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エンジニアは場を求める

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 15~29歳の若者人口がその社会の全人口の3割を超えると、その社会の中で彼らが能力を発揮できる場がどんどん足りなくなるという。

 そしてこのような状況になると、若者は自分が活躍できる場を求めて、海外移住、対外侵略、テロ、革命、内戦といった過激な行動に走る。

 これは、ドイツの社会学者グナル・ハインゾーンが『自爆する若者たち』の中で紹介している「ユースバルジ現象」だ。

 例えば現在ユースバルジである国として、エジプトやメキシコなどが挙げられる。エジプトは実際、今年の初めに革命が起こったし、メキシコは、米国への不法移民が多いことで有名だ。

 過去にさかのぼれば、古くは欧州諸国の大航海時代や、日本でいえば明治維新もユースバルジによって引き起こされた。血なまぐささは拭えないが、その圧倒的なパワーが歴史を動かしてきたことは間違いない。

 しかしまぁ、割合が多かろうが少なかろうが、若者が活躍できる場を求めるのは、古今東西普遍的な現象だ。人口が安定していれば、場が十分にあるので競争の必要もなく、過激な行動は起こりにくい。人口の増加に、場の拡張が間に合わないときに、若者は爆発するというわけだ。

 IT業界、特にドットコム企業(もう死語?)では従業員の比率として、29歳以下の従業員が会社全体の3割を超えている企業なんて普通にあるだろう。そういう企業では、若くて上昇志向の強いエンジニアたちが、満足のいく仕事に就けないということも多いはずだ。

 その時、彼らはどんな行動を取るだろう。まぁ、さすがにテロや革命は起こさないだろうが、能力のあるエンジニアは、迷わず転職する。

 中には社内の仲間をごっそり引き連れて転職する場合だってある。そこまで行くと、ある意味テロに近いかもしれない。読者の周囲にも、あるいは読者自身もそのような行動を起こしたことがあるのではないだろうか。

 ユースバルジの特徴は、貧困による暴発ではない点にある。彼らは活躍の場を求めているのだ。同様にエンジニアの転職理由も、貧困というわけではない。

 もちろん、給料に不満を持つ場合も多いが、生きていくのに必要な最低レベルの金額さえ保証されていない、ということは少ないだろう。評価(の結果としての給料)が、自分の能力や仕事量とマッチしていないという不満が根底にあるのだ。つまるところ、正当に評価される活躍の場を欲しているのだ。

 エンジニアの流出はIT企業にとっては大きな問題だ。従って企業は、それを避けるために、彼らが能力を発揮できる場を創出しなければならない。

 「仕事を割り当てる」のではなく「場を与える」。
 これがエンジニアの心をつかむ秘けつだ。

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