ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです。

ハローサマー、グッドバイ(26) いくつかのZ不測事態対応策

»

 『繰り返す。D 型が接近中。少なくとも20 体。もしかする......』

 レインバードからの通信は唐突に途絶えた。ブラウンアイズは舌打ちした。

 「今度こそ、本当に切れたわ」

 「D 型って......」

 「D 型とこんなに遭遇するなんて、あんたってツイてるわね」ブラウンアイズは身体を低くするよう合図しながら言った。「20 体以上じゃ手に余るから、やり過ごすわよ。あっちの道路を走ってくるなら、ここは見えないから」

 言いながらブラウンアイズの手は滑らかに動き、UTS-15J の片方のマガジンを見もしないで交換していた。ここで弾倉交換する意味は1 つしかない。

 「実弾だよね、それ」

 「そうよ。絶対にあたしの前に出ないで。それから」ブラウンアイズは少し躊躇った。「もし、あたしがやられたら、全力でベースキャンプまで走って。屋上から見渡せる道路に出れば、スナイパーチームが援護してくれるはずだから」

 ぼくは抗議しようとして息を呑んだ。美術館の駐車場の奥から、3 体のZが現れたのだ。ブラウンアイズは振り向いて、また舌打ちした。

 「ここにいて」

 言い捨てるとブラウンアイズは風のように動いた。先頭のZの足元に滑り込むと、大柄な男性Zのくるぶしをブーツの踵で払う。ワンピースを着た2 体の女性Zが襲いかかってくるのを身体をひねってかわし、1 体の膝の裏に蹴りを叩き込んだ。そいつがぐらりと体勢を崩したところに体当たりして、もう1 体にぶつける。2 体はもつれあって男性Zの上に倒れる。ブラウンアイズは結果を見届けようともせず戻ってきた。

 「移動するわよ」手を伸ばしてランドマークタワーの方を指し示した。「身体を低くして、ゆっくりあっちに......あ、やば」

 ロイヤルパークホテルのロータリーから、美術館南の交差点にかけて、Zがぞろぞろと移動しているのが見えた。数体ではない。ざっと30 体以上が、交差点全体を占拠するかのように散らばっている。

 「厄介ね。仕方ない。引き返して、反対側から回っていくわよ」

 美術館の駐車場では、ブラウンアイズが転倒させた3 体が、もつれあって身体をようやくほどいて、のろのろと身体を起こしかけていた。ぼくたちは、そちらに注意を払いつつ、美術館を囲む植え込みに沿って北側の交差点に移動を開始した。

 そのとき、背後で甲高い叫び声とともに、予想もしていなかった騒乱が発生した。振り向こうとしたぼくは、とっさに身を翻したブラウンアイズに引きずられるように、もう一度駐車場のゲート前に押し込まれた。乱暴に扱われた脇腹が抗議の悲鳴を上げたが、そんなことに構っている場合ではなかった。ぼくは何が起こったのか確かめるために首を伸ばした。

 騒乱の元は、美術館南にたむろするZの群れに向かって、全速力で突進してきた数体のD 型Zだった。レインバードが警告したD 型の群れの一部が、何の気まぐれか、けやき通りの交差点を左折してきたらしい。R 型のZたちが緩慢な動作でそちらに顔を向ける。疾走するD 型が、無防備なR 型をはね飛ばして通過する、と思った瞬間、先頭のD 型が手近のR 型に飛びかかると、その首筋に歯を立てた。

 「え?」思わず、といった態で、ブラウンアイズの口から驚きの声が漏れた。

 首筋を噛みつかれたR 型は、戸惑ったように動きを止めた。どす黒い液体がどろりと垂れる。R 型はようやく抵抗するように手を上げたが、D 型はすぐにR 型を解放すると、その隣に立っていた別のR 型の首筋に噛みついた。まるで、幼児が手当たり次第に物を口に入れ、食べられないとわかって吐き出すように。

