地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

資格と免許

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 IT技術者向けの資格が数多く存在しているのは、皆さんご承知の通りだと思います。情報処理技術者等の国家資格から、MicrosoftやOracle、Sunなどが提供するベンダー資格などなど。あまりにもたくさんの種類が存在しているので、「○○という資格を持っています!」と言われても、すぐにイメージできないケースもあるのではないでしょうか。

 3年程前からでしょうか。ITSSの簡易スキル診断を利用してみてほしいという案内や広告があり、わたしも毎年行うようにしています。ちなみにITSSは「ITスキル標準」ETSSは「組込スキル標準」UISSは「情報システムユーザースキル標準」と、経済産業省(またはその委託団体)により、「日本初職業別スキルスタンダード」として体系だて策定されています。

 わたしが関わるのはITSSですので、毎年ITSSの複数分野にてチェックしていますが、なんというか、なかなか自分の成長が感じられない状態で毎年過ごしています。ネックは「貢献レベル」が他の分野に比べ少ない点のようで、「ああ、やっぱりか」と我ながら思ってしまうのが何とも……。

 さてそのような感じで広まってきていると思われるスキル標準ですが、実際にこれを利用されている企業というのはどれほどあるのでしょう。 ※まったくもって現実を知らないので「恐らく」ですが。

 一部の大手企業を除くと、それほど普及していないように思えます。特に中小企業、零細企業でITSSのようなスキル標準を導入して、社員の能力や技術を明確化しようとするところというのは、あまりないのではないかな、と思えます。また、受ける側の社員としても「このようなスキル標準が実態(実力)を反映することはない」という気持ちが強いのではないでしょうか。これは特にスキル標準に限定した話でもなく、資格全般にまつわる話題だと思います。

 IT業界という世界自体が、なかなか明確に技術や経験を表す事のできない世界だというのもあります。「経験年数と能力は比例するものではない」、と思う方も多いでしょう。同じように「資格を所有している事と能力も比例しない」と思われる方も多いと思います。この事は現場でよくある話題だと思います。役職などの肩書きも似たようなものでしょう。

「あの人は資格ばかり持っているけど全然ウデがついてきていないよね」とか、「あの人は技術がスゴイけど何も資格を取ってないよね」とか。もちろんどちらも持つ人、どちらも持たない人もいます。

 このようになかなか現場側では有効活用されていない資格ですが、「資格=技術、能力を表すもの」として考える以上どうしても発生する問題だと思います。そこでひとつ思うのですが、考え方を変え「資格=免許」という方向で活用をするというのはどうでしょうか。

 これもまた現実をそれほど調査したわけでもない思い込みですが、新人を採用する場面や中途採用を行う様な場面では、「資格=免許」的に扱うケースがそれなりに多いと思います。しかし既存社員などにはそのルールを適用せずに、新たに採用する人材とは別ルールで保護というか区別をつけているところが多いのではないでしょうか。

 わたしはITSSやその他の資格というのは、活用方法によってはかなり有益な仕組みだと思います。ただし能力や技術の明確化に主眼を置いてしまうのではなく、「業務を行うにあたり必要である免許」という考え方で扱うのがいいのではないでしょうか。

 運転免許と同じような考え方で扱えばいいと思うのです。運転免許というものも、所有者の技術をはっきりと明確に表現できるようなものではありません。ペーパードライバーな方、更には職業ドライバーな方も含め世の中にはたくさん存在します。ですがどちらも同じ免許を所有しているのです(ここでは第一種、第二種の違いは置いておきます)。そう考えると既存の資格を免許として扱う事も、あながち無理な話ではないでしょう。資格を「能力、技術を表すもの」として考えるから有益に利用できないという面はあると思います。

 免許として考えるという事は、例えば詳細設計を行うにはITSSで言うレベルxでなければならない、概要設計を行うには同じようにレベルyでなくてはならない、という使い方ができるということになるかと思います。現在のIT業界の現状を踏まえると、簡単に導入するというのは間違いなく不可能でしょうが、少しずつでもそのような使い方をしていくことが、業界自体の健全化につながる第一歩のような気がしています。

 もちろん、現在のITSSなどの資格定義で運用できるかという問題はついてまわることになりますが、そこは実際に利用してみてからでもいいのではないでしょうか。利用してみて初めて気づくことも多いでしょうから。

 今現在のIT業界はさまざまな問題が絡み合った結果、質の低下と思える事象が大分発生していると思います。それに対して、少しでも改善する方向に(わたしみたいな末端の人間も含めて)取り組んでいかなければ、今後ますます厳しい状況になっていく事と思います。
 ITが生活や企業活動になくてはならないインフラとなった今、そこに関わる人材もある程度の制限を設ける事は、何ら問題のない事ではあると考えます。

 「悪貨は良貨を駆逐する」、そうはならないように、わたしみたいな人間も努力していきたいものです。

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