男子エンジニアの日常
ヒロカズ「おーい、サーバのセットアップ終わったぞ。あとはRAIDの構築待ちだ」
ダイスケ「ネットワーク機器もconfig、今流し終えたところだ。疎通確認も取れた」
テルアキ「じゃあとりあえず一休みだな……」
……
テルアキ「……なあ、こうして作業待ちしてるとさあ、『もしテロリストがここを攻めてきたら?』みたいなこと考えねえ?」
ダイスケ「ああ、なるなる」
ヒロカズ「いや、ならねーよ!! お前ら中学生かよ!?」
テルアキ「だってここ、IDCだぜ? いろんな重要な機器が置いてあるじゃん。だったらテロリストが攻めこんできたとしても、全然おかしくないと思うのよ」
ダイスケ「まあ、ありえない話じゃないな」
ヒロカズ「……そう言われてみると……」
テルアキ「というわけでー、今からシミュレーションを行いまーす!!」
ヒロカズ「えっ?」
ダイスケ「予行演習は大事だ」
テルアキ「俺テロリスト役やるんで、お前らエンジニア役な。入館のとこからやるからちょっと待ってろ」
ダイスケ「おう」
ヒロカズ「えっ? 何お前ら勝手に話進めてんだよ!!」
……
バァーン!!!!
テルアキ(テロリスト)「全員手をあげろ! このIDCは我々テロリストが占拠した!!」
ダイスケ「馬鹿な! ここには何重ものセキュリティがかけられていたはず!!」
(テロリスト)「ふふふ……我々には協力者がいてね……死にたくなければおとなしくするんだな」
ヒロカズ「まんまB級ハリウッド展開だな」
ダイスケ「(今のところは黙って奴らの言うとおりにするんだ!! イギリス特殊部隊、SAS元教官の俺に従え!!)」
ヒロカズ「なんだよ元SASって! お前新卒プロパーだろ!! 職務経歴書どうなってんだよ!!」
(テロリスト)「さて……(首から下げたPHSをかける真似をして)……ああ、貴様か。我々の要求に従わなかったようだな……残念だよ……おかげでこうしてわざわざこの俺がわざわざ出向くことになった……」
ダイスケ「(今のうちに……このモジュラーペンチを使って手錠を外すんだ!)」
ヒロカズ「(いくらNWエンジニアだって、モジュラーペンチは普通持ち歩かないだろ!!)」
(テロリスト)「我々の要求は前に伝えたとおりだ……スイス銀行の秘密口座に1億ドルを今すぐ振り込め……さもないとお前たちの24/7稼働のサイトがどうなるか……フフフ、今すぐ教えてやろう」
ダイスケ「奴がコンソールに向かった……? 一体何をする気だ……?」
(テロリスト)「『# apachectl -k graceful-stop』」
ヒロカズ「graceful指定かよ!! テロリストのくせにこまけえな!!」
テルアキ「いや、だって……中途半端にセッション切れたりしたら、トランザクションとか怖いだろ」
ダイスケ「そうだよ……ちゃんとロールバックされないで中途半端なデータがDBに残ったりしたら困るじゃねえか」
ヒロカズ「……いやまあ……そうだけどさ……」
(テロリスト)「(再びPHSをかける仕草をして)……どうだね? わかっただろう我々の本気が…… 次は/etc/inittabのrespawn指定を外してHUPシグナルを送り……いや、いっそ『# sync; sync; sync; shutdown -h now; 』などどうだね?……ククク……」
ダイスケ「畜生……なんて非道な奴だ……!!」
ヒロカズ「いや、だからなんでその非道な奴が、なんで3回sync入れてるの!? 自分とあなたと神に祈ってるの!?」
(テロリスト)「ちっ、いちいちうるさい奴だ……どうやら体に教え込まなければわからないようだな……」
ダイスケ「やめろ! お前たちの狙いは俺とこのシステムのはずだ! こいつには手を出すな!」
ヒロカズ「えっ? 何その設定!?」
(テロリスト)「ならば望みどおりにしてやろう……『ババババババーン!!』(エアAK)」
ダイスケ「ぐふぅっ!!(撃たれた真似)」
ヒロカズ「おい! 何やってんだ!! ダイスケ!!」
ダイスケ「俺はもうダメだ……ヒロカズ……娘に伝えてくれ……『愛している』……と………(ガクッ)」
ヒロカズ「……いや……お前結婚すらしてないだろ……」
(テロリスト)「ふふふ……これで俺を邪魔するものは何もない……さて、『本業』に移るとするかな……」
???「あ! 下から2番目のサーバ、ディスクに赤ランプ点いてるぞ!!」
(テロリスト)「えっ!? マジ!? それ超ヤバいじゃん!!(ラックの下を見るために屈み込む)」
(テロリスト)「なーんだデグレってないじゃん……ガッ!!」
テルアキはコンソールラックに頭を強打した。
ダイスケ「基本的なトラップだ……ここが戦場(IDC)だということを忘れていたようだな……」
ヒロカズ「いや、何そのトラップ!! たしかによくやっちゃうけどさ!! あと何、そのルビ!! つーかお前、なんで生きてんだよ!!」
