診断士兼キャリアコンサルタントの元外資ITマネージャー

無理なポジションからイノベーションを起こす

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 こんにちは、46です。

 「ドロップアウトからのキャリア七転び八起き」第5回となる今回は、ボクがこれまでに見て、経験して、実感してきたことの1つ、「ポジションが人をつくる」の実態、「イノベーションが成長を促す」をお送りします。

■チャンスが与えられなかった氷河期世代

 大学志望者のうち、入学率がボトムの1990年前後、あるいは大学受験人口のピークだった1992年前後、すなわち就職氷河期初期世代は、受験期に高い倍率を経験したにもかかわらず、卒業したときには受け入れ先の門が閉ざされていた、という点で「報われなかった世代」などといわれている(参考:受験人口推移表)。

 数年前とくらべて、同じ会社に入る倍率が格段に厳しくなった中で、「数年前に入ったバブル期入社の先輩には負けない」といった自負心を、ボク自身、同期や後輩と共有していたことをおぼえている。

 しかし、この世代はさらなる不運にあう。

 氷河期が続く中で採用は先細り、後輩が部署に配属されない、という会社や部署が続出した。

 たしかに、ボクも同じ部署の先輩が2年前には4人、1年前が2人、といった中で、2年目になってもみんなの机を拭いていた。「この仕組みって……新人が入ってくることが前提になっているからマズイな。ずっと一番下、がいつまで続くんだろう」などと思いながら。

 これが今、各社が「年齢構造のアンバランス是正」を理由に30代の採用を進めている要因につながるわけだけど、その結果は……。後輩の指導やチーム・マネジメントを任されるチャンスが少なかったことから、「人を使えない」世代といわれる場面も。

 一方、少し上の世代の人と出会うと、しっかりとチーム・マネジメントの機会を得て、どんどん成長を続けている人が多い印象を受ける。

 そう。経験しないとできるようにならない、「ポジションが人をつくる」がゆえに「ポジションにつくことが、成長への近道」。その秘訣は「イノベーションにあり!」が今回のテーマです。

■カイゼンとイノベーション

 ボクの好きな言葉でもある「イノベーション」。

 べつに「カイゼン」が嫌いなわけではないけれど、経験を積んで、失敗して、学んで、工夫して……。そこからイメージされるものは、ゆるやかで、だが確実な成長カーブだ。

 一方、「イノベーション」。

 こちらは、ビジョンありき。あるいは、最初から高いハードルが設定されている状態、ともいえる。

 もちろん失敗のリスクはそれなりにある。

 その代かわり、成功したあかつきには、カイゼンではたどりつけない地点へ到達することができる。

 例えるならば……コンテンツを自社で整備したり、ライセンスを受けて提供する従来の手法をカイゼンとするならば、YouTubeやWikipediaのように、ネット上のユーザーにつくってもらおう、というCGM的な発想がイノベーション、といえるかもしれない。

■イノベーションの瞬間

 思い返すと、ボクがSEとして、あるいはプロマネとして急激な成長を実感できた場面が何度かある。

 1回目は、新卒2年目。クライアントのキーパーソンへのプレゼンの数日前、上司が倒れた。

 その日の設定テーマに一番くわしいのがボク、という場面だ。

 結果はNG。ダメ出しをいただいたものの、幸いセカンドチャンスをもらえ、その日までの間は何度か泊まり込みながら資料をまとめ、何とか2回目のプレゼンは成功。

 そこまでのプロセスからだけではなく、やりとげたことによる、精神的な成長も大きかった。

 2回目は、正社員に復帰して3年目。海外含めたプロジェクトに日本側のサブリーダーとして参加していたころ。

 英語での電話会議に、いつも無言で参加しているだけだったが、ある電話会議の朝、またもや! 上司が倒れたとの連絡。

 とりあえず電話会議に参加してみるも、ビックリするほど通じない英語。

 「彼(上司)がいないんじゃ、仕切り直そう」と言われてその日は終わってしまったが、上司の復帰はすぐにはできないことが判明。こうなると、また自分でふみとどまるしかない。

 なにしろ、今回は日本側の要求事項をしっかり通さなくてはいけない、というミッションがある。

 英語で押されて、よくわからないままに、うっかり「OK」と言ってしまうことの代償が大きい。

 急いで英会話レッスンを取り、「議論が十分でないまま終わってしまいそうな場合に、いったん止める方法をおしえてほしい」「~を伝えるには何て言えばいいか」などと、ピンポイントな電話会議対策。

