さんが考えることですから......」
 「少し範囲を狭めてみましょう。白川さんの究極的な目的が何か、ではなく、この状態を作り出すことで、もしくは作りつつあることで、白川さんは何を期待しているんでしょうか。遠い将来ではなく、ごく近い未来に。たとえば今日の朝とか」
 「朝ですか?」私は肩をすくめた。「そりゃ、セレモニーでKNGSSS を来場者が操作してもまともに動かない......そうなるんじゃないですか」
 「それが白川さんの目的なら、どうしてこんな面倒なことをする必要があるんでしょう」鳩貝さんは丁寧な口調で指摘した。「単に動かなくするだけなら、コンテナとコーディネータの設定を丸ごと消去してしまえばいいのに」
 なるほど、そういうことか。
 「production 環境が丸ごと消えていれば、セレモニーは延期せざるを得ない」私は言葉に出しながら頭の中を整理した。「でも見かけ上はコンテナがあり、動作するように見えるから、セレモニーは予定通り実施される。つまり、白川さんはセレモニーを中止させたいのではなくて......」
 「セレモニーの場で実行させたかったんだな」東海林さんが引き取った。「本来のKNGSSS の機能ではない何かを」
 「それは何です?」いつのまにか戻ってきていた高杉さんが訊いた。
 「わかりませんが、試してみたいことがあります。タブレットでproduction 環境に接続してみたいんです」
 「それはもう試したのでは?」
 「試したのは日付が変わる前です」
 「どういうことですか」
 「つまり」草場さんが説明した。「白川さんはproduction 環境全体に何かを仕込んだんですが、それが何にせよ、有効な形になるタイミングがあるはずです。方法はいろいろありますが、単純にシステム日付が26 日になった時点で切り替えにしているかもしれません」
 「もっとギリギリの時間じゃないんですか?」私は言った。「さっき、鳩貝さんが発見した謎のプロセスは、まだ動作中ですよね」
 「いや」東海林さんが考えながら言った。「何が起こるにせよ、さすがにテスト環境でテストするわけにはいかなかったはずだ。つまり、ぶっつけ本番だな。大抵のシステム屋なら、できる限りのテストをするだろう。まして、あの慎重な白川さんが仕組んだのなら、十分にテストする時間を取りたいはずだ」
 「その考えが正しいとして」高杉さんが苛立った声を出した。「確認するにはどうすればいいんですか」
 「タブレットでKNGSSS に接続してみればいいんです。動作確認用としてproduction 環境に接続設定済みなのが用意されているはずです」
 高杉さんは振り向いた。
 「一戸!」
 死人でも飛び起きそうな声に打たれて、一戸さんは椅子から転げ落ちそうになった。
 「は、はい!」
 「タブレットを持って来なさい」高杉さんは命じた。「production 環境に接続できるものを」
 一戸さんは備品キャビネットの方へすっ飛んで行きかけ、途中で方向転換して自分のデスクから鍵を掴んだ。キャビネットを開けタブレットを取り出す。
 「どうぞ」軽く息を切らしながら、一戸さんはタブレットを差し出した。
 「少しは運動しなさい」
 高杉さんはタブレットを受け取ると、電源を入れた。
 「あ」東海林さんが顔を上げた。「ここだとproduction 環境のアクセスポイントがないですよ」
 「どうすればいいんですか」
 「コマンドルームのドアを開けっ放しにしてもらえば」
 「一戸」高杉さんは、腰を下ろしたばかりの一戸さんを再起動した。「コマンドルームのドアを開けて。閉まらないように押さえてなさい」
 気の毒な一戸さんは、開発センターとコマンドルームを隔てるドアを自分のカードで開けると、そのままドアの前に立ち、センサーを遮った。
 「いいですね」
 高杉さんはWi-Fi のインディケータが最大になったのを確認し、管理者アカウントの1 つでログイン手順を開始した。私は横から覗き込んだ。
 「お」草場さんが声を上げた。「管理者メニューが表示されてますね。昨日、試したときは何も出なかったのに」
 「やっぱり、日付で制御してましたね」東海林さんが言った。「生徒モードに切り替えてみましょう。来場者が試すのは生徒モードでしょうから、何かを仕込んだとしたらそっちです」
 高杉さんは頷くと、設定メニューからモード切替をタップし、<Student Mode>を選択した。
 本来なら、小学6 年生用のトップメニューが表示されるはずだが、画面にはくぬぎ市公認ゆるキャラの、くぬぎんが転がりながらノロノロと移動するアニメーションが表示されていた。css のanimation を使った処理待ち画面だ。通常なら、この画面が表示されているのは長くても2000 ミリ秒のはずだが、その10 倍の時間が経過しても一向に変化が見られなかった。
 「こんな画面を見せたいわけじゃないでしょうね」高杉さんはタブレットを放り出した。
 「まだプロセスが完了していないのかもしれませんね」
 東海林さんは画面を操作し始めたが、自分の席で何人かのプログラマが待っていることに気付くと、タブレットを私に差し出した。
 「他のメニューを一通り試してみてくれ」
 そう言うと、東海林さんは報告に来ていたプログラマに注意を向けた。私は、管理者モードに戻して、設定メニューを上から順番に試していった。
 しばらくの間、画面はほとんど変化しなかった。どのメニューを実行しても、同じアニメーションが表示されるだけだったからだ。高杉さんは、単純作業は下請けの仕事、と言わんばかりに、腕を組んで私の指の動きを見ていた。
 メニューの最後、「KNGSSS について」を開こうとした私は、「あれ」と呟いて指を止めた。タップすると製品情報のダイアログが開くはずだが、サブメニューを示す矢印がついている。ほとんど使用することがない機能だが、サブメニューが付いていた記憶はないし、付ける理由も想像ができない。
 まさか自爆ボタンということもないだろう。私は矢印に触れた。展開されたサブメニュー名は「aaa」。
 開発中の状態かテスト機であれば、単に追加予定のサブメニューに仮の名称を振ってある、ぐらいにしか思わなかっただろうが、これは明日のセレモニーで来場者が使用するリリースバージョンだ。こんなメニューが残っていることなどあり得ないし、白川さんがそれを見逃すなど、もっとあり得ない。
 タップすると、小さなダイアログが開いた。

