キャリア20年超。ずっとプログラマで生き延びている女のコラム。

我流プログラマ延命術

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 IT業界には「プログラマ35歳定年説」という俗説があります。

 「俗説」と決め付けていい、と個人的には思っていますが、わたしの周囲にいたプログラマたちを思い浮かべると、ほとんどの人は35歳前までに、管理や営業の方にうつっていくか、IT業界を去るかなので、間違いとも言い切れないのがつらいところです。

 その35歳を干支一回り分ほどぶっちぎって、リーダー経験ゼロのままでプログラマ職を続けているわたしは、だいぶレアな人だと思いますが、そんなわたしが、「なんでプログラマを続けられないんだろうね」と考えて、出た結論がこれでした。

 くたびれるから。

 なんかもう身も蓋もないですけど、一言であらわすのならそういうことなのかなあ、と感じます。

 くたびれるからプログラマをやめてしまうし、くたびれてるけどやめない、というルートを選択した人も、いずれやめざるを得なくなります。

 なぜ、やめざるを得なくなるかというと、人はくたびれてくると余計なことをやらなくなるからです。

 この場合の「余計なこと」というのは、「ただちにお金や評価に結びつかないこと」くらいの意味ですけど、注文通りに動くコードになってるのに「もっと冴えた書き方はないかな」と考えたり、すでにユーザさんのOKをもらっているのに「もうちょっとわかりやすい画面にならないかな」と改善案を練ったり、「この職場で使う機会はないだろうな」と思いつつも新しい技術について調べたり、といった余計な一歩を踏み込むことをやらないプログラマは、いずれどこにも行けずに立ち尽くすことになります。そして、この流れのはやい業界で、立ち尽くしたまま生き延びるというのは、ものすごく大変なことです。

 まあ、流れのはやい業界の中にも、流れが止まっている場所はあったりするので、そういうところでなら楽に立ち尽くすこともできるかもしれませんが、そんな、ある種の人たちにとってのパラダイスが、10年後も20年後もパラダイスのまま存在できるという保証はどこにもありません。

 ですので、プログラマとして生き延びたいのなら、まず気をつけるべきことは、くたびれないことなんじゃないかと思うわけですが、「プログラマを続けたいなら、くたびれるな! 以上!」で話を終わらせるのも不親切なので、くたびれないために必要だと思うこと、についてちょっと書いてみたいと思います。

 まず第一に「先のことは考えない」。

 先のことを考えてわくわくできる人は、幸せな人なので、そのまま突き進んでください。

 けれど、先のことを考えても漠然とした不安が湧くだけ、という人は先のことは考えない方がいいです。「先のことを考えてキャリアプランをたてろ」とよく言われますが、プログラマにとどまり続けるルートを望む場合、そういった助言はあまり気にしない方がよい、とわたしは考えています。

 そもそも、この業界で先のことを考えても、めったに当たりません。IT業界は流れが速すぎるし、ポッとでてきた天才があっというまに流れを変えてしまう、ということも普通に起こります。そんな業界にあって、あたる確率が相当に低い予想をあれこれするなんて、ただ自分をくたびれさせるだけです。

 先のことを考えてうつうつするくらいなら、今、書いているコードがどうしたらもっといいものになるかについて考え込む方が、よっぽど将来のためになるはずです。

 さて、次です。「イヤなことからは逃げる」。

 将来のためだとか、えらい人に言われたからとか、みんなやってるからとかいう理由で、イヤなことをやると、くたびれます。

 ただ、「イヤなことは何もやらない」だと、本当に何もやらない人になってしまいかねないので、「どうしてもイヤなことはやらない。なんとなくイヤなことならやってみる」ぐらいのスタンスがちょうどいいんじゃないかと思います。

 「なんとなくイヤなこと」はやってみたら案外おもしろかった、ということもありますが、「本当にイヤなこと」というのは、もうどうしようもないですから、逃げるに限ります。

 「先のことは考えるない」「イヤなことからは逃げる」では、ただのダメ人間じゃないか、と思われるかもしれません。けれど、「先のことを考えて、今、イヤなことから逃げない」人が、くたびれすぎて、プログラマとしてダメになっていく姿を、わたしは何回もみてきました。

 プログラマとしての自分に必要、と信じられることにはぎりぎりまで踏ん張るべきだと思います。けれど、どうしても必要というわけではないものにリソースを割いて、くたびれて、プログラマをやめるなんて、本末転倒もいいとこです。

 それでも、これは本当に逃げるほどイヤなことなのかなあ、と悩んでしまったりすることも当然あるわけで、そういった時にわたしがやっていることは「悩んだら自分を問い詰める」です。

 よく、悩んでいる人に「思い詰めない方がいい」とアドバイスする人がいますが、わたしは「悩んだ時はひたすら自分を問い詰めた方がいい」と思っています。

 「逃げたい」→「でも、次の仕事あるのかなあ」→「思い詰めるのもよくないし、様子をみるか」→「でももうイヤ」→「逃げたい」というループの中でぐるぐるしてたって、何の解決にもなりません。

