いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

分かったつもりで満足するのがビジネスマン

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とある農業従事者の話

私の知り合いに、大阪から田舎に移って農業をやってる人がいる。彼のFacebookを読んでいると面白い。例えば、新しく農具を買った!なんて投稿があるわけだが、必ず目的が書いてある。買った農具がどういうものでどう使うか。きちんと説明しているので、読んでいて面白い。

一方、典型的ビジネスマンと言われるような感じの人知り合いがいる。彼のFacebookを読んでいると非常につまらない。美味そうな料理の写真や「何処そこに行った」という話なのだが、読んでいて何が言いたいか分からない。たまに長文を書いたかと思えば、いろいろと支離滅裂だ。見た目それっぽいが、中身が薄い。

今まで多くのビジネスマンと話してきた。しかし、彼らよりも農業やってる人や、道端で露天を出している人の方が話がしっかりしている。雑誌を読んでみても、ビジネス向けの雑誌というのは、意外と内容が薄い。目の前の出来事に翻弄されているだけの文章が多い。一方、農業の雑誌を読むと、意外と科学的な観点で記事が書かれていて面白かったりする。

農業は自然を相手にしているので、理屈より実質でものを見るようになるようだ。人間のように誤魔化しが利かないので、物事のありのままを観察する力が付くみたいだ。一方、都会でスーツ着てるビジネスマンはどうだろう。いちいち観察力なんか鍛えなくても、そこら辺のコンビニに行けば欲しいものは手に入る。便利な反面、ものを考えなくなってるんじゃないだろうか。

一般的なビジネスマンの思考力のレベル

このコラムを書いたきっかけは、とあるブログだ。読んだ内容とページは薄っすらとしか覚えていないが、「上手い説明は相手を分かったつもりにさせる」この一言の印象が深く、頭の中に残り続けていた。自分の身を振り返ると、思い当たる出来事が色々とある。

一般的に頭の良い人なら難しい事象も簡単に整理して伝えることができると思われている。事実だと思うが、伝える事象の絶対的な情報量は減らない。どんなに頭の良い人でも、国語辞典並の分厚さの本の内容を一言で説明することはできない。説明できるとすれば、概要や部分的に絞った内容のみだ。

頭のいい人の説明というのは、非常に納得感がある。だが、概要や部分的に絞った内容でしかない。話を聞いた時の納得感と、実際の情報量に大きな差がある。話に納得感ばかり求めると、内容がスカスカな話を限りなく求めるようになり、中身の薄い思考しかできなくなってしまう。

ビジネスマンというのは、こういうスカスカな話が大好きだ。なので、思考が薄くなる。客先でシステムの説明をしても、上司と相談をしても、的外れな答が返ってくるのはそのためだ。「結果を言ってくれ」ばかり要求するのは、逆を取れば結果にしか興味が無いのだ。さらに突っ込めば、プロセスを知ろうとしないので理論的な思考ができないと言える。

本当に分かるということ

では、辞書一冊分くらいの本があったとして、その内容を理解するにはどうすればいいだろうか。答は簡単だ、全部読め。全部読んでも分からないこともあるだろう。だから、何度も読もう。それでも分からなければ、分かる人に聞こう。手持ちの情報の量が同等でないと、聞いても話が通じない。

IT系の技術で、いかに効率よく学習するかという話が出る。自分を振り返って見ると、なんだかんだで大量の情報に何度も目を通して、反復で練習や検証を繰り返していた。基礎を固めたら、その上に色々と積み重ねができるようになり、高度な技術でも速やかに習得できるようになった。と、かなりシンプルな話だ。

一つの事象でも理解しようと思うと時間がかかる。現代のビジネスマンに欠けている思考は、スピードの追求よりむしろこちらだ。急ぎすぎて、必要なプロセスを飛ばしてしまったり、問題を後回しにしてしまっている。つまり、借金してスピードを出してるようなものだ。しかも、周りがみんな借金をしてスピードを追求するので、それが普通と思われている。

農業やっている人や工事現場の職人さんの方が、こういう感覚に関してはまともだ。プランニングの能力に関しても、一般のビジネスマンより抜きん出て高い。理由は簡単だ。長い時間をかけてデータを見ていることと、見ているデータが現実に即しているからだ。あとは、人の無茶で成果を誤魔化せない仕事だからだ。

目指すべきは頭のいい人ではなく正直な人

ビジネスマンといっても、言うほど飛び抜けて頭が良くなくても大して困らない。むしろ、純粋な頭の良さで勝負している人の方が少ないように思う。正しく言うと、純粋な頭の良さを発揮できなくなっている。自分の利益しか見ずに見える世界が狭くなると、入ってくる情報が少なくなったり、質が悪くなるからだ。

質の良い情報を得ることは、思考をする上で重要だ。自分に不利な情報も、有利な情報も、平等に精査していくことで質の良い情報は得られる。自分に都合の良い情報ばかり選んでいては、物事が正しく見えるはずがない。そうならないためには、自分に正直である必要がある。

質の良い情報がコンスタントに確保できれば、多少頭の回転が悪くても、質の高い思考ができる。質の高い思考がコンスタントにできれば、勝手に頭が良くなっていく。つまり、自分に正直である、自分に嘘をつかないだけでも勝手に頭は良くなっていくのだ。もちろん、人に嘘を言わない人の方が、人から正確な情報を聞けるようになる。結果、得られる情報の質も高くなる。

現代のビジネスマンというのは余裕が無い。自分の力量に合わないものばかり欲しがるので、どうしても嘘や誤魔化しが多くなる。言葉を並べるのは上手いので、頭が良さそうには見える。しかし、思考が高速でループしてるだけなので思考自体は至極浅い。簡単に言えば、自分の欲望に対してパニックを起こしているような状態だ。

本当に頭が良くありたいと思うなら、正直であるべきだ。そうすれば、勝手に頭が良くなる。エンジニアであれば、大きなアドバンテージになることは間違いない。

Comment(2)

コメント

山無駄

「上手い説明は相手を分かったつもりにさせる」
確かにその通りです。後輩たちに何かを説明したとき、何も質問もなく、わかりました、と終
わる時があります。しかし、そんな時は大概、彼らの頭に残っていないか、間違って理解して
いるかどちらかです。おそらく分かった気になってしまい、後から調べたり反芻したりしない
からでしょう。
また、「わかりやすく説明しようとすると、相手を混乱させる」
という事も実感します。
後輩たちに何かを説明するときに、特にそれがややこしい内容の場合、例えを使ってしまいます。自分的には何て本質をとらえた分かりやすい比喩なんだ、と自画自賛しても、本筋を理解
しきれていない相手に対しての比喩は、理解を遠ざけます。加えて渾身の比喩に反応が薄いの
でムキになり、別の例え話をしたりすると、混乱の極みになってしまいます。反省…。

どだい、物事を正しく理解する事には、それなりの労力が必要です。労力をかけずに何かを理
解しようとすること自体が厚かましいという事なのでしょう。
その事をAnubisさんは、頭のいい人ではなく正直な人になれ、といっていると思いました。
ただ、個人的には「正直な人」より「真摯である人」の方がよりしっくりくるように感じまし
た。

真っ赤なレモン

忙しい時ほどいい発想がたくさん出てくるのに、それを発信する時間が無い。あるあるあるある。

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