dialog.png

 テキストボックスとボタンがそれぞれ1つずつ。シンプルすぎるダイアログだ。私は東海林さんを呼んだ。東海林さんはすぐに席を立ち、気晴らしにか、細川くんもついてきた。
 「これ、何でしょうね」
 開いたダイアログを東海林さんに見せると、不審そうに首を横に振った。
 「見たことないな。何か入れてみろ」
 「何かと言われても......」
 「aaa とか」隣から覗き込んでいた細川くんが言った。
 誰も代案を出さなかったので、私はソフトウェアキーボードを出して、a を3 回入力した。入力した文字はアスタリスクでマスクされたから、何かのパスワードだ。ボタンを叩いたが入力した文字が消えただけで、何も起こらなかった。
 「パスワードがわからないとどうしようもないですね」
 「その謎ページのソースを調べてみろ」
 私は頷いて自分の席に戻った。細川くんが羨ましそうな顔を向けた。
 「よかったらぼくがやりましょうか」
 「あんたは作業を続けてなさい」
 そう返しておいて、私はブラウザを開いた。
 Vilocony 環境でブラウザに送られるHTML には、厳密な意味でのソースファイルがない。複数のコンテナをコーディネータが組み合わせて、出力するHTML を生成するので、HTML と一対一で対応しているテンプレートは必要とされないからだ。それでもHTML としての制約を逃れることはできない。ページのソースを参照すれば、何をやっているかの手がかりは掴める。
 問題はページソースが大量になりがちなことだ。この小さなダイアログでも400 行以上ある。各タグのid も人間が読むことを前提としていないから、"df09_r0111_ppr_13222_nn_989" のように法則性がない上に、表示されるたびに変化するので追いにくい。私はページソースをコピーしてエディタに貼り付け、所々に自分のメモを入れながら、処理の流れを追っていった。
 20 分後、私はタブレットを持って東海林さんの席に行った。高杉さんや草場さんも集まってきた。
 「ここにパスワードを入力すると」私はソースを見せながら説明した。「このsr0100TTpoi009878321Fb というコンテナ、まあ実体はサーブレットだと思いますけど、それにURLEncode したパスワードを送信しています。少なくともダミーではありませんね」
 「命名規則に従ってないな」東海林さんは唸った。「正規のコンテナじゃないわけか。おそらく動的に生成されるんだろうな」
 「そのパスワードを知ることはできないのですか」
 高杉さんの質問に、私たちは揃って首を横に振った。舌打ちした高杉さんは、鳩貝さんにも同じ質問をして同じ反応を得た。
 「では、正しいパスワードを入力したら何が起こるのですか」
 「想像ですが」東海林さんが答えた。「白川さんが見せたい何かは、現在のところ、production 環境のあちこちに、暗号化されたファイルとして存在しているのではないかと思われます。正しいパスワードを入力すると、それらが実際に動作するコンテナに復号されるんじゃないでしょうか」
 「確かですか」
 「想像です」東海林さんは繰り返した。「ただ、このaaa は、少なくとも昨日の夕方まではなかったはずです。白川さんが追加したんでしょうね」
 高杉さんは頷き、それでどうするのか、と問うように私たちを見回した。
