iPhoneアプリ”楽天ブックス”の開発事例について発表します

2010/10/08 19:00:00

楽天株式会社 開発部 河村圭介 @kkawamura

  こんにちは。楽天でエンジニアをしております、@kkawamuraです。ちょっと時間が経ってしまいましたが、先日AppStoreに楽天ブックスの iPhoneアプリ”楽天ブックス”をリリースしました。

 iPhoneをお持ちの皆さま、お使いいただけてますでしょうか? このアプリはユーザの声に答える形で、有志のエンジニア4名(@osho_4192、@mistakah、@sohei、@kkawamura)で開発を行なうという、ちょっと特殊な形態でのプロジェクトでした。以前、このコラムで楽天ではジャングルというエンジニアの自主開発を支援する仕組みがあることをご紹介しましたが、このアプリはエンジニアの”ジャングル時間”からの成果です。

  今回開発したアプリは「iPhoneアプリ内でお買いものできるアプリ」をコンセプトに開発いたしました。基本的にはWEB同様の機能をほとんどアプリの中 でできるように実装しております。また、iPhoneアプリを使っていると時折ある、「なかなか表示されずにイライラする」ことがなるべく 少ない状態で買いものをサクサク行えるよう、処理速度にはこだわりました。

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  ただ、このプロジェクトが何もかも順調に進んだかというと、そういうわけでもありませんでした。メンバーはそれぞれに本業のプロジェクトを持っている中、10%ルールのもとで開発を進めていました。そのような時間的制約の中、サービスとしてユーザーの皆さまへ提供できる品質のものを開発する難しさがあり、いろいろと課題を残すことになりました。開発合宿を行ったり、時間を捻出する工夫はいろいろ試みたのですが、今後同じようなプロジェクトを行う際にはもう少し効率 的に進められるよう改善したいですね。

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開発の様子。会議室に集まって打ち合わせながら開発を行なったりもしました。

 さて、来る10月16日に楽天主催の技術イベント「楽天テクノロジーカンファレンス2010 -Hello, World! -」があります。このカンファレンスの中で、今回ご紹介した楽天ジャングルから生まれたiPhoneアプリ、”楽天ブックス”の事例紹介を行います。講演者は、開発者であ る和田(@osho_4192)、高橋(@mistakahです。このコラムでは詳しく触れてない実装のTipsやプロジェクトの裏話もお話しいたしますので、興味のあるデベ ロッパーの皆さまはぜひお越しください。

 また、このコラムでは、今後も社内の様子をつぶさに発信していきたいと思います。不定期更新になってしまいそうですが。それでは、また。

■関連リンク

旅は続くのです

2010/01/27 18:45:00

 こんにちは、楽天技術研究所の西岡です。この連載コラムも、もしかしたら僕が最後かもしれないそうです。このコラムが終わっても、僕ら楽天エンジニアの熱い思いは終わりません。そう、僕ら楽天エンジニアの旅は続くのです。

 ということで「旅」というテーマで、エントリーを書きたいと思います。

■ 1周目の旅

 僕は、好奇心旺盛です。興味を持ったことに対しては、とことん探求します。科学、歴史、そしてコンピューターに関すること、今までさまざまなことを探求してきました。

 2、 3 年前に「本当に地球は丸いの?」という疑問を持ちました。

 興味をもったら、実際に調べなければいけません。楽天に入社する直前に、1カ月の時間がありましたので、この疑問を解決する旅に出ました。世界一周の旅です。あまり知られていませんが、最近ではそれぞれの航空連合から、世界一周周遊の航空券が手頃な値段で売られております。宿と食事をケチれば、そこまで高くなく、世界一周ができます。

 その時は、「日本、マカオ、ドバイ、トルコ、スペイン、チリ、イースター島、メキシコ、ロサンゼルス、日本」と旅をしてきました。飛行機は常に西に進んでいましたが、日本から出発して、日本に戻ってこれたので、やはり地球は丸いことが分かりました。

 この旅には、他の目的もありました。その1つは、イースター島に訪れることです。

 東アフリカから始まった人類の旅は、ユーラシア大陸を越え、ベーリング海峡を越え、そして、アメリカ大陸最南端まで行き、その後に、太平洋の島々に拡散したといわれています。そうなるとイースター島は人類の最終地点ではないかと思っています。

 そのイースター島に着いた時に、やはり、感慨深いものでした。飛行機も大型船もない時代に、人類があんな孤島まで来たことに胸にジーンときました。以下はイースター島で撮影した写真です。

