技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

わたしが、あたらしい勉強に目覚めたワケ

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 2年ほど前。独立してフリーランスというスタイルで仕事ができるようになった。と、いっても、客先常駐での作業が基本。会社に所属していたころと、あんまり変化していない。

 自社で別プロジェクトの持ち帰り作業を手伝ったりとか、土日に火の噴いたプロジェクトの助っ人とか、新人の教育とか、やらなくていいことが増えた。自社のしがらみから解放された分だけラクになった。

 変わりに自分を守ってくれるものがなくなった。とはいえ、会社にいたころもそんなに守ってもらった覚えがない。せいぜい、営業経由で「残業が多い」のクレームが入る程度。そのクレームも実は自社の人間を入れるためというオチがついた。やっぱりね。

■身近な先輩

 フリーとなって仕事もそれなりに回るようになったとき、ふっと我に返る。独立した先に何があるのだろうか。「次」をどうしていいかわからなくなった。気がつけば35歳が目前に控えていた。エンジニアの定年といわれる年だ。まわりをみると、自分より年上の同業者が極端に少ないことに気がついた。ついに年齢が上限値に達したのだろうか。

 コボラーと呼ばれる人がいる。わたしのイメージでは、高齢の現役技術者のイメージが強い。話に聞くことはある。しかし、ご一緒に仕事をする機会なんて一度もなかった。

 同じ現場で、同じフリーランスで、同じ立場で仕事をしている人に出会う。違うのは年齢だけ。40後半ぐらいだという。不思議だった。ひとまわり以上はなれているのに同じ仕事をしている。あれが10数年後のわたしの姿なのか。何もしなければ、ずっとこのままだ。

■身近でない先輩

 むかしから、読書は好きな方だった。エンジニアになってからは、読むのは技術書ばかり。技術力に自信がついてくると、そっち系の本はあまり必要がなくなる。しばらく読んでいなかった小説やら文学なんかに手を伸ばしはじめる。

 読みたかった本をひととおり読み終えると、乱読モードにはいる。目に付くもの、ヒットするものを手当たり次第。ひたすらに活字を追いかける。

 敬遠していたジャンルがある。ビジネス書。わたしには必要ないと思っていた。エンジニアは技術力がすべてと思っていた。あまり深く考えず、『7つの習慣』とか『金持ち父さん貧乏父さん』とか、有名どころに手をだしはじめる。この手の定番本は、あまりに売れすぎたので、逆に読んだというのが恥ずかしいらしい。

 意外と、どころではなかった。おもしろい、どころではなかった。目からウロコというのは使い古されてチープすぎて使う気にもなれない。あたらしい視線、あたらしい考え方に驚いた。なるほど。こうゆう思考もあるのかと。ここから、ビジネス書や自己啓発本あさりがはじまる。戦略眼が欲しいと思った。

■前提条件

 技術力、スキルというのは個々の局面において使用される。戦術といっていいだろう。戦いの技術だ。エンジニアであれば、ひとつ以上持っている。得意な言語であったり、インフラまわりの技術であったり。

 目の前の戦場をくぐりぬけるのは戦術である。しかし、くぐりぬけた先に何があるのだろうか。また、あたらしい戦いの最前線。いつも生還できるとはかぎらない。くりかえしていれば、いつかは力尽きるだろう。

 老兵は死なず。ずっと、現役プログラマとして生きていくのもいいだろう。技術一筋に生きるのも悪くない。最強の兵士には憧れる。しかし、残念ながら世の中は評価してくれない。

 技術力は高ければ高いほどいいというものでもないだろう。あまりにも高すぎる技術力は不要なのかもしれない。客先常駐や、請負というスタイルにはなじまない。新人の領域さえ超えれば、若くて安い労働力のほうがいいのだ。そういう人を買い手は求めている。

 誰もがリーナスやウォズニアックのようになれるわけではない。市場でしか評価されないエンジニア。それが、今のわたしの技術の限界だ。認めよう。

■選択肢

 いつまでも、兵士のままでいいのだろうか。

 満足するスキルに届くまではわかりやすかった。一人前の兵士になるという具体的な目標があったからだ。アルゴリズムを理解すればよい。データベースを学習すればよい。それでよかった。

 プログラマ35歳定年説というのは、技術的な学びが終わる時期をさしているのかもしれない。目標を見失う時期である。次に何をすればわからなくなった。

 ウソだ。わかっている。選ぶことだ。

  • 兵士を続ける
  • 兵士を辞める
  • 司令官を目指す

 塹壕の中で考える。これが30代の悩みなのか。

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル20
  • 人の振り見て我が振り直すスキル:レベル2
  • 己を知るスキル:レベル4
  • 彷徨うスキル:レベル7
  • 自己紹介スキル:レベル0
Comment(2)

コメント

毘政

「プログラマ35歳定年説」は、昔の過酷な労働条件と、企業側の年功序列による賃金アップの回避からなのではないでしょうか?

すでに、35歳を越え、40代半ばの人間の4番目の選択肢は”死ね”ということになるのかなぁ?(苦笑)

はがねのつるぎ

>毘政さん

「プログラマ35歳定年説」という記号の中身を「個人的な悩み」にすり替えてみました。言葉の脆弱性をついてポインタを書き換えているのがバレバレですね。

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