 「たとえば」私は思いつきを口にした。「このメニューを消してしまうというのはどうですか。メニュー項目はリソースファイルだから、編集は簡単ですよ」
 「今は止めておこう。だが、その準備だけはしておくか。いざというとき、一発で消せるように。おい、細川」東海林さんは呼びかけた。「リソースファイルの変更スクリプトを書いておけ」
 細川くんは違う作業ができる喜びに顔を輝かせて頷き、キーを叩き始めた。
 「それより少し考えてみろ」東海林さんは私に言った。「白川さんは、どこからこのパスワードを入力するつもりだったんだと思う? それが可能なのはどこだ?」
 「production 環境に接続できるところですよね」私は考えながら言った。「まずコマンドルームですね。でなければセレモニー会場か」
 「もしかすると」草場さんが言った。「白川さんは、何食わぬ顔でセレモニー会場に現れるかもしれませんね。KNGSSS の中身が入れ替わっていることに気付かれるとは思っていなかったでしょうから」
 「ああ、その」高杉さんが決まり悪そうな顔で口を開いた。「おそらく、白川はもう気付いているはずです」
 「どういうことですか?」
 「この開発センターには、監視......いえ、防犯カメラが設置されています。集音マイクも。私や白川、それにサブリーダーはいつでもそれらを参照できます。スマートフォンの専用アプリが入れてありますから」
 「え」私は驚いた。「じゃあ、ひょっとすると、今、この会話も聞かれているかもしれないってことですか」
 「さきほど、白川が自宅にいないとわかったとき、外部からのアクセスは無効にしました。ただ、それまでは聞かれていた可能性があります」
 「言っておいて欲しかったですね」東海林さんは言ったが、それほど気にしている様子ではなかった。「まあ、たぶん白川さんは、最初からセレモニーには出ないつもりだったんだと思いますよ。だから今夜、連絡を絶ったんです。セレモニーに出席したら、KNGSSS についての紹介やら、質疑応答やらに忙殺されるでしょうから、タブレットを使ってる時間なんかないでしょう。だから、誰にも邪魔されない場所にいるはずです」
 そのとき私は気付いた。
 「あ、あの、白川さんの居場所について心当たりが」
 周囲の人間が一斉に私を見た。
 「どこだ」東海林さんが訊いた。
 「くぬぎ南中学校の横の地域防災センターです」私は高杉さんを見た。「確かネットワークがつながっていますよね」
 高杉さんは頷いた。
 「行政オンラインシステムが通っていますから。まだ内装工事の最終段階ですが、インフラは一通りつながっています」
 「電話は?」
 「来週の予定です」
 「そこに監視カメラはないんですか」
 東海林さんが皮肉な口調で訊き、高杉さんは睨み返した。
 「ありません」
 「では、直接足を運んでみるしかないですね」東海林さんは当然のように私を見た。「川嶋、頼む。細川、車で送れ」
 「行くのはいいんですが」私は立ち上がりながら言った。「白川さんがいたとして、どうすればいいんでしょう。ぶん殴って止めるんですか」
 「他に方法がなければな。臨機応変にやれ」
 不安な気持ちを抑えて私は頷いた。すでに細川くんは出かける準備をしている。私はコートを取りにロッカーに向かった。

(続)

 この物語はフィクションです。実在する団体名、個人とは一切関係ありません。また、特定の技術や製品の優位性などを主張するものではありません。本文中に登場する技術や製品は実在しないことがあります。

Comment(53)

