「WACATE 2010 冬」参加レポート(その2)――コミュニティ運営は大変だけど面白い
こんにちは、第3バイオリンです。
前回のレポートの紹介で「信頼と実績のレポート」と紹介されて、大変ありがたいと思います。また、「旅芸人テストエンジニア」というキャラクター設定もしていただけて、こちらも嬉しいかぎりです。
それでは「WACATE 2010 冬」レポート第2弾をお送りします。
■ ディナーセッション
1日目の終わりには夜のお楽しみ、ディナーセッションです。
前回の「WACATE 2010 夏」のディナーセッションで、わたしはバンド「3-PICT」のメンバーとして演奏をしました。今回も何かあるかな、と思っていたのですが、今回演奏はナシでした。前回のバンドメンバーの大半が今回は参加していなかったからかもしれません。
演奏があると、事前の練習が大変だったり、当日楽器や譜面などで荷物が増えたりするのですが、今回はそれがないから気楽かな、と思っていました。
しかし、気楽さ以上に、寂しさのほうが大きかったです。他の参加者からも「今回は演奏ないのですか、残念」と言われてしまいました。
今回は、実行委員長の池田 暁さんと山崎 崇さんが参加者の申し込みコメントをいじりつつフリートークを繰り広げる「オールナイトニッポン」のコーナーだけだと思っていました。
すると突然、クロージングセッションの講師である辰巳 敬三さんが前に立ち、「明日のセッションの予習をしよう」とおっしゃいました。
辰巳さんは「ソフトウェア・テストPRESS Vol.8」という雑誌の特集で、「ソフトウェアテスト・ヒストリー」という記事を執筆されました。タイトルの通り、世界のソフトウェアテストの発展の歴史についての記事だったのですが、その記事の番外編として、外国のテスト専門書の紹介がありました。
昔のテスト専門書は、表紙のデザイン性が高く、今見ても古臭さを感じさせないほどかっこいいのです。辰巳さんは、それを音楽雑誌のCD紹介のようなレイアウトで紹介したいと考えていたそうですが、印刷コストの関係でモノクロの記事になってしまったことをとても残念に思っていたそうです。
それでWACATEの参加者に、ぜひともカラーでご紹介したい、というわけで、iPhoneのカバーフロー画面でCDのジャケットが出てくるように、テスト専門書の表紙が出てくる自作プログラムを披露してくれました。それだけで参加者全員から歓声が上がりました。さすがです。
辰巳さんは、出版された時代ごとに専門書の表紙を出して、内容を説明してくださいました。かっこいいテスト専門書の表紙と、辰巳さんのわかりやすく楽しい説明のおかげでますますお酒がおいしく飲めました。
ディナーセッションの最後には恒例の抽選会がありました。景品にはテスト関係の冊子の他、辰巳さんが特注で作成したテスト専門書の表紙をプリントしたTシャツもありました。残念ながら、今回わたしには何も当たりませんでした。
しかし抽選とは別に、「WACATE 2010 夏」で講師をされた、東洋大学の野中 誠さんから参加者全員にプレゼントがありました。それはソフトウェア品質の国際標準「ISO/IEC 9126シリーズ」「ISO/IEC 14598シリーズ」のチーフエディタを務められた、元早稲田大学教授の東 基衞さんの最終講義の資料でした。クリスマス直前のサプライズなプレゼントに、参加者一同大喜びでした。
サンタさん……じゃなかった、野中さん、少し早めのクリスマスプレゼントをありがとうございました!
■ 夜の分科会
ディナーセッションの後は夜の分科会です。いくつかのテーマが設けられているので、好きなテーマのグループに加わって議論を繰り広げます。
私が参加したのは、このテーマでした。
「地域でWACATE/JaSSTをやるには」
WACATEのようなソフトウェアテストのワークショップ、JaSSTのようなソフトウェアテストのカンファレンスを関東以外の地域で開催できるか、開催するとしたら何が必要かを話し合いました(JaSSTはすでに関東以外でも開催されていますが)。
最初はWACATEとJaSSTの雰囲気の違い、地域ごとのIT系コミュニティの有無などについて話し合っていましたが、そのうち話題の中心は、「コミュニティ運営にあたっての主催者の心構え」へと移っていきました。社内と社外、両方のコミュニティを運営したことのある方が中心になって話してくれたことをまとめたいと思います。
まず、コミュニティを立ち上げるときには、次の2点を具体的に考えることが大切です。
- コミュニティが、誰をターゲットにしているか
- コミュニティの参加者が、参加後に何を思うか、どのような行動に出るか
そして、立ち上げたコミュニティが継続するためには「関わっているメンバーと『何をやりたいか』というイメージを共有できていること」ということが一番重要なのです。
コミュニティを長く続けていると「何のためにやっているのか」という当初の目的を忘れ、集客や収益など、目先の大変なことばかりが目につくようになってしまいます。そうなると、主催者のほうもだんだん義務感というか、嫌々ながら活動をするようになり、それが参加者にも伝わって気がつけば人がどんどん離れていってコミュニティは解散、もしくは自然消滅という事態になりやすいのです。
もうひとつ、コミュニティ活動を続けるうえで大切なことは、「参加者はもちろん、主催者も楽しむこと」です。主催者が楽しむには、まず自分の利益や欲望を満たすことが大切です。もちろん、「地域の発展のため」「参加者のため」という目的も大切ですが、まずは個人的な報酬がないと長く続けるのは辛くなります。主催者も人の子ですから。
それを考えると、WACATEは主催者である実行委員の方々も参加者と一緒になって楽しんでいる様子が伝わってきます。ワークショップの演習問題を作成するのだって、ものすごい労力だと思います。しかもそれを自分のプライベートな時間を使ってやっているのです。それでも、実行委員の方々が大変そう、辛そうにしているところは一度も見たことがありません。それどころか、アフロや猫耳を装備して(笑)とても楽しそうにしています。そういう姿を見ていると、わたしも楽しいですし、「また次回も来たい」といつも思います。本当に実行委員の方々には頭が下がります。
実はわたしは、現在新潟でコミュニティ(厳密にいうと少し違うのですが)の立ち上げに携わっています(詳細は後ほど、コラムでお話ししたいと思います)。正直言って、やることが多くて大変だと思うこともありますが、この分科会での議論を通して、応援してくださる方がいるし、新潟のテスト業界を盛り上げたい、それにコラムのネタにもしたいので(笑)、絶対に成功させようと心に誓いました。
ちなみに、他のグループもデシジョンテーブルのセッションの復習をしたり、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式のスピーチの映像を流したりして、かなり盛り上がっていたようです。毎回思うのですが、分科会ではいつもひとつのグループで話しているので、他のグループの様子が少ししかわからないのがちょっと悔しいです。
レポート第2弾はここまでです。参加レポートの途中ではありますが、これが今年最後のコラムになります。今年1年、わたしのコラムを読んで下さった読者のみなさん、ありがとうございました。来年も、よろしくお願いします。