 「なにあれ......」

 その口調から察すると、Zと渡り合ってきたブラウンアイズにとっても、初めて見る光景だったらしい。D 型については、詳しいことはわかっていない。危険すぎる上に絶対数が少ないので、まともに研究されたことがないからだが、人間ならともかく、R 型を攻撃するなど聞いたことがない。

 数体のD 型は、ミツバチの巣に飛び込んだスズメバチのように、次々とR 型に噛みついては放り出し、また次に噛みつく、という奇妙な行動を繰り返していた。ぼくたちは魅入られたように、その光景を見ていたが、ぼくはふと何かが引っかかるのを感じた。違和感?いや、むしろ既視感というべきか。その正体が掴めないうちに、ブラウンアイズが我に返った。さっき倒した3 体がすっかり身体を起こして、こちらに向かい始めたことに気付いたのだ。

 「くそ」ブラウンアイズは迷わなかった。「一度、美術館の中に逃げるわよ。合図したらあいつらの横を全力で走り抜けて。できるだけ身体は低くね」

 ぼくは頷いた。ブラウンアイズは、トランシーバーを出した。

 「ブラウンアイズから全員へ。D 警報、D 警報。けやき通り、美術館南交差点。オーバー」

 早口でそう言うと、ブラウンアイズはぼくを見た。

 「よし、あいつらの左側を走って」

 ぼくは走った。ブラウンアイズはぼくの一歩後ろを走っている。3 体のZが手を伸ばしてきたが、難なくすり抜け、ぼくたちは建物の中に飛び込んだ。

 ブラウンアイズは振り向くと、素早くUTS-15J を構えて3 連射した。こちらに向きをかえようとしていた3 体が、背中をどつかれたように倒れる。

 「このまま反対側に出るわよ」

 ブラウンアイズは囁いて、駐車場の奥へと進み出した。ぼくは記憶を探って、この辺りの地図を思い浮かべた。美術館の反対側は、マークイズとクイーンズスクエアへ通じる陸橋になっている。ショートカットするわけだ。

 駐車場には数台の車が置き去りになっている以外はガランとしていた。入ってすぐ「美術館入口」の矢印があったが、そちらに進んでみるとエレベータだった。もちろん動いているはずがない。ブラウンアイズは癖になってしまったみたいに舌打ちした。

 「外から回るしかないか」

 探せば非常階段か何かあったかもしれないが、施錠されていたらそれまでだし、時間を無駄にしたくなかった。ぼくたちは駐車場から出て、右手の壁沿いに進んだ。前方にルーヴル・ピラミッドに似たガラスのピラミッドが乗った正面玄関が見えてくる。ガラス戸は開放されていてシャッターが半分だけ降りていた。ぼくたちは、素早く身体を滑り込ませた。

 近くにZの姿はない。ブラウンアイズは四方を確認した後、先に立って階段を昇っていった。ぼくは、また少し痛み出してきた脇腹をかばいながら、その後に続いて、2 階のエントランスへ出た。御影石の柱が点在する広い空間だ。ブラウンアイズは銃を目の高さに構えたままで、ミュージアムショップの脇に出た。

 白骨化した遺体が何体か転がっていたが、Zはいない。それでもブラウンアイズは慎重な足取りで、上下左右前後に注意を払いながら先導した。足元には絵画が印刷されたポストカードや、クリアファイル、美術書などが散乱している。略奪されたようには見えない。ヨコハマ撤退の混乱の余波を受けたのだろう。

 「さっきのあれは」ぼくは囁いた。「何だったんだ?」

 「わからない」ブラウンアイズも少し戸惑っているようだった。「あんなのは初めて見たわ。ZがZを襲うなんて」

 「生きた人間がいないと共食いするのかな」

 「そんな話は聞いたことない。まあ、それは後で考えましょう」ブラウンアイズは周囲を確認してからトランシーバーを出した。「ここなら音が外に漏れないから、ちょっと連絡してみる」