(テロリスト)「くっ……バ、馬鹿な……銃弾は確実に、貴様の体を捕らえたはずだ……」
ダイスケ「ああ……懐の『ストラウストラップのプログラミング入門』がなければ、即死だったぜ……」
ヒロカズ「なんでそんなの懐に入れて持ち運んでるんだよ!! あれ厚み5センチくらいあるだろ!!」
(テロリスト)「ふ……不覚……!! だが……すでに『計画』はフェーズ『ラグナロク』に移っている……」
ダイスケ「『ラグナロク』だと……!!」
ヒロカズ「なんで北欧神話なんだよ」
(テロリスト)「もはや誰も……誰にも止められはしない……いくら貴様だといえ……グフウッッ」
ダイスケ「死んだようだな……しかし『ラグナロク』だと……まさかあの計画が……!!」
ヒロカズ「だからなんで北欧神話なんだよ」
ダイスケ「そう……あれは雪の降る寒い夜だった……」
テルアキ「ジャーン、ジャカジャンジャジャン、ジャカジャーンジャジャーン♪」
ヒロカズ「回想!? つーかそのボイス・スパニッシュギター、北朝鮮のニュースでよく流れるヤツだろ!!」
……
ダイスケ「よう相棒、須藤さんを追加するときに『# useradd -m sudo』ってタイプすると超ヤベーって思わねぇ?」
テルアキ「あー、『chage』コマンドはあるのに『aska』コマンドがないのも不思議だよな」
ヒロカズ「って、なんで唐突に業界小ネタから入るんだよ!! しかもわかりにくいし!!」
テルアキ「俺、このプロジェクトが終わったら結婚するんだ……」
ダイスケ「彼女か……お前にはもったいないくらい、家庭的ないい娘だよな……」
ヒロカズ「お前らいつも会話が唐突だな! あとフラグ立てるなよ!!」
ダイスケ(裏声)「テルアキさーん、夜食を持ってきたわよー」
テルアキ「あっ、マミ!! そこは危ない!!」
ズキュゥゥゥーン
テルアキ「マミ、しっかりしろ!!」
(マミ)「ICMPパケットに貫かれてしまうだなんて……私って……本当にドジ……」
ヒロカズ「えっ! pingの流れ弾で死ぬの!? 何その世界観!!」
テルアキ「マミィィィ!!」
……
ダイスケ「こうして……やつは恋人の仇を取るために裏の世界へと入り、『組織』を作って復讐の機会をうかがっていたんだ……」
ヒロカズ「もう……どこからつっこんでいいのか分かんねえよ……」
ダイスケ「そして……そしてこのイエローケーブルこそが、彼女との『円環の絆』……」
ヒロカズ「今度は10BASE同軸ケーブルかよ!! お前のポケットには本当、何でも入ってるな!!」
ピピピピピピ(PHSの着信音)
ダイスケ「奴からだ……おそらくはこれが最後の戦いになる……!! 今度こそ、すべてに決着をつける時……!!」
ヒロカズ「いや、ちょっと待て、それ本当に鳴ってるから!!」
ダイスケ「え? (ピッ)あー、もしもし。えっ? 部長? え、既存システムが突然つながらなくなって、顧客がどなりこんできた? 大至急で対応してほしい? えっ……はい……」
ヒロカズ「…………」
テルアキ「…………」
ダイスケ「……というわけで……障害対応です……」
ヒロカズ「…………」
テルアキ「…………」
3人「「「ちっくしょうおおおおおーーーー!!!!」」」
ご声援ありがとうございました!!(完)
参考文献: 男子高校生の日常
コメント
embedor
どっかで見たことある流れだと思ったら
タイトルに書いてるじゃん。
次は○物語でひ○ぎさんのツンデレを期待します。
terukizm
僕は実は○物語見てないんですが、スカートの中が異次元でLANケーブルとか出てくるらしいですね
terukizm
あ、監修者様でしたか。かの本にはNIJ企画レベルⅣクラスの耐弾性能があると聞きおよんでおりますので、僕もまさかに備えて、是非携帯しようと思います。
terukizm
僕もスト本(こう書くとまるでぱんつじゃない何かみたいですね)を買ったおかげで体重が10kgも増え、可愛い二次元の彼女もできました! これからもスト本の素晴らしさを、是非布教していきたいと思います!
nsh1960@twitter
最近よそのコメントで、胸ポケットの分厚い本が生命を失う危機から守ってくれた話題(ネタ)で超ウケたばっかりの頃共時性の言葉そのままに分厚い本で生命を救った話だったので感動しました。
その時期からしばらく熱が引くのを待っての投稿ですがご容赦下さい。
terkizm
ネタとネタがかぶってしまったということでしょうか。ストラウ本はテンプレだがらね、しかたないね
nsh1960@twitter
いや、私の場合は理科年表最新版を買って床をゴロゴロしたと痴れ事を書いたら親友の・恋人の形見の50セント硬貨ならぬ理科年表で弾を…という意表をついた話を振ってくれた方がいらっしゃったという馬鹿話です。
terukizm
他にも京極とか終わクロ最終巻が耐弾性能高いらしいっすなあ