第3回:海外のエグゼクティブが取り組んでいること
皆さん、こんにちは。某外資系ITベンダの人事部で働く久利隆太です。
このエンジニアライフでは、2週間に1回くらいのペースで書こうと思っていたのですが、新卒採用が今まさにピークを迎え、正直それどころではない忙しさになっていました。
わたしは現在、毎日のように人事面接を行っています。しかし、徹夜をすることはまずありません。むしろ絶対にしないようにしています。
疲れきった社員が面接官として出てきては、学生も入社したいという思いにはならないでしょう。面接は見るだけではなく、見られる場でもあります。表情から服装までしっかりしないと、せっかくの優秀な学生から逃げられてしまうのです。ですから、徹夜することなく、そして極力、深夜までも仕事をしないようにしています。
とはいえ、ただ効率的に仕事を回すのではなく、入社を希望する学生にはじっくりと時間をかけて、お互いが納得できるまで話もしたいと思っています。
より実のある面接にするためにも、事前に書類(履歴書、エントリーシートなど)にはじっくりと目を通し、あらかじめいくつかの質問項目を考えることは避けて通れません。この事前準備に時間がかかるので、仕事中は休憩もないくらいに根をつめて仕事をしています。
結果的に、日々大量の書類に目を通し、多くの学生と面談を行っているため、ふと目を閉じれば、履歴書とエントリーシートが目の前に浮かび、さらには学生の自己PRの声がどこからともなく聞こえてきます。
……完全に危険信号です(苦笑)。
とはいえ、この忙しい、ピークのときが楽しいのも事実です。
高い志を持った学生と向き合うことは、自分にとっても学生のころのまっすぐな気持ちを思い起こす意味でも刺激にもなるし、これから一緒になる仲間だと思うとワクワクして、辛さもそう感じません。会社説明会や面接では、現場の社員にも協力してもらいますが、皆さん快く協力してくれるのも、わたしと同じ思いなのかも知れません。
あと数週間、頑張ってみようと思います。
さて、新卒採用に関する話は、数週間後にすべて終わってからお話をするとして、今日は今までとはがらっと視点を変えて、ある外国人のエグゼクティブのお話をさせていただきます。
■え? ホテルの予約に何が必須なんですか?
ある日、わたしは上司からある仕事を頼まれました。
「久利さん、今度米国からヴァイスプレジテンドのマイケルさん(仮名)が来日するから、品川駅近くのホテルで朝食付きの禁煙の部屋で、3泊とっておいてほしい。あ、分かっていると思うけど、あれは必須だから忘れないで」
人事なので、年に数回はこのような仕事をすることもあります。今でこそ、それをアドミにお願いをして予約をしてもらうのですが、初めてこの仕事を頼まれたときには、「あれ」の意味がわたしは分かりませんでした。
しかし、これは後ほど自分にとっても重要なことであることに気付かされました。
その後、何件かこの予約を行う中で、マイケルさんという米国人のみならず、グローバルに活躍するエグゼクティブに共通するキーワードを見つけたのです。
■ホテルの予約
今回の予約のポイントを整理してみましょう。
≪予約のポイント≫
- 品川駅近く
- 朝食付き
- 禁煙部屋
- 3泊
- 「あれ」
駅からタクシーを使うという手もありましたが、今回は必要なし。日本で3泊もするので朝食は必須でしょうし(まさかコンビニで済ませてもらうわけにはいかず)、禁煙部屋を希望する人も最近は多いので問題なし。エグゼクティブに関わらず、必要最低限の希望ではないかと思います。自分もホテルを予約する時には、上記のポイントにずれはないと思います。
そして、当り前ではありますが、同じ会社とはいえ海外からのお客様です。
来日した際には、最高のおもてなしを提供したいので、ただ値段が高いだけのホテルではなく、ある程度の知名度もあり、かつ海外からのエグゼクティブを質の高いサービスでもてなすことのできるホテルを選ばなければなりません。
そうなると、必然的にいくつかのホテルに絞られるのですが、「あれ」だけは分かりません。
わたしは当初、マイケルさんが米国人ということもあり、「あれ」について勝手な想像をしていました。今考えてみれば、考えが浅いというか、何も考えていなかったなぁと思いますが、その時にはその程度しか思いつかず、上司の川崎さん(仮名)に聞いてみました。
「マイケルさんの滞在するホテルですが、Aホテルで宜しいでしょうか? 歴史のある格式あるホテルですし、部屋も30平米あって非常に広いです。周りのビルからは距離もあるので、この近辺にしては非常に開放感もあります。天気が良ければ富士山も見えるかもしれません」
しかし、川崎さんから返ってきた答えは、
「マイケルさんにはAホテルではダメだよ」
■「あれ」に入る言葉とは?
