「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

エンジニアの育て方、もしくは放牧のすすめ

»

■羊飼いをリスペクトしてみる

 皆さんは、羊飼いの仕事ぶりを見たことがあるだろうか。牧羊犬を使って広大な牧草地の中で、ときには1000頭にも及ぶ羊の群れを見事にコントロールするのだ。そのような、昔から変わらない彼らの仕事ぶりの中には、リーダーの神髄ともいえるエッセンスが隠されているのではないだろうか。

 そこで今回は、昔ながらの羊飼いのやり方を見直してみることにしよう。彼らの仕事ぶりを観察すると、大きく分けて3つのポイントに気付く。

 1つ。彼らは、牧草地の草の状態をしっかりと把握している。2つ。彼らは常に羊たちを注意深く見守っている。3つ。彼らは信頼できる牧羊犬に短い指示を出して群れを的確にコントロールしている。以下、これら3つのポイントについて、それぞれの意味を考えてみよう。

■牧草地の状態を把握する

 自分の働く環境を把握することは、どんな仕事にしろ重要なことだ。例えば業界動向や技術動向、市場動向などだ。これらについてしっかりと情報収集して、未来や将来についての自分なりの見通しを持ち、それに基づいて進むべき道を見定めることができるかどうか。これは重要だ。

 広大な牧草地のどこに美味しい草があるのか、リーダーなら知っている必要がある。あるいは、自分が最善と信じるものを知っている必要がある。でなければ、部下に指示も出せず、後輩たちを導くことも不可能だろう。後進のエンジニアを育てるためには、まずは羊飼いのように牧草地の状態の把握が不可欠だ。

■羊たちを見守る

 後輩や部下を持つようになったら、彼らをしっかりと見守ってやらなければならない。でなければ広大な牧草地の中で、彼らはそれこそ「迷える子羊」になってしまうだろう。しかし、目が届きやすいからといって、畜舎の中(つまり自社内)から出さないようでは、彼らの成長はイビツなものになってしまうだろう。

 鶏の例でいえば、畜舎内で育てるブロイラーの30%は、その成長の速さのために、自分の身体を支えられずに歩行困難となるらしい(まぁこれは品種改良に依るところもあるようだが)。後輩たちを、そんなイビツなエンジニアにしてしまってはならない。

 後輩や部下を広大な牧草地へと誘い、新鮮な空気とおいしい牧草を与えよう。言い換えれば、各種展示会や、技術セミナー、勉強会などに積極的に出るように促し、必要とあらば、自ら連れ出すということだ。そして、会社の内外で積極的に活動する彼らを、常に見守り、必要に応じて導くのだ。それがバランスの取れた成長を促すことになる。

■牧羊犬との信頼関係

 羊飼いと牧羊犬とは長年の付き合いの中で信頼関係を構築していて、常に意思の疎通ができている。だから羊飼いが短い指示を出せば牧羊犬は自分のやるべきことを理解して行動を起こせる。なんともうらやましい関係ではないか。

 エンジニアにとっての牧羊犬とは、何度も一緒に仕事をしてきた後輩や部下だ。どんなに長く一緒に仕事をしても、それだけで自動的に信頼関係が得られるわけではない。牧草地の状態を把握し、常に羊を見守っているからこそ信頼されるのだ。逆にいえば、その2つのポイントさえ押さえておけば、これは自動的に付いてくることになるだろう。

■放牧こそエンジニアの最良の育て方

 このような話は、あまりにも素朴すぎるし当たり前すぎるし古ぼけても見える。だから面白みには欠けるかもしれない。その半面、枯れた技術特有のどっしりとした安定感があるのも事実だ。

 ブロイラーは、食肉用の鶏を安定供給するために大いに役立っている。それは事実だ。しかし、ブロイラーのようなエンジニアを育てたいと思うヒトはいるだろうか。自分の足で歩くこともできないエンジニアを。そんなことはあってはならない。

 あってはならないにもかかわらず、現実を見ると、畜舎に閉じこもって外に出ていないエンジニアは驚くほど多い。彼らはブロイラー予備軍ではないだろうか。だから我々は、後輩たちのために、正しい放牧の仕方を心得た羊飼いにならなければならないのだ。IT業界の明るい未来のために。

 汝、良き羊飼いたるべし。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する