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第586回 上下(かみしも)を切る

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 こんにちは、キャリアコンサルタント高橋です。

 私は普段研修の仕事をしていることが多いのですが、研修では毎回アンケートを取らせてもらっています。そのアンケートの中身は全て確認し、私自身へのフィードバックとして活用させていただいております。

 先日もあるプロマネ系の研修を担当させていただき、アンケートを取らせていただきました。その内容がとても興味深かったので、今回はアンケート結果から思うことを書きたいと思います。

■「落語か演劇経験者だったりしますか?」

 それでは、そのアンケートの抜粋をご紹介します。

  • 会話の中で出てくる落語風一人芝居が面白かった。
  • 楽しい研修でした。最初から最後まで飽きというか疲れがなかった。
  • 講師の方、落語か演劇経験者だったりしますか?リーダーとメンバーの再現シーンがリアルでした。

 私が研修で何かしらの事例を紹介する時は大概一人芝居をすることが多く、言うなれば落語における「上下(かみしも)を切る」ってことを良くやります。

 私は落語が好きで良く見ていますが、落語の経験はありません。勿論、演劇の経験もありません。それでも、素人の私の上下を切る行為が受講者の方からその道の人と見られていたというのはとても嬉しかったです。

■なぜ、研修で上下を切るのか?

 私が研修で上下を切るのには理由があります。

 このコラムでも何度かお伝えしていますが、私は研修の効果性を高めることを常に心がけています。私が思う研修の到達点は、参加者自らが答えを導き出し学びを深めていくワークセッションにあると考えています。

 しかしながら、ワークセッションは体験により内省を深めていくため課題や目的などが明確になっているコンテンツについては有用なのですが、知識提供型の研修には向いていません。しかし、現実問題として研修の中には知識を提供しなければならないシーンが数多く見られます。プロマネ研修などは特にその傾向が高くなります。

 この知識提供型の研修というのは一般的にはインプット型研修と言われます。講師側がたくさんの情報を参加者に伝え、参加者はその情報をどんどんインプットしていくことで知識を習得していきます。そのため、このインプット型研修は参加者が受け身になりやすいという特徴があります。

 実はこれがインプット型研修の弱点でもあるのですが、研修において受身になると研修の効果が薄れてしまいます。なぜなら、受身の状態で研修に参加するということは研修への没入感をなくし、参加者の集中力を途切れさせてしまうからです。

 しかし、研修の構成上どうしてもインプット型研修を使わないと成立しない場合があります。しかし、それでも参加者の没入感は削ぎたくないです。。。

 では、どうすれば?

 私はその答えを落語に見出しました。私たちが落語を聴いている時ってずっとその落語家の方を見続けていますよね。これって実はインプット型の状態なんです。にもかかわらず、私たちはその落語家の話に没入しています。

 なぜ、没入してしまうのか? それは落語家の話し方、人を惹きつける話芸があるのだと私は考えました。だとすれば、この話芸を研修に転用することができれば、インプット型の研修でも受講者に没入感を与えることに繋がるのではないかと思ったんです。

 そこで思いついたのが「上下を切る」です。

 先ほどにも書きましたが、私は落語をやったことはありません。だから、落語の作法も分かりませんし、話芸も見様見真似です。それでも何度も何度も落語家の話し方を繰り返し練習し、実践で試し続けました。その結果、先ほどのようなアンケート結果をいただくことができました。このフィードバックが全てではありませんが、私の考えていたインプット型研修の一つの形、成果の表れなのではないかなと感じました。

■表現者の端くれとして

 こう見えて私は研修で伝えることに結構気を遣っています。先ほどの上下を切るのもそうですし、対話のシーンを再現する時などは感情を入れて表現することにもチャレンジしています。そうすることで参加者が研修への没入感を高まり研修の効果性を高めることに繋がると考えているからです。

 伝えることは傾聴を代表とする聴くことと対を成すコミュニケーション技法です。そして、伝えることの技術を高めることは自分を表現することにも繋がります。

 私も表現者の端くれですから、伝えることについてはこれからももっともっと技術を磨き、今以上に私の話を聴いていただいている方に没入感を持ってもらえるようになりたいと思っています。そう考えると、まだまだ勉強ですね!

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