 ブラウンアイズは、小声でトランシーバーに呼びかけた。建物内なのでどうかと思ったが、すぐに応答があったようだ。短くやり取りして通話を終えた。

 「サンキストたちがけやき通りに出たみたい。D 型は通りにはいない。あたしたちも急ぐわよ。ケガの方は大丈夫?」

 「何とか。今のところは」

 「まあ、痛くても我慢してもらうしかないんだけどね。行くわよ」ブラウンアイズは銃を構え直した。「マークイズの中はZのごった煮状態らしいから、近づかないで」

 ブラウンアイズの先導で、ぼくたちは美術館を出た。美術の広場を挟んで正面にマークイズが建っているが、グランモール公園から美術の広場までは工事中だったらしく、ガードフェンスが張り巡らされている。おかげでマークイズからの視界は遮られていた。ぼくたちは陸橋脇の階段を通って、けやき通りに降りた。さっきの交差点を見ると、20 体以上のZが路面に倒れてうごめいている。確かにD 型の姿はどこにもない。

 「静かに急ぐわよ」

 ブラウンアイズは、これまでより早足で、けやき通りを進み始めた。通りには何体ものZがうろついている。幸いにも近距離にはいないが、大声でも出せば、たちまち殺到してくるだろう。マークイズの横には等間隔に街路樹が植えてあり、ぼくたちはその影に隠れるように進んだ。一度、木の陰からZが出現したが、ブラウンアイズは慌てることなく相手の膝を蹴って転倒させた。

 みなとみらい駅前の交差点に着いたとき、左手から動く影が急接近してきた。思わず身構えたが、それはサンキストとキトンだった。ぼくたちは、言葉を交わさず、頷きあっただけで交差点を渡った。

 みなとみらいセンタービルは、21 階建て、地上から屋上まで伸びる数十本の柱で支えているような外観のオフィスビルだ。サンキストとキトンが先導し、ぼくたちは交差点を曲がってすぐの入り口からエントランスに入った。1 階と2 階は吹き抜け構造で、劇場のロビーのように広々とした空間になっていた。

 エントランスには4、5 体のZがいたが、サンキストとキトンが襲いかかり、あっという間に無力化してしまった。片方が周囲を警戒する間に、片方が標的のZの足をすくって転倒させ、アンクレットで拘束する。その間、ブラウンアイズは外を警戒しながら、ぼくを守るように立っていた。

 「上に行くぞ」

 拘束したZを外から見えない壁際に放り出すと、ぼくたちは停止したエスカレータを慎重に昇り、3階のオフィスロビーに到着した。ドトールコーヒーとコンビニがあった。反対側にはいくつかのレストランや居酒屋もあるようだが、シャッターが降りている。どこからか採光できる構造になっているらしく、3 階なのに自然光で充分明るい。柿本少尉とアックスが、エレベータホールの前に立っていた。

 「ここは安全だ」柿本少尉はロビーをぐるりと見回した。「わざわざすまんな、鳴海さん」

 「いえ。ここで反応があったんですか?」

 「ああ」柿本少尉はスマートフォンをぼくに返してよこした。「1階より、この階の方が反応が強いようだ」

 ぼくはスマートフォンを見た。Wi-Fi チェッカーが反応している。ぼくは画面をタップして詳細を表示した。FG8708G-A44G という名前で、2.4GHz 帯。シグナル強度は-62.8dBm だ。設定画面を開き、Wi-Fi 接続で対象の接続をタップしてみると、

