技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

心が動かなければ体を動かせ! 体が動かなければ心を動かせ!

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 1年前。ウチの近所に新しいスポーツジムがオープンした。そういえば、エンジニアがメシの種になってから、運動らしい運動をした記憶がない。

 サーバの入れ替えとか、UPSの運搬なら、しょっちゅうやってる。それも冷房完備のマシンルームでの作業である。汗なんてかくはずもない。

 視線を下に落とすとぽっこり膨らんだお腹が見えた。なんとかせねば。

■守破離の守

 というワケで、ジムに入会することに決めた。カタチから入るのがわたしの流儀。ウェアやシューズを一通りそろえる。道具ひとつでヤル気が買えるのなら安いものだと思う。

 おなじ運動をするのであれば、効率的にやりたい。なにごとも、目的意識を持って行動するのが基本である。運動する目的を考えるところからはじめよう。それは難しいことではない。アスリートを目指すワケではないので、特別な理由はいらない。

 運動不足の解消とダイエット、ついでにストレス解消。まあ、理由なんてこんなもので十分だ。そのうち、フルマラソンに出るとか言い出すかもしれないけど。

 大目標が決まったら具体的に落とし込んでいく。ひとつめの分解は簡単だ。脂肪を落とすことと、筋肉をつけること。ここまでは誰もがスグにたどりつける。もっと具体的な行動指針にまで落とし込んでいこう。

■鳥の目

 勉強するまえに勉強するやり方を勉強するメタなわたし。運動するまえに運動のやり方を勉強するのはごく普通の発想である。適当にダラダラと体を動かしてもあまり意味はないからだ。普段、お勉強でやっていることを運動にも適用してみよう。

 何かを始めるときには、ひたすら本を読む。運動やダイエットに関する書籍を購入したり、図書館で借りたりする。速読には自信がある。圧倒的なスピードで本が読めるようになると、このやり方が一番効率がよい。フォトリーダーの本領発揮である。

■戦略

 まず、痩せること。効率的な皮下脂肪の落とし方を調べる。一般的には、ジョギングなどの有酸素運動が効果的であるといわれている。しかし、有酸素運動では脂肪が燃え始めるまでに20分程度かかるといわれる。長い初期化。この時間がもったいない。

 で、ここにもうひとつの運動、無酸素運動というものがある。この無酸素運動を先にやっておくと、脂肪燃焼がスタンバイ状態になるという。先の20分という時間が有効に使えるのだ。こんな手を見過ごしてはもったいない。

 無酸素運動をやってから有酸素運動を行う。基本方針は決まった。

■戦術

 では、無酸素運動とは何か。いわゆる筋トレのことだ。スロートレーニングと呼ばれることもある。脂肪を落とすことと、筋肉をつけることは別のやり方があるようだ。もちろん、同じ体のこと、ある程度のリンクはしているだろう。ふたつをどうつなぐかということが、効率を高めることにつながるようだ。

 さて、筋トレに話を戻す。筋肉が増えるとはどういうことか。筋肉量が増大すると、脂肪燃焼率が高まる。筋肉がカロリーを消費するからだ。ようするに燃費の悪い体に作り変えるとよいらしい。

 鍛え方もある程度、決まっている。ちょっとムリめのウェイトトレーニングで10回ぐらい。9回目、10回目あたりはもう限界というぐらいがちょうどよいらしい。これを3セット。各部位ごとに繰り返す。すこし筋肉痛が残るぐらいがちょうどよい。

 しかも、筋トレのあとに有酸素運動を行うと、血液の循環がよくなって筋肥大にも一役買うらしい。脂肪が落ちて、筋肉がつく。一石二鳥じゃないか。

■材料

 筋肉をつけるには、運動以外にも材料が必要である。プロテインというやつだ。適切な負荷をかけられた筋肉は、筋繊維が損傷する。もちろん、体は傷ついた筋肉を放置しない。自律的に修復を行う。この修復を助けてあげるのがプロテインだ。プロテインはいつ飲むべきか。体の修復にはタイミングというものがあって、その時期に合わせるのがよいらしい。その時期は運動直後30分以内がメインだという。つまり、ベストは運動直後に飲むこと。

 プロテインにも種類はある。ホエイプロテインとかカゼインプロテインとか、選択肢がたくさんある。即効性のあるのはホエイプロテインらしい。細かい理屈とかいろいろとあるが、そんなことはここでは述べない。原理まで語りだすと限度がない。効果さえあればそれでいいのだ。

