いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

それでも業務時間外で勉強をしなければいけない理由

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◾︎楽しいから勉強する?それだけじゃ足りないよ

 人のやる気を掻き立てるには、ネガティブな方向から攻める方法と、ポジティブな方向から攻める方法とふた通りある。前回、ネガティブな方向からアプローチしたら、思わぬ反響があった。だが、言葉のインパクト故に誤読する人がたくさんいたように思う。

 誤読した人達にあえて言っておく。豆腐メンタルだなと。言葉のインパクトだけで悪い方にイメージが傾いてしまう。つまり、考えがネガティブに傾きやすいのだと。それは自分の欠点だと素直に認識しておいた方がいい。

 だったらポジティブならいいのか?いや、ポジティブなだけだと楽しくないと動けなくなる。結果、楽な方ばかり行って、勉強時間の割に成果の上がりにく人になる。もしくは、自分の楽しさのためなら手段を選ばないモンスターになる。

 大事なのは、ぱっと見の印象だけで判断しないことだ。読者に対して疑問い思うことは多かったので、別角度から同じテーマで考えてみた。今回は新人への説明ではなく業務改善案っぽく書いてみようと思う。

◾︎仕事は業務外の時間のためのものだ

 まず、仕事をする目的は食べていくためだ。これは間違いないだろう。あと、やりがいという人がいると思う。これも正しい。だが、私はもう一つ足りないと思う。それは、仕事を通して課題を得るべきだと思う。ただ、課題といっても業務上のものだにも限らない。一個人として、どうスキルアップするかという課題だ。

 もちろん、課題なんて背負わない方が楽しく過ごせる。技術だって、難しいことを考えずに、目新しくて興味のある分野を追求する方が楽しい。だが、達成するべき課題がなければ、楽しいだけで終わってしまう。話題は豊富になるが深みが出ない。それはそれで悪くはないが、仕事に活かすことを想定していたら「こんなはずじゃなかった」となりやすい。

 技術的に伸びる人は必ず課題を持って勉強している。ただ楽しいからという人と、楽しさの度合いが違う。大阪にある天保山に登るのと、富士山に登るくらいの差がある。もちろん、富士山に登る方が負荷が大きいが、その分、達成感も大きい。それが新たなモチベーションへと繋がり、困難に立ち向かえるようになる。

 仕事でも、それぞれの人に相応しい課題を与えてやるべきじゃないだろうか。働いている人の人生に張合いを出すためにだ。仕事を通じて適切な課題を提供するのも、会社としてあるべき姿じゃないだろうか。

◾︎で、それ業務時間内でやるの?

 エンジニアの場合、与えられる課題は技術的なものが中心だ。俗に言うスキルアップだ。それを通して、人としても成長しろということだ。会社の業務にも影響が大きい。問題は、これを業務時間内でやるのか、外でやるのかということだ。

 業務内でやる方が会社としては理想的だ。業務に関わることだし、自分のために時間とお金を割いて育ててくれるので、モチベーションも上がる。・・・と思うが、会社の研修を有効活用できている人はあまり見たことがない。別にモチベーションも上がってる訳でもない。

 今の企業に人を育てる体力もノウハウもない。特にIT系。業務時間内で勉強させたり技術研修をしても、その分残業が増えるだけだと思う。資格取得の業務指示なんて、苦行以外の何物でもない。勉強させるにしても、モチベーションの上げ方を知らない。仕事を手早く済ませて業務時間内で勉強するにしても、隠れるようにやらないとサボっていると思われてしまう。そんな状況では集中して勉強できない。

 会社も教育とか寝言をボヤく前に、残業しないでさっさと帰れるようにしよう。やってる仕事が素人なのに、人にものを教えるなんて無理だ。そして、きちんと睡眠取らせよう。疲労困憊で勉強しても効果は薄い。まずは仕事をまともに回そう。話はそれからだ。

◾︎実質業務外じゃないと無理

 現実問題、一般的な会社では業務時間内に勉強なんて無理だ。OJTをしてくれたとしても、やってる人が疲れ果てていて、準備もろくにできていなかったりする。研修をしてくれたとしても、「どっかのセミナー行ってこい。」くらいだ。研修中の内容より、提出するレポートの内容考える方に必死だ。

 会社の求める理想と現実が乖離している。教育が形骸化していて、「教育したからできるはずだよな?」という、言い訳の手段になっている。業務時間内の勉強が意味を成さないなら、業務時間外で勉強するしかない。それが、別の角度から見た業務時間外で勉強をしなければいけない理由だ。

