地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

XP Modeを少しだけでも検証してみた

»

 前回、XP Modeに絡めて、開発側への不安を書いてみました。今回に至るまで少々時間が空いてしまいましたが、その間実機を用いて検証していたのでそのあたりから書いてみようと思います。

 検証に利用したPCのスペックは以下の通りです。

  • CPU:Core2Duo E8400
  • メモリ:4GB(2GB * 2)
  • HDD:500GB
  • グラフィック:GeForece GTX 120

 結論から書いてしまいますと「XP Modeは予想以上に使える」となりました。

 仮想化技術を用いて、となっていますので実機に触れるまでは「レスポンスがもっさりじゃないのか?」「起動するまで時間がかかるのではないのか?」といった点を不安に思っていました。しかしこれが、実際に利用してみると杞憂に終わってしまいました。

 初回起動時のみは10~20秒程、VirtualなXPを起動するための時間が発生しますが、1度起動すると次回からはほとんど気にならないレスポンスで、XP上のアプリケーションが起動してきました(1秒かからない程度の体感速度)。

 流石にGUI描写の面では仮想化を利用している点と利用しているRDPプロトコルのバージョンについて不明(探しきれませんでした)な点もあり、ウィンドゥのドラッグで追いつかないケースもありますがそれもほとんど気にならないレベルです。

 アプリケーションの動作自体も当然といえば当然ですが、今のところ問題が見当たらない状態でした。起動したアプリから別プロセスを起動しても特に問題なく動作しています。

 ただ少々気になった点は、仮想アプリケーション起動時ウィンドウ自体はアクティブとして描写されているにもかかわらず、実際はアクティブになっていないのでキー入力を受け付けないケースがあった点です。

 また配布の方法によっては手作業が追加で発生する事が判明しています。具体的にはWindows7へのショートカットの登録関連なのですが、検証した結果

「AllUsersのスタートメニュー」配下に「新規で作成」

しなければXP上に登録したショートカットは反映されませんでした。あらかじめ作成されているショートカットを、コピー&ペーストで設定しても反映しないという事です。

 そのため「ユーザー別にインストール」させるタイプで配布を行っている場合、手作業でショートカットを作成しなければならない事になります(これがRC版だけで発生する内容かどうかまでは、確認を取っていません)。まぁたいした事ではないのですが。

 そしてXP Mode自体で考えなければならない点というのもはっきりしました。当然といえば当然ですが、XP Modeで提供されるのは「仮想化されたPC」そのものです。いいかえると、ネットワークに普通に接続される新しいPCです。セキュリティソリューションの導入や、パッチの適用管理など管理するべき点が増える事は、仕方のないところだと思います。旧来のアプリケーションが動作するという利点と、管理対象が増えるという点とで比較検討する必要はあるでしょう。

 管理といえばもう1つ、ログインアカウントのパスワードも問題になります。通常であればログインしているユーザー情報を利用するのですが、XP Modeの場合それはできません。あらかじめ資格情報を保持しておくか都度入力させるかの選択となります。そうなると、パスワードポリシーにて適宜変更する必要がある運用を行っている環境では、事前にXP Mode専用に運用ルールを考えておかなくてはならないと思います(「ホスト側の資格情報でログイン」というオプションがわたしには見つけられませんでした。これがあれば解決するんですけどね)。

 ……と、ここまで実機による検証を行って思った点を書いてみました。

 XP Modeはユーザーにとって過去環境からの移行をスムーズに行える最終手段、という謳い文句にも納得する結果となっています。

 反面、開発側にとっては「Vista以降未対応」のソリューションを提供できる、悪魔の手段ともなっています。開発側に身を置くわたしとしては、XP Modeがあるからといって積極的に利用するという考えにはなりません。最終手段の言葉通り「次へ移るための道具」であり、ユーザーにXP Modeを日常的に利用させる事を推進してはならないと思うのです。

 ユーザー側にはぜひともXP Modeで利用する事を「当たり前」としてとらえてほしくないと思っています。ベンダー側がそれを言ってくるのであれば、そのようなベンダーとは付き合いを見直すべきでしょう。過渡期においてのみ利用する、その前提で利用しなくてはならないと思うのです。

 コストの面でXP Mode上の旧ソリューションを提供利用する事が選ばれることはあります。ですが将来を見越して考えると、旧資産を提供し続ける事はどこかでコスト増になることが「ほぼ」間違いありません。それは対応できる人材の減少であったり、環境を構築するための費用が高額であったりと色々な理由があることでしょう。そのような点に対して有効な手段を用意できない限りは、できるだけ早くに旧資産から脱却する事が必要なのです。

 わたしのスタンスとしては前回と同様、ユーザーやユーザー内情報システム部の様な方々がXP Modeを利用していくのは特に問題がないと考えています。ソリューションの販売、開発を行う側が、XP Modeに頼るような仕事をすることが「あってはならない」事だと考えています。ユーザーのためではなく自分たちのために利用するのは、根幹から間違っているのではないでしょうか。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する