 その一方、日本のユーザーのリクエストについても、ただ「この機能が必要だ」というだけでなく、「なぜ必要なのか」「他の解決案はないか」「妥協点はどこなのか」「この機能との優先度はどうなのか」、ヒアリングを重ねて詰めていった。

 それは白髪が急増する、とてもとてもタフな経験だったけれど、上司が復帰したあともプロジェクトの中心として動き、システムの理解に加え、ヒアリング力、交渉力、さらには英語力の向上を実感できた。

■ポジションが人をつくる、の真実

 ボク自身の2つの体験はアクシデントがイノベーションの原因になった例だけれど、他にも、昇進した上司や抜擢された同僚が驚くべき成長を遂げるのを見たことがある。

 しかも、単にスキルだけのイノベーションだけではない。

 部下をもった後、短気な人が我慢強くなったり、困難なプロジェクトを任せたとたん、リーダーシップを発揮したり、人間的な面でもイノベーションは起きる。

 言ってみれば、課長になれば課長なりの、部長になれば部長なりの、社長になれば社長なりの器に、いつのまにかなっていく……。つまり「ポジションが人をつくる」。もしくは適応できずに淘汰されてしまうか、どちらかだ。

 「必要は発明の母」。逆にいうと、人間、必要にならないと必死にならない、

 そして必死になることで、多くの場合ポジションに合った仕事をこなせるようになる、ということ。

 ボクも上司がいなくなったときに「1つ上」の役割を突然果たすことになったことが、成長のきっかけとなった。

■できそうにないポジションを手に入れる

 必死になることで、急速な成長をするために、意図してイノベーションを起こすシンプルな方法は、

 「今の自分ではできそうにない職務につく」

 ムリだ、という気持ちを捨てて「ムリだからこそやってみる」。

 やったことない、を「できるようになる機会」ととらえる。

 「転職」も1つの方法。

 何回やっても「しんどいなぁ」と思うのは、転職してから、キャッチアップするまでの数カ月間。

 転職前の変化が少ない、「自分にできること」に囲まれた仕事との大きなギャップ。

 これもまた、脳内ではイノベーションが起きているのかもしれない。

 とはいえ、「転職」などの実行にはリスクを無視できないし、重要な社運をかけたプロジェクトに「できそうもないけど……」で手をあげると、大変なことになるかもしれない。

 そう、負えるリスクには個人差がある。

 逆に考えると、リスクが負えるようになればなるほど、チャレンジができる→イノベーションの機会が増える、ということになる。

 春は新しいことを始めるにはよい季節。

 だから、なにか1つ「できそうにないこと」を始めてみようと思う。

 ボクは、となりの課長の異動に伴い、4月から管理する人数が7人になる。

 今の3人でもヒィヒィ言ってるのだから、うまくやれる自信はそんなにない。

 ただ1つわかっているのは、倍の時間働けない以上、いままでと同じやり方だと絶対にダメだ、ということ。

 それでも打診を受けたのは……ムリな状況だからこそ、イノベーションが起きる予感がしたから。

 もしイノベーションが起きなかったら? とリスクを考えてみたら……「3~5人ぐらいの課に戻るだけ」。

 それなら……ボクにとっては、たいしたリスクでもない。張ってよし!

 というわけで現課長から必死に引き継ぎ中の毎日です。

 それでは今回も、ここまでお読みいただきありがとうございました!

Comment(2)

コメント

46さん
こんにちは。

確かに、その人の器の範囲では地位が人を育てますね。
器の範囲なら2段でも3段でも超えれます。

人は無能になるまで出世するものです。

無能な課長は、係長として有能だったから課長になったのです。
課長として有能だった人は、部長になるけれど、部長として有能であるとは限らない。

問題は、無能になるまで出世したときに、無能になったと気づけるか、そこから一つ降りれるかでしょうね。

自分の器を知って上がらない立派な人も居るけれど、世の中の仕組みとして下がれないのはよくないと思う。

私は1段下がりたくて仕方がない。
社長募集中です(笑)

46

生島さま

はじめまして&いらっしゃいませ!いつも読ませていただいています!

そうですね。「無能になるまで出世する」。。
ただ一方、課長に向いてないけど社長に向いている人っていうのも実はいるのか?と。最近は上位互換とは限らないのかな?とは少し思ってきています。

しかし、上に向いているのに、下をうまくこなせないばかりに、そのポジションに上がれない人は、2次試験の実力はあるのに1次試験に通らないようで、なんとも歯がゆいですよね。

今後ともよろしくお願いいたします。

46

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