シリコンバレーで現役デバッガやってます。

BUG031 - 25年で25倍になったという話

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 こんばんわ、エル氏こと@elcaminoreal255です。今回は年末年始スペシャルってことで真面目にいきます。

 実は私にはもう20年以上に渡って何かとお世話になっているキャリアコンサルタントというお仕事の方がいます。もちろん東京で働いているごく普通の日本人の方なんですが、今回はその方からお題を頂きました。「ぶっちゃけ、海外から見て日本で働くってどうよ」というお題です。

 今まで色々な方に出会ってはいつも「こういうコラムを書いているのでぜひお題をくださ~い」と頂戴してきたのですが、今回のこのお題はちょっと悩みました。

 気がつけばアメリカで働いて十年以上経ち、シリコンバレーIT業界の華やかなオモテも、またとても文字にはできない裏も何度となく経験してきました。しかしその一方で東京で普通に地下鉄に乗ってエンジニアとして働いていた経験ははるか遠い昔、浦島太郎状態になってしまいました。老後は日本で何か人の役に立つような地味な仕事をしたいなどと勝手に思ってましたが、果たして日本人以外の人に日本で働くことを勧められるのかどうかは、あまり考えたことはありませんでした。

 読者の皆さんは、恐らくほとんどの方が日本で生まれ日本で働いているのかと思いますが、なぜいま日本で働いているのか、ということを真剣に考えたことはありますでしょうか。というよりも、例えばこういうことですが、宇宙からUFOで現代の地球にやってきたあるITエンジニアが、地球のとこかで働かなければ生きていけないとして、果たしてどこの国で働くことを望むでしょうか。

 残念ながら、宇宙人、いや日本人以外の人々にとって今の日本で働くというのは現状ではあまり魅力がないように思えます。ご存知のようにシリコンバレーの最大勢力はインド系、中国系、そしてその他アジア系の人々です。そして、そういった人たちが家族を連れてどうしてアメリカに渡ってくるのかといえば、どうしても下世話な話なのですがお金が目当なのです。敢えてはっきり言いますが、残念ながら日本の賃金は彼らの魅力を得るには安すぎるのです。

 私はときどき職場で「25年前はどうだったか...」という話をよくします。25年前といえば、1992年、そうWindows 95、じゃなくて3.1が出た頃、日本ではちょうどバブルが終わって長い低成長期に入ろうとしていた頃です。その頃と比べて、ITエンジニアの給料はどうなったか、食事の値段はどうなったか、家の値段はどうなったか、という話をよくします。とすると、そういったインドやアジア各国の人々は、「そうねーちょうど25年前だと25倍くらいだね」、とあっけらかんと言います。もちろんインフレを含んでいるので25倍豊かな生活ができるわけではありませんが、彼らにとってはちょうど25年前が今の爆発的成長の出発点だったのです。まぁビットコインには及びませんが(笑)

 その頃の日本といえば、私の記憶では、TVの海外ロケ番組でこのようなアジア各国へ出向き、現地のレストランや屋台で食べ歩いて「え~こんなに食べて200円!!」みたいな番組を垂れ流していたような気がします。いまならきっと25倍で5000円なのでしょう。

 そのとき同じ路地裏では、中学生や高校生が日本や欧米の成長をブラウン管を通して遠くから眺め、いつか自分も自分の家族もそのような豊かな暮らしがしたいと、わけもわからず紙と鉛筆でプログラミングを学び、村の長老たちを説得してお金を集めてアメリカの大学に留学し、必死で働き続けて25年たった今、シリコンバレーIT企業の偉い人に登りつめ、出身地の村に自分の名前のついた橋やトンネルを寄贈、という人はけっこういるらしいです。

 おまけに運良く25年前に親が将来の投資になればと、当時数百万円の上海の分譲アパートの一つか二つでも買っていればそれがいまでは1億にも2億にもなっていて、じゃぁそのお金で節税ついでに海外に不動産でも買いましょうかと、シリコンバレーの高級住宅地に一軒家を現金で丸買いすることになっているのです。頭金を必死に集めてローンを組む日本人が太刀打ちできる相手ではもはやありません。

 最近では中国のITエンジニアの初任給はすでに日本と同じくらいとか、インドでもいい会社だと200万円くらいはもらえるとか、ちょっと前からそろそろ抜かれるんじゃないかと噂になってたのが気がつけば本当に抜かれてしまった気がします。それでもやっぱり日本の方が食事もおいしいし温泉もあるし、と言うのであればそれと引き換えに失っているものはあまりにも大きいかも知れません。

 さぁどうでしょう。読者の皆さん、とくに若い方、どう思われるかはご自由ですが、これが現実です。バブル世代が悪いとか、政府が悪いとか、誰が悪いとか恨むとか、そういうことは抜きにして現実に目の前にできてしまった格差にもはやできることは年々限られているような気がします。いま日本に押し寄せる外国人観光客はまさに25年前の日本人がやった真逆をやってるだけのことです。日本の食事はおいしくて安すぎるのです。どうして?人件費が安すぎるからです。日本の経営者の皆さん、どうか今一度、賃上げを考えていただきたいものです。

 さて、振り返れば2017年のアメリカは最初から最後まで新大統領の話題で持ち切り、そして相変わらずのITバブルにインフレ、おまけに山火事騒動に振り回された一年でした。果たして2018年はどんな年になるのか。読者の皆様には来るべき2018年が素晴らしい年であることを祈ってやみません。それでは皆様良いお年を!

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