シリコンバレーで現役デバッガやってます。

BUG010 - 10時過ぎに出社して17時前に帰ってしまうシリコンバレーを支える「しょ・う・が・な・し」文化

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 先日話題になった「10時に出社して~」というコラムを拝読いたしました。まさにそれ、そのまんまのシリコンバレーです。もっとも毎日2時間勉強しているかといえば疑問ですが。実際周りを見渡すと、10時~17時どころか、ITエンジニア達はありとあらゆる理由をつけて遅刻、早退、はたまた在宅勤務してしまいます。例をあげると、

「自分、家族が病気になった」
「子供の学校の面談、行事に参加する」
「保育園が休みになった」
「車が壊れた」
「台風、大雪が来た」
「トイレが詰まった」
「家具が届く」
「親戚、友達が(遠くから)遊びに来た」

 などなどあげればきりがありません。私もだいぶ昔ですが、日本で普通のエンジニアとして働いていたのでその感覚でこの理由を見直すと、思わず「ゆとり世代かよ!」と言いたくなるような言い訳ばかりです。しかしシリコンバレー生活に慣れてくると、「あーそうなの、しょうがないよね、じゃぁまた明日!」てな具合で、あっさりとみんなが納得してしまいます。

 いったいこの感覚の違いはどこから来ているのでしょうか。よくよく考えてみれば、どの理由も「しょうがない」といえば「しょうがない」理由です。子供が病気になれば誰かが診てやらなければいけないし、夫婦の相方が病気になれば自分が代わりにすべての家事をしなければいけないでしょう。車が壊れたら、公共交通機関がまるで機能していないシリコンバレーではいつ来るか分からないタクシーを呼ぶしか会社に来る手段はありません。トイレが詰まれば業者を呼んでいつ来るかあてにならない業者を一日待たないといけないかもしれません。

 これを「しょうがないなぁ」、といって片付けられる感覚、それこそまさに「しょ・う・が・な・し」文化なのです。

 さて、最近の外国人観光客ブームもあって、日本のホテルやレストランの「おもてなし」文化はとどまるところを知りません。外国の「しょ・う・が・な・し」サービスに慣れた観光客にはまさに最初から最後まで感動の連続です。一方、恐らくITエンジニアの皆さんも、これでもかこれでもかとエスカレートする客先の「おもてなし」仕様に疑問を持ちつつも、なんとか残業や休日出勤でこなしておられる方も多いと思います。しかし「おもてなし」が異常に過熱してあるレベルを超えてしまうと、これが本当に必要なのか、これはもう過剰サービスなんじゃないか、と時々立ち止まって考え直す必要もあるかと思います。

 話を戻しますが、最先端のITエンジニアといえどもひとりの人間です。家では子供の世話どころか、親の介護もしてるかもしれません。今まで無理やり自分や家族を犠牲に乗り切ってきた個人や家庭の事情、何の疑問もなく当たり前のように対応してきた「おもてなし」仕様に対して、「ちょっと待って。これって『しょうがなし』ってことでいいんじゃない?」ってな雰囲気が職場に少しでも芽生える、それこそが廻りめぐって、高付加価値を生み出すITエンジニアの生産性の向上になるんじゃないかと思うのですが。

 それではまた。

Comment(1)

コメント

Anubis

読んでてシリコンバレーに行きたくなった。

どのような形にせよ、
とりあえずの理想が形になったらどんな感じなのか見てみたい。

ただ、思うほど現実は甘くは無いと思うが興味深いです。

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