コメント

VBA使い

「ここにパスワードをを入力すると」
川嶋さん、お疲れですね。

「冷たい方程式」の、亀井くんを思い出します。

dd

なるほど、システムを丸ごと削除しなかった理由もどうやら今回で回収っぽいな。

>「白川さんがいたとして、どうすればいいんでしょう。ぶん殴って止めるんですか」
> 「他に方法がなければな。臨機応変にやれ」
白川に肉弾戦を挑まざるを得ない状況に陥ったら、その時点ですでに詰みなのでは……。

こういう

>「先ほど、白川さんが何の目的でこんなことをしたのか、と問いかけましたね。その疑問をもう少し発展させてみましょう。白川さんのゴールは何でしょう」
今回みたいな場でこういうセリフ吐く奴むかつくわwwwwwwww
探偵ごっこや言葉遊びは余裕のあるときにやれってね。

匿名

白川女史が生命を削ってまでやりたかったことは何だったのか?
その答えは来週・・・! または再来週・・・!

匿名

今枝、見事に空気…。

匿名

ライアットガンを持っていこう(提案)

こういう全貌が見え始めるプロセスはぞくぞくしますね
防災センターで川嶋さんが「ココには人間なんていないよー!」と叫ぶのか「貴方を逮捕します」となるのか

匿名

↑パトレイバーかいww

匿名

複合→復号

dd

それにしても、このストーリーはどういうオチになるんだろう。

状況証拠だけでも黒に近いグレーなのに、もしセレモニーで何かやらかすところまで漕ぎ着けたら、衆人環視の状態である以上言い逃れやもみ消しは不可能な状態になる。
白川は威力業務妨害罪あたりで警察に逮捕されるのは、もはや覚悟の上なのかな。

匿名

ドアに挟まったままの一戸さん・・・

SQL

「ごきげんよう」ってなんとなく白川さんらしいなあw

匿名

無粋ですね
なんのために一戸なんて命名されたと思ってるんですか

匿名

細川くんと川嶋さんの二人だけに行かせるの?ちょっとあまりに危険というか、心配じゃないのかな?

匿名

>ddさん
なにせ"殉教者"ですから。逮捕どころの覚悟じゃないのでは。

匿名

>ちょっとあまりに危険というか、心配じゃないのかな?


相手は、最近は消耗しているとはいえ、
素手でモニターを真っ二つにする技を持つラスボスですからねー。


川島という狂言回しを次の舞台に移動させる、
という言い方では身も蓋もないですが。

匿名

謎は解けるかもしれないですが、
これ、復旧無理じゃないですかね

匿名

1.自爆プログラムを起動させた端末のそばで白川さんが息絶えてる
2.Z化した白川さんが襲ってくる
3.ハウンドの工作員が何かやってる

さぁどれだ?

匿名

>>ちょっとあまりに危険というか、心配じゃないのかな?

同感。
白川は殉教者としての覚悟まで決めているようだし、川嶋や細川が計画を阻止しようと動いたら、最悪二人を「物理的に排除」することもすでに辞さない状況と見るべきだろうし。
(ついでに、白川もやろうと思えば「物理的に排除」することが可能な能力を持っていることは、これまでの描写より明らか)

いくら内密に動きたいとは言え、高杉や東海林もせめて密かに警察に連絡して二人に同行を求めるくらいはやるべき状況なのでは。

文左衛門

いや、まだ伏線としてチャット機能がのこってますぜ

リーベルG

VBA使いさん、匿名さん、ご指摘ありがとうございました。

匿名

選択肢に
4.防災センター近くの崖でタブレット持って佇んでる白川さん
がありませんよ?
 #「さ~♪ねむり~なさ~い~♪」が脳内に流れたら同年代
 
キーパーソンはユウト君かな?
こんだけ話に絡んできて、もう出てこないとか火○スならありえない
実は亡くなった若宮さんの子供…とか
今頃、例の資料一時保管所あたりにいるんじゃないかと妄想
 
チャット機能は「zz0ker」の子プロセスなんじゃね?
川嶋さん、チャット機能作ってるつもりで片棒担がされたと…
白川さんは化物だけどエース人だから実装スキルはないはず
でも、あくまで「チャット」と称して設計すれば、川嶋さんなら作るでしょ
 
夜は妄想が捗るなぁ

BASS1

パスワードがKIDSだったりしてね。。。
というか、妄想のネタに尽きないいい小説だ。

文左衛門

いや、まだ伏線としてチャット機能がのこってますぜ

ウェルザ

ここまで読んでて昔TBSでやってたクイズってドラマ思い出して配役が変わらなくなったwいい演出だと思う
そこに上にもあるようにパトレイバーと攻殻機動隊のソースをまぶす
次回「じっちゃんの名にかけて真実は常に1つ!」