電波強度:やや強い
リンク速度:54Mbps
セキュリティ:WPA/WPA2 PSK

と表示された。「接続」をタップすると、当然のようにパスワード入力画面が開いた。

 「パスワードで保護されてますね」

 「そうなんだ」柿本少尉は期待に満ちた視線を向けてきた。「どうやって解除するんだ?」

 「解除って......いや、パスワードがわからないと接続は無理です」

 「何か方法があるんじゃないのか?ハッキングとか」

 「ハッキングって、パスワードをですか?」正確にはクラッキングなんだろうが、話がややこしくなるのでスルーした。「それはちょっと無理ですね」

 「いや、でも」柿本少尉は不思議そうな顔になった。「プロなんだから、何か方法を知ってるんじゃないのか?ほら、1 文字ずつ解析していくとか。映画で観たぞ」

 やれやれ。何の映画だか忘れたが、確かにパスワードをクラッキングするシーンで、8 桁ぐらいの英数字を1 桁ずつ決定していくのがあった。もちろんそれは正しくない。パスワードは完全に一致するか、しないかのどちらかしかないから、文字列の一部だけ決めることなんてできない。そう説明すると、柿本少尉は不満そうに顔をしかめた。

 「ということは、接続する方法はないということか」

 「Wi-Fi ルータの実機を見れば、書いてあるかもしれませんが」

 「どこにあるのかわかるのか?」

 「それはわかりませんが......」

 「探すしかないってことか」

 バンド隊員たちは顔を見合わせた。エレベータホール前には、日本語と英語で、各階ごとの企業名一覧が掲げられているが、それによるとざっと70 社以上。大半は10 階以上にある。

 「地上で電波をキャッチできたぐらいだから、そんなに高層階ではないと思うんですが」

 「仕方がないな」柿本少尉は仕方なさそうに言った。「この階から順番に探していこう。何を探せばいいんだ?」

 「ぼくも行きます」

 「いや、建物の中は危険だ。屋外ならZの接近も察知しやすいし、対応する場所もあるが、室内はZが隠れる場所がいくらでもある。特殊作戦群の隊員だって、インドアアタックは神経使うんだ。鳴海さんを危険にさらすわけにはいかんから、ブラウンアイズと一緒に残ってくれ」

 ぼくは渋々頷いた。確かに足手まといだろう。

 「たぶん、DVD ボックスか、ハードカバー本ぐらいのサイズです。FG8708G-A44G は、機種名かその一部だと思います。とにかく、電源が入っているやつですよ。LAN ケーブルがつながっていて」

 隊員たちは、手の甲に機種名をメモすると、装備を確認した。

 「行ってくる。発見したらトランシーバーで連絡する。もしZが上がってきたら......」

 「大丈夫です」ブラウンアイズが親指を立てた。「どっかに隠れてやりすごします」

 「頼んだ。よし、行くぞ」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 10 分ほど、何事もなかった。ぼくはロビーの椅子に座り、ノートPC から、スマートフォンにテザリングできることを確認した後、やることがなくなってしまった。ドトールやコンビニを覗いてみたが、略奪された後らしく、食料や飲料水の類は何も残っていない。

 ブラウンアイズは奧のらせん状階段を確認したり、1 階の様子をチェックしたりと、忙しく動いていたが、やがて一息つくと、ぼくの横に座って、エスカレータと階段に交互に視線を投げて警戒していた。

 「このあたりは」ぼくは小声で話しかけた。「やっぱりZがたくさんいるんだね」

 「そうね」ブラウンアイズは頷いた。「みなとみらい大橋あたりまでなら、うちの特殊作戦群なら1 人で行って帰って来られると思うけど、さすがにここからは難しいわね」

 「君でも?」

 「あたしでも。Zの習性というか行動パターンは研究からも、経験からもかなり蓄積されているから、一対一なら大抵の状況を切り抜けられると思う。相手を殺さなくてもね。2、3 体でも、いくつか不測事態対応策があって、それに沿って訓練してるから、まあ何とかなる」

