自分がプログラマに向いてるかどうか知りたかったら、とりあえず編み物をしてみたらどうだろう
わたしがまだ新人だったころの話です。昼休み時間に編み物をやっていたら、当時のリーダーが「編み物、好きなの?」と声をかけてきました。「そうですね。小学生のころからやってるんですよ」と答えたら、そのリーダーがこんなことを言いました。
「いいねえ。そういうものが好きな人はプログラマに向いてるよ。単調で細かい作業をコツコツ繰り返してものを作り上げることに、あんまりストレスを感じないタイプだから」
もう20年以上前のことなのに、その言葉をなぜだか鮮明に覚えています。単純に「プログラマに向いてる」というところに反応しただけかもしれません。新人のころはね、嘘でもいいから「この仕事に向いてる」って言ってもらいたいもんなんですよ(笑)。
しかし、今になってこの言葉を考え直してみて、実は根本的なところが違っているのかも、という気がしてきました。
編み物って、やったことない人にはむちゃくちゃ難しそうに見えるらしいんですけど、やってることはものすごく単純です。覚えるべきパターンはそんなになくて、それをいい感じに組み合わせて、後は編み目をできる限り均質にそろえれば、それなりに見栄えのいいものが簡単に出来上がってしまいます。もっとも、そういう説明をしても、たいがい「それのどこが簡単なんだ!」って言われるんですけど(苦笑)。
ちなみに、「均質」に仕上げるというのは、常に同じ動作をする、というのとは少し違っていて、こういう時はちょっとゆるめに編めば最終的にはいつもと同じになる、とかいった微調整を継続するということです。経験を重ねれば自然とデータも増えるので、それがフィードバックされた分だけ、質は底上げされていきます。
編み物もプログラミングも、傍目には「単調」な作業の羅列のように見えますが、どれもが少しずつ違っています。ですので、わたしは「これは前に扱ったパターンと、どこが同じでどこが違うのか」とか、「このパターンは初めてだけど、あのパターンが応用できるだろうか」とか、「このパターンは前もやったけど、もしかして他のパターンを適用した方がうまくいったりしないか」とか、「これ終わったら、今度は何を試そうか」とか、いつもいろんなことに考えをめぐらせるのに大忙しで、とても「単調」といえる状態にはなりません(もちろん、考えが止まる=飽きることもありますけど)。
なのでわたしは、単調な作業にストレスを感じないタイプなんじゃなくって、単調な作業と感じてないだけなんじゃないかと思うんですよ。
とはいっても、わたしも編み物する時に、そんなこ難かしいこと考えてるわけはなくて、リーダーのその言葉があったからこそ、いろんなことを振り返ってみて、「なんとなくそんなことかなあ」という結論にいたったんですけど。
ところで、わたしは洋裁とか人形造りとか、他の手芸にも一通り手を出してるんですが、なんだかんだで結局、編み物に戻ってしまいます。なんで編み物が好きなのかなあ、と考えて「取り返しがつくから」という結論にいたりました。布は一度、断ってしまったら元には戻らないけれど、糸はほどいてまた編み直せます(注:モヘアとか糸の種類によってはできない)。失敗したらほどいて、仕上がりが気に入らなかったらほどいて、気に入るまで何度もやり直すということを、わたしは子供のころから繰り返していました。そんな、トライ&エラーが苦じゃない、というか、ぶっちゃけ快感(爆)なところは、プログラマになった時にプラスに働いたかもしれません。
それと、編み図から作業手順を読み取ること、全体の手順を頭の中で確認しながら作業を進めることを、ごく自然にマスターしていたというのも、もしかしたら、ある種の訓練になっていたのかもしれません。って、考えてきたら、意外と本当に編み物とプログラミングって、共通点が多いような気がしてきました。
「文系プログラマ」とかいう言葉をたまに見るけど、わたしってもしかして「手芸系プログラマ」?(←なんかまた変な言葉つくってるし)
最後に、念のため書いておきますけど、他の編み物好きの方々が、編んでる最中に何を考えているかは知りません。もしかしたら、わたしの楽しみ方が特殊かもしれないので、ご注意くださいませ(笑)。
コメント
pwfmfx
編み物の思考過程の話からは脱線してしまいますが、
(昔のコンピュータで使われた)パンチカードの本来の用途が、
紡績機械のプログラミングだったくらいですから、
隣接分野であるには違いないです(笑)。