匿名

警察なんて、ファンタジーどころか興醒めですよ。

でも、川島さんのことなら心配ないですよ。
なんと言っても、彼女はこの物語の狂言回しなんですから♪

チャットは、通信相手が必要だからなあ。
エピローグで使われる小道具なのかも。

匿名

興ざめというならばメタ考察も同じことなのでは…

匿名

まあ興ざめ云々はどうでもいいけど、警察なんか呼ぶのは高杉さんあたり絶対許さないのでは
それにいるかどうかもわからないなかで、ぎりぎりのリソースも割けないといった判断のもと二人に行かせたということで納得できるけどな
読者目線だから危険とかそういう思考になりがちだけど、実際自分の日常のなかで起こった事件に対してすぐに危険を考えるような対応になるかは人次第な気がする

匿名

僕が白川さんだったら、
・0時に防災センターに行って、仕掛けのテスト実施
・テストが終わったら、いったんホテルに戻って仮眠
・セレモニー前にまた防災センターに行って、仕掛け起動
するなあ。
深夜2時頃に踏み込んでも、誰もいないのでは?

匿名

スタンバイ環境にはzz0kerいかなった?見落としてる?

匿名

>深夜2時頃に踏み込んでも、誰もいないのでは?
仮にその時いなかったとしても、朝方まで張り込みを続けていれば、やってきたところを問いただすくらいはできるのでは。

実は防災センターの端末から、セレモニー最中にスクリプトを叩くようなプロセスがすでに走っていて、
白川はもう防災センターに顔を出す必要すらなくなってる、ってパターンだと厄介だけど。
(もちろん開発センターの zz0ker プロセスと定期的にハートビートを送り合ってて、
ハートビートが途切れても zz0ker が破壊プログラムを起動する仕組みで、防災センターのネットワークからの切り離しを牽制しておく)

……ただそう考えると、わざわざ GUI 画面からパスワードを入力しなきゃ仕掛けが動かない、って仕組み自体が冗長な気もする。
やはり上の考察でもあったとおり、パスワードの入力先にはチャット機能があって、
チャット機能を見せるのが白川の最終目的なのかな。

user-key.

zz0kerってダブルでZがokな人って事?

匿名

この仕掛けを白川さん自ら実装したとは考えにくい。
プログラマに協力者がいるはず。
草場さん、なのか?

匿名

元々コンテナ1つじゃ何のパーツだかわからん粒度だから
協力者いなくても適当なチケットで各々にコンテナをアサインして
それを白川さんがコーディネートすりゃできないかな
でも、これでいけるのは単体テストまで
それ以降のテストは…ああ、そのために2日止めたか
 
グリーンリーブス社ってなんか意味あんだろなーって思ってたけど
Greensleevesか…うひゃぁ

esx

前から思ってたけど、この連載だけ、なんでコメント欄「匿名」が多いんだ?
名無しでレスされるのが嫌なら低レベルなコメント書かなければいいのに。
前に「ここの読者は小説読んだことない」って繰り返していた春休みの大学生がコメント欄にいたけど、警察(笑)とか白川に川嶋が殴られる(笑)とか、情操教育足りていれば有り得ない妄想をよくまあ平気でできること。

匿名

>前から思ってたけど、この連載だけ、なんでコメント欄「匿名」が多いんだ?

単純に、他コラムと比べてコメント数が突出して多いから、自然と「匿名」も多くなるだけだろう。

>情操教育足りていれば有り得ない妄想をよくまあ平気でできること。

みんな好き勝手に書いているんだから、そりゃ自分にとってはつまらないコメントもあるだろうよ。
中でも一番つまらないのは、他人のコメントを「低レベル」とか言って、こんなところでマウンティングしている野郎だよな。

匿名

白川さんに川嶋さんが殴られるなんて、そんなコメントありますか?
東海林さんは白川さんに殴ってでも止めろ!と言ってますけどね笑

匿名

>名無しでレスされるのが嫌なら低レベルなコメント書かなければいいのに。

つまらんコメントすれば突っ込まれるのは名前があってもなくても同じだし、
そもそもいくらでも使い捨て可能な文字列なんて匿名と大差はない。
低レベルなのはそんなことも分からんあんただろ。

匿名A

匿名でも何でも良いけど、ここはコメント欄で議論が多いので
単純に誰に対してのレスなのかがわかりにくい、、、とは常々思います。
少なくとも他人に対してレスするならちょっとは考えてほしいと思う。。。

>匿名 2018/05/18 09:52 さん

とか面倒じゃないですか?

