キャリアを立て直す方法について書いていきます。

マレーシアでの就職

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 マレーシアのコールセンターで、日本顧客向けのITサポートを行っているヨンと申します。今回は、マレーシアでの就職についての実体験を書いていきたいと思います。

=仕事について=

・職種

 製造業、日本人向けのコールセンターサービスなどが主です。最近、サイバージャヤという場所にマレーシアのシリコンバレーを作ろうという試みがあり、R&D の拠点にしようと政府も人材育成、海外のIT企業の誘致などに力を入れているようです。

 サイバージャヤには日本人向けのコールセンターが多数あり、人材会社によると、こういう求人案件のほとんどは日本のビジネスマナーが身に付いており、きちんとした敬語が使える人を求めているとのことです。比較的なまりの少ない日本語を話せるマレーシア人も多く、日本にいる時よりも日本人らしく、きちんとした日本語が話せることが求められます。

・地域と働く場所について

クアラルンプール市内であれば、モノレールなどが通っているため、通勤にそれほど苦労はしませんが、サイバージャヤに就職してクアラルンプールから通う場合、9時始業のために5時起きで通わないといけないことがあります。クアラルンプールからKLIAエクスプレスという高速電車に乗り、サイバージャヤ・プトラジャヤ駅で下り、そこからタクシー(なかなか捕まらないとのこと)または、1時間に1本来るか来ないかのバスに乗って数十分~1時間という距離に会社がある場合が多く、通勤に片道2~3時間ほどかかってしまうのです。サイバージャヤで働くには、かなりの根性が求められます。

・条件

 製造業の給与相場が5000~7000マレーリンギット(1リンギット=約25円として、12万5000円~17万5000円くらい)コールセンターの相場が、7000~8000リンギット(17万5000円~20万円くらい)で、会社によっては残業代が出ます。プラスボーナスが1か月分ずつ、夏と冬に1回というところです。

 残業が出る分、残業込みである中国広東省の製造業よりはマシと言えます。私の経験では残業代が出ない場合、残業するように上から言われましたが(つまり、こき使われる)、残業代が出る場合は、逆に残業はしないでほしいと言われました。入社前に残業代有無について、会社側ときちんと話し、明確にするべきです。

=生活について=

・住居

 単身者の日本人のほとんどが、クアラルンプールにワンルームアパートを借り、仕事に通っています。大体の相場が2000マレーリンギット(5万円くらい)で、そこそこのコンドミニアムの1部屋が借りられます。フラットシェアをすれば、1000リンギットくらい(2万5千円くらい)で借りられないこともないですが、現地の人とシェアした場合、騒音、生活習慣の違い、電気代、ガス代を折半する際に不公平感を感じるなどの問題が考えられるので、避けたほうが賢明と言えます。

 フラットシェアに慣れている、イギリスやシンガポールでは全く問題ないのですが、マレーシアでのフラットシェアは、かなり危険度が高いです。安物買いの銭失いになります。入居の際にかかるのが、家賃2カ月分の敷金と、家賃半月分の設備保証金、500リンギット前後(1万2千500円くらい)のエージェント代です。また、契約が1年単位となっており、その前に退去する場合は敷金が戻ってきません。また、契約が切れる2カ月前からその敷金を使って家賃を支払い、相殺する形となります。この縛りは、かなり面倒です。1カ月前転居通知で敷金が戻ってくる日本やイギリスと違い、固定された契約期間が守れず敷金を失ってしまうというリスクが高いです。

・気候

 1年中暖かく、日本の8月まっただ中という気候です。ただ、暑くても36度くらいで40度になったり、40度を超えることはめったにないようです。来たばかりの時は、灼熱に燃えている気候と湿気の多さにばてるかもしれませんが、そのうちその気候に慣れてきます。1年中、緑が冴えていてきれいです。

・食事

 豚肉がないので、気軽に酢豚やトンカツなどが食べられません。日本食店に行けばメニューにありますが、高いです。チキンがメインの食材です。野菜炒め、スープも結構高く、手ごろな値段では食べられません。野菜炒めが300円、スープが250円など日本並みの値段で売っています。スターバックスコーヒーはグランデラテ320円など、これも日本と同じです。マレーシアの安月給水準から考えるとありえない値段です。