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 地球を一回りして、人間的にも一回り大きくなって、楽天に入社することができました。

■ 2周目の旅

 楽天に入社して、必死に仕事を頑張っていました。ところで、この世で一番速いものは光です。1秒で地球7周半するといわれています。と考えると、わたしも死ぬまでに地球を7周半したくなりました。

 昨年、おそるおそる会社から12日休みいただきました。ここにマジックがあって、シルバーウィークと10月の3連休を合わせると、24連休になりました。そのため、金曜日の夜に出発すると、25 日間の旅になります。

 今度は、「日本、香港、ヨルダン、ギリシャ、チェコ、ハンガリー、ジャマイカ、コスタリカ、ニューヨーク、日本」と旅をしてきました。その模様は、@nishiokamegane で「xx なう」と叫び続けました。

 最後に、ニューヨークで、「これ、絶対に違うよね?」という着ぐるみが、街中を徘徊していました。

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 無事に、2周が終わりました。本当に楽しかったです。

 会社勤めの人は、こんな旅は絶対にできないと思っていましたが、楽天という会社の中でさせていただくことができました。休みの間ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。そして、いろいろとサポートしてくれてありがとうございました。

 しばらくは全力で仕事に集中していきます。

■ 楽天の旅

 僕は、今、楽天という船に乗せてもらっています。僕の仕事は、2、3 年後に使える技術を作ることです。これは、楽そうに見られることもありますが、簡単に答えがなく辛い仕事です。ただ、得意の探求心で、「最高のデータとは? 最高のアーキテクチャとは? その先にお客様の笑顔はあるのか?」と、いつも考えながら、必死に頑張っています。

 こんなに必死に頑張れるのも、仲間がいるからです。技術研究所のメンバーもそうですし、開発部全体でも素敵な仲間がいます。このブログに登場した人たちのように個性豊かな人たちばかりです。

 楽天の船長は、「世界一」という港を目指しているようです。だから、開発部も世界一のエンジニア集団にならなければいけないでしょう。そのためには、僕らはもっともっと成長しなければいけませんし、新しい仲間も加わって欲しいです。そして、この楽天という面白い船にのりながら、楽しい旅を続けていくのです。

 最後に「おれたち世界一になれますか?」というブログ題名に「なりたいし、なれるし、なろうよ。」と答えたいです。

世界を目指せばエンジニアはもっとハッピーになる

2010/01/20 17:30:00

■はじめに

 楽天株式会社 開発部の安藤祐介です。アプリケーションエンジニアとしてPHPやRubyのフレームワークやオープンソースのツールの推進などの業務を行っています。また2008年末からは美谷さんからも紹介があったリンクシェアへ出張にいくことが多く、まもなく正式な赴任を控えています。

 社外ではPHPなどのオープンソースコミュニティでよく活動しており、昨年は20回弱社内外の勉強会などで講演をしました。そのおかげか昨年は情報処理推進機構(IPA)が例年開催している日本OSS貢献者賞の奨励賞をいただくことができました。

 社内での業務を直接オープンソース活動に繋げることは難しい時がありますが、アプリケーションフレームワーク、CakePHPのイベントに参加する為の旅費を会社負担で処理してくれたり社内のスペースを一般参加可能な勉強会の会場として利用するなどオープンソース活動に対して理解があり助かっています。

 しかし何よりも実際に海外の開発現場に業務として関われることが貴重だと感じ、「世界で活躍できるエンジニア」という目標を入社時に決めました。

■世界のエンジニアとのカルチャーギャップ

 赴任先の職場や海外で開催されているコミュニティのイベントでは様々な国のエンジニアに出会います。そこで発表されるセッションの内容や雑談は日本では得ることが難しい刺激がとても多くありました。特に印象的だった出来事をいくつか挙げてみます。