 ここまでで、大体のことがわかった。1回あたりに行うトレーニング方針がみえてくる。

■間隔

 さて、次はこの1回をどのくらいの頻度で行うかを考える。ここでは、筋肉痛と超回復に注目する。人の体というのは過負荷をかけられると、筋肉が損傷していくというのはすでに述べた。修復直後はより強い負荷に耐えられるように、少し筋肉が余分につく。このことを超回復というらしい。次に同じ状況になってもしのぐことができる。体は、経験を学習しているのだ。ムリをしないと成長しないのは頭も体も同じらしい。

 筋肉の修復は運動直後30分以外にも2~3日かけてゆっくり行われる。と同時に超回復も行われる。この間は相対的に筋肉の量が落ちているらしい。超回復というのは現在の筋肉量から回復率が決定される。仮に筋肉が10として、トレーニングによって12になるとする。ここで筋肉が落ちて7になると8にしかならない。超回復中に、トレーニングを行うと逆効果になるというのはこういう理屈があるそうだ。いわゆるオーバーワークと呼ばれる現象がこれである。

 人の体には個人差がある。超回復中であるかの判断はどうすればいいか。体に聞くのがいちばんわかりやすい。筋肉痛であるかどうか、というのがひとつの基準になる。筋肉痛が治まったら、超回復終了。体は万全の体制であるということになる。インターバルが決定する。

■結論

 トレーニングメニューは、筋トレを行ったあとにジョギングを行う。運動のあとにはプロテインを飲む。ジムに通うのは週2~3回ペース。ということになる。

 やり方が決まったら、答え合わせの時間である。そう、決めたこと実行するのみ。細かい理屈は間違っているかもしれない。が、そんなことは体に聞けばいい。計画に修正はつきものだ。

 そして、結果は体が証明してくれる。もちろん、以前に書いたリバウンドも無事、収束済みだ。

■頭脳だって身体の一部

 筋肉というのは、今日、明日、トレーニングしたからスグにできるものではない。継続した努力で初めて作られる。

 この感覚は新しいスキルを獲得するときによく似ている。

 人間、ひとつのことを習慣にするには、およそ3週間ていどの時間がかかるという。習慣がレベルアップして、身につくまではだいたい3カ月の期間を必要とする。

 わたしはこれをシナプスがつながる期間と呼んでいる。それが脳科学的に正しいかどうかはしらないが。筋肉だって同じようなものなのかもしれない。なにかを継続して、自分の体に変化が現れるのがだいたいこの期間のようだ。ハードウェアの成長は毎日の地道な努力によって達成される。

 ビール腹はどこにいったのだろうか。余計な脂肪が落ち、体力もつく。腹筋も割れてきた。新しい筋肉がついていくのは楽しいものだ。体のラインが整っていくのが気持ちいい。腰周りが細くなっている。フィットしなくなった、古いジーンズを捨て、新しく買いなおす。ギリギリ許容範囲だが、男物で一番ウェストの細いサイズでもまだ余る。これ以上痩せると、レディースに手をつけることになるだろう。

■なにもない空っぽな世界に新しい「何か」が誕生する

 体ができあがってくると、連動して、頭の回転とか記憶力もUPしていくような。気のせいだろうか。仕事のスピードもずいぶんと早くなった。脳も体も同じハードウェアであることを実感する。

 ハードなトレーニングを繰り返すと、思考がストップして、頭の中がまっしろになる瞬間がある。新しいアイディアが浮かぶときはたいていこんな時だ。もしかしたら思考のバッファがクリアされて、脳内メモリがフルに使えるからなのかもしれない。

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル33
  • 要領のよいスキル:レベル8
  • 限界を超えるスキル:レベル4
  • 調査するスキル:レベル21
  • 成長するスキル:レベル26

Comment(2)

コメント

三年寝太郎

ストレスも、程ほどであれば頭にも体にも良いですが、体にまで不調をもたらすようなストレスは、脳によくないと思います。

体を鍛えて体内の物流を活性化する。経済と同じで、滞るとろくなことが無いから。

他に、移動のスピードが速いと頭の回転が速くなるという話を聞いたことがあります。
目から入る情報も格段に増えるし、素早い判断も必要ですから、脳も鍛えられるんでしょう。
脳細胞の超回復は聞いたことがありませんが、そんな感じなのかも。
複雑な組織ですから回復の効果が現れるのも遅いだけなのでせよう。

はがねのつるぎ

>三年寝太郎さん

>細胞の超回復は聞いたことがありませんが、そんな感じなのかも。

はい。大事なのは結果であって、プラシーボ効果も含めて自分にとってプラスな方向であればそれでいいかなと、思っていたりします。体の代謝が活発になったぶん、シナプスの成長も早いのかもしれません。

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