新卒入社の会社は1年持たずに倒産。「流れよう流されよう」がモットーのエンジニア

さぁ! 輪のなかで踊ろう「開発したコミュニティでユーザーになる」

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 今回のテーマは「エンジニアという仕事のやりがい」です。

■最近の仕事のやりがい

 プロジェクトマネージャやリーダー役が多い最近では、想定内にプロジェクトを完了できると「あー、よくやったな」と感じます。想定内に終えるということは、お客さんも、メンバーも、上司も満足なわけで、打ち上げに先んじてひとり祝杯をあげたりします。

■あるコミュニティサイトの開発

 で、ちょっとそれとは別のやりがいの話。ときは2000年前後のこと。

 上司が取ってきた仕事は会員制コミュニティサイト開発。当時、コミュニティサイトは「出会い系」といわれ、怪しいイメージたっぷりでした。が、それは某大手出版社が手掛けるものでした。健全さが「ウリ」です。

 ここにぼくはプログラマ兼リーダー兼雑用としてインフラ、デザイン以外のアプリ開発に携わりました。

■技術の話を少しだけ

 ここで技術の話。BSD+Apache+PHP+MySQLという今でいうLAMPの走りのような構成でした。はじめてのPHP体験。まだバージョン3.0の時代で、書籍も数えるほどしかありません。

 「君なら何とかなるよね?」と言われて上司から丸投げでしたが、確かに何とかなりました。いっちょまえに電子決済の仕組みもありまして、プリペイド方式のビットキャッシュ、クレジットカード決済のサイバーキャッシュ(当時)にも対応しているという、今では当たり前ですが当時としては先進的なものだったかもしれません、今思うと(接続テストとか、かなり面倒くさかったのを思い出しました)。

■そしてリリース、サイトオープン

 技術の話はこの辺にして。紆余曲折ありましたが、ほぼ予定通りのリリースです。

 前述のコンセプトもあり、大々的にメディアにアナウンスされます。そしてサイトオープン。ぼく自身もユーザーになり参加です。

 自己紹介ページに、チャットに、掲示板に……。動作確認が目的ですが顔を出しているうちに常連化していきます。

■突然の打ち切り決定

 サイト開設から約ひと月たったころでしょうか。思ったより会員が伸びないということで早々とサイトの打ち切り、いわゆる終了が決まります。いちエンジニアの、しかも受託側のぼくにはどうすることもできません。そして、サイト内にこう告知されます。

 「×月×日を持って終了します」

 夜な夜な集っていたコミュニティメンバーは突然の告知に騒然です。当たり前です。始まってまだひと月ほどですから。まだ数は少ないといえど、それはそれで1つの世界・世間ができつつあるわけです。

 どこからとなくオフ会を開く話が出ます。場所は銀座にて土曜の夜。集まったのは10人くらいでしょうか、大手出版社の名前があったこともあり、Webコミュニティは初めてという人も結構いました。皆さん普通の方でした。そこでぼくは正体を明かします。このサイトの開発者であること、終了は告知の数日前に知っていたが立場上言えなかった、ゴメンナサイ、など。

■決意と行動と。避難所づくり

 そこそこ盛り上がった会もお開きです。帰り道ぼくは思います。

 「このままこのコミュニティが終わってしまうのはもったいないな」

 そこで「避難所」(メンバーは実際にこう呼んでいました)というページを作ります。中身は、ホームページに掲示板にチャットルームにメーリングリストに……。すべてフリー(無料)です。登録するだけですからわけありません。チャットはメンバーからの提供でした。またIM(インスタントメッセンジャー)も使いました。

■終了、そして継続

 そしてコミュニティサイトは終了を迎えます。2カ月というあまりにも短い開設期間でした。

 でも、避難所を用意していたおかげでコミュニティは続きます。仕事が就職が、という他愛もない話が夜11時の「テレホーダイタイム」と共に交わされます。

 オフ会も開催されます。浅草もんじゃオフ。吉祥寺駄菓子オフ。お台場海オフ。近郊お泊まりオフ。

 高速バスでやって来るメンバーもいました。何を話したかは覚えていないけど楽しかった。

 彼らとは今でも関係が続いています、と言えれば格好よいですが、さすがにそこまでは。それでも3年は続いたでしょうか。

 時々MLに投稿されるメール(とあて先不明でオーナーのぼくに返ってくるメール)を見ては感概に浸ります。サイトのドメイン、期限切れたら取り直そう、その話は結局実現しなかったな……。

■まとめ、輪のなかに入って踊るということ

 ぼくは開発側の人間で、作った後はそのシステムがどう使われるか分からない分、多くの人に使われたいと日ごろから願っているのですが、この一件は、「自分がエンジニアの立場を離れて輪のなかに入り、自ら踊り、そしてちょっとだけエンジニアとして動くことでコミュニティのユーザーに役に立つこと(=使われることを実感)ができた」、そんな出来事でした。

 今、SNSなどコミュニティの開発に携わっているエンジニアはどう向き合っているのだろう? と思います。

 こんにちは。けいいちっくです。「けいいちっく」と名乗っています。

 現在30半ばのエンジニア♂です。所帯持ち。PMやらPLやらSEやら、それっぽいことをやっています。いまの会社が5社目。

 7月からコラムを書いていますが月間アクセスランキングの3位と13位に入りました。アクセスありがとうございます。1位の森姫さんすげぇーな、文書うまい! ということでお近づきになりたいと思う今日このごろです。

Comment(1)

コメント

森姫

こんにちは。森姫です。
読んでいたら自分の名前がでてきてびっくりしました・・・(笑)
よろしければTwitterでフォローしてくださいね。

さて、コラムについてなのですが。
ものすごくぐさりときてしまいました。
同じような経験をもっているので。
今のようなSNSがなかった時代なので、本当に「テレホーダイ」世代です。
人との輪をとりもつということはむずかしいですよね・・・。
違う意味でも格闘中です(汗

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