キャリア20年超。ずっとプログラマで生き延びている女のコラム。

プログラマという仕事のやりがい

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 今月のお題は「エンジニアという仕事のやりがい」だそうです。

 「仕事に求めるもの」ランキングでいつも上位にランクインしている「やりがい」ですが、そういうものを見るたびに「やりがいを求めてる人って、『やりがい』という言葉にどういうイメージを持ってるんだろう」と思います。

 単純に「仕事をした甲斐があったと感じられること」とすると、仕事内容が面白いなんて微塵も感じてなくても、稼いだお金で自分の欲しいものが買えたり、大事な家族を養えたりするのならば、「やりがいがある」と表現しても間違いじゃないよう気がするんですけど。

 けれどまあ、今回のお題は「エンジニアとしての」という枕詞がつくので、「お金が稼げる」という意味の「やりがい」は除外なんでしょうね、きっと。

 この業界に就職した時点でわたしは、「仕事をしなくちゃいけない」(=自分で自分を養わなければいけない)という気持ちはあったけれど、「やりがいのある仕事をしたい」とはまったく考えていませんでした。「つまらないよりは面白い方がいい」とは思ってましたけど。

 わたしは「仕事ができる人になりたい」と思っていました。

 仕事ができる人になれば、それだけ自分を守る力が強くなります。ぶっちゃけて言えば「食いっぱぐれる可能性が低くなる」ということです。

 何年も働いているうちに何度か人間関係でつまずいて、仕事を替えたいと思ったこともありました。その度に「わたしはこの業界を離れて、今以上に稼ぐことはできるのか?」と自問自答しましたが、答えは常に「NO」でした。

 年を重ねれば重ねるほど、ほかの仕事に移るメリットが見い出せなくなります。ほかにどうしてもやりたい仕事があれば話は別なんでしょうが、そういうものがない状態ではプログラマ以外の選択肢はないも同然でした。

 そんなわけで、わたしがこの業界を離れなかった理由は「ほかの仕事では稼げないから」という単純明快なものであって、やりがいを感じていたからではありませんでした。

 そうやってよろめきながらも、「仕事ができる人になるんだ」という気持ちだけで進んでいくうちに、できることが増え、自由裁量権が増え、チーム内で自分の意見が通りやすくなっていき、プログラマという仕事はどんどん面白くなっていきました。

 結局のところ、技術職なんてものは、ある程度のレベルまで仕事ができるようにならなければなんにも面白くないし、やりがいも得られないんじゃないかと思います。仕事ができないのに「やりがいを感じる」ってのはちょっと分からないです。「これができるようになったら面白いんじゃないか、と思うとやりがいがある」ということはあるかもしれませんけど。

 なので、「この仕事のやりがいが分からない」と言われたら、「分からないならわざわざ悩まないでほっとけばいい。とりあえず力を蓄えることを優先するべき」と答えます。

 「力」がなければ、自分を守れないし、ユーザーさんのお役に立つこともできません。「力」があれば確実に守れるし、役に立つってわけでもありませんけどね。確率は上げられます。

 それに、できなかったことができるようになった時、ふいに違う風景がみえるようになることがあるんですよ。「視野が広がる」というか「視点が定まる」というか。いずれにしろ、「分からない」と立ち止まり続けてもどうにもなりません。自分の中に「力」をため込みながら、なにかが腑に落ちるその時を、待てばいいんじゃないかと思います。

 わたしが「プログラマ35歳定年説」の年を突破してずいぶん経ちますけど、いまだに、「もっと言語を覚えられる」「もっとコーディングスピードを上げられる」「もっときれいなコードを書けるようになる」と信じています。根拠はどこにもないんですけど、とにかくそれを疑っていません。

 「自分はもっといろんなことができるようになる。そしたらもっと面白いことにめぐり合えるかもしれない」

 そう信じて働けることこそが、わたしにとっての仕事のやりがいなのかもしれません。

 とかなんとか、ちょっと偉そうなこと書いてしまいましたけど、結局のところ、プログラムが動くだけでうれしいんですよ、わたし。

 「プログラムが動いてうれしい!」

 プログラマにとっての仕事のやりがいなんて、そんな単純なもので十分なんじゃないんですかね。多分。

Comment(9)

