その一 "いったん検索"をしてくれない人の話
初めまして、本日よりエンジニアライフでコラムを投稿させていただくことになりました、ハムスターのブロッコリーと申します。
新人エンジニアならではの目線で、感じたことや紹介したいことを投稿していければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
1.なぜ検索しないのか
これは私が「検索」について考え方を改めるきっかけになった経験談になります。
Salesforceエンジニアである私は、顧客からヒアリングした内容を基に、顧客の業務に沿ったSalesforceの構築を行います。
ある時、私が構築を行ったSalesforceを利用しているお客様から、このようなチャットをいただきました。
「ユーザーレコードってどうやって作成できますか?」
...いやいったん検索してよ。最初に出た感想です。
SalesforceにはSalesforce Helpというナレッジがあり、大概の手順やQ&Aはそこに記載されています。AI技術が進化しているので、Googleで「Salesforce ユーザーレコード 作り方」と検索すると、サイトに飛ばずともナレッジの要約を検索トップに表示してくれます。
インターネットに詳しくない方や、Salesforceの扱い方がわからないレベルの方であれば仕方がないですが、お客様は会社の開発課の方であり、私が構築したSalesforceのみではなく、他のベンダーさんが構築したSalesforceも導入して利用しているとのことでした。Salesforceの専門用語もかなり通用する方です。
にもかかわらずお客様は検索すればわかるような内容をすぐにチャットしてきます。日本語には敬語というものがあるので、言葉が適切かと考えながら返答するのはなんだかんだ少なくない労力と工数を要します。
ふと、返答しまくっているうちに、「なんでこのお客様はいったん検索してみようという考えにならないのだろうか?」ということを考えるようになりました。
2.わからないことがあれば検索するのは当たり前
平成生まれの私にとって、インターネットは生まれてきたころからずっと身近なものです。国語や算数と同じように、義務教育で情報という科目がありました。そのため、わからないことがあれば真っ先にインターネットに頼るのが私の感覚では当たり前のことです。いや、私の感覚だけではなく学校/会社でも「わからないことがあればいったん検索して調べろ、調べてもわからなかったら先生/先輩に聞け」と言われてきたので、現代社会においても当たり前のことなのだと思います。
ですがその考え方が当たり前でない世代の方も当然います。
深夜のテレビ番組で「この製品の名前を検索して当てろ」というコーナーがありました。製品の画像だけをヒントに検索して名前を当てるスピードを競うものです。若いタレントさんは常日頃からやっているのでしょう、画像から読み取れる特徴を文字にして上手く検索結果を絞り込んでいき、1分もかからず割り出す人もいました。ですが年配のタレントさんは何をどうしたらよいかわからず、とりあえず見た目を文字にして検索していました。ありふれた言葉で検索すると、当然絞り込まれず、何万という検索結果になってしまい、全くたどり着けていませんでした。
50代の私の母親はよく私に「○○のこと知ってる?」と言います。母親は仕事でパソコンを使っているので、「あなたの目の前のパソコンでググればいいじゃんか」というと、「検索してもよくわかんなかったから、お前に聞いた方が早いんだよ」と言われた経験があります。
こう考えると、世代によっては「わからないことがあったときに検索をする」のが当たり前ではないのだということがよくわかります。当たり前ではない、要するに慣れていない。検索は出来るが必要な情報にたどり着くための、効率の良い絞り込み方を知らないのです。
冒頭で話題に挙げたお客様は母親よりは少し若い年代の方かと思います。検索が当たり前じゃないから、わからないことがあればいったん検索ではなく、いったん開発者に聞いているのかな。それなら仕方がない。その時はそう結論づけていました。
3.検索ではなく人に聞く理由
ですがある時、その結論を覆す出来事が起きます。
社内でSalesforceのとある機能について先輩に質問された時のことです。
「これって実現可能か知ってる?」
「はい、この機能を使えばできます」
「ありがとう!調べたんだけどハムスターのブロッコリーさんこの機能詳しいから念のため聞いてみたんだ!」
この時の私はめちゃくちゃどや顔でした。質問はチャットだったため顔は見えないので大丈夫です。
でもそれくらい嬉しかったです。まだエンジニアとして歴が浅く、出来ることを少しでも増やそうと精進している日々の中で、誰かに「詳しい」と思ってもらえているのが、努力を認めて頼られたのだと感じ本当に感激しました。
ここでふと思い出されたのは、あのお客様です。
もしかしてあのお客様も、私を信頼して、頼ってくれているのだろうか。そう思いました。
先ほど話題に挙げた母親は、私だけでなく、祖母にもよく、美味しいレストランやら、どこの院がおすすめかを聞いています。口コミ見ればいいのに、と鼻白んでいましたが、母親からすれば誰とも知らない人の言葉より、身内の情報や感想の方がずっと信ぴょう性が高かったのです。
つまりお客様は、そのSalesforceを構築しているのは私なわけで、だからそのSalesforceに一番詳しいであろう私に聞いた。もしかしたら、私にチャットを送信する前に一度検索していたのかもしれない。けれど誰が書いたかわからないナレッジよりも、普段やり取りを行っている私を信頼して頼ってくれたんだ、と。
4.検索しないことをポジティブに捉えた結果
それ以来、私はお客様から検索してわかるようなことを聞かれても一切イラっとしなくなりました。むしろ信頼されているという自信を持ち、顧客関係が上手くいっていることの証であると、鼻高々で意気揚々と返答しています。
この記事を読んでいる、同じように「いったん検索しろよ」と思ってイラっとした経験がある方、「いやこの人は私を信頼してくれているんだ」と考え方を変えてみてください。当然、そこまで考えておらず、「こっちが金払っているし何聞いても答えてくれるだろう」くらいのお客様もいるかもしれません。それでも、そういった小さいところから少しずつ信頼関係を築くことが、結果、プロジェクトをより良い成功に導く一つの要素になるのだと、ポジティブにとらえることによって、今では楽しく仕事に取り組めています。