とある社会人大学の教育課程(カリキュラム)【後編】
本コラムは前後編になる「とある社会人大学院の教育課程(カリキュラム)」の後編に相当します。
【前編】をご覧になっていない方は、ぜひそちらもあわせて御覧ください。
■デメリットじゃなイカ?
◯仕事との両立が難しい
メリットのところで「わりと周囲は協力して気を使ってくれる」みたいなことを書きましたが、やっぱり現実って厳しいので、ときには残業を余儀なくされたりもしますよね。そうなるとやはりしんどい。
特にこの業界では、暇なときと忙しいときの差が激しい傾向にあるため、仕事が忙しいときにヘビィな課題とか出されてしまうと、正直かなりつらいです。周り見てても結構無理してるよなあ……という人、多かったです。明らかにプライベートを犠牲にしてるような人もいて、そのたびに「何かを得るためには云々……」っていう等価交換の法則について思案にふけったりしていました。
話を戻しますが、やはり途中で退学した人も結構いたようで、卒業したときには定数の7割くらいになってました。これは大変です。もしも戦争だったら全滅判定ですよ。速やかに撤退して後方で部隊を再編する必要がありますよ。提督! ご決断を!!
……まあ、2年じゃなくて3年かけて卒業するコースを選択した人もいたりしたのでその辺の理由もあるんでしょうけどね(この素早いフォローが人気の秘訣)。
◯スキルレベルがバラバラ
極端な話、Tシャツ&ジーパンの新卒プログラマと「魔法定年マジカ☆間近」なOSSANが横に並んで授業を受けてたりするので、いろいろ困ったことになりがちでした。
例えば「仮想化」といえばIBMの汎用機しか知らないような御仁が「クラウドなど数十年前の技術の焼き直しでしかない」と声高に主張して(別に全否定はしませんけど汎用機時代の奴と一緒にされるのはさすがに)、ああ正直めんどくせえなあー……とか。
あと、入学してくるのは基本的に「何らかの問題意識を持った人」なので、それは結構なんですけど、「優秀な人がさらに上を目指して」の場合と、言っちゃ悪いんですけど「駄目な人が平均レベルを目指して」の場合の2通りがあり、まさしく業界の格差社会を絵に描いたようなメンバーでチームが組まれたりして、一言でいえばカオス。
そんなゆかいな仲間たちとやるグループワークは、たまにものすごくストレスフルでした。今風に言うと「ソウルジェムが濁る」って奴ですかね? しばしば「ぶっちゃけコレ仕事の方が楽なんじゃねーの」って思ったりとかして……。「――あたしって、ほんとバカ――」
◯コミュニケーションの問題にぶち当たる
上述のようなスキルレベルやバックグラウンドの違いだけでも正直面倒くさいのに、近年のグローバリゼーションの波が押し寄せたため、海外出身の方も結構な割合でいらっしゃいました。これによりコミュニケーションは、さらに複雑怪奇に。
彼らの日本語は非常に上手だったのですが、オフショアにおける諸問題のようなミュニケーション問題を当然のように発生させていたのが、とても印象的でした。やっぱ文化なんですかね。万能文化烏賊娘。
あとコミュニケーションといえばやはり、グループワークが鬼門でした。
まずはとにかく業務外での仕事を抱えないようにするために、殺伐としたタスクの押し付け合いが始まります。そしてなんとか担当を割り振っても「本業が忙しい」などの理由でスケジュールが遅れるのがデフォ。
時には途中で履修放棄するという大技や、成果物をマージしようにも、特定の個人担当部分が酷すぎるために大幅な手直しが必要になったりと、「なんでこんな面倒を仕事じゃないのに金払ってまでやんなきゃいけないのか」と会社の先輩に昼飯を食いながら長々と愚痴ってしまったこともあり、今すぐ消したい記憶の1つです。
あとは個人的に、卒論的なもので担当教諭とうまくいかなかったりした気がしましたが、そちらはもうサッパリと忘れましたのでよいです。ただそんな感じで、いろいろな面倒がありうるということだけは、覚悟完了しておくとよいかもしれません。
◯最新技術が学べるわけではない
勘違いしやすい人も多いんじゃないかと思うんですが、大抵の場合「仕事ですぐ役に立つような最新技術が学べるわけではない」という点は、特に注意すべきでしょうか。
僕の通っていた学校の場合、いわゆる上流工程中心にマネジメント手法(PMBOKは今でもトラウマ)やシステムアーキテクチャ、ビジネスモデリング手法にセキュリティ関連の話題などが中心だったので、今流行の特定の開発で必要な技術(たとえば今ならAndroid開発とかiPhone開発とかNoSQLとかNode.jsとかHTML5とか云々)を覚えたいとかいう理由なら、おそらく個人で勉強したほうがよいです。
もちろんソフトウェア開発の方法論なんてのもやりましたが、今風にJenkins使ってインテグレーションを自動化してMavenでライブラリ管理してRedmineでタスク管理しながらアジャイルでスクラムなう……みたいに実務ですぐに使える具体的なノウハウを学ぶ場ではなかったので、そういうのはあまり期待しない方がいいと思います。
大学というものは学術機関なので、やはり長期的に見て変動が少ない(いわゆる流行り廃りに左右されにくい)授業内容中心になりがちだと思うので、そういうものを体系的に学ぶには良いのかもしれません。ですが、そうでなければ(特にプログラマの場合)、普通に写経してコード組んだり、実際に動かしたりする方が身になると思います。
◯結局、コストに見合うかわからない
最後に。
大学院進学は自分への投資になりますが、相応のコストが伴います。
ですが、それをペイできるほどのリターンがあったのか? 正直今の僕にはまだ、はっきりしたことは言えません。
進学したことによって得られたものもありますし、失ったものも多分あります。 他人から評価されたのかどうかも、今ではよくわからなくなってしまいました。
ですがまあ、そこまで後悔していないのは事実です。 もしあなたが迷っているとしたら、1つの選択肢として、如何でしょうか。
■結論
ま、今の僕なら進学と深夜アニメだったら、当然深夜アニメを選びますけどねー。
だって、イカの娘かわいすぎるんだもの……。
はぁ……かわいいわぁ……(///)