 「不測事態対応策か。確か、ソリストのデータベースにも入ってたね」

 「ああ、あったわね」ブラウンアイズは侮蔑の表情を作った。「Zの動きを分析して、次にどういう行動を取るのか予測するってやつね」

 「とうとうテストする機会がなかったけど」

 「どうせ、うまく動かなかったわよ」ブラウンアイズは決めつけた。「ともかく、あたしたちは少数なら大抵はパニクることなく対応できるのよ。訓練でもそうだけど、各隊員がいろんなパターンを想定して、対応策を考えて、常に共有してるから。でも、5 体以上を同時に相手にするなら実弾で対応することが前提になるし、10 体以上に囲まれたら......まあ、お祈りするぐらいしかできないわね。だからソリストの再起動が必要なのよ。チームで行動しないと、ここからは絶対に脱出できない。D 型があんなにたくさんうろついてるようじゃなおさらね」

 D 型、という言葉を聞いて、ぼくはさっき感じた奇妙な感覚を思い出そうとしたが、気が急いているせいか、どうにも思考が定まらない。こんなときは焦ってもダメだ、とわかっているので、別の話題に切り替えた。

 「そう言えば、このスマホ」ぼくは手にしたスマートフォンを顔の横に掲げた。「どこに隠してたんだ?」

 「大きなお世話だって言ったでしょ」ブラウンアイズはぼくを睨んだ。「あたしも訊こうと思ってたんだけど、そのスマホ、なんでそんなに持って来たかったの?基地を出る時点で、Wi-Fi チェッカーが必要になるとか思ってたわけじゃないでしょ?」

 「そりゃ、もちろん」

 「じゃ、なんで?お守りみたいなもんって言ってたけど」

 ぼくはコンテンツマネージャアプリをタップした。SD カードに記録されている数10 枚の画像ファイルの最初の9 枚が、グリッド状に並んだ。大抵は以前の仕事で撮ったどうでもいい画像だ。何度かスワイプしてページを切り替え、目指すページにたどりつく。その中の一枚の写真を全画面表示して、ブラウンアイズに見せた。怪訝そうに一瞥したブラウンアイズの目が驚きで見開かれる。

 「これ......」らしくなく躊躇った声が訊いた。「......ご家族?」

 ぼくは頷き、何度も何度も見て脳裏に焼き付いているその画像を、また眺めた。さすがにもう、見た途端に涙腺が緩むようなことはなくなっていたが、それでも胸の奥に痛みにも似た喪失感が走るのは抑えられない。2 つ年下の妻と、1 歳の誕生日を過ぎたばかりの息子。永遠に変化することのない2 人の家族の姿。撮影したのは2LDKのマンションのリビング。何かの景品でもらった自撮り棒で試し撮りした画像だ。右端に写っているぼくの顔は4 分の1 ほど切れている。撮るときに少しずれてしまったのだ。

 「お亡くなりになったの?」

 「ぼくたちの住んでいたマンションは新丸子にあったんだけど、妻の実家は山手でね。大さん橋に例の客船ファンタジスタが突っ込んだとき、ちょうど用事で帰省してたんだ」

 当時、多くの市民がそうだったように、ぼくもその事故――当初はそう報道された――の意味を深く考えなかった。妻からは、鉄道が全部が止まっているから帰るのを遅らせる、とメールが来ただけだった。そのときすでに、13 万トンの大型客船に満載されていた数千体のZが大さん橋から日本大通り、関内、石川町、と拡散しつつあったのだが、その情報が一般市民に伝わったのは、Zの封じ込めに失敗し、ヨコハマ撤退と呼ばれることになる大避難作戦が実行に移された後だった。

 「そのメールが最後の連絡だった。すぐに通信インフラがダウンして、一斉避難が始まったからね。それっきり2 人とは会ってない。歩いてでも山手に行って生死だけでも確認したかったけど、強引に避難させられたからダメだった」

 「写真はそれしかないの?」

 「もっとたくさんあったんだけど、プリントするって習慣はなかったし、撮った画像や映像はクラウドストレージに置くことにしてあったんだ。そっちを確認しようと思いついたのは、鶴見防衛ラインができた後で、そのときにはもう、サービスがダウンしてた。不測事態対応策として、USB にでもコピーしとけば良かったんだけど。これはたまたま残ってた1 枚なんだ。だから置いてくる気にはなれなくてね。無理言って持ち出してもらったってわけ。迷惑かけたのは悪いと思ってる」