 まともな仕事をやっている会社は、きちんとエンジニアと対話している。そういう会社は少数かもしれないが存在する。業務時間内で勉強すべきか、時間外で勉強すべきか。それは、会社がきちんと対話できるようになってから考えるべきことだ。

 会社がまともに仕事ができていない内は、勉強は腐らないための手段だ。まともに回っているなら、自己啓発の手段だったり、趣味だったり、いろいろなスタンスで関わることができる。ともあれ、仕事がまともに回ってこその勉強だ。稼いでこそ仕事というのと同じくらい重要だと思う。

 ちなみに、どのくらいの時間でどう勉強するかは別問題だ。機会があれば別のコラムのテーマにしようと思う。

Comment(17)

コメント

pepper

なんか気になっていた事がありましたが、やっと分かりました。
「業務時間外」... 自分の時間でなく、業務時間外。業務時間内でないという事。今の仕事と会社を中心にした視点ですね。
自分の時間に自分のための勉強なら、価値有りそうですが、ちょっと違った。ここに齟齬があったと分かりました。
自分の時間に自分のための勉強。それが仕事に役に立ったら、いいね、と言う程度です。ま、仕事にあったテーマを探すのも良いですが、その人次第。
昨今、セキュリティもうるさいので、外で出来ることは限られるし、今日の仕事と明日の仕事が違うなんてのもザラなので、仕事に直結したテーマは厳しそう。
...... と言うことで。

Anubis

> pepper さん
コメントありがとうございます。

私は火消し役の業務が多いので、仕事が回っていない現場中心の考えで書いています。ただ、前回のコラムで頂いた反応を見て、そういう人ばかりでもないなと思いました。

何か、取りようによってはいろいろな意味に取れるなぁと、書いてから気付いたりしました。

Anubis

二週に渡って同じテーマでかいてみた本当の理由。
実は、同じテーマで二週間語れる人がどれだけいるか試してみたかった。

以前も同じテーマで何度か書いた事があったが、最初のアクセスは伸びたが二度目以降は落ちた。

今回試してみて納得がいった。いつか納得のいった内容でコラムを書いてみたいと思う。

abc

今回の記事を読んでみて、改めて自分自身が前回の記事の
本当の意味での内容を読み取れていなかったなのだと
反省させられました。
誤読された方は、ぜひ今回の記事を読んだ上で
もう一度考えてみてほしいです。
見ない方が多いのでしょうけど。。
 
また、少し記事の内容とは異なりますが、何事もきっかけは
「ぱっと見の印象」の場合が多いと思うんです。
自分自身そこで判断しちゃっているものが多かったなと
気づかされました。
ありがとうございます。

ななし

業務時間外に勉強ではなく、業務中に勉強すればいいだけの話では?
モチベーションの事を言うなら業務中の勉強でいいでしょう。
未経験の言語や分野であっても、経験を積んでいけば業務中の勉強でほとんど事足りると思います。
資格の為の勉強であれば個人で勝手にやってください、会社が奨励する場合は資格取得の手当をつけてくださいという話ですよね。
私にとっては好奇心=モチベーションで、好奇心を惹かれるような事しか、業務時間外には勉強、または、調べたりしません。
業務時間外に勉強しなければ仕事ができないのであれば、経験が浅いか、または、そもそも仕事ができない人という認識です。

Anubis

>abc さん
コメントありがとうございます。
ご理解いただけて嬉しい限りです。

実際のところ、ある程度のインパクトが無いと誰からも読まれないというのが厳しいところです。

今後もいろいろと考えてコラムを書いていきたいと思います。


>ななし さん

言葉はマイルドだが、キッチリ毒を盛ってませんか?

まず、
「業務時間外に勉強ではなく、業務中に勉強すればいいだけの話では?」
と始まって、つらつらと自分の近況を述べて、
「業務時間外に勉強しなければ仕事ができないのであれば、経験が浅いか、または、そもそも仕事ができない人という認識です。」
と〆ている。コラムのタイトルと対比すれば、私に対しての一言と取れる。

相応の覚悟があっての挑戦と受け止めてよろしいでしょうか?

