エンジニア、経営陣、顧客。さまざま壁にぶち当たる日々、出来事

無計画de無問題?

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 どーも。ホワイトデーは、センスをチェックされている+3倍返しについては、知らなかったことにしておきたいdemitasuです。

 今回は、「計画がざっくりすぎると命取り」という例を紹介します。

 とあるWebサイトで、老朽化してきたことから、(Webサイトを)作り直すという方針が決まりました。方針と進め方について、社長自ら全体に告知するということで、プレゼンがはじまりました。

■夢物語

 スケジュールはタイトですが、魅力的なサービスや将来像が盛り込まれており、プレゼンを聞いている人たちは強い興味を示していました。プレゼンが無事に終わり、メンバーから質問が出ました。

 「予算はいくらぐらいを想定しておけばいいですか?」

 こすっからい質問ですが、非常に現実的な質問です。

 確かに予算ありきなので、いくらかが分からないと判断ができません。どういう回答するのかと思っていたら、こういう回答でした。

 「夢を実現するために徹底的にやる。だから予算は後で確保するから費用は考えなくていい」

 この回答で周りは、狂喜乱舞。ふつー喜びますよね。

 だって、好きなことやっていいと聞こえるし、予算無制限に聞こえますから。

 でもわたしは、このやりとりを聞いて、ひゃっほーーーーーーなんてかけらも思いません。むしろ強烈な寒気と眩暈がしました。正気か? と思ったぐらいです。ココロの中で、世知辛い小人が囁きます。

  • 経営計画にどう盛り込んでるんだ?
  • 投資対効果を考えているのか? それをどう測定するつもりだ?
  • 一体、誰がハタを振るんだ?
  • 後で予算確保なんていってるけど、できるのか??

 などいろいろな疑問が出てきて、震え上がりました。

■賽は投げられた

 そんな中、参戦しろという赤紙を上司からもらいました。

 上司は出世のチャンスだと思って乗る気ですが、わたしは乗る気がまったくありません。明らかにデスマーチと踏んでいましたし、ぽしゃるプロジェクトの1点読みでした。

 誰が沈むと分かる船に喜んで乗るでしょうか? そんなもんは相当ドMの人じゃない限り選ばないと思ってます。

 さすがにこれは、やりたくなかったし、ヤバイと思い、「既存業務もあるし」とか、いろいろ難癖をつけて、全力で辞退をしましたが、反論は受け付けられず、回り込まれた状態になってしまいました。

 しかし、これを1人で全体統括すると即死する(「即死フラグ」がはためいていました)ので、カテゴリごとにPMを付けてもらうことにしました。

 自分のモチベーションが上がらないプロジェクトに参加するのは、どちらにしても心に悪い影響を及ぼすのですが、アサインされた以上は、仕方ないので、周りにネガティブなのは振りまかないように努力することにしました。

■夢を描く各自の誤解

 さて、期間が短いなか、みんなが考えている理想のWebサイト作りがスタートしました。さすがに予算制限がないというのを盾に金額は、うなぎのぼりです。

 やっぱり、速いほうがいいから最上級なのにしよう。

 とりあえず、容量も大きめでいいよね。

 稼働率は99.999で。

 キャパシティ計算やコストバランスなんて、どこ吹く風で進められていきます。牛丼でいうと、牛丼特盛りにハンバーグ、からあげのせちゃっている感じなフル装備もフル装備です。

 このやりとりを聞いて、まっ先に言ったのは、投資対効果の話。

 そこまで金をつぎ込んで提供するサービスなの? とみんなに聞くと、

 社長が、費用は心配するなって言ってるんだから、固いことは言うな。

 このサービスにはそれぐらい必要だよ。

 性能を落とそうとする考えが理解できない。

 周りが一生懸命考えて進めていることに水を差すな。

など批判の嵐で、取り付く島もありません。

 これ以上やると収集がつかなくなりそうなので、途中で説得をあきらめましたが、これは到底ありえないと思っていたので、現実的プランを裏で検討し始めました。

■現実の壁

 さて、そんな豪華3段重な要望を聞いたベンダから、概算見積結果が来ました。その見積を見て、わたし以外の人は、動きが固まっていました。

 具体的な金額は書けませんが、概算見積金額は会社の通常利益の×年分ぐらいです。わたしとしては、至極当然な結果。周りはショックが大きかったのでしょうか、誰も口を開けずベンダの説明する声だけが広い会議室に響き、時間が過ぎました。

 さて、会議も終わり、この見積結果を社長に見せたところ……

 予算は後でと言ったけど、こんなのは想定していない!! と大激怒だったそうです。そりゃそうだと思いつつ、予算をいわねーからだろ、とココロの中でつぶやいたのは言うまでもありません。

 結局、いくらが予算の着地点なのかと思って確認してみたら、当初想定していた費用の10%ぐらいしか、取れないということが分かりました。

■そしてチームワーク崩壊。泥沼へ

 当然、こうなってくるとその後の機能、性能を削る作業になります。それがプロジェクト全体に周知されました。

 今まで確保していたものの10%です。

 周りのモチベーションは当然ガタオチ。なにせ10%ですから、相当な機能削減が求められます。

 機能削減の検討がはじまりましたが、どうしても自部門内では削りたくない機能というのが現れ始めてきます。そうなるとどうなるか……他部門を巻き込んだ擦り付け合いがはじまります。

 うちの部門のほうが稼いでいるんだから、お前らは譲歩しろ。

 あそこの部門の改修など無意味だ。

 などお互いが部門をけなしあい、いかに自部門で行う改修は素晴らしく、会社に貢献するか? のプレゼン合戦がはじまり、浮いた予算を自部門に追加しようと必死です。

 こうなっていくと大抵、投資対効果が高いところに多く予算が付与されていき、投資対効果が低いところは好きなことができなくなり、それに対してフラストレーションがたまっていきます。一体化していたように見えたプロジェクト。同じ会社の人間だったはずなのにまるで他社の人間。

 プロジェクトは、言うまでもなく、崩壊に向かいだしました……。

■ざっくりなまとめ

  • 経営陣できちんと投資対効果の見込みがあるのかを確認しておく
  • 予算は、無制限やこれから調整など不明確な事は周知しない
  • 暫定な予算は、少なめな金額+必ず周知
  • 全社プロジェクトは役員なりが旗を振ること
  • 全社最適に叶っているかどうかの基準で取捨選択すること
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