  • 多言語対応のシステム開発
    日本でのシステム開発は、表示や処理に日本語を使うことを前提にする場合がほとんどです。しかし海外では英語とスペイン語、英語とフランス語といったように複数の言語を扱うことが前提になることが多いようです。その為、実際のソースコードの中にメッセージなどを直接コーディングせずに定義ファイルを利用する機能などへの理解度がかなり高いようです。
  • 複数の通貨、時間帯への対応
    複数の国や地域で利用されるサービスの場合、通貨の単位を複数扱うことが前提になります。またその場合は補助通貨(ドルに対するセント)などの扱いも必要です。またサーバーの時間をどこの時間に合わせるのか?も日本では時間帯は1つだけですが、例えばアメリカには標準時が複数あります。こういった事柄へ自然にエンジニアが対応している姿はこれまでの経験では見られなかったので新鮮でした。
  • NoSQLに対する関心の高まり
    昨年後半あたりから日本でも話題になってきているNoSQLですが、海外のエンジニアの中での盛り上がりは日本よりも早かったようです。昨年前半の時点でCouchDBやMongoDBを使ってどのような実装をした?なんていう話で盛り上がっている様子を見ていると、日本のエンジニアは少し未知の事柄へ飛びつくスピードが遅れているかなという気もしました。
  • 日本のIT業界の認知度
    楽天は日本での知名度は高いといってよいでしょうが、今のところ海外のエンジニアで楽天やその他、日本のIT企業を知っているという人に出会ったことがありません。オープンソースプロダクトのTokyoCabinetは注目が高いようでセッション内で言及されているのを何度も見ています。また日本製であることも認知されているようです(名前のお陰ですね)。
  • 飲み会のハードさ
    日本でも勉強会などのイベントのあとは懇親会という形の飲み会が開催されることが常です。ですが欧米人の飲み会のスタイルはほとんど食べものも食べずにひたすら飲む! というスタイルでなおかつテンションが高いまま4次会、5次会と続くことが多く楽しいですがそのタフさには圧倒されます。

Photo
ベルリンにて CakePHPのデベロッパFelixと。この体ならタフなのも納得

■”Think out side the box.”  自分の知らないことをどうやって知るか?

 経済やサービスがグローバル化に従って、海外を「脅威」のように捉えた言説を見ることがあります。先に色々とギャップについて触れましたが、「日本が世界より劣っている」という風なことを言いたい訳ではありません。

 エンジニアとして生きることの幸せの1つに「分からなかったことが分かるようになる」というのがあると、僕は思っています。誰もが最初は何も知らないはずですが、さまざまな技術知識や業界知識を身につけながら業務を行っていくはずです。思い返してみてもエンジニアになって最初の数年は驚異的な量の情報が入ってきて楽しかったのを思い出します。

 いろいろと知ったつもりになっていましたが、世界のエンジニアと接するようになってこれまで以上の刺激がありハッピーだと感じます。また逆に言えば、日本だけを考えたままでこれらのギャップに気づくことは非常に難しかったでしょう。

 企業やWEBサービスが世界を目指すアプローチについては最近、ブログ上でも議論が起こっています。「最初から世界へ」というまず視点を世界に向けるべきという意見もあれば、「世界に通用するサービスを作りたいなら日本で流行らないと」という風にまずは日本に目を向けるべきという意見もあるようです。ただエンジニアという立場から考える、とやはり日本という枠にとらわれる必要はないと考えています。

 本来、インターネットや技術には国内・海外という境界線はなく、日本も世界の一部分です。「日本で開発されたプログラミング言語しか使わない!」なんていう風なことを過剰に気にすること自体、エンジニアにとってはあまりないことだと思います。

 面白い技術や知らなかったノウハウに出会うのは楽しいことですし、そのためには視野を国内・海外にとらわれずに大きく持つのはよいことでしょう。またそういったエンジニアが増えていくことが日本のWEBサービスが世界に飛び出して為にもきっと良い影響があると信じています。どう転んだとしてもエンジニアにとっては楽しいことづくめですね!

 ということで、もし誰かに「なぜ世界を目指すのか?」と聞かれたら僕はこう答えます。

 「その方が楽しいから!」

ROMA のコマンド拡張について

2010/01/15 17:00:00

楽天株式会社 楽天技術研究所 西澤無我

■ はじめに

 こんにちは。楽天株式会社で研究開発をしています西澤無我と申します。ここでは、私どもが開発しています ROMA の紹介や、その ROMA 上の面白い機能(ROMA のコマンド拡張)について説明しようと思います。ROMA は楽天で開発されている Ruby 実装の分散 Key-Value Store です。ROMA の利用者は ROMA に対して、データを set したり get したりすることができます。さらに、ROMA の拡張機能として、利用者が独自に開発したプラグインを ROMA に追加することができます。

 本稿では、まず ROMA の概要について説明をします。その後、ROMA のプラグイン機構について紹介します。そして、その例として、ECHO コマンドを ROMA に追加するコマンド拡張プラグインのコードを示します。