コメント

インドリ

お久しぶりです。

> プログラマにとっての仕事のやりがいなんて、そんな単純なもの十分なんじゃないんですかね。多分。

同感です。
私も「情報処理技術が好きだから」という単純な理由で働いています。
人に喜ばれる仕事をしたいのはもちろんですが、何で喜ばれたいのかを考えた時、情報処理技術以外の手段を思いつきません。
中学生のころ、情報処理技術に一目ぼれして、それ以外の事は考えられませんでした。
仕事のやりがいなんて単純なものが一番です。
単純でなく複雑な理由があるのであれば、どれかの条件を満たさなくなれば、仕事に幻滅してしまいます。

//単純な場合
if ( isLike( job ) == true ) return 1;

//複雑な場合
if ( is0 ( job ) == true && is1( job ) == true ....
else return -1; //幻滅!

士郎

こんばんわ。

>プログラムが動くだけでうれしいんですよ、わたし。

自分もそうです。見易さや速度などいろいろと考えて組んだプログラムが
動いたときはうれしいですね。
あと、「すばらしい」とかほめられるのもうれしいですね。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


インドリさん。

> 単純でなく複雑な理由があるのであれば、どれかの条件を満たさなくなれば、
> 仕事に幻滅してしまいます。

ああ、なるほど。悩む皆さんは条件が複雑なんですか。なんかわかるような気がします。
本人の意に沿わず状況が複雑になってしまう場合もあるんでしょうけど、わざわざ難しく考えてしまっているんじゃないか、と思う方もたまにいらっしゃいますね。
ものすごくマジメな人なんだろうなあ、と思いますけど。
私は直感的に動く人なので、友人たちに「いや、もっとよく考えてみようよ」とよく言われます(苦笑)。
でもまあ、なんとか生き延びてるし。


士郎さん。

私は「反応がはやくなった」とか言われるとうれしいですね。
あと「このユーザインタフェースは使いやすいね」とか「仕事がはやくて助かる」とか……どんだけほめられたいんだ、自分(笑)。

ヴァン

こんにちは。

>いまだに、「もっと言語を覚えられる」「もっとコーディングスピードを上げられる」「もっときれいなコードを書けるようになる」と信じています。

これがある限り続けることはできると思ってます。
まあ、環境が許す限りですけどね。

仲澤@失業者

>プログラムが動くだけでうれしいんですよ、わたし。

自分もですよ(笑)。以前はハードの設計もやってましたが、
ハードは構想から実体を動かしてみるまでの期間が長くかかるので、
死ぬまでに経験できる「動いたぁ~ん」の回数が少なくなります。
その点、ソフトはスクラッチビルドが早いので、細かいけど、たくさんの
ハッピーを経験できるに違いない・・・と、ソフト屋になりました。
(なんて強欲なんだ>>自分)

ちなみに、やりがいとかいきがいとかを求める人たちには、
他人の評価が自尊心に直結しているような共通の匂いを感じて、
やや引き気味になってしまいます(笑)。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


ヴァンさん。

> まあ、環境が許す限りですけどね。

実際のところ、「環境」を維持するのが一番むずかしいですよね。
……がんばって今の環境を守らねば。


仲澤@失業者さん。

「動いたぁ~ん」が私の中で大ヒットですっ! なんなのこのかわいさっ。

仲澤@失業者

>「動いたぁ~ん」が私の中で大ヒットですっ! なんなのこのかわいさっ。

ですかっ。喜んでいただいて恐縮です。
ちなみに、自分は、構築中のアプリケーションを「この子」と呼びます。
複数のアプリを平行で担当するので、何らかの問題が発生した場合は
「どの子がぐずってんのぉ?」と問い返します(笑)。

おーまさ

ですね。
自分が望んだ処理をしてくれた時の快感は格別です。

それと、他人のソースを見るのも好きなんですよ
考えもしなかった解法を書いてたりして。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


おーまささん。

> それと、他人のソースを見るのも好きなんですよ
> 考えもしなかった解法を書いてたりして。

わかりますっ。「この書き方の方が読みやすい」とか、いろんな発見があって楽しいですよね。
そのプログラムを書いた人のポリシーが伝わってきたりすると、うれしい気持ちになったり。
「ここにもがんばってる人がいる~」って、感じることができるコードを読むと、「お互いがんばろーっ!」ってエールを送りたくなります。
あっ、なんか自分がアブない人のような気がしてきた(苦笑)。

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