 ブラウンアイズは何も言わずに、ぼくの手をぎゅっと握りしめた。そして、トランシーバーが呼び出し音を発するまで、その手を離さなかった。

(続)

Comment(20)

コメント

kent

3つ年下の妻と8ヶ月の息子がいるので、なんか想像したら目から汗が。

F

何となく、やきうチームなD型がそのうち出てきそうな気がする…

素朴な疑問

R型ゾンビってD型ゾンビに引き寄せられたりしないんですかね?
走るって事は規則的な足音を立ててそうですが。
マサルさんみたいにダバダバ走るのかな?

dai

現地詳しい人、地図上に動線書いてくれたらうれしいんだが・・・

夢乃

いつも楽しく読ませてもらってます。
え〜〜と、その、かなり適当ですが、オペレーションMMを地図で追っています。
http://togetter.com/li/791940
私も現地に詳しくないので、想像が多々ありますが。

ほげほげ

スマホの中の写真に話をつなげる必要があったんだろうけど、
だからって、つかみにそれを選ばなくったっていいじゃん・・・。

夢乃さん、どうも。
すごいです。作者でもやってないことを。

オペレーションマジックミラー号

夢乃さんとても参考になります。ありがとう。

dai

夢乃さん、わがままなつぶやきに、こんなに早く応えてくれるとは!?
ありがとうございます!!

けい

一話目では「32才、独身。」ってなってるけど……

ぐにゅー

バツイチ、独身ってことでは?

BEL

すでにやってる人がいた。夢乃さんすごい。

「綱島街道の終点を右折し」だとやっぱり第一でなく第二京浜ですかね。

ストリートビューも見ながら楽しんでいます。というかそれでなんとか把握できます。

横浜美術館は2階の美術の広場側が正面だったりします。

softdia

R型が噛まれてD型に変異しちゃうとか?

^_^

wifiルーター見つければ直接LANポートにノート繋げれるから
パス要らないかと、ノートにポート無いなら別だけど

そもそもこの下りで何がしたいのか謎です。
『ノートPC から、スマートフォンにテザリングできることを確認した』

wifiの稼働確認?
今まで使ってたのに改めてやる必要があるのか?

スマホを隊員に持たせて電波の強弱で判断すればはやくみつかるんじゃ?
んー

p

前2話ちゃんと読めば分かると思いますが、ソリストを稼働させるためにffmpegをネット経由で落とすためですね。自前の衛星通信装置は爆破されてますし。
あと、オペレーションMMのもともとの目的として、調査対象区域から原因不明のネットへのアクセスがあるので調べる、という記述が3話にあります。

LEN

高架下などで視線を遮られるのを極力回避したいと考えると、第二京浜をそのまま進んで、青木橋を渡って第一京浜に入ったのかもしれません。
青木通交差点から横羽線下の栄町交差点へ移動すれば、広い道で視界を保ったままポートサイド中央まで出られるかと思います。

known

認証されてない機器は接続できないんじやなかった?
例のスマホは認証済みだから接続可能ってことだよね。

^_^

認証された機器の縛り忘れてました。
この場合、ちょっと違うと感じますが、、、

スマホとBluetoothかusbでテザリングして、
スマホとルータをwifiで繋げるって考えれば辻褄が会いますね。

GammaRay

家族の写真のような大事なデータをクラウドストレージだけに頼って
さらにバックアップを取って置かなかったのか?というのは疑問です
プログラマなのに

dotJ

>家族の写真のような大事なデータをクラウドストレージだけに頼って
さらにバックアップを取って置かなかったのか?というのは疑問です

クラウドが当たり前になってくると、わざわざバックアップは取らないですね。

コメントを投稿する