人間にとっても、機械にとっても、似ている所があるのかも知れません。
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
pwfmfxさん。
パンチカードの本来の用途、という話は知りませんでした。へえ~。
棒針編みとかは基本、表編みと裏編み(ONとOFF)だけでできあがっているので、編み図みてると2進数っぽくっておもしろいですよ。
CMP
「詰め碁」や「詰め将棋」を解答できるまでがんばれる人、「ジグソーパズル」が得意な人は、プログラマに向いていると思いますね。
なんでかは、「要求内容をイメージしつつ、一個一個のピースや駒の特性を組み合わせて、要求どおりのものを作る」という訓練できているからと、根気があるから。
あと、なによりできたときの感動の味を知っているってのもあるねw。
仲澤@失業者
もちっと脱線させちゃいますが(笑)、
1.一本の糸だけで編んだ場合は(どんなに複雑な形状になっても)
元は一次元ってのが、メモリーっぽい。
2.網目の設計図はメモリーレイアウトを彷彿とさせる。
3.編んでるところも2進法っぽい。
4.ここで、「ワンゼロ」を思い出した人は友人として許可である。
5.が、「スーパーストリング理論」って言葉が浮かぶ人は物理オタである。
6.「星を継ぐもの」コミック化万歳。星野先生がんばって。
何言ってんだ>>自分。
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
CMPさん。
ジグゾーパズルは好きですよ、私。基本的に2000ピース以上のものしかやらない主義です。
「できたときの感動の味を知っている」というのは大きいかもしれません。
「報われる」というとちょっと大げさすぎるんですけど、何かを完遂する喜びが、自分にとって大事なものだと感じている、というのはつくりてにとって重要な資質のような気がします。
仲澤@失業者さん。
『星を継ぐもの』コミック化なんですか? しかも『未来の二つの顔』を描かれた星野先生!
って、ググったら情報ありました。ありがとうございました!
と、さらに脱線させてみる。いろいろとすみません。
ヤス
なるほどなぁ。と感じながらコラムを読ませていただきました。
特に
「なのでわたしは、単調な作業にストレスを感じないタイプなんじゃなくって、
単調な作業と感じてないだけなんじゃないかと思うんですよ。」
っていう箇所はすごく納得のいく箇所でした。
SQLのチューニングとかやっていると、周りからはすごく単調な作業に見えるらしく「よく長くやっていられるなぁ」ってよく言われています。
周りから見ていると同じようなことでも、実際やっている側にとっては一期一会の世界。難しいときも簡単なときも楽しみながら取り組みたい物ですよね。
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
ヤスさん。
「ストレス耐性が高い」と「ストレスじゃない」ってのは根本的に違いますよね。
耐性が高いだけだといつかはダメになってしまうけど、ストレスじゃないのなら、いくらでもやっていられますから。
そんな仕事に就けた自分は幸せだなあ、とかしみじみと思います。
TASUKU
編み物ですか、私も男の癖に学生時代にちょっとハマッタことがあります。
母が編み物をしていたのにふと興味を持ち
ちょっと教えてもらった所、
編み方自体は、表編みと裏編みの2種類だけで
後は、この組み合わせや、並べ替えだけで色々な模様を作り出し
加減ひとつで、着心地にモロに影響が出るという
単純さと複雑さの調和が気に入ってしまい
ベストやセーターの5,6枚は編みましたかね~。
(従兄弟の女の子に、どうしてそんなに上手いのよ。
と怒られましたが...。)
そういった意味では、単純作業への耐性という以前に
0と1だけの単純な2つの組み合わせから
無限のパターンを作り出しているコンピュータの世界と
相通じるものがあるのかも知れませんね。
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
TASUKUさん。
編み物する男性ってなんかかっこいいですよね。以前、テレビで観て「惚れる~」とかぶりつきになった記憶が(←ちょっと危険)。
単純さと複雑さが調和している、というのはなんかわかります。
う~ん。考えれば考えるほど、プログラミングと編み物は似ている論が補強されていく(苦笑)。