IT技術者のためのスキルアップ研修の内容を一部公開します。

第2話:「交渉の目標設定」

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 前回は、交渉の目的と言うことについてお話ししました。

 「交渉の目的は“パイを大きくすること”、すなわち“共創”だとの結論でしたね」

 交渉の目的の次は、交渉の目標についてお話ししたいと思います。その前に1つ、基本的な言葉の意味を確認しておきましょう。

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問題1:  

“目的”と“目標”という2つの言葉は、ほぼ同じ意味で使われます
が、“目的”←→“目標”と対比してみると意味の違いが出てきます。
さてどのような違いでしょうか?

(制限時間2分)
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 「“目的”は抽象的、“目標”はより具体的な感じがします」

 そうですね。辞書によれば、

「目的(目標)に向かって着実に進む」のように、めざすものの意では相通じて用いられる。◇「目的」は、「目標」に比べ抽象的で長期にわたる目あてであり、内容に重点を置いて使う。「人生の目的を立身出世に置く」◇「目標」は、目ざす地点・数値・数量などに重点があり、「目標は前方三〇〇〇メートルの丘の上」「今週の売り上げ目標」のようにより具体的である(『大辞泉』)

 とあります。あるいはこういっても良いかと思います。

 目的は「何のために」ということであり、目標は「どこまで」ということであると。

 #余談ですが、動かないシステム、使われないシステムという話が良く雑誌等で紹介されますが、一番多い原因が「システムの目的が明確でなかった」というものです。

 目標だけあって目的がない状態は切ないものです。「とにかくテストで100点を取りなさい」と言われる小学生、「とにかく1億円の売上をあげろ」と言われ続けている営業マン、「なぜ、何のために」といいたくなりますね。

 一方で、目的だけあって目標がないと雲をつかむような話になってしまいます。「賢い人になりなさい」とか「優秀な営業を目指せ」といった具合です。

 ですから、目的と目標はセットで考える必要があるのです。

● 交渉の目標設定

 交渉の目標を決めるということは交渉においてのゴールをあらかじめ明確にするということです。交渉の場では「できるだけ高く支払ってもらう」とか「できるだけ早く仕様を確定してもらう」といった漠然とした目標ではいけないということです。

 例えば、「人月150万円まで」とか「仕様は今月中に確定してもらう」といったようにあらかじめ定量的に交渉の目標を設定する必要があるのです。そうすることで一貫した態度を維持し、相手に信頼感を与えることができるのです。

 もちろんすべての目標が定量的に表現できるわけではありません。「お客さんにYESといってもらう」「この提案書を経営会議にかけていただく」といった定性的な目標も存在します。ただし、その場合も目標とは“目”で見る“標(しるべ)”ですから、達したかどうかが分からないといけないのです。

 定性的な目標をチェックするために有効なのは、「その目標はビデオに撮れますか?」という質問です。運動会の徒競走で我が子がゴールを切る様子というのはビデオに撮れます。ゴールとはすなわち目標のことです。目標はビデオに撮れるくらい達成状態が鮮明でないといけないのです。

 交渉の目標を具体的に設定できるようになったら期限を設定するとなお良いでしょう。期限を設けることによって、締め切り効果が働き、取るべき交渉戦略が明確になるのです。つまり、良い目標には「いつまでに」「何を」「どれ位」という3つの要素があるのです。

■鉄則 目標はできるだけ○○的に設定する。

●交渉のリスクマネジメント

 また同時に、「このまま保守を続けただ働きをしてしまう」とか「仕様変更を押し切られバグが頻出して動かないシステムになってしまう」などの最悪の事態も想定しておきます。そうすることで最悪の事態での妥協策をあらかじめ準備することができると同時に「最悪でもこの程度」と肝を据えることができます。

 プロジェクトマネジメントの事実上の標準であるPMBOKでも、“リスク”は9つの知識エリアの1つとして位置づけられています。現役のプロジェクトマネージャたちが口を揃えて言うのはプロジェクトにおけるリスクマネジメントの重要性です。交渉においてもそれは同じなのです。

■鉄則 常に○○を想定し、最善を尽くせ!

 交渉の目的、目標と続いたところで次は具体的な交渉の方法をを見ていきましょう。

〈今回のまとめ〉

■鉄則 目標はできるだけ定量的に設定する。

■鉄則 常に最悪を想定し、最善を尽くせ!

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