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「脱」

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 この最近、「脱原発」や「脱小沢」など、「脱」という言葉を多く耳にします。

 この「脱○○」という言葉に関して、考え深いエピソードを教えてもらったので、ご紹介したいと思います。

○エピソード1

 その会社はある大手企業の関連会社で、親会社の業績悪化に伴い、何年か連続の赤字状態だった。そこへ親会社から新しい社長が赴任してくる。この社長とても型破りな人で、赴任した会社の実態を知ったとたん古巣である親会社へと足しげく通った。

 そして親会社のウォンツを聞き出し、外から新技術を取り入れ、親会社の上層部に掛け合い、大きな仕事を作って、親会社と共にWin-Winな関係を築き上げた。おかげで連続の赤字が次年度にはV字回復、売り上げも前年度比10倍増という偉業を成し遂げてしまった。ところが、この偉業は次の課題を作ってしまう。それはこのスーパー社長の後継者問題。当時、社内には大きく2つの考えが存在した。

  1.次期社長も、スーパー社長(で、あって欲しい)
  2.社長依存体質からの脱却(脱スーパー社長)

 子会社単独ではどうにもならない、グループ企業間人事のこと。多くの社員が、次期社長も同じようにスーパーマンであることを望んだ。しかし一部の社員は、そんなことはあり得ないから、と在任中より「脱スーパー社長」を標榜し、スーパー社長に頼らず自分たちだけでいろいろなことをやろうとしていた。

 やがてスーパー社長も任期満了で相談役に退かれ、本社より次期社長がやってくる。

 次期社長も悪い人ではないのだが、やはり前のスーパー社長に比べると色あせてしまう。スーパーマンを期待した社員は、そのギャップに落胆の色は隠せず陰口を言うばかり。「脱スーパー社長」を標榜した社員は、これまた自分たちだけでやることが空回りしてしまい、結局会社はスーパー社長が来られる前の状態に状況に戻ってしまった。

 実は、この話はこの会社の「脱スーパー社長」派の方から聞いた話で、しばらくして再度お会いしたときにこの続きを教えてもらえました。

○エピソード2

 実はこの会社は最近、やり方を少し変えることにした。

 スーパー社長に代わる人はいない。しかしスーパー社長の機能を分担することはできる。すなわち、親会社のウォンツの把握等は現社長が行い、新し技術の取込み等はプロパー社員でやる。親会社上層部への説得等は、相談役である前スーパー社長と現社長が行う。そうやってスーパー社長1人でやっていた事を、現社長とプロパーでできる範囲を分担して行い、どうしても力が足りないとところは、今でも前社長の力を借りるやり方にしたのだ。そうすることで仕事はまた回り始め、業績は少しずつではあるが改善しつつある。

この方、最後にしみじみと以下の様に述懐しておられました。

 俺たちは「脱スーパー社長」を標榜したが、そのやり方は、相談せずに勝手に決めたり、違うやりだったり、いま目の前にあることだけを一所懸命やったりと、スーパー社長を否定する事で依存体質から抜け出そうとしていた。しかし今思うと、もし自分たちだけでできるのであれば、そもそもスーパー社長が来られる前のひどい状態などに堕ち入りはしなかっただろう。自分たちの実力は、そのレベルなのだ。そのレベルを思い違いして、再び自分たちだけでなんとかできる、と思ってしまった事が間違いのもとだった。

 そうではなく自分たちが成長して、スーパー社長が担っていた機能の一つでも、対等もしくはそれ以上の関係になること。そうしてスーパー社長とコラボレーションすること。これが「脱スーパー社長」という言葉の真の意味だったのだ。

 真の意味の「脱スーパー社長」に気がついたとたん、実はスーパー社長が一人で限界だった事も、皆が協調することでできるようになり、ひとつ上のことができるようになった、とも付け加えられました。

 【教 訓】

 「脱」とは、依存(おんぶに抱っこ)している状態から、依存先を否定するのではなく、自立して協調できる様に自分たちが成長すること。

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