各種技術や、FPでもあるSEから見たIT業界のコラムです。

FT-1_リターン15%

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 どうも溝渕です。みなさん、ご機嫌いかがでしょうか。前回に掲載されてからすぐ「見たよ」と話しかけられました。@ITは読まれているんですね。

 さて、IT業界で「見える化」という言葉が使われて久しいですが、FPとして出会うさまざまな言葉は、一見「ツン」としたイメージで、中身が見えにくいように思います。しかしそんな言葉の中には、知れば「デレっ」とする魅力的なものがたくさんあります。今回は、そうしたものを噛み砕いて紹介します。

■確定拠出年金

 みなさんの会社は、確定拠出年金を導入しているでしょうか?

 確定拠出年金とは、「定額」を積み立て、その「運用成果に応じて」将来受け取る年金制度です。福利厚生の1つとして企業が拠出する「企業型」と、そうではない「個人型」があります。運用については「安全資産」を選択することもできます。

 「個人型」は名前のとおり、個人がお金を出して積み立てます。「企業型」は、以前は企業拠出のみでしたが、2012年1月1日より「企業型」においても、追加で個人の拠出が可能な「マッチング拠出」がスタートしました。ただしマッチング拠出は、その制度を企業が導入している場合のみです。

 今回は「企業型」の「マッチング拠出」部分と、「個人型」について、それらを活かして資産を形成する方法をお伝えします。

■年利15%

 確定拠出年金に積み立てたお金は、例外を除いて60歳からしか受け取れません。これは老後の資産形成を目的としているからです。その代わり転職時にも積み立てや運用を継続できる特徴があり、さらに税制面で非常に優遇されています。

 今回は「積み立て」を生かす方法をお話します。運用については、ドルコスト平均法、長期運用における幾何平均、有効フロンティア曲線などを知って活用すれば、成績を伸ばすことが可能かもしれません。そうした物を知ればさらに魅力的になるでしょう。

 マッチング拠出が可能な企業型を導入の従業員、または「個人型」に加入可能な方(企業年金等に加入していない厚生年金被保険者、国民年1号被保険者)は、知っておいて損はないと思います。また、マッチング拠出制度は始まったばかりですので、今は導入されていなくても今後導入される可能性があります。

 ここからが本題です。結局どのぐらいお得なのか、気になるところだと思います。

 もし、個人型で月額1万円拠出したら、年額12万円積み立てることになります。30年間積み立てたなら360万円です。

 本来は運用損益なども関係し、運用損益は物価上昇などにも影響を受けます。安全資産を選択しても360万円よりは増えるはずですが、運用については省略します。

 さて、年間12万円積み立てると何が起こるでしょうか。

 年間1万8千円、30年で54万円が還って来るのです。

 なんと、15%のリターンです(注:最終的な所得税、住民税の所得割部分がともに0円超の人の、最も低い値)。

■年利15%の仕組み

 確定拠出年金において各人が拠出した費用は、所得税と住民税においてともに「小規模企業共済等掛金控除」として「全額所得控除」されます。

 働いている人で所得税が0円や、住民税の所得割部分が0円という人はほとんどいないと思いますので、今回はその前提で進めます。

 所得税は超過累進課税を採用しており、所得が多い人ほど税率が高くなります。そして最低税率は5%です。

 住民税は定額となる均等割部分と、所得に応じた所得割部分があり、所得割部分の税率は10%です。

 つまり、所得税や住民税の基準となる所得がいくらか減ると、最低でもその15%が手元に残ることになります。ただし、住民税は前年の所得に応じて決まるため、住民税部分は遅れて手元に残ります。

 年間15%といえば、高度経済成長期の経済成長率を凌ぐ数字です。利用しない手はありません。

■ポイント

 所得税率が5%(課税所得195万円以下)~40%、住民税の所得割が10%、合わせると所得に掛かる税率は簡易的に15%~50%と見ることができます。

 「収入>給与所得>課税所得」という関係が成り立ち、統計データの平均年収などから見ると半数以上の層が課税所得195万円となるかと思います。よって「所得が○○円控除される」とあればその15%自分に還るのだと、簡易的に計算できます。もちろん、所得が高い人の場合税率が高いので、返還率はさらに高くなります。

 このように、知れば「これは良い」と思う制度はたくさんあります。こうしてFT(ファイナンシャル・テクノロジ)を見える化をすれば、それがWebサービスを通じて広がっていくかもしれません。ITとFTがうまく合わさればもっと便利になる――そんな風に考えています。

 世の中、何が起こるかわかりません。突然、扶養家族が3人増え、定期代や生活費に苦心する……そんなケースがないとは言い切れません。そんな時のためにもFTスキルを高めていきましょう。

 

■留意点

 今回のケースでは、受取り時に一時金で受取った場合に、退職所得控除が1500万円(40×20+70×10)となります。すると他の退職所得がなければ受取り時に税金は掛かりません。その他簡便さのために省略している点があります。

 また、各種控除によっては所得税のみや住民税にのみに適用されるものがあり、両方に適用されても控除額が違うものもあります。

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