まず、断っておくが、個人的な意見であればこのコメントに問題は無い。
コラムの後の方を読めば分かるが、ななしさんのおっしゃる状況も想定済みだ。

「未経験の言語や分野であっても、経験を積んでいけば業務中の勉強でほとんど事足りると思います。」

確かにそういう現場もあります。ただし、こういう仕事の難易度はあまり高くないか、直接技術を求められない状況だったりもします。稀なケースでよほどの天才とか。別にそれ自体は否定しません。

だが、ななしさんは狭い範囲の想定しかしていない。たぶん、身の回りをちょっと見まわした程度の範囲での話だ。私は仕事が回っている現場、回っていない現場、教育が有効に活用できていない現場と、幅広く想定している。

つまり、私の書いた内容の一部を見て判断し自分の経験の範囲を述べているに過ぎない。なので、反論として通じる要素がない。皮肉だとしても認識できるかどうか微妙なラインだ。とりあえず、あまり考えずにイメージ中心でコメント付けたのはよく分かります。今更なので、何も感じるものは無い。

ただ、文章の組み立て方にはセンスを感じます。コラム書いてみてはどうですか?人の書いた文章を深く読むスキルをつければ、十分に通用するコラムニストになれると思います。

oh

業務時間内にお金を受け取りながら、能力(商品または商材)の仕入れを行う、ということは認められるものなのでしょうか?

 業務時間内は、お金を受け取りながら能力発揮(商品の納入)を行い、自身の能力(商品)の仕入れは、閉店(退勤)後の、業務時間外に行うのが当たり前だと思っていました。

 能力(商品)は納品しても減らないので、何度でも繰り返し納品できて便利ですが、一定時間が経過すると、商品価値が劣化し始めます。そのため、自身の能力(商品)が価値を喪失する前に、定期的に、新商品を仕入れる必要があります。しかし、その仕入れ作業が、結構な量の自由にできる時間を削り取るので、ちょっと困っていました。

 これからは、業務時間内にお金を受け取りながら、能力(商品または商材)の仕入れを行ってみようと思います。退勤後に自由にできる時間が増えると思います。でも、商品の納入量が減ってしまって、先々、自由にできるお金が減ったりしないか心配です。

 また、時間内に所定の作業量を終えることができなくなって、退勤時刻が遅くなって、結局、自由にできる時間が全く増えない、あるいは更に減少する、なんてこともあったりして?

 まあでも、業務時間内にお金を受け取りながら、能力(商品または商材)の仕入れを行えば、自由にできる時間は増えなくても、残業が増えて、自由にできるお金は増えるかもしれません。

Anubis

> oh さん
コメントありがとうございます。

まず、能力を商品として考える発想が、私にはあまりありませんでした。
実質どうなの?という視点で書いていたので、この考え方は新鮮です。

私の感覚としては、能力は道具です。少し極端な例えかもしれませんが、
鉛筆やカバンなど、当然自分で揃えるべきものもあるし、
特殊な工具など個人で揃えられないものであれば会社が揃えるべきだ。
そんな感覚です。

私には無かった考え方なので、二、三度読んだだけで敵説なコメントが返せそうにないです。
じっくり読んでから、別のコラムに活かさせて頂こうと思います。

oh

業務時間内にお金を受け取りながら、能力(商品または商材)の仕入れを行うようなことは、これまでも、これからも、しません。念のため。

 商品価値のある能力を何も持たない場合、その人は自分の命(時間、残りの寿命)の一部を直接換金しないと、自身の生活を維持できません。

 商品価値のある能力を換金する場合も、納品作業に自分の命を消費しますが、それは付随して発生する現象であって、命そのもの換金しているわけではありません。
 能力を換金する場合は、命だけを換金するより場合よりも、まあまあ高い換金レートを実現できるようになります。(時給に換算してみて最低賃金を下回っていたら、自身の能力に商品価値があるのか、一度疑ってみるべきでしょう)

 商品価値のある能力を何も持たない。だから会社に対しては、商品価値のある能力獲得のために教育を施せと要求する。それでいて授業料は払わん。給料はもらう。
 正気か? というのが私の感想です。業務時間内に、持久力向上のためにランニングをしている土木作業員がいたとしたら、どう思いますか?

 業務時間内には勉強するな! 業務時間内は働け!
 じゃあ、いつ勉強するの? 業務時間外でしょ!

