いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

人機一体。

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◾︎エンジニアが技術を最大限に活かすために

 人機一体。某PepperのエンジニアがFacebookに書いていた言葉だ。このエンジニアの方だが、Pepperに対する情熱は本物だ。Pepperを起点にいろいろなイベントに顔を出しているようだ。ここまで成果を出せるのもなかなか凄い。

 そんな彼女がここまで成果を残した理由。そのキーワードが人機一体ではないだろうか。個人的な経験から、なんとなくそう思った。優れた演奏者は、楽器との一体感がある。工作機械を使いこなした時も、工具との一体感を感じる。彼女にも同じものを感じた。

 エンジニアというと、どうしても知識量とか知能指数とか、能力的な事ばかり目がいってしまう。だが、感覚的なものも大事ではないだろうか。数値化は難しいが、納得感、安定感、達成感など、あるか無いかで大きく成果に差が出る感覚というのはある。

 

◾︎一体感を得るということ

 人が肌で感じる感覚にはいろいろなものがある。その中で、一体感というのはエンジニアにとって特に重要だと思う。一体感は、例えばプログラムが自分の思った通りに動いてくれた時に感じたり、理想的な操作が実現できた時に感じるものだからだ。

 そして何より、一体感を感じることができると気持ちがいい。対象がシステムでなくとも、例えばチームだったり、素敵な異性でも同じ事が言える。一種の快感が得られるので、モチベーションにも繋がる。一体感は追い求める価値のある感覚と言える。

 ただし、一体感を得るには対象を正確に認識する必要がある。対象と自分の認識が一致しないと一体感は得られない。特にエンジニアの場合は対象はシステムだ。自分からアクションを起こさなければ、永遠に対象を理解することはできない。一体感を得たければ、何らかのアクションは必須になる。

 

◾︎コンピュータは人間の奴隷ではない

 システムは自分の都合では動いてくれない。作った人の意図で動くものだ。システムとはそういうものだと思う。ITに疎い人ほどシステムに対するいちゃもんを多く付ける。しかもいちゃもんの内容はかなり漠然としたものだ。自分の都合に合わせて動いてくれるのが優れたシステムだと思っているのだろう。だからいつまで経ってもITに疎いままなのだ。

 レストランで出る料理も、お店で売っている服も、電気屋で売っている家電も、みんな消費者のニーズを掴もうとデザインされている。なので消費者は、製品は自分の都合に合わせてくれるのが当然と思い込むようになった。自分で工夫せずに不満を訴えることで世の中が良くなると勘違いしているように思う。

 システムでも製品でも、必ず作った人の意図が込められている。それを無視して良さは理解できない。物を使うということは、物とのコミュニケーションだ。一方的ではいつまでも通じ合うことはできない。そして、思うような便利さは得られない。物と人は意外にも似ている。

 

◾︎つまらない感情こそ可能性が秘められいる

 対象を正しく認識すると、思った通りに動いてくれる。ある程度のレベルになると、考えなくても思った通りに動くようになる。この状態は「自分の手足のように」と表現される。

 例えば自分の愛用のツールでも、このような状態で使えれば理想的だろう。ただ、知識を多く身につければそうなれるというわけでもない。もちろん知識も必要だが、もっと大切なのは、対象を観察する力だと思う。

 何かを手足のように使いこなそうと思うと、どうしても頭の良さや知識量に目がいってしまう。だが、単に好きというだけでも、対象に対する集中力を向上させる。好奇心をもつことで深く監察したり、斬新な発想が得られたりする。

 好きとか嫌い、面白そうという感情は軽いものと見られやすい。エンジニアの世界で一体感なんて言うと、どこぞのアニメの見過ぎじゃないかと嘲笑されるかもしれない。だが、これらの感情はすごく大切だ。多くの可能性が秘められている。

 冒頭に述べたPepperのエンジニアとは、元エンジニアライフを担当していた編集者Oさんのことだ。Oさんは本職はエンジニアではない。だが、好きとか好奇心という感情に向き合うことで、多くの成果を残している。彼女こそ、ある意味私たちよりエンジニアらしいのかも知れない。そんなことで、敬意を込めて一本コラムを書いてみた。

Comment(1)

コメント

匿名

作った人の意図にしたがってシステムが動いてくれれば、そんなに素晴らしいことはないでしょう。

現実のシステムは、作られた通りにしか動かないので
作者の意図が必ずしも反映されるとは限りません。

ましてや、クラウドやらAPI全盛のこのご時世においては、バックエンドやインフラレイヤーはブラックボックスそのものです。

作者の意図と実際の動きを一致させるのは、ますます難しくなってきていると思いますね。

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