匿名

殴られる、は、白川さんが素手でモニターを叩き割ったのに絡めたネタ、
ていうか、んなもん、いちいち解説が必要かな。


>少なくとも他人に対してレスするなら


個人に対してではなくて、場に対してと考えたらいいのでわ。
カタリなんていくらでも可能な掲示板で、個人なんて無意味。


かく言う私は、警察への通報をファンタジーだ興醒めだって書いたものです。
うまいアオリは大歓迎だが、
この時点で警察だなんて、現実でもありえません。


川島さんは、デウス・エクス・マキナから、
この物語の狂言回しを仰せつかった方なのです。
そんなひどいことになるはずがないでしょ。
あ、小説を読んだことがない連中ばかりなのか、と書いてたのもワタシです。
ちなみに大学生じゃありません。


ふむ、ようやくコメント欄もエンジンがかかってきたのかな?
いつもなら、弓削の擁護者とか湧いてるところが、今まではいなかったからなあ。

匿名

いやいや、川嶋さん危険とコメントしてる人たちは殴られるんじゃないか?!なんて具体的なシーンを想像してコメントしてるわけじゃありませんよ。
ここまで何ヵ月もかけて、用意周到にこの日のために準備してきた白川さん。未知のプロセスをkillしようとして出た攻撃的な警告。どなたかが書いてましたが目的の達成のためには暴力も辞さない、自分の体も省みないほどの覚悟。こういう背景があるなかで、なんの力もない二人だけに不用意に計画を阻止させに行かせて、どんな危険に曝されるのか。その読者の不安が次回、どんな形で回収されるのか、楽しみにしているわけです。
普通に考えてそんな危ないところに二人で行かせるなんて現実的にありえない、などと作者の構成に文句を言ってるわけではありませんよ。
警察への通報は揶揄でしょう。そのくらいしてもおかしくないくらい、川嶋さんたちの身の危険を感じると。

匿名

A「川嶋さん危ない!」
B「相手はあの白川さんだよ?!絶対なにか起こるって!」
C「東海林さんももうちょっと考えてよ!なんなら警察呼ぶとかさ!」
D「お前ら狂言回しって言葉知ってる?てか、小説読んだことないの?主人公が本気でそんな目に遭うと思ってるの?ましてや警察とかさぁ…ありえないって(笑)」
A・B・C「…」

匿名

esx氏の人気に嫉妬。

匿名

小説の中の出来事に対して、感想や考察を述べる際に、
「狂言回し」とか「機械仕掛けの神」とか、そういうメタ的な要素を持ち出すのは、
只の思考停止であって、小説の読み方を分かっている人間の所業とは言えないんじゃないかと、
あまり小説を読まない俺みたいな人間は思うんだけど、どうだろう?

匿名D

>小説の読み方を分かっている人間の所業とは言えないんじゃないか


じゃあ「正しい小説の読み方」って、なんなんだ?
それを提示しないと、議論にならないよ。
国会で対案を出さない野党とおんなじレベル。


警察の介入の望むのを、ファンタジーと表現したのは俺の間違いだな。
登場人物たちに寄り添っているつもりの人たちの、優しい願望なんだろう。
だからこそ、とても幼稚なわけだが。


フィクションなんて、登場人物の喜怒哀楽をしゃぶりつくしてナンボ。
どこからでも、何度でも繰り返しかぶりつける。
そのときに、メタ視点が役に立つのよ。
思考停止なんてとんでもない。
名作などはそれ故に、何回も読み返され、長く出版され続けるのだ。

匿名

「○○といった理由で、警察が介入するとか、川嶋さんがやられるといった展開はないだろう」と
自分で考えて結論付けるならまだしも、「彼女は狂言回しだから有り得ません、以上」で済ませてしまうのは、
俺には思考停止していることの証左に見える。

「川嶋さんは舞台装置だからそんな展開は有り得ない」というのは、
そりゃ確かにその通りだし異論はないけど、
でもそれはこの小説内の出来事を無視した理屈だろう。
ちっとも「登場人物の喜怒哀楽をしゃぶりつくして」いないし、
「メタ視点が役に立」ってもいない。
そんな有様で、他人に「小説読んだことあるのか?」なんてエバる権利があるのか?