 常に知識や技術が進歩しているような業界では、能力の商品価値喪失速度は一般的に速いと思います。何十年も前の医学知識のままの医者は、多分、ヤブ医者です。

oh

蛇足です。

 業務時間内の勉強を肯定する人々は、医学書を読みながら手術を行う医者も肯定するのしょうか?
 私は、医学書を読みながら手術を行う医者の存在を認めませんし、そんな医者から治療を受けたくもありません。同じ理由で業務時間中の勉強なんか認めません。

 自身の能力(商品)の仕入れは、業務時間外に行うものだと思います。

 業務時間外で勉強をしなければいけない理由? 理由もクソもありません。それは当たり前のことです。

lucks

初めてコメントします。
私は、ソフト業界に20年程勤め、その後
自身で開発した業務管理ソフトを使用して
頂いている会社に就職し、社内システム保守
及び外販用設計をしています。

今回のテーマである業務時間内、時間外での
勉強について様々な視点の意見がコメント
されていて勉強になります。私はどの意見・発言も
間違いではないような感じ受けます。
その方の仕事環境・立場により変わるものと考えます。
(普通そうかな・・・)

例を挙げると、
・転職のための勉強 → 時間外
・会社の新商品開発 → 時間内
・新人に教えるための一般論を知る → 時間内

てな感じですかね。
このようなテーマを普段意識していないので勉強になりました。


これからも、Anubisさんのコラムを楽しませていただきます。

Anubis

> oh さん
返信という形で書くと長くなるので、
いつかコラムのテーマに盛り込んでみたいと思います。

> lucks さん
コメントありがとうございます。

私もコラムについたコメントを見て、予想外に多くの見方があった事を知りました。
答えは一つでは無いです。私のコラムが誰かの考えるきっかけになれば嬉しいです。

これかれもコラムを楽しんで頂ければと思います。

oh

例外的に、業務時間内に能力(商品)を積極的に仕入れなければならない仕事もあります。

 通常業務が、能力(商品)の仕入れになっている例は自衛隊員です。
 能力の向上がそもそもの業務で、能力発揮(有事)に至らない(攻め込まれない)ように、先方が攻撃を思いとどまるように、実力の維持と向上を連日行っていると思っています。

 また、法的に能力(商品)の仕入れを業務時間外に行うことも困難です。
 業務時間外に、自宅で機関銃の射撃練習とかする訳にはいきません。出来て筋トレとかランニング程度と思いますが、その辺の屈強な肉体とかは、きっと自衛隊員にしてみたら商品価値のない当たり前の能力になる、と思います。

 そういった特殊(能力発揮をしないために能力を向上させる)を除き、能力発揮が仕事の場合は、業務時間内は能力発揮、業務時間外は能力向上になると思っています。

 四則演算が出来る(意外と出来ない人もいる。特に割り算)という能力も、生後に獲得した能力ですが、その能力には、ほとんど商品価値がありません。みんなが出来るからです。四則演算以外にも、文字の読み書きとかの能力にも商品価値はありません。商品価値のある能力として何を獲得するのかは、本人の意思です。

 馬を水辺に連れて行くことはできても、そこで水を飲むかどうかは馬の勝手です。
 水を飲みたいので、会社に水辺に連れて行けと言っているのだとしたら、お子様です。
 水が飲みたいのなら、勝手に水辺に行って、勝手に水を飲むのが大人だと思います。

 別な病院への就職(転職)のために、業務時間外に「最新の医学」を勉強する医者と、患者をちゃんと治療するために、業務時間外に「最新の医学」を勉強する医者と、どっちの医者にあなたは治療されたいですか?
 転職のための勉強とか言っている段階で、技術者失格のような気がします。
 常々勉強し、自身の能力の商品価値を維持しているから、たまたま転職も自由にできるのが「正常」な状態だと思います。

oh

知識やスキルは「能動的に」学ぶものだと思っている人と、
知識やスキルは「受動的に」習うものだと思っている人は、相容れないと感じています。

習う派の人は「そんなことは教わっていない」と口にする場合があります。そんなときには、「ではその知識(またはスキル)を人類の中で最初に手にした人は、いったい誰から教わったの?」と思ってしまいます。

当然ですが、成長が早く役に立つのは「能動的に」学ぶ派の人です。学ぶ派の人達は、教えを請うのも積極的です。

ksiroiさんの「学生でも学ぶことは出来る。」というコメントに、
Anubisさんが「学校で習う程度のレベルで通用する現場なら、」返しているところが、なんともいい味を出していると思いました。

私は「学ぶ派」が好きですし、多くに人には、必要なことを自ら学んで、そして社会に出てきて欲しいと思っています。でも「習う派」(習ってないもん派?)が多くて、時々ビックリします。

Anubis

>oh
さすがにくどい。

oh

私のコメントは全て削除しておいてください。
狭量なところのコメントを残しておくのは、さすがに恥ずかしいです。

Anubis

十分に恥ずかしいことをしていたので、このまま晒させて頂きます。
それが嫌なら、二度と関わらないでください。

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