いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

不安を乗り越えることで残業を減らす

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▪️不安が解消できないから残業が増える

 いつも不思議に思うのだが、「疲れてる」という人に限って残業する。さっさと帰って寝ればいいのに。中には残業代を目当てに帰らないとか、頑張ってるアピールで帰らないとか、そういう人もいるだろう。何にせよ、仕事場に疲れた人がたくさんいると、空気が澱む。

 人間は疲れるとネガティブになりやすい。作業が増えれば落胆するし、ちょっとしたミスに対しても、心理的なダメージが増加する。だったら寝ろよ。となるが、みんなさっさと帰ろうとはしない。しっかり休めば頭が働くことくらい、誰でも分かっているだろう。

 では、なぜそんなに疲れてまでわざわざ残業するのだろうか。大部分の人が、「この仕事を済ませなくてなならない」という焦燥感に駆られているか、「できなかったらどうしよう」という恐怖を抱えているからではないだろうか。

 今回は、そういう不安を解消することで持てる力を発揮して、残業時間を減らせないだろうか。という話をしていこうと思う。

 

▪️不安は個人の問題か

 まず、不安というのは個人の問題だろうか。一般には個人の問題と考えられることが多い。「不安って個人の問題だから、俺たち考えなくていいよね?お前らしっかりしろ!こんにゃろう!」というのが多くの人の意見だろう。

 どこのプロジェクトに行ってもそうだが、進捗は管理するが不安は管理しない。それどころか不安を煽る。むしろ、不安を煽るために進捗を管理しているように思う。「これじゃダメだ!」と不安を煽ることで効率が上がると思っているのだろうか。だとしたら、あまりに知能が低い。

 あまり認識されていないようだが、不安というのは理論的なアプローチで消すことができる。原因と結果を明確に結びつけて証明してくれたら不安は解消しないだろうか?こういう理論的なアプローチを投げ捨てて、個人の気持ちに押し付けるのが、日本人の悪いところだろう。

 

▪️まずは相手の不安を解消してからだ

 人は不安に駆られると、衝動的になったり、安易な方法をとりやすい。非常にミスを犯しやすい状態だと言える。不安を抱えたまま行動を起こすのは、そのままリスクに繋がると考えている。逆を言えば、適切に不安を取り除くことで、思わぬ力を発揮することがある。特に新人教育等で効果が高い。

 よく新人教育で、新人を伸ばすのは本人の努力だと間違えられる。だが、会社に対する不信感や不安があると努力しない。努力したとしても、自分のための努力しかしない。悪く言えば、我流で突っ走るので伸びない。

 自分に置き換えて考えてみても同じだと思う。私が新人教育する時は、必ずこの不安をこまめに潰す。不安を放置すると不信感にランクアップして後々苦労する。そもそも、相手の不安を解消できるくらいの能力が無いのなら人の上に立っても何もできない。

 また、相手の不安を解消しないと話を聞いてくれない。というより、耳に入らない。「はい!」と返事が返ってくれば聞いていると思われがちだが、Yesマンほど話を聞いていない。意思疎通をしたければ、まず相手の不安を解消することだ。

 

▪️本当の効率化とは

 残業過多なプロジェクトでよく、無駄はないか?プロセスは間違えていなかったか?という分析がなされる。だが、心理的なアプローチに関しては、驚くほどに語られない。意図的に避けているとしか思えないくらいに語られない。

 方法論というのはわかりやすい。理論的に説明できるからだ。では、心理的なものはどうなのだろうか?実は理論的にアプローチが可能だ。しかし、心理的なアプローチを深く考える人が少ないので、理論的なところまで話が進まない。

 どこの現場であろうと、働いているのは人間だ。人間を上手く動かすには心理的なアプローチは必須だ。方法論もいいが、不安を抱えたまま頑張れるほど人間は強くない。逆に、不安を解消したり乗り越えた人は、思わぬ実力を発揮することがある。

 方法と気持ちは一致してこそ結果を残す。気持ちが煮え切らなければ、いつまで経っても答えは出ない。だから余計に時間がかかって、残業が増えるように思えている。焦るだけでは仕事は進まない。きちんと休んで心を鎮める手段も必要ではないだろうか。

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