システムオーディタ川辺によるキャリアアップを目指したIT資格取得に関するコラム

(新)目指せ システム監査人!!(7)

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 情報処理技術者試験の申し込みが、あと1週間を切ったようです。システム監査技術者試験を受験しようかどうか、迷っておられる方もおられることでしょう。

 システム監査技術者試験は、1985年に開始されました。今でこそ、システム監査は名称や業務としても一部定着していますが、当時はシステム監査従事者は本当に少なかったと思います。そのことは、現在もシステム監査技術者試験合格者からシステム監査を実際に実施・経験したいとシステム監査を疑似体験できるケーススタディセミナーの照会があることからも分かります。

 公認会計士の受験も多かったですが、試験は情報処理技術者試験に位置付けられていたため、当時から情報システム部門の受験者が多かったといえます。筆者も情報システム部門担当者として、1986~87年にシステム監査技術者試験を受験しました。

■開始当初から、設問ア~ウを記載させる方式の試験論文

 試験の形式は当時から3問。1問につき設問ア、イ、ウの3つが問われる形式は現在と同じです。システム監査担当者が増えていると言っても、情報システム部門担当者の受験者が多い構造はあまり変わっていないようにも思います。

 設問アが、ほとんど「あなたが携わった情報システムの概要」と「出題テーマの状況」であることは前回お話ししました。これらは、準備した下書きを十分に活用できる設問とも言えます。

 設問イは、設問アで述べた情報システムに関して「出題テーマ関連のリスクとその対策」を問う問題が多いです。このテーマ自体は、システム監査人の立場でなく、情報システムの開発・運用者として記載できる内容とも言えます。

 一方、設問ウは出題テーマに関してシステム監査を実施する場合の「監査のチェックポイントや監査手続き」を記載させるもので、(システム監査の試験ですので当然ですが)システム監査人としての記述が求められます。

■新制度試験で設問イ・ウそれぞれの記載ボリュームを規定

 新制度の試験では、設問イ・ウともに700~1400字以内で述べますが、平成20年までは「設問イ・ウの合計で1600~3200字」でした。

 新制度で、記載総字数は1400字~2800字となり、従来の1600~3200字と比べ、最低字数で200字、最大字数で400字減りました。楽になったと思われますが、ちよっと待ってください。

 問題は「なぜ設問イとウに分け、いずれもが700~1400字になったか」です。

 単純に「字数が減った」と喜べない理由があると思うのです。従来、システム監査経験がない情報システム部門担当者は、情報システム担当としての立場から、設問イを多く記述(例えば1600字)し、システム監査人としての記述が必要な設問ウを少なく(例えば800字)記述する傾向がありました。

 実際、筆者が主催するシステム監査技術者試験論文対策でも、システム監査未経験者の受験者は下書き論文で設問イを多く、設問ウを少なく記述する傾向が高いのです。

 もう1つは、設問ア・イ・ウと同様の試験形式のシステムアナリスト(現在はITストラテジスト)試験、アプリケーションエンジニア(現在はシステムアーキテクト)試験、プロジェクトマネージャ試験の場合、設問イは「テーマに関する私の工夫」という具体的に、設問ウは「私の工夫の評価」で簡潔に記載させる問題であったからと思われます。

 つまり、記載のメインは設問イで、設問ウは設問イの結果の評価で付属的に記載する方式だったのです。そして、システム監査技術者試験は、これらの試験の合格者が受験するケースが多かったと考えられます。

 そして、本来は設問ウがメインのシステム監査技術者試験でも、設問イを多く、設問ウを少なく記述することになったと考えられます。

 以上のような状況を踏まえ、新制度試験では設問ウも設問イと同じボリュームを要求するようになったのではないでしょうか。一方、設問イもウと同じボリュームとしたことは、システム監査未経験者に配慮したものとも言えるでしょう。

■変化があった平成22年の出題

 平成22年は、設問イとして3問中2問、監査手続きや監査項目の問題が出題されました。設問イは最近、1問が監査の問題でしたが、2問が監査の問題になったことは、大きな変化と言えるでしょう。その結果、設問ウが監査手続きではなく、改善・是正の問題として出題されました。背景には、監査従事者の増加もあると思います。

 システム監査の試験ですので、それは当然とも言えるのですが、システム監査の経験のない受験者にとって、設問イ・ウから監査の問題にチャレンジすることは大変です。特に、システム開発・運用者の立ち位置とシステム監査人の立ち位置はまったく異なるからです。論文対策で論文を添削していて「立ち位置が違う」と感じることは非常に多いのです。

 次回は、システム監査人の立ち位置について考えてみたいと思います。

 (新)目指せ システム監査人(7)終わり

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