日曜プログラマです。

「メルマガ」って、もう古いですか? ~“情報流通技術者”の喜怒哀楽+α その1

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【喜】世界で一番、待ち遠しいメール。

Kdar_before いつもの平日。昼休み。携帯電話から何げなくチェックするGmail。

> 件名「○○さん、ご登録ありがとうございます!」

 (あ、また来てる♪)

 もう何年も付き合いのあるメールマガジンの……新規登録確認メール。多い日には「□□さん」「△△さん」と呼びかけだけ変えて、5~6通の同じ文面を受け取る。

 間違いメール?

 いえいえ。これは配信システムで、登録確認を“管理者”へもCC送信するように設定しているから。――そう、このメルマガの発行者は私。

 メールマガジン。

 私がこのツールを携え発信者となってから、もう10年近くが経過した。

* * *

 新しく読者になってくれた○○さん。

 嬉しいな。

 どんな人なんだろうな。

【楽】私のメールも、○○さんの待ち遠しいメールになりますように。

 はじめてメールマガジンを発行したのは14歳のとき。メルマガを購読し始めたのも同じ頃だと思う。ちょうどHTMLを勉強していて、参考にできるWebサイトがないか探していたときに出会ったのだ。「ホームページ作成入門講座」というようなタイトルのメールマガジンと。

 Hotmailに毎日届く、編集後記つきの楽しげなメール。私の興味は「ホームページ作成」から逸れていった。

 (毎日届くこの『メルマガ』というもの……。こっちの方がWebサイトを作るより簡単そうじゃない?)

 かくして私は「まぐまぐ」に発行者登録を行う。はじめは日記のような内容ばかり。1つのネタが途切れたら止め、また思いついたら新規発行し、ということを繰り返していた。

 最初の「ヒット」は16歳のとき。明確なテーマを持ち、訴求力のあるタイトルを付けることが重要だと、やっと分かってきた頃だった。選んだテーマはノーベル賞。2002年、小柴昌俊博士・田中耕一氏による史上初の日本人ダブル受賞に世間が沸いていた時分。最終的な読者は300人ちょっと。……ああ、笑わないで。当時はこれでも十分中堅どころだったんだから。

 1949年の物理学賞(湯川秀樹博士)から当時の歴代日本人受賞者10名。それぞれの業績を短くまとめて配信するだけのシンプルな週刊マガジン。でもタイミングが良かったのだと思う。読者さんとやりとりする楽しさを教えてくれたのも、このメルマガだ。

> ちょうど興味があったので、毎号楽しく読んでいます。

> 10人ってことは、次で最後ですね~……なんだか寂しい(> <)

 こんな感想が来ようものなら。指先までそわそわしてすぐに返信を書き出すことができなくて。意味もなく笑顔で部屋をぐるぐる歩き回った挙句(怖いよ)、やっと深呼吸1つして、それでもどこか浮ついたタイピングで綴る――心の底から、「ありがとうございます!」。

 そして夢は膨らむ。きっといつか、期間限定でない「世界で私にしか書けないコンテンツ」を詰め込んだメルマガを作るんだ。

 大学生になり、アルバイトで企業メールマガジンの執筆も経験する。美容関係の記事をまとめる力がつく一方、毎回指定された化粧品についてしか書けないという制限も気になっていた。

 そのとき私は文学部の学生だったけど、市販の書籍を参考にレンタルサーバを借りてドメインを取って、独自配信システムを構築しようとしていた。もちろん当時の私にプログラミングの技術はなかったから、配信ソフトは購入した。

 どうしてわざわざ、独自配信にしようと思ったのか。一番大きな理由は「名前入り配信」をしたかったからだ。つまり発行者側で「{name}さん」等と入力して配信すれば、登録された名前に置き換えられて「○○さん」と個人あてメールのように送れる機能。

 私自身がはじめて名前入りメールマガジンを受信したとき、本当に憧れの作者さんから直接メールが来たのだと思った。体裁は普通のメルマガだったから、すぐに「Excelの差込み印刷みたいなものかな」と分かった。だけど、やっぱり読んでいてワクワクする。私のために書いてくれているような気がする。――いや、「ような」じゃない。私は発行者でもあるし、発行者の友達もいるから、言える。メルマガの書き手は本当に、読者1人1人のことを想って文章を綴るのだ。

 それならば、その気持ちがより良く伝えられる「名前入り配信」、使わない手はないと思った(同時に、こんな素敵な仕組みを生み出せるプログラマってすごい、とも確かに思った)。

 はじめての、期間を限定しないメールマガジン。テーマは今ひとつ絞りきれなかったけれど、ジャンルはひとまず美容系とした。独自配信だから初期読者も自分で集めなきゃならない。当時は多かった「メールマガジンを紹介するメールマガジン」の力を借りた。私の不安をよそに、読者数は今まで見たことのない数字になる。美容ライター(アルバイトだけど)という肩書きが効いてる。

 張り切った。

 今はまだ通りいっぺんの内容しか配信できなくても、これまで学んできたことを全部つぎ込んで、精一杯の価値を提供するんだ。

 きっと、楽しくなる。

 そう信じて、疑わなかった。

* * *

 「迷惑メール」。

 この言葉が一般に使われるようになったのは、一体いつからだったんだろう。

 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律――通称「迷惑メール防止法」――平成14年公布、施行。

 平成14年。……2002年?

 私が最初の「ヒット」に浮かれていた頃じゃないか。

 そうか。

 ……私はずいぶん暢気だったんだね。

 (続く)

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