 刺身などは日系デパートに行けば売っていますが、これも小さいパックで1250円くらいしました。これは、イギリスの日系スーパーと比べると2倍ほどの値段でした。

 ただ、そこらにあるローカルのお店でも抹茶スイーツなどがGreen tea 系お菓子が多数あるのは、うれしいところです。

 薄暗い掘っ立て小屋みたいな地元の店でチキンを食べるのが好きな人にとっては願ってもない場所ですね。

・買い物

伊勢丹、ジャスコなど日系デパートに加え、パーキンソンなど中国系のデパートも複合ビルの中に入っており、ブランド物の服飾品、化粧品などたいていのものが揃うため、わざわざシンガポールまで出かける必要はありません。日本語の本も紀伊国屋書店クアラルンプール店で購入可能です。

 一番がっかりしたのが、クアラルンプールのセブンイレブンです。日本のセブンイレブンを期待して行くと、まったく別物なので品揃えに非常にがっかりします。

・娯楽 

 英語、中国語、マレー語学校があり、多数の語学を学ぶことができます。ツインタワーでおなじみのKLCCに大きな映画館もあり、マレー系やインド系のローカル映画が放映されています。スポーツジムや、バーなどにアフター5に立ち寄ることもできます。

 インターネット、Wifi は結構高く、1カ月3000円くらいします。かつ、登録初期費用として300円くらい取られます。電気代もエアコン代を節約したとしても、1カ月3000円くらいかかり、安くはありません。

=最後に=

・実際に働いてみて

 アジア好きには楽しく働ける国だと思います。電話面接だけで合格が出て、渡航費支給、マレーシアに来て1カ月間は会社のアパートに住んで部屋探しができるなど条件のいいところがいくつかあります。

 私は一度もマレーシアに来ることなく就職を決めてしまったのですが、一度は来ておくべきだったなと思っています。この国が好きと思えるかどうかを見極めてからでないと、あとから後悔しても遅いからです。

 また、一度来てしまったら嫌になったからと言ってすぐに日本に帰るということはできません。それは、マレーシア滞在日数が182日以下だと居住者と見なされず、30%もの所得税を払わないといけないからです。最低でも183日以上は滞在しないと多額の税金を納めることになります。どこに行っても1人は嫌な人がいます。モチベーションが下がることもあるかもしれません。それでも、マレーシアが好きで働き続けられるなら、行く価値はあると思います。

 マレーシアのいいところは、会社も多額のお金を投資しているし、マレーシアに来たがる日本人がなかなかいないことから、クビになりにくいことです。また、年齢に関係なく、スキルのある日本人を求めているため、年齢制限がネックにならないことです。

 ですが、今まで6カ月未満でクビになり、30%の税金を納めた挙句、会社に払ってもらった渡航費を弁償し、もちろんアパートの敷金も戻ってこず、ほぼ儲けのないまま帰ってしまった人、マレーシアに骨をうずめるつもりでやってきたものの半年あまりで辞めてしまった20代半ばの女性、うつになって帰ってしまった人、正月休みで日本に帰国したあと姿をくらました人など、多数の落伍者の話も聞きました。

 マレーシア人マネージャにしてみると、せっかくマレーシアに来たんだから、楽しく仕事をして、生活をして欲しいんだそうです。ステップアップを狙うとか、戦略目標を達成するなど、キャリアアップして行くのではなく、現状維持でのんびり楽しく平和に生活していければそれでいいじゃないですか、とのことです。

 私は、始めはマレーシアではなく、シンガポールで仕事を見つけたかったのですが、シンガポールは1次は電話でも2次は必ず現地で対面面接をしなくてはならず、マレーシアにいればシンガポールの面接連絡が来たとき日帰りでも行けるから、それまでのつなぎにいいかなと考えて来ました。

 しかし、現実は税金、マレーシアの物価は安いと言っても日本並に経費がかかって、思ったよりお金が残らないなどの問題に阻まれ、それほど自分の思惑どおりにはいきませんでした。

 アジア好きで、のんびり平和に暮らしたい人にはいい環境だと思いますが、だからといって軽い気持ちで来ることはおすすめしない。マレーシアはそんな国です。

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