地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

強制アップデートにあれこれ思う

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 Windows10 が半ば強制的にアップデートを行うようになり、各所で問題になっています。最初のころはアップデートを促すだけであったのですが、時間が経過するにつれ、そのアップデートをキャンセルする方法をわかりにくくしていることもあり、多くの非難が寄せられていることは皆さんご存じだと思います。

 以前に Windows XP のサポート切れを扱った際にも書いたのですが、基本的に私はアップデート推進派であり、できるだけ早急に新しい環境へと移行することを是としています。それは脆弱性などが古い環境ではカバーしきれない点もありますが、そもそも Windows という OS 自体、一つの民間企業が販売しているものにすぎず、恒久的な対応を望むものではないと考えているからです。

 特に IT の世界の中で強大なシェアを有している Windows ですので、攻撃対象として最も狙われやすいのは避けようがありませんし、そこは OS 自体がセキュアかどうかとは関係がありません。そのような状況ですから、そのユーザーを守るためにも早期に新しい環境へと移行させるように考えること自体は、非常に納得のいくところです。

 利用しているアプリケーションがまだ対応していないから、新しい環境へと移行ができない事がネックになるのは承知しています。業務・非業務問わすにこのようなケースは、2016 年となった今でもまだまだ多く存在しています。そうそう簡単に入れ替えられるものではない、そういったシステムが存在していることも重々承知しています。

 ですが、こと移行に関して言えば、これまでに大きな移行の波は何度か訪れていました。Windows に限って言えば 95・98 世代から 2000・XP 世代へ、XP から 7 へ、そして今回の 7 から 10 へ、と間に別バージョンを挟んでいることもありますが、これまでにも何度かの大きな移行は体験済みのはずです。

 にも関わらず私達やその周囲では、同じことを繰り返しています。それは何故でしょうか。

 一つには、OS を含め IT システムというものを「他の設備と同様に、一度購入すればいつまでも好きなように利用できる」と考えているため。もう一つは「古いものを利用していても誰にも迷惑がかからない」と思うところがあるからではないでしょうか。
 購入したものをいつまでも好きなように利用できる、これ自体はそれほど間違った考えではない、と私は考えています。権利的にも所有者となっているものにおいて、所有者の思うように利用することは、さほど間違ってはいません。
 問題となるのはもう一つで、「誰にも迷惑がかからない」というところなのではないでしょうか。

 ネットワークに接続していない状態であるならば、それは正しいでしょう。閉じた環境の中であれば、システムをアップデートせずに利用し続けることに、それほど問題は感じません。何か問題が発生したとしても、それは閉じた環境の中にしか影響はありません。

 しかし世の中は変わり、ネットワークに接続していることが日常化しています。世界中の人たちと常に繋がっている状態です。広い世の中では、悪いことを普通に実行できる人も数多くおり、そのような人たちは弱点を持っている人を利用する事にも容赦はありません。アップデートを行わないというのは、このように悪い人から利用される可能性を高めてしまう一因であるのは、当然のことです。

 そしてここからが難題なのですが、例え古い OS を利用していてなにがしかの問題を起こしたとしても、それを利用者の責任だけにすることは、ほぼほぼ無理な世の中になっているということです。Windows が適切にアップデートされていない状態で利用され、その結果踏み台とされ多くの人に問題を起こしたとしても、それを利用者の責任と言い切れるのは IT にある程度精通している人に限られます。一般的な利用者であれば、「また Microsoft の Windows で問題がおきたのか」としか思わずに、事実と異なるイメージを持ち続けてしまうことになるでしょう。

 今のこのような世の中を考えると、強制的にアップデートを行うことは、良い方法ではないにせよ非常に悪い手段とも言い切れないように思えます。アップデートの回避方法をもっと周知させる必要はあったかも知れませんが、極端な事を言えばその方法にたどり着けないのであれば、強制的にアップデートを行わせてしまう事が、事前に問題を起こす率を減らしているとも考えられます。

 本来であれば、ソフトウェア側も協力して新しいバージョンへとすぐさま移行できるようになっているのが望ましいのでしょうが、そこはまだまだ一部の会社や開発者でしか対応できていません。ビジネスである以上、何も考えずにとにかく対応する、という手段は採用できないことは私たちが良く知っています。これからの課題は、いかにここで協力し合い、プラットフォームの進化に合わせていくことができるか、になるのかも知れません。

 この問題、今は PC が絡んだ箇所でしかありませんが、IoT な話題も増えてきているように今後はネットワークにつながる全ての物が対象となりえます。古いカーナビを利用していたから問題が起きた、古い家電を利用していたから問題が起きた、あながちこのような話も冗談では済まなくなる時代が、意外と近くにまで来ているのかもしれません。

Comment(10)

コメント

XP is GOD

それ単に「新しい物は常に進歩的で正しい」って思考停止してるだけちゃいますか。

MSに限ってもWindows8でUIあさっての方向にぶっ飛んで大不評だったのをもうお忘れで?

どうでしょう?

