いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

IT化と文章力

»

■IT化が進んで文章力が落ちた?

 何十年前かは普通に手紙という手段がコミュニケーションに使われていた。文通なんてものもあった。 そういえば昔、外国の人と文通してた事があった。便せんを開けた瞬間、異国の香りがしたのを覚えている。なかなか新鮮だった。

 それから数年経ち、インターネットが普及だした。至る現在、MixiやらFacebookなんてサービスが開始され、多くの人がWeb上に文章を書くようになった……。というか、あれは文章なんだろうか。昔、手紙でコミュニケーションを取っていたころと雰囲気が全然違う。おじいちゃんやらおばあちゃんの世代が見たら「なんだこれは!?」と言いそうなひどい書き方だ。

 文章として考えれば、口語体で改行も目茶苦茶、文末に挿入される「w」。顔文字やら絵文字が入ってキラキラしてたりする。もし、これが紙に書いた手紙だったらどうだろう。幼稚園児の落書きのような紙面になるに違いない。

■文章ではない。あれはメッセージだ。

 文章として考えるとけしからん話だ。なめくさっとる! となるが、メッセージと考えるとどうだろう。案外まともな話だと思う。例えば、伝言メモなんかにいちいちきちんとした文章で書くだろうか。「ママは留守なんで晩御飯どっかで食べといてね(はあと♪) ママより」こんな感じで、メモの端っこにヘタクソな似顔絵が描いてある。こんなメモは普通にある。

 いろんなサービスの普及で、こういう食卓に残すレベルのメモまで全世界へ公開されたりする。Twitterなんてまさにそんな感じだ。全世界へ情報が発信されるからと言ってその情報の内容のレベルが上がるわけでない。元々あったものを清濁関係なくぶちまけたようなものだ。

 そんなことで、MixiやらFacebookなどを見て「もしかして日本人って文章力が落ちたか?」なんて懸念してたが、勝手に自己解決した。日本人の文章力は別に落ちていない。もともと文章を書かない人の文章もWebに公開されるのでそう見えただけだ。

■文章力とは別問題で、表現方法は変化した。

 Webだろうと手紙だろうと文字を使うという意味においては大した変りはない。しかし、Webが普及することで、気軽に公開できるという土壌が整ったことと、不特定多数の人に情報を配信できるようになった。

 この状況の変化が、文章を書くという姿勢を大きく変えたのではないだろうか。不特定多数に対して文章を書くなんて、手紙しか無い時代にはなかなかない事だった。それが今では、不特定多数むけのエンターテイメントを個人が発信するようになっている。最近では、文章のみならず楽曲や動画まで発信する環境が整っている。

 同じ文章でも、媒体が変わることで向き合い方も変わってくる。そこに人の変化が誘発されたのだろう。その結果、普段文章を書かないような人が文章を書くようになったり、よりインパクトのある表現方法がいろいろ考え出された。

■手段は発展したが中身は後発だ

 文字、音、映像など、Webを経由して伝えられる手段は増えた。が、IT業界を見渡すとまだまだこの手段の事を講じる人が多い。確かに、コンテンツの話になると、コードを書くスキルとかサーバの構成なんかはまったく別の次元の話になる。エンジニアからはそういう発想は出ないと思う。

 そして、簡単に発信できるがゆえに、相対的に価値を見いだせなくなってる人が増えたんじゃなかろうか。本来だったら、発信したいコンテンツが増えて、伝える手段がなんかないか? ということでWebが普及していろいろなサービスが開始される。という流れが自然だ。実際は、この逆の流れをたどってないだろうか。

 技術の進歩で、手段は出そろった。そろそろ物やサービスの充実から、コンテンツを充実させる方向に視点を切り替える時期かもしれない。

Comment(0)