「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

プロジェクト成功のカギはO2Oにあり?

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 ご存知のようにO2O(Online To Offline)といえば、販促やマーケティングの文脈で、ネット上の情報や活動を実店舗での購入に結びつけるような仕組みを指していうわけだが、実はITプロジェクトにおいてもこのオンラインからオフラインへの流れは円滑なプロジェクト進行のための重要なファクターとなる。

 今回は、この文脈でのO2Oとはどういうものなのかを見ていこう。

■プロジェクトにおけるオンラインとオフライン

 われわれIT業界の人間は、ITのプロということもあってプロジェクトを進行する上でもさまざまなITツールを活用している。中でもここで注目したいのは情報共有やコミュニケーションに関するツールだ。

 メール、プロジェクト管理ツール、障害管理ツール、電子会議ツール、コラボレーションツールなどなど。これらがプロジェクトの中でオンラインを形成するものだ。それに対して、対面でのさまざまな会議体、廊下や休憩室での立ち話などがオフラインを形成する。

 どちらに属するかグレーなものとして、WordやExcelなどで資料を作る時間がある。これは、会議用の資料ならオフラインに属するだろうが、メールへの添付やオンラインの各種ツールでの情報共有が主目的ならオンラインに属すると考えていいだろう。どちらにも使うなら、半々で考えてもいい。

■オンラインで過ごす時間

 一般的に、オンラインの利点とは情報の公開がやりやすいことだ。ここではあえて『公開』といわせていただく。『公開』することと『共有』することは別物だということをはっきりと意識するために。

 リアルタイムという点に関しては、オンラインは二面性を持っている。電話やビデオ会議やメッセーンジャーなどは、距離を気にせずにつながることができるという優れたリアルタイム性を持つ。一方で、メールやプロジェクト管理ツールなどでは、メンバーがリアルタイムにつながっていなくても、それぞれ自分の都合のいいタイミングで必要な情報にアクセスできる。これも大変優れた特性だ。

 また、電話やビデオ会議のような会話型のツールを除けば、エビデンスが残るというのも大きな利点といえる。(もちろん、電話やビデオ会議も残そうと思えば残せるのだが。)

 逆に欠点としては、エビデンスが残るという利点の裏返しとなるが、読み書きは話すよりも時間がかかるという点だ。例えば以下で、メールについて少し考えてみよう。

■メールの時間

 我々は、一日に一体何通のメールを送受信しているだろう。

 アイ・コミュニケーションの『ビジネスメール実態調査2013(平成24年)』をみると、1日に受信するメール件数が30通を超える人は33%となっている。おそらく、みなさんも毎日このくらいは受信しているだろう。プロジェクト内でRedmineやBacklogなどを使っている場合、チケットを追加するたびにメールが発射される。すると、多いときには50通から100通ということもあるのではないだろうか。そして、届いたメールはその都度確認すると回答した人が最も多く、33%を超えている。

 『その都度』。これがくせ者だ。つまり、やっている仕事をその都度中断しているということなのだから。

 では、自分が送信するメールは何通かということだが、10通以下の人が約50%。逆に考えると残りの約半数は毎日10通以上のメールを書いているということなのだ。1通のメールの作成時間に関しては、約30%の人が5分、約23%の人が10分と答えている。

 また、1通のメールを読む時間はここでは調査されていないが、経験上、だいたい平均すると30秒から1分といったところではないだろうか。もちろん長文メールの場合はもっと長くなる。

 30秒としても、それが30通となると15分。10通のメールをそれぞれ10分かけて送信したとして、1時間40分。これだけで、1日約2時間の業務時間が削られてしまうわけだ。勤務時間を8時間とすると1/4のボリュームだ。しかし、実際にはこれプラス、メール着信によって中断された仕事に戻るまでのロスタイムというものもある。我々の頭は、コンピュータのように瞬時にタスクを切り替えることはできないのだ。

■問題が発生すると、より多くの情報をオンラインに求める

 プロジェクトで問題が発生すると、通常は管理が甘かったと反省する。そこまではいいのだが、もっとしっかりと管理するということは、もっと詳細な進捗報告を求めることとイコールではない。そこを勘違いして、現場の作業担当者への負担を増やす管理者が多く見受けられる。

 多くの管理者は、エビデンスを残すために進捗報告は口頭ではなく、文書化することを求めるのだ。メールだったり、定型化されたExcelやWordのテンプレートを使った報告書形式だったり、あるいは各種プロジェクト管理ツールへの入力だったり、形式は様々だが、大抵はオンラインでの時間が増加することとなる。

 これは管理者が陥りやすい間違ったオンラインの使い方の典型なのだが、すべての情報を受け身で集めようとしているところに大きな問題がある。オンラインで情報を集める際に発生する、情報の送り手側のコストを考慮していないのだ。

■続きはオフラインで!

 何年前だったろうか、「続きはWebで」というようなCMが流行ったことがあった。しかし、プロジェクト管理に必要なのは「続きはオフラインで」というスローガンだろう。

 オンラインでどういう情報を扱いどういう活動をするか(情報をどう「公開」ではなく「共有」するか、など)、そしてそこからオフラインでの活動にどう結びつけるか。このようなプロジェクト内でのコミュニケーションのデザインを最初にしっかりと定義しておくことは、円滑なプロジェクト進行に欠かせない大切なことなのだ。

 多くの場合、問題の解決に有効なのは、より多くのオンラインの時間ではなく、より多くのオフラインの時間なのだから。

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