月例パッチの内容を見ていると、特にWin10だから安全とはとても言えないと思います。
結局影響受ける環境が「すべてのサポートされているエディションの Microsoft Windows」と言うのばかりです。

たまにWin8.1や7のみ影響範囲と言う物もありますが、逆にWin8.1以降の新機能部分はWin7はそもそも対象外という事もありますし。

なので、新しいOSがセキュリティ的に優れているというのは、一概に言えないと思います。
少なくともWin7は2020年まではセキュリティアップデートが提供されるので、そういう意味では大きなリスクにはならないと思います。

あのね

「一度購入すればいつまでも好きなように利用できる」
ことを期待しているんじゃありません。
「導入時に説明されていた期間中、安心して利用できる」
ことを期待しているわけですよ。

Windows 7は2020年まで使えることを期待していましたし、
Windows 7用のIE8もおなじだけ使えることを期待していました。
それが事情が変わって、IE8はもう使えないし、
Windows7だって新世代のプロセッサをサポートしないということになって
2020年まで使い続けることが困難になっています。

おまけに今動いているPCまで勝手にアップグレードして、
それが失敗して起動不能になる事故が発生しているわけでしょう?
この事態を肯定的に書いているコラムニストが要ることを知り、
ちょっと驚いている次第です。

通りすがり

XPのサポートが切れるからアップグレードするというのはわかりますが、今回のケースは違うんじゃないでしょうか

7はサポートもされててまだまだ使えるし、アプリも使える中で、敢えて10にあげてアプリを使えなくする理由って何でしょうか?
7よりも10の方がセキュリティ的に優れていて安全?
残念ながら、それは幻想です
大抵の場合、新しいOSやSPの方がテストが不十分で穴だらけですよ
なんでマイクロソフトの新OSのβ版テストに付き合わされなきゃいけないんですか
今回の1件だって、別にお客様のPCの安全確保のために親切でやっているわけではなくて、そんな中途半端なソフトをばら撒いて、テスターを増やしたいだけでしょ
アップグレードが無料になったからって、何やってもいいわけじゃないですよ

ハリコフ

・・・いや、ここまでのコメント欄からにじみ出る(Microsoft)への恨みつらみを一身に引き受ける感じになってますね。お疲れ様です。

私は社内SEなので、維持管理しているシステムの新OS対応には苦労しますし、今回のWindows10については、怒りに近いものを感じています。

ただ、実はiOS(Apple)よりは親切ではないですか?あれ、新機種は強制的に最新バージョン。しかも、バージョンアップ後は戻せないという凶悪仕様。業務アプリが動かなくなって、とても困ります。

見方を変えてみると、古い(欠陥のある)システムを捨てて、新しいシステムにするというのは、工事で言えば、過去の施工で欠陥があった時に、無償で修復しようという好意的な見方も出来ないでしょうか(気に入りませんが)。

また、このような混乱は、コンピュータ業界自体が未だ黎明期だからではないかとも思います。メーカー側の壮大な挑戦かなと。

今回のMicrosoftの挑戦、今は公開ウィルスとしか思えませんが、10年後には違う評価になっているかもしれません。

と、Win10になって動かないPCをWin7に戻しながら、思うのです。

XP is GOD

Windows95発売から余裕で20年経ってますけど、いつまで黎明期なんですかね。

ひょっとしてこの業界、ユーザビリティを進化させる気全く無いのでは?

a

Windows10アップデートは癖のないハード、ソフトを使っていれば別にいいんですけどね。
古いwin7検証機を10に変えられたんで、そこは助かりましたが。

こういう体制にするのであれば、Appleや組み込み系メーカーののようにハードソフト一社で賄うしかないんでしょうけど、
Windowsに求められているものを勘違いしているとしか思えないです。

ハリコフ

XP is GODさん。黎明期のコメントがありましたので、追記させてもらいますね。

私が考えた黎明期というのは、数百年~数千年の単位の話です。それと、Windowsというより、コンピュータシステム全体を意識してます。

コンピュータの世界は日進月歩と言われますが、それだけのスピードで進化(変化)するのは、まだ黎明期だからなのかなと思ったのです。

徐々に技術の進歩のスピードも停滞していき、共通の規格、考え方になっていくんじゃないかなと。ま、そういう世界は、私が生きている間には見れない気がしますが。

XP is GOD

ハードの方の性能はここ20年で誇張抜きに1万倍になりましたが、ソフトの方はナメクジなんですけど。

その理論なら、ソフトはとっくの昔に黎明期脱して衰退期に差し掛かってることになりますがどうなんですかね?

hogehogepon

古いOSを使い続けて問題が起きたとしてもそれはそのリスクを承知で使ってるんだから問題が起きても自業自得なだけ。

>本来であれば、ソフトウェア側も協力して新しいバージョンへとすぐさま移行できるようになっているのが望ましいのでしょうが、
バグ取りできてない無くてもメーカが新しいVerのOSを出したらそれにすぐ移行するのが本当にいいのか?
>強制的にアップデートを行わせてしまう事が、事前に問題を起こす率を減らしているとも考えられます。
強制的にアップデートさせられて問題が拡大するほうが怖い。
現実見ない、幻想理想論には意味も価値もないな。

よこから口を挟ませてもらうと数百年~数千年の単位ってそれって黎明期ではなくてもはや有史文明だよね。数千年の単位って黎明期って永遠に繁栄なく終焉迎えるようなもんwwww
人類文明だってそんなに続いた文明はないのにね。

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