■ ROMA について

 ROMA は楽天で開発されている Ruby 実装の分散 Key-Value Store です。楽天技術研究所のフェローである Ruby 開発者のまつもとゆきひろ氏と共同で研究、開発されています。Key-Value Store とは、Key とそれに関連する Value のペアを高速出し入れするためのデータストアです。ROMA は複数のマシン上に、1つの大きな Key-Value Store を構築するためのソフトウェアです。ROMA の利用者は、1つのハッシュテーブルへアクセスように、ROMA へアクセスできます。

 ROMA は以下の特徴をもつ分散 Key-Value Store です。

  • 高いスケーラビリティ
  • 高い障害耐性
  • Memcached[1]  と互換性のあるプロトコル
  • プラグイン機構で ROMA の拡張が容易

 現在、ROMA のバージョンは0.8.2 です。GitHub でソースコードが公開されています。誰でもソースコードを閲覧することができます [2] 

■ ROMA のプラグイン機構

 多くの Key-Value Store は、上述した ROMA の特徴のいくつか(もしくはすべて)を備えています。ここでは、ROMA 特有のプラグイン機構について紹介します。

 ROMA 本体の振る舞いを変更するために、ROMA はプラグイン機構を提供しています。利用用途に応じて、ソフトウェアの振る舞いを変更したいときがしばしばあります。プラグイン機構とは、ソフトウェアの振る舞いを拡張する方法の1つとして、多くのソフトウェアで提供されています。ソフトウェアの利用者は、ソフトウェアをどのように拡張したいかを1つのモジュールとして、ソフトウェア本体から切り出して記述できます。この拡張モジュールがプラグインです。ソフトウェアは利用者が記述したプラグインを読み込み、その振る舞いを変更します。

 ROMA では、独自のプラグインを Ruby で記述することにより、ROMA を部分的に拡張することができます。ROMA のプラグイン機構とは、ROMA 本体のプログラムに埋め込まれている拡張ポイントのことです。利用者はプラグインを Ruby を使って宣言し、ROMA に読み込ませます。すると、ROMA の本体の拡張ポイントが呼び出されるタイミングで、プラグインで宣言した振る舞いを ROMA にさせることができます。ROMA にプラグインを読み込ませるには、そのプラグインを指定されているディレクトリに配置し、設定ファイルを変更するだけです。

■ ECHO コマンドプラグインのコード例

 このプラグイン機構を利用して、ROMA が受け付けるコマンドを拡張することができます。例えば、以下のソースコードは、簡単な ECHO コマンドを ROMA に追加するためのプラグインです。

module EchoCommand

  include ::Roma::CommandPlugin

  def ev_echo(cmds)

    send_data("#{cmds[1..-1].join(' ')}¥r¥n")

  end

end

 上記の EchoCommand プラグインは Ruby のモジュールです。本モジュールは、Roma::Command::Plugin を include しています。これにより、本モジュールを読み込んだ ROMA 本体は、EchoCommand プラグインがコマンド拡張のためのプラグインであることを理解します。このモジュールを読み込んだ ROMA に対し ECHO コマンドを発行すると、ROMA は受信メッセージの先頭を解析します。”echo” という文字列から始まるメッセージであれば、ROMA は EchoCommand プラグインの ev_echo メソッドを呼び出します。

 ev_echo メソッドを ROMA が呼び出すとき、そのメソッドの引数 cmds には、クライアントが発行した ECHO コマンドの文字列が配列として渡されます。この配列の 0 番目の要素はコマンド名である “echo” です。メソッドの内部では send_data メソッドが呼び出されています。これはクライアントにメッセージを返すメソッドです。引数 cmds の 1 番目以降の配列の要素を連結して、クライアントにメッセージを返します。

 余談ですが、このプラグイン機構を ROMA に追加したとき、真っ先に作ったプラグインが EVAL コマンドのプラグインでした。EVAL コマンドとは、クライアントから送信された文字列を、そのまま ROMA を動かしている Ruby インタープリタが評価実行できるコマンドです。これにより ROMA 本体の振る舞いのいたるところをリモートから修正・変更することができます。いろいろできてしまうので、このコマンドを多用して遊んでいたのですが、そのうちどこをどのように修正・変更したのか自分でも理解ができなくなってしまいました……。そのため、今では EVAL コマンドは、ROMA 本体の標準セットから取り除いています。

■まとめ

 いかがだったでしょうか。ROMA のプラグイン機構によるコマンド拡張について紹介してきました。GitHub 上にある ROMA のソースコードリポジトリには、ROMA に対しリスト操作を行うためのコマンドプラグインなども含まれています。また、ここでは説明し切れない ROMA の拡張機能もあります。もし興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ ROMA のソースコードを閲覧して、使っていただければと思います。


