いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

勉強会に何を求める

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登壇する立場として

この前、OCS東京で登壇してきた。名目はLibreOfficeのコミュニティーでの登壇だが、実質は好きなことを話している。エンジニアライフでコラムを書いていた方が登壇しているのを見て「私にもできるんじゃないか?」と思ったのが登壇するようになったきっかけだ。OCSやLibreOfficeの勉強会で登壇するようになって数年になる。

最近ではかなり慣れてきて、壇上から問答もできるようになったし、質疑応答で詰まることもなくなった。少しではあるが、反応を見ながらはなせるようにもなってきた。同じ勉強会でも、壇上の人の話を聞くのと、実際に立ってみるのと、見える風景が全然違う。私は人前で話すのが好きなので、どちらかといえば登壇する方が楽しい。

登壇していると、聞く人が何を求めて聞いているか気になることがある。そういうニーズを追求するのもいいが、仕事のノリで「できる限り期待に応えよう」なんて考えると、途端にしんどくなってくる。話せる時間も、伝えられる内容も限りがある。なので私は「こういうものが提供できますよ」と、コンセプトを絞って登壇するようにしている。

登壇する理由は、聞いている人とのキャッチボールだろう。言葉を投げかけて、反応が返ってくる。それを楽しむだけだ。リアルにキャッチボールをして楽しむのと同じノリだ。そこから何か学ぼうとか、自分の成長だとか、相手をレベルアップさせるだとか、そういうことは考えていない。そこまで出来るほど私はできた人間ではない。

勉強会で提供できるもの

インパクトのある話を聞きたいと思って話を聞きにくる方はどこで登壇しても一定数いる。ただ、インパクトのある話題というのは基本的に一回話したら二度目にインパクトが無くなる。話す人は常に新鮮なネタを得るために奔走することになる。話題を確保するのも大変だ。

登壇する人は、ネタの準備や話題の整理など多くの時間をかけて登壇する。しかし、聞く側は一時間程度だ。けっこう濃ゆいものを聞いているのだ。これがプロだと、テンプレートや台本があって、事前に話す練習ができるので逆に楽だったりする。(ちなみにプロで話してたことがあります)

もし登壇するとしたら。自分の培ったものが十あったとして、伝えることのできる内容はそのうち三くらいがせいぜいだ。実際にネタとしてまとめれば、本当に僅かなものだ。話すくらいにまとまったものになると、自分が確信を持てるレベルまで落とし込めたものになる。なので、知っていることを全部伝えるのは、基本無理だ。

多くの内容を伝えようとすると、逆に支離滅裂になって伝わらない。頭の中の思考というのは、言葉でないもので構成されている要素も多い。正確に言えば、言葉にしたところで前提になるものが全然違うので伝わらない。伝える側からすると、登壇で話せる内容は「ほんの一部」になってしまう。

勉強会だけでは超絶イノベーションは難しい

たまに見かけるのが、勉強会に超絶イノベーションを求める人だ。どうも、話を聞いて閃きたいようだ。こういう人には前もって頭を下げておきたい。それは無理です。人が閃くには積み重ねが必要だ。積み重ねがある程度に達した上で何等かのきっかけがあると閃く。

閃きのきっかけは提供できても、積み重ねは本人が行動するしかない。だから、勉強会に行ってれば画期的な情報に巡り合って劇的な好転劇というのは、滅多に起きない。起きたとしても、それはあなたの頑張りの結果だ。勉強会は最後の一歩をちょこっと押すだけだ。

あと、やろうと思えば「閃いた気にさせる」ことはできる。プロとして登壇する人はここら辺が上手い。こういう話は聞いていて楽しい。満足度も高い。だが、実践は難しい。どんなに話が良くても、実践できるかどうかはそれぞれの積み重ね次第だ。

極論言ってしまうと、閃く人はわざわざ勉強会に行かなくても閃く。閃きはコントロール不能だ。自分が何がきっかけで閃くかなんて、誰も説明することはできない。ただ、話す立場の人は基本ぶん投げだ。自分が正しいと思ったことを力説する。逆に言うと、登壇者はそれしかできない。

勉強会に笑いを求めていいか

勉強会にセンセーショナルや有用な情報とか、そういうのを求める人ばかりではない。東京だろうと大阪だろうと、一定数、勉強会に笑いを求めてる人がくる。単に楽しみたいという人だ。個人的にはこういう人たちは好きだ。ふざけがいがある。

一時間近く、まじめな話題でしかも聞いて有益、画期的な話というのは難しい。勤めている会社で最新技術に常に触れているような人でなければ、まず無理だ。バックボーンが無ければそういうネタはすぐに尽きてしまう。センセーショナルが普通になればセンセーショナルでなくなる。聞き手も話し手もその事に気づくべきだ。

話していてつまらないのも嫌だし、聞き手も飽きるので、私は登壇する時にはある程度ふざける。そうしないと、冗談抜きで雰囲気が重くなって話してて辛くなる。話が苦手な人の気持ちがよくわかる。その代わり、その場の勢いでふざけるのではなく、計画的に、そして真摯にふざける。

勉強会に笑いを求めるのはありだと思う。ただし、勉強会に色気は求めてはいけない。というか、男ばっかりだ。こんにゃろう。男子校的なノリも楽しいが、やはり女性にもこの楽しさは楽しんでもらいたいものだ。勉強会とは、幅広いタイプの人に向けた技術の門戸であって欲しいと思う。そして、そうあれるよう今後も努めたいと思う。

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