この「あれ」は何のことか分かりますか?
鋭い方はすぐに分かったかもしれませんね。
そうです。
答えは、「ジム(プール)」です。
マイケルさんに限らず、海外のエグゼクティブの多くは、仕事に行く前、仕事が終わった後、どんなに忙しくともジムに行って体を動かすことを日課としています。ですから、たとえ出張であっても、宿泊先のホテルにジム、もしくはプールがあることを強く求めてきます。これは日本以外の国々へ行くときも例外はありません。
わたしが最初に選んだAホテルは、部屋や料理、サービスを見れば、まったく問題がないホテルでしたが、残念ながらそこにはジムがなかったのです。実は上司の川崎さんも、以前にそこのホテルを予約したことがあり、その際にジムがなかったことで、あとでマイケルさんからこっぴどく怒られたそうです。
■なぜエグゼクティブはジムへ行くのか?
では、なぜマイケルさんはジムへ行くのでしょうか?
このあたりの詳しい話は、「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」(幻冬舎新書、山本ケイイチ著)を読んでもらった方が良いと思いますが、日本人が考えている以上に、海外のエグゼクティブはトレーニングを重要に考えています。
健康維持、増強のために行うという大前提がありますが、有酸素運動を続けることで、前頭葉が活動的に動き始めるようです。その結果、脳が刺激され、直観力や集中力が高まるとも言われ、精神的にもタフになると言われています。
グローバルでビジネスを展開している企業のエグゼクティブは、わたしたちが考えられないような大きな決断や選択を迫られます。常に最高の状態でいるためにトレーニングへの投資は惜しんでいないのです。
そして、筋トレをしている人は特によく分かると思いますが、筋肉は1日だけ負荷の高いトレーニングをしたからといって、すぐにつくものではありません。日々の積み重ねによってでき上がってくるものです。ビジネスと一緒です。少しずつお客様の信頼を勝ち得ながら、大きくなっていかなければなりません。その原点を忘れない意味でも、ジムでトレーニングを続けているのです。
わたしたちは、英語やITには積極的に自己投資していますが、自分の体にはそこまで投資をしていません。日本においても、今や英語やIT以上に必要と言われているトレーニングに、海外のエグゼクティブは早くから取り組んでいます。
■まとめ
いかがだったでしょうか?
今日は海外のエグゼクティブとトレーニングについてお話ししました。
最後に余談ですが、わたしは学生時代、スポーツに夢中でした。
ただ、ジムでの有酸素運動という世界からはほど遠く、完全にスポ根の世界でした。毎日遅くまで練習し、土日がないのも当たり前。常に限界まで体をいじめ抜き、勝つために日々練習をするのです。おかげで練習中に吐く人もいれば、下手なプレーから先生に殴られて血を出してしまう人もいます。先輩後輩の関係もここで書くと問題になるくらいです。
それでも、その高校では全国大会で上位を目指していただけあって、練習や試合は必死で、絶対に負けないという思いで日々歯を食いしばって生き残っていました。負けたら大学の推薦枠やプロの道が狭くなるため、このときばかりは先輩後輩の関係はありません。その中で自分は1年時からベンチ入りをすることができたのですが、それがいかに大変で、そしてそれがどれほど名誉なことであるとは大人になってから気がつきました……。
結果的に、自分は途中で怪我をして断念せざるを得ませんでした。ただ、同級生の中にはそのままプロになった人もいます。全国レベルの環境に身を置いたことは自分にとっては本当にプラスでした。
けれど、今でもスポーツや運動をしようとすると、体を痛めます。
それは、怪我のせいでもありますが、限界まで運動するように体が覚えてしまっていて、有酸素運動をしようにも、ジムに行けば周りの会員さんがびっくりするくらいハードにやってしまう自分がいます。
まだ自分にはトレーニングが投資になるには時間がかかりそうです。
では、また次回お会いしましょう。