[1]]http://memcached.org/

[2]http://github.com/roma/roma/tree

エンジニアのクリエイティビティが時代を創る

2009/12/28 16:30:00

楽天株式会社 開発部 河村圭介 @kkawamura

 こんにちは。楽天のアプリケーションエンジニアの河村と申します。

 仕事では主に楽天のアプリケーションの開発プロジェクトで、コーディングからプロジェクトマネジメントまであらゆる工程を担当しております。それ以外にも、先日行われた楽天テクノロジーカンファレンスの企画・運営を担当したり、社内技術コミュニティ的な活動も行っていたり、幅広く仕事をしています。今回このリレーコラムに自由なテーマで何か書いてくれといわれたので、少々おおげさなタイトルですが、「エンジニアに必要とされる創造力」というようなテーマで最近感じている課題について書いてみたいと思います。

■よりエンジニアが主役の時代へ突入

 Webサービスに関する技術がものすごいスピードで日々進化していますことは、@ITをご覧になるような皆様であればご存知だと思います。プログラム言語やフレームワークは次々と新しいものが登場しますし、既存技術のバージョンアップも激しく行われています。最近はアーキテクチャに関しても大きく変わってきていると感じます。例えば、データは従来はRDBMSに格納することが普通でしたが、現在はメモリや分散ファイルシステムなどの選択肢の中からアプリケーションの特性に応じて適切に選ぶことが求められています。

 この技術革新のスピードの速さに加え、昨今ではクラウドコンピューティングに代表される仮想化技術の発展や、Hadoopなどの分散並列処理技術といった、とても大きなパラダイムシフトを起こす可能性のある技術の普及が進んでおり、今後も技術の進化は一層激しくなるのだろうと感じております。周りのエンジニアからは「また新しいことを覚えるのが大変だ~」なんて声も聞こえてくるのですが、こんな時代だからこそエンジニアに活躍のチャンスがある、わたしはそう考えております。

 わたしは、2008年頃より楽天市場のレコメンデーションエンジンの開発に携わり、購買データの解析にHadoopを使いました。それまでパフォーマンスと耐障害性の面で苦戦していた購買データの解析処理をMap Reduceで実装したら数倍のスピードで行うことができ、感動したことを覚えています。……と同時に「これを使えば、◯◯も改善できる」とか「今までできてなかった◯◯ができる」というようなサービスを良くするアイディアが次々と思いつき、Hadoopと相性がよさそうなサービスの担当者にデモを見せ、導入を検討してもらいました。現在では複数のサービスの裏側でHadoopを使っています。おそらくこれからも社内での利用は広がっていくと思います。

 こうした経験を経て強く感じたことは、大きな技術革新の真っ只中にいる今こそ、エンジニアが中心となってシステムを企画・開発・改善していくことが重要だということです。エンジニアにしかできない提案があり、その提案がとても重要な役割を果たすのだと感じます。特にインターネットサービスに関しては、莫大なデータやトラフィックをどのように管理・活用していくか、そしていかに高速にサービスを提供するかということがポイントになってきていて、技術がまったく分からない人では、既存サービスの改善提案はもちろん、新規サービスの企画を考える事も難しくなってきているように感じます。

 技術もサービスも猛スピードで進化している今の時代に、わたしたちの生活に新しい価値をもたらすサービスを生みだすには、最新技術を応用すればどのようなことが可能になるかをわかっているエンジニアが中心となって、サービス開発をすることが求められるのではないでしょうか。

■エンジニアの強みを考える

 他の職種にはない、ITエンジニアならではの強みとはなんでしょうか? わたしは作りたいものを自分の手で作ってしまえることだと思います。なにかアイディアを思いついたら作ってしまうことができる。これは非エンジニアな人にはできないことです。以前は必要なサーバ環境などを個人で用意することが若干敷居が高い印象がありましたが、現在は個人でクラウドサービスを安価で利用できる時代です。たいていのことは自分でもできてしまいます。

 わたし自身も最近は、仕事かそれ以外かにかかわらず、なにかアイディアを思いついたときはプロトタイプを作って、それを見せて説明するようにしています。動いているプログラムの説得力はすごいです。口頭で説明しても伝わりにくいような価値を的確に伝えることができます。