匿名

連投になってすまない。

警察の介入や暴力沙汰には至らないであろうことの理由は、例えば
・高杉さんがそれを許容しない
・白川さんが既に手を打っていて、暴力に訴えようがもう遅い
といったものだろうか。少なくとも登場人物たちにとってはね。

この物語はたまたま川嶋さんの視点で語られてはいるものの、
細川くんとかが主人公だったとしても成り立たないわけじゃない。
仮にこの物語の視点が他の誰かだったら違う展開になってたのか? そうじゃないだろう。
「川嶋さんが舞台装置だから云々」というのは、
この小説内の出来事(=あんたの言う「登場人物の喜怒哀楽」も含めて)とは関係のない、メタな話だ。

小説内の出来事と、作品全体を俯瞰的に見た考察とは、分けて考えるべきだ。
作中の出来事を語る上で、楽屋裏的な事情を持ち出すのは単なる逃げであり、
「機械仕掛けの神」という名のアンチパターンだと俺は思う。
それを幼稚な詭弁だと言うのなら、見解の相違というやつで、これ以上の問答は無意味だな。

匿名D

俺のことを分析してどうしようってのよ。
国語の問題じゃあるまいし。


「このままじゃ人魚姫が死んでしまう。
 王子様も死なせたくない、二人で幸せになって欲しい! なんとかして~」
なんて子供が駄々こねてたら、君も笑うでしょ。
コメント欄の前半で起きていることは、そういうことだよ。


ここで警察が出てきてしまっては、
この物語は、白川さんのものではなくなってしまう。
フィクションとしては、それはあり得ない。
リアルでも、何が起きているのか
当人たちが説明できない状態で、警察が動くなんてあり得ない。
だから幼稚で興醒めだっつってんだよ。


>でもそれはこの小説内の出来事を無視した理屈だろう。


舞台装置を舞台装置として扱って何が悪いんだ?
そちらこそ、小説をリアルのように扱えと、特定の読み方を
強制してるんじゃないか。
俺にいわせれば、それこそ入れ込みすぎて気色悪い。


>ちっとも「登場人物の喜怒哀楽をしゃぶりつくして」いないし、
>「メタ視点が役に立」ってもいない。


根拠も示さず一方的に却下って、そちらこそ何様のつもりだ。


まったく、書き捨ての掲示板じゃなきゃ、
こんなくだらない議論はやってられんわい。

匿名D

2番目の投稿には、確定してから気がついた。
先の投稿にも触れてあるが、改めて繰り返しておこう。


そちらは、フィクションをリアルのように扱え、というんだよな。


俺に言わせればナンセンスな話。
お断りだ。

雲古

若宮さんがなんか絡んでくるのかなぁ

匿名

ABCDの話書いたものですが、自分はABCのように小説を楽しみますが、Dのように楽しむ方がいてもいいと思いますよ。人それぞれですからね。だけど、どっちが正しい読み方か、なんて論じるのはとてもナンセンスだと思いますし、まして相手の感じ方を妄想だ幼稚だ思考停止だなんて罵り合うのは、それは正しく間違いだと思います。
普通は、ABCはDに絡もうとは思わないと思いますし、逆もしかりです。

匿名

なんかこれだとコメントの議論やめろと言ってるみたいで何様ですね。すみません。色んな楽しみかたがあるということをわかってもらえたらと思いましたが、別にわからずともちっとも構いません。

匿名D

議論を分散させないために、
フィクションは徹底してフィクションとして扱う立場で書いたが、
警察云々については、ナンセンスだと判断する根拠をちゃんと書いたぞ。
思考停止なんて言われる理由は無い。


物語における登場人物の目線(リアル)を主張する割には、
彼らの安全が図られるような
ご都合主義(デウス・エクス・マキナの降臨)を期待しているよな。
これって、物語を登場人物たちのリアルとして扱う姿勢と矛盾する。


今回、俺が引っかかったのは、上記のちぐはぐさだ。

匿名

小説を読んだことある人は、子供の素直な感想をせせら笑うようになってしまうのか…
なら俺はそんな「小説」とやらは読んだことがないままでいいや

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