いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

節約貧乏

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タダで安くはなりません

目的を間違える最初の起点。それは「節約」という考え方だと思う。実のところ、節約というのは高度な技術だと思う。普通にやれば1000円かかるものを800円に抑えるのだ。その200円は労力で埋め合わせるのか、知恵で埋め合わせるのか。必ず何かで埋め合わせている。例えば、人に圧力をかけて安くしたとか、払うべきものを省いたとか、そういう節約の仕方をすると、必ずどこかでしっぺ返しを食らう。

よく、経費節約のために裏紙を使う現場を見る。アレを見て、つくづくアホだなぁと思う。頑張って裏紙を再利用したところで、浮く経費は一人につきノート一冊分くらいだ。プリンターで裏紙を使うと故障しやすくなるし、刷り上がったドキュメントが圧倒的に見にくい。プリンタの紙を節約するより、無意味な会議を一回減らす方が圧倒的に費用対効果は高い。

節約というのは、費用対効果を適切に計算できる人がやらないと、割に合わない代償を払うことになる。節約はあくまで応用技だ。普通にやって達成できるか、危うい状態でやるべきものではない。お金を惜しむ気持ちだけで節約は実現できない。お金を惜しむような人は、節約をする以前に、何もせずに黙ってるのが一番だ。

節約という考え方は、手段と目的を見失う大きなポイントになる。プロジェクトの目的は、あくまで成功させることで利益をあげることだ。節約して安く済ませることではない。節約に成功しても、プロジェクトが失敗しては意味がない。節約の名の元に、極限に切り詰めた工数の代償を背負うのはエンジニアだ。誰かが無理を背負っているだけで、節約しても何も安くはなっていないのが実情だ。

節約に対するイメージを変えよう

節約というのは切り詰めるというイメージを持っている人が多いと思う。実際は、切り詰めるよりも適切な手段を取った方がお金は浮く。我慢することでお金が浮くと思う人が多いようだが、実際は我慢すると反動で何らかの不利益が起きる。節約に成功できる人は、我慢はしていない。むしろ楽しんでいる。

実際のところ、楽しむことのできる人でないと節約はできない。なので、節約のために我慢という発想は捨てよう。そうでなければ節約がうまく行くことはない。もし、我慢で節約を実現しようとすれば、実質、人への負担に頼ることになる。

こういうやり方でしわ寄せがいくのは、いつも末端のエンジニアだ。マネージャや経営者は節約をしたつもりでも、立場が下の人に負担を転嫁したに過ぎない。節約を実現できたとしても、代償として失うものは多い。しかも、節約に「成功した」という錯覚をするので、「うまく節約したの振ればに結果が出ない。おかしいぞ!」という状態に陥る。

節約のハウトゥーについては、書店に行けば腐るほど本が置いてあるし、真面目そうな人に聞けばいくらでも話は聞ける。だが、それを実行してうまくいったという話をあまり聞かない。その理由こそ、節約の根本的なイメージがずれているからだと思うのだ。

お金そのものに価値は無い

お金があれば大概のことはできる。しかし、お金はあるだけでは何もできない。使ってこそ何かができる。口座に一千万円預金されていても、プログラミングができるようにはならない。プログラミングができるようになりたければ、技術書や機材を買って勉強する必要がある。

事業をするにしても、プロジェクトを運用するのも同じだ。うまくいかせるには、必要な要素はいろいろある。お金の残高ばかり気になってしまうと、使い方で間違える。お金の扱い方でコントロールできるのはリソースだけだ。お金があれば良い発想が浮かぶ訳でもないし、技術が底上げされる訳でもない。

手元にお金があると安心できる。ずばり、節約する最大の目的はそれに尽きると思う。しかし、安心しただけで何かが好転する訳ではない。必要なのは、そこから先のアクションだ。節約に奔走するとこれが抜けやすくなる。節約自体が目的にすり替わってしまっている。

本当の無能というのは、手元に多くのお金があるにも関わらず結果を出せないことだと思う。本当に価値があるとすれば、上手なお金の使い方ができる能力だ。ただ、こういう人はお金を使う時に躊躇しない。節約大好きな人と考え方が逆なので、一般ウケけはよろしくない。

攻めの節約

節約といのは単に出費を絞ることだけではない。目的を達成してしまえば、以上出費がかさむことはない。最大の節約は目的を達成してしまうことだ。この方法であれば、無駄に我慢をする必要もないし、目的を達成した時の満足感を得ることもできる。

節約して貧乏になったり結果が出なくなる人というのは、不安に苛まれたり欲望に翻弄されやすい。節約以前に貧乏になる要素や結果が出ない要素が備わっている。節約でなくとも、どういう行動に移ろうと結果は変わらないといえる。

貧乏は貧乏たる所以がある。節約も大事だが、貧乏になる要素を滅却しなければ、いつまでたっても貧乏だ。手持ちの預金がいくらあろうが、発想が貧乏な人は必ず結果として貧乏になる。それが嫌なら発想を変えるしか無い。

細かい節約に躍起になって小金ばかり追いかけると、小金しか見えなくなり、大きな利益を見逃しやすくなる。節約だけで資産が増えることは無い。利益を上げなければいけない状況で、新しい試みではなく、節約という発想しか出ないなら、すでに事業としてネタが尽きている。さっさと事業をたたむことを考えた方がいいだろう。

Comment(3)

コメント

仲澤@失業者

節約指向は一種の趣味なのかもしれません(たのしいらしいです)。
スーパーの値引きやガソリンの一円二円を気にする人も多いのですが、
そこまでの移動コストを考えるとトータルではどうなんでしょう。


プログラマにもメモリー節約に敏感な人がいて、たまに説得に困ります。
できたら、処理速度を優先にしてほしいのですけどねぇ。

夜勤明け

うまく節約したの振ればに結果が出ない。
"振れば"は消去漏れでしょうか?

u_zu

>人に圧力をかけて安くしたとか、払うべきものを省いたとか、そういう節約の仕方をすると、必ずどこかでしっぺ返しを食らう。


皆さん、自分の時(自分が担当している時)にしっぺ返しが来ないから、何も気にしません。
。。。毒舌になってきた、マズイですね。

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