いつも心は穏やかにと思っている私ですが……

続・社内失業者はもっといる リエンジニアリング

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 前回、社内失業者と自覚している人だけではなく、仕事らしきことをしている人も実は社内失業者ではないか、という趣旨のコラムを書いた。結構、日本の将来について暗雲を感じさせるものなので、今回もうちょっと掘り下げて考察してみる。

 大きな原因は、市場の飽和、あるいは市場の縮小ということに尽きる。バブルの崩壊に悩んだ1990年代、山一証券の倒産、そしてミリオンヒットとなったモーニング娘。の「LOVEマシーン」が歌う「就職希望なの~♪」は、まさに不景気の象徴だった。「社内失業者の出現は、リーマンショックの影響だ」という説もあるが、もっと以前からあった不況の長期化がもたらしたものだと、私は思う。

 長年続いた不況で、大企業によくある、中間管理職が何段階もあるピラミッド構造が保てなくなった。新規事業開拓が思うようにいかず、新人採用を減らしてきたために、部下なしの管理職がたくさんいる。管理職にしてしまえば、残業代を払わなくていいという企業論理から。

 1990年代に「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BRP)」という概念が提唱された。欧米的で日本には根付かないのではないか? という疑問が当時浮上したが、20年近くたって皮肉にも、企業はリエンジニアリングされた。長期不況が原因で、「管理職だけどベテラン現役」みたいな人が多く、「水平管理」という企業組織形態が一般化してしまった。

 ベテラン現役は、長年の勤務経験から自然と、利益や会社貢献度が多く、楽にできる仕事や顧客を選ぶようになる。その結果、新人には利益率が低い仕事や顧客しか回ってこなくなる。人事評価も厳しくなる傾向にあるので、どうしても評価によって人の序列をつけなければらなない。新人を育てても、将来的には自分の敵となる可能性も否めない。

 大抵、お金を出してくれそうな企業って、ビルに入ったらセコムの警備員がいるだろう。飛び込み営業なんて門前払いだ。コンプライアンスの観点から、個人情報や顧客情報の流出はあってはならないはずなのに、突然、知らない会社からセールス電話がかかってきたら、断っても当然である。

 今、ユーザー企業はどのようにして業者を選ぶのかというと、やはりインターネットで検索して探したりする。Web サイトを作ってSEO対策をして、網にかかってくる魚を待つのが正当な営業手段であって、営業努力で新規顧客が獲得できる時代ではない。中には社長自らブログを書き、自分の会社を宣伝する人もいますね。

 営業だけでなくエンジニアの世界では、2000年のITバブルの時に、ユーザー企業が競ってERPなどのシステムを導入したわけで、今は保守案件が多いのではないだろうか? よくネット上では、コメントアウトだらけのプログラムの保守作業など目にする。保守案件にしても、10年近くそのシステムと付き合っている中堅社員が直接やってしまった方が早いわけで、「ひどいプログラム」とぼやいている新人に仕事を教えても、不愉快な思いをするだけだ。新人というものは、お手本になるようなサンプルコードしか見ていないから、本当の実務に使っているプログラムがいかにひどいものかを知らない。「泥まみれにならないと金はもらえない」という現実を説得するのは難しい。特に、大学でソフトウェアというものを学問、芸術、美学のように教え込まれている学生にとっては……。

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