いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

自分のスキルの価値って、実質どのくらいなのか

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■意外と低いスキルの価値

 自分のスキルの価値については、エンジニアなら誰でも気になるところだろう。しかし、現実は厳しい。いち個人という単位で考えれば、誰のスキルであれどハナクソくらいの価値しかないだろう。そんなもんだ。

 「いや、そんなことはない。俺が会社の技術的な部分を支えてるんだぞ!」という方がいるかもしれない。しかしそういう人に言いたい。君がいなければ、他の人がやっていた。それだけだ。君がすごいんじゃなく、たまたま君がそのポジションにいただけだ。逆に、君が退くことで伸びていく人も大勢いるかもしれない。俺は偉い。そう思ってふんぞり返っている君は、逆に邪魔なのかもしれない。

■スキル根本は他人の成果物

 スキルというのは対象があって始めて成り立つ。ここで考えてみよう。君が関わっている技術、プログラミングの言語でも、ミドルウェアでも何でもいい。たとえどんなに高いスキルを持っていたとしても、使ってる言語やミドルウェアは他人の成果物だ。君のスキルはそこにちょこんと乗っているに過ぎない。

 つまり君1人がいなくても、君以外の人たちの成果物やスキルで世界は回る。たとえ君が偉大な発明を成したとしても、結局は人の成果物の上で背伸びして、たまたま一線を越えたにすぎない。君じゃなくても、時期がくればきっと他の人がやっていたことだろう。

 そう思った方が、謙虚に学んでいける。書籍や諸先輩方の言葉は、立派な成果物だ。人の残してくれた成果物は、きちんと感謝して受け取ろう。

■スキルは個人単位で価値を発揮するものでない

 スキルとは、個人単位では何の価値も発揮しない。前人の成果があり、それを使う人がいて初めて、価値を発揮する。この事実をしっかり認識することは、とても重要だ。

 よく、前人の残したすべての成果物を使いこなしている。だから自分にはその全ての成果物と同じ価値がある、と勘違いする人がいる。それって、人から受け継いだ恩恵を認識していないことではないだろうか。

 スキルは、決して個人の所有物でない。社会的な資産だと私は考える。

■本当のスキルの価値

 結局、どんなに天才であろうと、1日に書けるコードの量なんてしれている。どんなに優れた成果を生み出そうと、それを使う人がいなければ、後世に受け継がれない。君がどれだけ優れているかではない。君の後をどれだけの人が歩いていけるか。それがスキルの本当の価値だと思う。

 コードを書くにしても、人が後から読んで分りやすいコードが良いコードだと言われる。自己主張の激しいコードを良いコードとは言わない。自分という枠でしかスキルを考えない人が、読みやすいコードを書こうとするだろうか。自分さえ分ればいい。そういうコードを書くと思う。

 本当にスキルの価値を高めたいと思うなら、人に受け継いでこそ価値があるのではないだろうか。それを怠れば、残した成果物が、逆に正体不明のブラックボックスになって襲い掛かってくる。作った人のスキルが高いほど、凶悪なモンスターと化す。

 決して、個人の持つスキルの価値を否定するのではない。人に継いでいくことでその真価を発揮して欲しいと思っている。自分スキルの価値ばかりにとらわれてはいけない。

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