 「それ本当にイヤなことなの?」、「結局、何が一番イヤなの?」、「だったらどういう条件が整ったらイヤじゃなくなるの?」と、とにかく自分を問い詰めて、思いつくかぎりの視点で、YESな理由とNOな理由を並び立て、考えて考えて考え尽くすのです。

 大きな決断をすることがむずかしいのなら、小さな決断を積み重ねるのです。覚悟がつかないのなら、問答を重ねて自分自身を説き伏せるのです。

 この場合、一番、重要なことは、はっきりとした結論を出すことです。もちろん「結論保留」という選択があってもいいですが、その場合でも「リーダーに現状を説明して自分の希望を伝えて、3ヶ月待つ」みたいな具体的な行動と期限を決めましょう。

 あと、「○○さんに迷惑がかかるし……」的なことはいっさい考慮にいれないことも重要です。自分のことだけ考えましょう。家族やパートナーのことは考慮にいれた方がいいと思いますが、他人の迷惑まで考え始めたら身動きがとれなくなります。

 「自分のことだけ考えろ」とかいうと単なる自己チューっぽくってきこえが悪いですけど(ていうか、この文章、きこえが悪いことしか書いてないな)、その行動の結果はいずれ自分にかえってくるということを、しっかり覚悟したうえで身勝手になりましょうよ。

 プログラマとして生き延びるのに必要で、実は意外にむずかしいのが、プログラミングが楽しい、おもしろい、という気持ちを失わずにいること、です。

 ですから、そんな気持ちを曇らせたり、傷つけたりするものから、できるだけ自分を遠ざける術を、「延命術」と呼んでもいいんじゃないかな、と思ってこのタイトルをつけてみました。

 タイトルをみて、もっと技術寄りな内容を期待した皆様には、ごめんなさいでした。

 それにしても本当に、プログラマってくたびれる職業だよなあ。

Comment(4)

コメント

仲澤@失業者

同感ですね。・・・じじいプログラマの仲澤です。

自分が30歳定年説を聞いた当時は、アセンブラとBASICの世界だったので、
まぁ妥当な仮説でした。
それもあってか、現在国内では同年代の現役のプログラマはあまり見ません。
が、いないわけではありません。
自身、50代で現役のC++/Java/Objective-Cのプログラマです(笑)。

この年になって、ふと振り返ってみると色々な事に気づきます。
若い頃には、そうじゃないかなと、なんとなく思っていたのですが、

 1.年をとっても自分はちっとも変わらない

実は、頭の中は20代の頃と全然変ってないよなぁと思うのです。
まぁ10代の頃よりは多少はマシになったかもしれません。

実際、最初のBASICのプログラムを書いたのは20歳の時でしたが、
このとき「おもしれ~、これって仕事にできないかな」と、
本気で思っていたのでした。・・・結果的にその通りの人生を歩みましたが、
一気にプログラマになれる時代ではなく、いくつかの仕事を転々としましたけど。

逆に、20代で、かつ今プログラミングが辛いなら、
将来も辛い可能性が高いのではないでしょうか。
実は、そのような何人かにプログラマをやめるように勧告したこともあります。
なぜなら、

 2.残酷ですが、本当は才能が重要。

と思っているからです。そして、誰もそうは言ってくれません。
世間では、努力すればなんとかなるというアドバイスばかりです。
その意見に反対するわけではありませんが、あきらかに効率が悪いと思います。

才能ある人が楽しみながら学ぶ姿を見ながら、まるで苦行のような
努力を尽くすのはどうかと思います。
しかも、成果もまったく及ばない可能性があります。
そして、それに気づいた頃には・・・もう。

あたりまえですが、辛い努力を長期間続けることはできません。
長くその仕事を続けることができるのは、実はそれを面白がれる
程度の能力=才能があるからではないかと、考える今日この頃です。

アラファイブ

自分も50代ですが、最近は仕事中、片目をつぶっています。
その方が、冷静に集中出来ます。

自分なりのくたびれ除けです。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


仲澤@失業者さん。

>  1.年をとっても自分はちっとも変わらない
> 実は、頭の中は20代の頃と全然変ってないよなぁと思うのです。
> まぁ10代の頃よりは多少はマシになったかもしれません。

わかります。実は私もそう思ってます。
中身はちっとも変わってないけれど、10代の頃よりは空回りしなくなったというか、自分に逆らわなくなったというか(苦笑)。
おかげで若干、省エネモードで生きていけるようになった感じがします。


アラファイブさん。

片目をつぶってたら、いつの間にか両目をつぶっちゃいませんか? そんでもって寝ちゃいませんか?(←私だったら絶対にそうなりそう)

アラファイブ

123 123 123が正解な時、122を見つける際には、
広い視野より確実に1行1行が大切で、しくじる時は
大抵、両目のピントがずれ、ぼーっとなった時なので
2→1は有りだと思います。

#1→0はさすがにまずいです。なお、老眼のせいでは
#無いです。念のため。

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