 飲み会やランチなどでエンジニア同士で話をすると、本当にさまざまな面白いアイディアが出ては消えていきます。わたしはそういうときいつももったいないなぁと思うのですが、面白いことを思いついたら作ってみることをおすすめします。動くものができると、頭で考えていたときには気づかなかった課題に気づいたり、さらによいアイディアが浮かんだり、他の人から改善案がもらえたりします。まぁ、思いついたときには最高と思えたアイディアが、実際に作ってみると思ったよりつまらなくてがっかりする事もよくあるのですが……(笑)。いつもアイディアを探していて、思いついたらすぐ作る、そんなフットワークの軽さがないと、新しいサービスを作り出すことができないのでは、と最近考えています。

■楽天で起こりつつある変化

 さて、そんなことを感じながら日々仕事をしているわけですが、わたしの所属する楽天開発部ではエンジニアが自分のアイディアを形にすることを支援する「ジャングル」という取り組みがあります。ジャングルの概要は以下のとおりです。

  • 担当のプロジェクトに影響の出ない範囲で自発的に自由なテーマで開発を行うことを推奨する制度(ただし義務ではない)
  • 希望者には社内公開用のサーバ環境が与えられ、社内からフィードバックを得ることができる
  • 「何がでてくるかわからない密林のような環境」にしたい、というところから命名された

 いわゆる20%ルールみたいなものをイメージしていただけると近いと思います。20%ルールは普通の会社ではうまくいかないという話をよく聞きます。楽天ジャングルはやる気のある人を支援するためのもので、義務ではない点がGoogleなどの20%ルールとは違うのですが、プロジェクトが忙しくてなかなかジャングル活動に着手できないというエンジニアが多いという課題があるのが現実で、いろいろ試行錯誤しているところです。

 最近では、やりたいのに時間がないというエンジニアのために、開発合宿を企画し、ものづくりに集中できる時間を提供するということも行っております。第1回はわたしが企画して、10月に1泊2日の日程で実施しました。ちょっとした縁があってあるお寺の施設をお借りできることになったので、お寺で行いました。お寺で合宿というのもあまり聞いたことがないですが、普段の業務と物理的に距離をおいた空間で、静寂の中、適度な緊張感を感じながら集中して開発することができ、大好評の企画でした。この12月に2回目の開発合宿が行われ、早くも年明けに3回目をやるという話が噂されていて、開発合宿は、今後文化として根づいていきそうです。

楽天 開発合宿の様子

 先日行われた弊社主催のイベント、楽天テクノロジーカンファレンス2009では、エンジニアのジャングルワークの成果をライトニングトークやデモブースで発表いたしました。外部のエンジニアにも参加していただいて、お祭りムードでとてももりあがりました。懇親会では来場者の方から「楽天にも面白いエンジニアがいるんだね」と、わたしにとっては最高に嬉しい言葉をいただきました。イベントを通じて、楽天の最近の雰囲気を伝えることができたのではないかと感じております(Ustreamで動画公開しておりますので興味のある方は是非御覧下さい)。

 このように、楽天ではエンジニアの創作活動を支援する仕組みがあり、すこしずつですが、組織の文化にも影響を与えています。ジャングルの次の課題は、サービスをリリースすることです。すでにいくつかのアプリケーションをα版として公開するための検討が始まっております。面白いサービス、新しい価値観を提示するサービスを生みだすべく、エンジニア一同がんばりますのでぜひご期待ください。

■最後に

 長くなりましたので、書きたかったことをまとめますと……

  • 技術の進化が一層はげしくなり、大きな変化がおきつつある今こそ、エンジニアにチャンスがある
  • 思いついたら作る。創造力のあるエンジニアだけが未来をつくることができる(とわたしは思う)
  • 楽天でも、すでに変化が始まっている

 こんな感じでしょうか。

 わたしの個人的な所感ですが、楽天ではこれまで、事業主導のプロジェクトが多く、エンジニアの地道な努力に光があたりにくい状況があったように感じます。しかし近年、エンジニアが技術動向をふまえ、中長期的な競争力をつけるためのプロジェクトをボトムアップ的に提案したり、ジャングルのようなクリエイティビティを支援する取り組みが活発になったりと、エンジニアの存在感がどんどん増しており、やる気のあるエンジニアには働きやすい環境ができつつあります。

 一緒に世界を目指す仲間を募集しておりますので、もし興味のある方がいらしたら是非話を聞きに来ていただけたらと思います。

 最後はちょっと宣伝ぽくなってしまいました……(笑)。それでは、またどこかでお会いしましょう。

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楽天開発部コラム事務局
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