元エンジニアの中小企業診断士が送る、気持ちよく働くためのコミュニケーションのススメ

人を活用できない上司がプロジェクトを苦しめる

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◆上司と部下の不幸な人間関係

 こう言っちゃなんだが、IT業界にはクセ者が結構いる。

 論理的に物事を考えるのが得意なことも手伝ってか、ストーリーをどんどん複雑にしてしまう人。if文でいうならば、elseif、elseif、elseifっていう思考だ(伝わるのか? この表現)。Aの場合は? Bの場合は? Cの場合は? と、話を掘り下げるべきではない場面で、枝葉末節にこだわり始めてしまう人のことである。上流工程でコレをやられ過ぎると話がどんどん複雑になって、この議論の相手をするメンバーも疲れてしまう事例だ。

 そして、ありがちなのが「こういう人は難しいから、一緒に仕事したくない」と言って、上司側が心を閉ざしたり、相手に攻撃的になりすぎてしまうケース。こうなると、上司の方が、めでたく(?)問題の一部への仲間入りだ!

 前述のelseif君は大半の場合、自分の思考プロセスを良かれと思って発言しているわけで、その“良かれ”が、「面倒くさい人」のレッテルになってしまうのでは、彼にとって不幸な話である。

 一方、上司の方は、仕事を完遂しなければいけない状況において活用すべき人材に見切りをつけるという行為をすれば、自分で自分を苦しめてるだけである。そうは言っても、あんな難しい人とは一緒に仕事できないよ。と、言い訳するのだろうけど、そうではない。

 仕事として取り組む以上、その向こう側にはお客様がいて、なんらかの課題を解決をする必要がある。しかも、その仕事は1人で完結するものではなく、ほとんどの場合チームでの共同作業である。だとすれば、アサインされたメンバーの能力を最大限利用してやるのが、上司の仕事ではないだろうか。

◆抜け出せ、思考硬直

 この2人に共通していること、それは「思考硬直」である。

 elseif君は、適切でない場面で話を複雑にしている。このタイプは夢中なればなるほど、どんどん話を深く掘ってしまうので、この話し合いをリードしているのが上司だとすれば、上司は、いったん話を上流に戻してあげなければいけない。

  • そもそも、このシステムで何がしたいんだっけ?
  • そもそも、今決めなきゃいけないことはなんだっけ?

 ……と。

 ただ、その際に注意しなければならないのは、elseif君のことを認めてあげることである。「そこまで気付くなんてすごいね」「その細かい観点は、後の工程で生きる内容だから忘れないでね」……と、その思考の深さを認めてあげた上で、上位概念に話を戻してあげないと、話の腰を折られたようで、elseif君は気分が悪いはずである。

◆それでもけんかしてしまったら

 しかし、上司も人間なので、ときにけんかになってしまうこともあるだろう。その際に上司が注意をしなければならない2つのことは、

  1. けんかをするのは「ミッションを果たすため」と強く思うこと
  2. 途中でけんかを諦めない、投げ出さないこと

 1は、「個人的な感情でもめているのではなく、目的を持った話し合いをしている」と常に意識していることで、相手とくだらない言い合いになるのを避けるためである。

 2は、ある目的(=仕事、プロジェクト)のために喧嘩が起きているのに、その議論を途中で諦めるというは、目的の完遂を放棄することと同じであり、プロジェクトの成功はおろか、部下からの信頼も失うからである。と、同時に、もめている相手の理解を得られず、和解することができなくなるからである。自然な形で、話(ここではけんかだが)の腰を折るためにも、自分(上司)は、何をしなければいけない立場なのか意識していなければいけない。

◆ひいては自分が楽になるために

 諦めない上司には、人がついてくる。人がついてくると部下が自立してくるので、自分の負担が少なくなってくる。要するにラクができる……、というと分かりやす過ぎるので、上司はもう1つ上のレベルの仕事ができるようになる……のである。

 根気がいることだけれど、ラクができるっていうのは、組織の成長の証なのだから、人が成長して、生産性が上がって……会社として申し分ない状態なのではないだろうか。

 というわけで、このくだりに続いて、次回は「任せる勇気」について書いてみようと思う。

Comment(2)

コメント

「社内失業」の著者はたぶん スキルもやる気もあるのに仕事がなくなってしまった elseif 君なのだろうと思う。

http://invizi.net/subject:13

直属の上司だけではなく、世間の目は厳しい!

部下

上司になっている人間は経験があってなっているはず。自分が未熟と考えず、ましてや上司とけんかするなんてきっと顧客ともうまくいかないだろう。

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